若松環境衛生だより 令和3年 2021年

●11月号 顎関節症の治療法
 

 顎関節症というのは、原因がはっきり分からない場合がほとんどです。

急性の一時的な症状に対しては、鎮痛剤の服用などの薬物療法が有効なこともあります。慢性症状の悪化に対する一般的な治療法としては、最初はできるだけ不可逆的な方法(歯を削ったり被せ物をするなど元に戻せない方法)は避け、可逆的な方法(元に戻せる方法)を選択します。

 一般的にはスプリント(マウスピース)を上の歯に装着し、上下の噛み合わせが左右均等に接するようにします。そうするとあごの関節のずれが元に戻り、あごを動かす筋肉の緊張がとれ、下あごをスムーズに動かすことができるようになります。さらにスプリントの微調整を繰り返し、症状が取れた段階で必要があれば、入れ歯やクラウンという被せ物を新作することで、噛み合わせの関係を治したりします。

 また原因の一つに精神的なストレスが考えられるような場合は、それに対するサポートとしてのカウンセリングを行うこともあります。

 さらに口を開ける訓練やレーザーの照射、噛む時に使う筋肉のマッサージなどの理学療法、歯ぎしりや食いしばり、姿勢など日常的な癖を修正する行動療法によって症状が改善する場合もあります。

 このような方法では改善が認められなかったり、症状が悪化していくような場合には、外科的な治療が選択されることもあります。

 以上述べましたように、あごが痛んだり口が開かないなど、顎関節症の症状が出ている時は、そのまま放置せず早めにかかりつけの歯科医院に相談する事をお勧めします。

次回のテーマは、『顎関節症の自分でできる管理方法について』です。

                               若松歯科医師会広報委員会

●8月号

顎関節症の主な症状

 
 今回は、顎関節症の主な症状についてお話ししたいと思います。

 顎関節症の主な症状としましては、口を開けた時にこめかみあたりから音がする。口を開ける時にこめかみあたりが痛い。口が開かなくなる。の3つがあります。

 口を開けた時に音がするのは、顎関節内部の関節円板がずれていて、顎が動いた時に引っかかるのが原因です。また病状が進行した場合、顎関節の骨の形が変形してしまい、こすれあったような音がすることがあります。人によっては、大きく口を開けると、関節が亜脱臼すること(関節がずれて外れかかること)があり、その際にガクンと音がすることもあります。

 顎関節症の痛みには、顎関節の痛みと咀嚼筋の痛みがあります。そして、そのどちらか、あるいは両方に痛みを生じる場合があります。顎関節の痛みは、顎関節の周辺に炎症がある時に起こります。また、咀嚼筋の痛みは、筋・筋膜に炎症が生じている時に起こります。

 しかし、顎関節症に限らず、痛みには、「侵害受容性(局所の炎症などが原因)、神経障害性(神経系の問題)、心因性(環境や性格などによるもの)、さらに原因が不明な特発性」があります。顎関節症の患者さんの中にも、顎関節や咀嚼筋の障害だけでは説明のつかない痛みもあり、心理的あるいは社会的なストレスが関係していると考えられるケースも稀にあります。

 口が開かないのは、顎関節の中の関節円板がずれて関節の動きを妨げている場合や、咀嚼筋の痛みのために顎が動かせない場合があります。

このような症状がありましたら、一度かかりつけの歯科医院を受診されてみてはいかがでしょうか。

                      出典 一般社団法人 顎関節学会

                                    若松歯科医師会広報委員会

●6月号

顎関節症(がくかんせつしょう)

食事をしているときや食事の後に顎が痛くなる。口が開けづらい。口を開け閉めした時にカクカク音がする。そのような経験はありませんか?

