若松環境衛生だより 平成31年 2019年

11月号  口腔がんの原因
   口腔がんが発生する原因は、遺伝的な要因よりも環境的な要因が強く、具体的には「化学的刺激」、「機械的刺激」、「炎症」などの原因が考えられます。なお、これらの原因がそれぞれ単独ではなく、複合して存在することで口腔がんが発生すると言われています。

 化学的刺激の代表的なものが、「飲酒」と「喫煙」で、特に喫煙は口腔がんの最大の危険因子と考えられ、前がん病変と呼ばれる「白板症」を引き起こすと言われています。アルコール自体には発がん性はありませんが、その代謝産物であるアセトアルデヒドに発がん性があるといわれています。また、熱い物や辛い物など刺激の強い食べ物もがんの発生に関係するようです。

機械的刺激とは、虫歯や歯石、歯に装着した金属のかぶせ物や入れ歯などの尖った部分が、舌や頬の粘膜や歯茎などを常に傷つけることで、口腔がんを引き起こすことがあります。歯が原因で慢性の炎症が口の中に長期に存在すると、活性酸素などの影響でがんが発生することがあります。

つまり、虫歯や歯周病を予防し、お口の中を清潔に保つことで、がんの発生を予防することができます。がんの早期発見や予防のためにも、かかりつけの歯医者さんを定期的に受診することが大切です。

今年も「あんしん!お口フェア」を開催します。例年行列のできる口腔がん検診を今回も実施しますので、この機会に参加してみてはいかかでしょうか?歯科大学の専門医が無料で検診します。検診の受付は先着50名様となりますので、この機会をお見逃し無く。

日時:令和元年11月9日(土)14時~16時30分
 場所:島郷市民センター(若松区鴨生田2丁目1番1号)

                        若松歯科医師会広報委員会 

8月号 口腔がんの臨床所見と早期発見
 

前回6月号でお話したように、口腔がんは、舌・口唇・歯肉・頬粘膜・口底・硬口蓋など、口腔内の様々な部位に発生するがんです。

 一般的に口腔がんの初期では、痛みや出血などの症状はなく、硬いしこりが触れる場合が多いようです。また、2週間以上たっても治らない難治性の口内炎ができた場合も注意が必要です。

なお、上あごや下の歯ぐきの内側には骨隆起と呼ばれる正常な骨の突起があり、がんと勘違いされることがあります。

進行した口腔がんではさまざまな自覚症状が現れてきます。口の中に潰瘍を形成して痛みや出血、しびれ感などの症状が出現します。しこりが患部の外側に増大したり、深部に入ったりして、顎や舌が動かしにくくなり、言葉を喋りにくくなったり、食事を取りづらくなったり、口が開かなくなったりします。そして、がんが周囲のリンパ節に転移して、あごの下や首のリンパ節が腫脹してくることがあります。

また、口腔がんにはその前兆となる「前がん病変」と呼ばれる状態があり、「白板症」や「紅板症」がそれにあたります。これらは粘膜の色が変化(白・赤・黒に見える)しますので、しこりがなくても注意が必要です。

早期に発見することで、がんの治癒率は高くなります。早期発見のためには、日ごろからご自身の口の中を鏡で観察することや定期的に歯科医院を受診することが大切です。もし、お口の中にしこりや前がん病変などの異常を発見した場合はがんの可能性がありますので速やかに歯科医院を受診してください。

次回は、口腔がんの原因について書く予定です。

                              若松歯科医師会広報委員会

6月号

知っておきたい口腔がんの知識

がんは、脳卒中や心筋梗塞などと並んで、三大疾病などと呼ばれその中でも最も死亡率が高いとされていますが、近年のがんに対する治療法は以前と比較してめざましく進歩してきており、その治療成績も向上してきています。

しかし、よく知られている肺がんや胃がんなど、全身の臓器のがんの認知度と比較して、口腔がんは比較的認知度が低かったのではないでしょうか?

