若松環境衛生だより 令和2年 2020年

●11月号  口腔ケアは生涯を通じて
 

 お口と全身の健康の深い関係については近年益々解明が進んでいるところですが、
人が生きていくための栄養を口から取る以上は、生まれた時からこの世を去るまで
お口の健康は維持しなければなりません。

 生後すぐの赤ちゃんもお母さんのおっぱいや哺乳瓶に吸い付きお乳を吸引して飲み込むためにはお口の働きがうまくいく必要がありますし、歯が生え固形物を噛み砕いて食べるようになると歯の状態が重要で、歯を失ってしまえば、入れ歯などで補わねばなりません。人が生きていく間、お口から栄養を取る限り、お口のケアはあらゆる世代で欠かせません。乳歯は生え替わるから虫歯になっても大丈夫とか、歯を何本も失っても残っている歯で噛めるからまあ何とかなると考えている方がおられますが、大間違いです。

 貴方は指が10本あるから23本失っても平気でしょうか。同じように歯も20本以上あるから何本か無くなっても大丈夫というわけではないのです。歯は沢山ありますが、それぞれに形や役目が違い、必要だからこそ、それだけの数があるのです。
 若松歯科医師会は例年11月の「いいないい歯」週間に「あんしん!お口フェア」を開催していますが、今年は残念ながらコロナ禍で開催ができません。そこで112619時から若松市民会館で開催される「地域ケア研究会」で若松歯科医師会会員の講師による講話を行い、例年お配りしている来場者プレゼントも配布します。奮ってご参加ください。

事前に参加お申込みをお願いします。地域ケア研究会担当の若松区役所保健福祉課介護保険担当乙坂さんまで。電話093-761-4046です。

                                若松歯科医師会広報委員会

●8月号 口腔ケアは継続的に

 
口腔ケアの意義については前回
6月号でお話ししました。(見逃された方は若松歯科医師会ホームページに過去分を載せていますのでご参照ください。) 実際にセルフケアを行う時、肝心なのは、その方法です。代表的なお口の病気である虫歯も歯周病も病原菌が持続的に悪さをすることで起こります。そこで第一に歯や歯肉などに付着している病原菌を完璧に取り除くこと、次に一度完璧にきれいにできても、時間がたつとまた元の状態に戻ってしまうので継続的にケアを続けること、この二つがきちんとできて初めて病気の発生を防ぐことができるのです。


 完璧に病原菌を取り除くには歯ブラシだけでは不十分です。なぜなら、歯と歯の間は歯ブラシの毛先が通らないほど狭いので、ここはフロス(歯間の掃除用の糸。糸ようじも含む)や歯間ブラシのような細かいものを使わないとなりません。歯間ブラシは歯と歯の隙間を、フロスは歯間ブラシでも通らない歯と歯の接触している部分をきれいにする道具であり、目的が違いますのでどちらも使うようにしましょう。病原菌はほぼ一日で元に戻るので、一日一回完璧に落とせれば良いのですが、なかなかそうもいかないので、可能な方は日に2度、3度磨いた方が、より望ましいです。

 また、夜寝ている間は唾液の分泌が減り、病気が進行しやすいので、夜寝る前に今日一日残った食べかすや付着した歯垢を落とし切って寝るのが良いのです。

 さらに歯は自然治癒することがありませんので、どんなに小さい虫歯であっても、できてしまってからでは手遅れです。小さな虫歯ほど自覚症状はないので、定期的に歯科医院を受診して予防に努めてください。

                                    若松歯科医師会広報委員会

●6月号 「口腔ケア」で延命を

 口腔ケアという言葉をご存じでしょうか。口腔とは歯だけでなく、歯肉や舌や頬の粘膜、唇なども含んだお口周り全体のことで、口腔ケアには大別すると歯磨きなどで食べかすや細菌の塊である歯垢を取り除き、お口を清潔にするケアと機能訓練などにより発音、飲み込み、唾液の分泌などのお口の働きを良くするケアがあります。

