「歯無し」だけではすまない話
この記事は 「若松衛生だより」 (第613号 平成15年6月1日発行) に掲載されたものを再録しました。

歯を失う主な原因が虫歯と歯周病であることは皆さんもよくご存じの事でしょう。
ところが、歯に穴があいたり、欠けたり、食べ物が詰まりやすくなったりしていても、痛くないからと
放っておいてはいませんか。
また、歯がぐらぐらして物がよく噛めなくなってきたとか、歯茎から
血や膿が出るとか、人から口臭を指摘されたりして気にはなっていても何となく見過ごしてはいませんか。

痛くないから、自覚症状があまり無いからと言って、油断していては危険です。
 
 虫歯は痛み出してからでは歯髄(神経)を残すことは難しくなってきます。歯も臓器の一種ですから、
歯髄を無くしてしまっては歯の寿命は短くなります。また、歯周病は自覚症状の出にくい病気ですから、
噛みにくくなったり、血や膿が出ているのを気づくということはかなり病状も進んでいるので、
そうなってからでは歯を抜いて入れ歯にしないとならないかも知れません。病気は何でもそうですが、
特に虫歯や歯周病のように治りにくい病気は少しでも早く治療をすることが大切です。
またかかってから治療するより、かからないように予防することの方が何倍も大切なことです。


 歯を無くした野生の動物は餌を食べられなくなって死んでしまいます。
 
 虫歯や歯周病を放置しておくと、
よく噛めないために胃腸障害はもちろん、歯並びや顎の発育が悪く
なったり、偏食になったりするというように、お口の健康を害するのは当然ですが、最近の研究では
全身のいろんなところに悪影響があることが解明されてきました。


 虫歯や歯周病の細菌そのものや細菌の毒素が原因でできた免疫系の炎症性物質が血管を通って全身に運ばれ、
心臓や関節に炎症を起こすことがあります。また、糖尿病や心臓血管疾患の危険度は歯周病があると何倍にも
増加します。妊婦では、低体重児出産や早産を引き起こす可能性もあります。

 この他、肺炎や神経系、皮膚科疾患など、多くの病気が、虫歯や歯周病が放置されていることで増悪する
ことが解ってきました。


 まさに、歯を失って「歯無し」になるだけではすまされず、命を縮めることにもなりかねません。
腹も身のうちなら、歯も身のうちです。お口の健康に気をつけて、いつまでも健康で長生きしたいもの
ですね。


 若松歯科医師会のホームページでは、皆さんのお口の健康に役立つ情報を随時更新しています。
ぜひお役立てください。

   http://www.alpha-net.ne.jp/users2/wakashi/