数ヶ月前、タレントの堀ちえみさんが、ステージ4の口腔がん(舌がん)を公表して、無事手術で取り除くことができたことがメディアで大きく取り上げられました。それ以来、口腔がんが世間に広く認知されるようになり、ご自分の口腔内もそうではないかと心配されて、歯科医院に来院される患者さんも増えてきています。

さて、一口に口腔がんといっても、舌だけでなく、口の中のさまざまな部位にできることはみなさんご存知でしょうか? 口腔内は、口唇、歯、歯肉、歯を支えている歯槽骨、頬粘膜、硬口蓋、舌など様々な器官で構成されています。その中で、口腔内に発生するがんとしては、舌がん、口唇に発生する口唇がん、歯肉にできる歯肉がん、頬の裏側にある頬粘膜にできる頬粘膜がん、舌の下にある口底と呼ばれる部位にできる口底がん、上顎の硬口蓋にできる硬口蓋がんなどがあり、口腔内の様々な部位に発生する可能性があります。

私たちの日々の歯科診療の中では、口内炎や、入れ歯が合わないときの褥瘡、その他の、口腔粘膜に発生する軟組織疾患などはよくみかけますが、頻度は低いものの、口腔内にできた腫瘍に遭遇することも稀にあります。この口腔がんの原因については様々な要因が考えられていますが、内臓系などに発生するがんと同様に、遺伝的要素や、その他の要素に加えて、慢性的な機械的刺激も、その発生に関わっていると言われています、たとえば、虫歯で大きく欠けて、鋭利になっている歯を放置することによって、舌や、頬粘膜などに慢性的な刺激が加わることで発生すると言われています。また、義歯の痛いところをそのまま我慢して使い過ぎたりすることも慢性的な刺激につながります。

しかし、口腔内は暗いので、ご自身でなかなか発見できないことも多く、無症状で徐々に大きくなったりするため、異常に気づいたら、速やかに歯科医院を受診してください。そして、最も早期発見に有効なのは、定期的に歯科医院で検診を受けることです。それは、がんなどの発見だけではなく、むし歯や歯周病の早期発見や治療や継続した管理、合わない入れ歯の調整など、さまざまなメリットがあるからです。

次回は、がんの具体的な臨床症状や臨床所見などについて書く予定です。

     若松歯科医師会広報委員会

2月号

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と歯科

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に気道が閉じたり、狭くなって呼吸が止まる(無呼吸)いびきをかく(低呼吸)などの症状を繰り返す病気です。この状態が続くと良質な睡眠が取れず日中に強い眠気を起こし、重大事故・災害などの原因となるため注目を浴びています。心臓、肺などに負担がかかり、高血圧、心臓疾患、脳血管障害などを起こし、突然死の原因になると言われています。また、高脂血症、糖尿病、自律神経異常やうつ病等にも関連すると考えられています。‘いびきが大きい’‘睡眠中に息が止まっている’などの症状から気付くことが多いようです。

 SASの治療法の一つに、マウスピースという口腔内装置を睡眠時に装着することで呼吸を楽にする方法があります。中等症までに対しては効果的な一方で、重症の場合には治療効果が不十分です。まずは重症度を把握できる専門医師の診断が必要です。作製は、SASについての知識があり、口腔内装置を作り慣れている歯科医にお願いするのが良いでしょう。

 また、近ごろ、子どもたちの顎が小さくなり歯並びが悪い子が増えていますが、この子たちは将来のSASの発生リスク予備軍と言えます。あごの発育時期(乳児~小学生)に適切な歯列の拡大、顎骨の成長発育を促して、呼吸を早期に改善しておくことが重要です。歯並び・噛み合わせは見た目の問題だけではないのです。

 さて、一年にわたり、歯科が虫歯治療だけではなく、全身の健康に貢献できる事をご紹介してきました。最後に私からの質問です。

 あなたは、『若松三師会』(医師会・歯科医師会・薬剤師会)を通じて医歯薬の連携を取ってくれる「かかりつけ歯科医」を持っていますか?
 
                            若松歯科医師会広報委員会