 口腔ケアをすることで、歯周病や虫歯という病気を予防して歯を健全な状態で多く残すことはもちろんですが、お口の状態を健康に保つだけでなく全身の健康に大きな影響があることが近年様々な分野で報告されるようになりました。お口の健康は、肺炎、糖尿病、認知症など一見お口とはそれほど関係が無いと思われるような病気と実は深い関係があるのです。

 お口の中で増殖した細菌や食べ物が喉の機能の衰えにより、食道ではなく誤って気管の方に流れ込むと誤嚥性肺炎を引き起こし、これは今や死因の第7位となっています。歯周病菌による毒素や炎症性物質が歯肉の血管から全身に回り、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作用を妨げ糖尿病になりやすく治療効果も上がりにくくします。同様に脳に回ると脳のごみといわれる物質が溜まり認知機能が衰えます。さらに歯を失うことによって良く噛めなくなると脳への血流が減り、衰えが加速します。このように命にかかわる重大な病気にお口の健康が深く関わっているのです。

 日本は世界的にもトップレベルの長寿国ですが、自活できる期間である健康寿命と平均寿命の差が大きく、その差は男性で9年弱、女性で12年余りあり、この期間は寝たきりなど介護が必要な状態となっているのです。口腔ケアによってこの期間が縮められることに注目が集まっています。

 また、お口を不潔にしているとインフルエンザにもかかり易くなることが分かっています。これはお口の細菌が喉の奥の細胞の抵抗性を弱め、ウイルスが取り付きやすくなることで起こります。

 今、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、世界中が緊急事態に陥っています。皆さんも自粛が長く続き不安な日々が続いていることでしょう。この新型コロナウイルス感染症もインフルエンザ同様にお口の細菌が影響するという研究も発表されています。(若松歯科医師会ホームページをご参照ください。) お口の健康は長い目で見て健康寿命を延ばすだけでなく、あっという間に寿命を縮めてしまうかもしれない感染症にも関わっているのです。

 現在、歯科医院に行くことをためらい、通院を控えている方も多いことでしょうが、そのような方にこそ、うがい、手洗い、マスク着用に加え、今、この時こそお口のケアをご自身でしっかりして頂きたいのです。そして安心して通院ができるようになったら、ご自身でのセルフケアに加え歯科医院でのプロフェッショナルケアも受けて清潔で健康な「健口」を作り、健康寿命を延ばしましょう。

                                    若松歯科医師会広報委員会 
 

2月号  口腔がんを予防するために
   前回お伝えしましたように、口腔がんが発生する原因は、「化学的刺激」、「機械的刺激」、「炎症」などが考えられます。

 化学的刺激には、「飲酒」や「喫煙」などがあり、それらを制限することは予防につながります。

虫歯や歯石、歯に装着した金属のかぶせ物や入れ歯などの尖った部分が、舌や頬の粘膜や歯茎などを常に傷つける「機械的刺激」によって、口腔がんが発生することがあります。

虫歯によって生じた歯の尖った部分は、コンポジットレジンという白い詰め物やメタルインレーという金属の詰め物などで、また大きな虫歯の場合は、金属冠という金属のかぶせ物で修復して、改善することができます。

歯が抜けた部分を放置すると、隣の歯が倒れこんできたり、反対側の歯が、かみ合う歯がない為に徐々に伸び出してきたりします。そうすると、歯の咬み合わせがずれて、舌や歯茎や頬を傷つける場合があります。それを防ぐために、歯と歯を橋架けしてつなぐブリッジや入れ歯などで抜けた部分を補います。なお、金属冠や入れ歯も使っているうちに尖った部分ができ機械的刺激を起こすことがありますが、それも歯科医院で調整できます。

また、慢性の「炎症」が口の中に長期に存在すると、口腔がんが発生することがあります。歯周病によって起きる慢性の炎症は歯科医院での歯石除去やご自身のブラッシングによって改善できます。

つまり、体に取り込む刺激物を減らし、虫歯や歯周病、治療した部分の不具合を放置せず、お口の中を清潔に保つことは、口腔がんの発生を予防することにつながります。

がんの早期発見や予防のためにも、かかりつけの歯医者さんを定期的に受診することが大切です。

                        
若松歯科医師会広報委員会