 そのような症状が繰り返したり続いたりするなら、それは顎関節症(がくかんせつしょう)と呼ばれるものかもしれません。

 顎というのは複雑な形をしていて、沢山の機能を持っています。多くの筋肉と顎の関節、そして神経が集中して下の顎を支えています。食事や会話の際にはそれらが連動して機能しますが、この顎の関節やそのまわりの部分に痛みが出たり動かしにくくなったりするのが顎関節症です。主な症状としては、口を開いたときに顎関節や顎の筋肉に痛みを感じたり、顎関節から音が鳴ったりします。顎関節症の痛みは、顎の関節の痛みと咀嚼筋(物を食べる時に使う筋肉の総称)の痛みに分けられ、そのいずれか、あるいは両方が痛みます。 

 が開けづらくなる要因としては、顎の関節の内部にある関節円板(圧力分散のためのクッションの役目を担っている組織)がずれて関節の動きを妨げている、あるいは咀嚼筋の痛みで顎が動かせないことが挙げられます。関節円板がずれている場合には、顎を動かすと引っかかるような音がしたり、顎の関節を構成する骨の変形によってこすれ合うような音がしたりします。さらに症状が悪化すると、口を開けようとしなくても顎の関節や、頬やこめかみなどの顎を動かす筋肉が痛んだり、口が開かなくなったりします。また、片頭痛、首や肩、背中の痛み、腰痛、肩こりなどの症状がみられる場合もあります。

 従来は噛み合わせの悪さが原因だと考えられてきましたが、近年の研究で、実際には噛み合わせだけではなく、多くの要因が絡んでいることがわかってきました。その要因には、噛み合わせの不良のほか、顎の関節そのものがもともと弱いなどといった構造上の問題、ストレスや不安などからくる顎の筋肉の緊張などもあると考えられています。また、日常生活における習慣や癖なども大きく影響している場合があります。例えば、頬づえや歯ぎしり、唇や頬の内側を噛む癖、食いしばり、片側の歯での偏った噛み方の癖、うつぶせ寝の習慣、猫背などです。

 このように顎関節症というのは、現代人の習慣が関わっていたり、原因が複数あったり、まだまだ分からない事もあって、難しい病気のように思えますが、命に関わるとか、日常生活で著しい障害が出るような恐ろしい病気ではありません。

 多くの場合、適切な診察や検査を受けて、歯科医師による標準的な治療や自己管理(セルフケア)により、快方に向かうことが知られています。

             出典 : 一般社団法人 日本顎関節学会HP

                           若松歯科医師会広報委員会  

2月号  口腔ケアで守る命の入り口
   命の入り口、心の出口」という言葉があります。これは何かと言えば口を表現したものです。生き物はみな、水、食物、空気という生きていくために必要不可欠なものを口から取り込んでいます。
(呼吸は本来鼻で行うものですが、鼻が詰まっていたり、激しい
運動で空気が不足するときは口からも取り込みます。)そして自分の心を伝える言葉を口から発します。だから口は「命の入り口、心の出口」なのです。

 私たちは普段何気なく物を食べていますが、これを細かく見てみると、口ではまず唾液腺から唾液を出して湿り気を与え、舌、頬などで食べ物を上手く歯の上に乗せ、歯で細かく噛み砕きます。これを繰り返して食物をひと塊としてまとめ、それから飲み込むという実に精妙な連携で食べるという動作を行っているのです。

 また、歯が整っていなかったり、舌がうまく回らなかったりすると、発音が不明瞭となり、言葉が相手にはっきりと伝わりにくく、虫歯や歯周病などで口臭が不快なレベルだと、円滑なコミュニケーションも取りにくくなるでしょう。

 そして、お口の衛生状態が悪いと歯や歯肉などの病気が進行するだけでなく、お口で増えた細菌や炎症物質が全身に回り、糖尿病や心臓病、認知症などの全身疾患も悪化させることが分かっています。さらに喉の抵抗性も弱まるため、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくもなります。それは今脅威となっている新型コロナウィルス感染症も同様であろうと言われています。

 さあ皆さん、しっかりと口腔ケアを行うことで、お口を「病の入り口 悪臭の出口」とせず、健全な
「命の入り口、心の出口」として守っていこうではありませんか。


                        
若松歯科医師会広報委員会