若松環境衛生だより 平成29年 2017年

11月号

「歯科と認知症」
   
(歯が無くなることのリスク~アミロイドβ蛋白とかみ合わせの関係)


 2020年には、日本では80歳以上の約1割が認知症になると予測されており、その約7割がアルツハイマー病と推定されています。「アミロイドβ蛋白」はアルツハイマー型認知症の原因物質と考えられています。
 広島大学の研究によると、よく物を噛める正常なマウスと、歯がない為に軟らかいものしか食べられないマウスを比較した結果、歯のないマウスの方には、大脳皮質にアミロイドβ蛋白が沈着し、老人斑(アミロイド斑)が多数発生し、記憶や学習を司る「海馬」の細胞の数が減少している事がわかりました。歯を失うことで、脳に刺激が行かなくなり、認知症のリスクが高まると考えられます。

 歯を失ってしまっても、入れ歯などの治療を行うことで、歯と同様の働きが期待されます。但し、よく噛めない入れ歯だった場合、脳にうまく刺激が伝わらない為、正しく噛める入れ歯を入れること、すり減ったり壊れたりして合っていない入れ歯は調整・修理して噛めるようにすることが大事です。

 「あんしん!お口フェア」は2007年より若松歯科医師会が独自に始めた、お口の健康を推進する催しです。今年は11月11日(土)14:00~16:30。若松中央市民センターで開催します。(入場無料)
 今年の注目は、九州歯科大学の専門医による無料口腔がん検診です。もちろん健口相談、歯磨き指導、口臭検査、無料フッ素塗布など恒例のコーナーもあります。この機会に是非ご自身のお口のチェックをなさってください。来場された方にはプレゼントもご用意しています。ご来場お待ちしております。

                             若松歯科医師会広報委員会

8月号 「噛み合わせは脳を活性化する」

 歯の働きは食物を噛み砕く咀嚼機能だけではありません。物を噛む行為は、それと同時に「脳を刺激する」という事が分かっています。歯と歯を噛み合わせた時の刺激は、歯の根っこにある歯根膜から脳に伝わります。そして、その刺激は脳における感覚や運動、また記憶や思考、意欲を司っている部位を活性化します。

 東北大学が70歳以上の高齢者を対象に行った、歯の残存数と認知症との関連性を調べた研究によると、健康と判定された人では平均14.9本の歯が残っていたのに対し、認知症の疑いがあると診断された人では平均9.4本しか残っていませんでした。また、残っている歯が少ないほど、記憶や学習能力に関わる海馬や、意志や思考の機能を司る前頭葉の容積などが少なくなっていた事が、画像の診断から分かりました。この結果から、自分の歯の3分の2が無くなると、脳が刺激されなくなって、脳の働きに影響を与え、認知症のリスクが高まるという事が判明したのです。平成元年より、80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという「8020運動」が推奨されていますが、この「20本以上」というのがまさに自分の歯の「3分の2以上」となるわけです。

 歯を失う主な要因の約90%は虫歯と歯周病です。お口の健康を維持するためには、これらを予防する必要があります。そのためにも、定期的に歯科医院を受診し、メインテナンスをすること、家庭においては食後や就寝前の歯磨きを習慣づけ、噛み応えのある食事を心がけて脳に刺激を与え、認知症を予防しましょう。 

                             若松歯科医師会広報委員会 

6月号

認知症と歯科


 総務省の調査では、
2010年で日本の人口が12806万人。それ以来少子化などの影響もあって年々人口は減ってきているとのことです。一方で年々増え続けているのが高齢化率です。高齢化率とは総人口に対する65歳以上の方の割合のことなのですが、2025年には人口が12066万人に対し、高齢化率が30.3%に達することが予想され、この割合は今後も増え続けるものと考えられています。

 では、身近なところで私たちが生活している若松区ではどうでしょうか。2017331日現在で、総人口83987人です。これに対して65歳以上の方の人口が25839人。実に高齢化率がおよそ30.8%となっています。同じ区内でも地域差はありますが、若松区も確実に社会の高齢化が進んでいるのがわかります。社会の高齢化が進むのに伴い、増えていくと思われるのが、ここ数年よく耳にするようになった認知症です。
 認知症とは、色々な原因で脳の細胞が死んでしまったり働きが悪くなったりしたために様々な障害が起こり、生活するうえで支障が出てきている状態の事を言います。単に物忘れがあったりする場合は含まれません。脳は人間の活動のほとんどをコントロールしているので、そこがうまく機能しなくなると、肉体的にも精神的にもうまくいかなくなるのです。2012年の調査では、高齢者の実に7人に1人が認知症と言われています。
 また、2025年にはその数は約700万人に達すると予想されており、5人に1人の割合となるそうです。約30年前には今ほど認知症は社会に広く認識されていなかったと思われますし、認知症患者が増加するとは予想していなかったのです。
 いまや世界でもまれに見る超高齢社会に突入している日本において様々な問題があるなか、この認知症に対する対策が進められています。2015年に策定された「認知症試作推進総合戦略(新オレンジプラン)」です。詳しくは、厚生労働省ホームページをご覧ください。認知症の人の意思が尊重され、出来る限り住み慣れた地域のよりよい環境で自分らしく暮らし続ける事が出来る社会を目指すといったものです。
 こうした取り組みがなされるなか、一見関係なさそうに見える歯科ですが、お口のケアは認知症予防に効果的と言われており、認知症が発症してからも重要な役割を担っています。認知症になると、お口の中に徐々に変化が出てきます。これまで出来ていたことが出来なくなってきます、例えば歯みがきなどがそうです。しているつもりでも実際には、以前のようには磨けず汚れを残してしまうようになります。汚れが残ると、虫歯や歯周病のリスクも上がります。認知症が重度になる前に予防することが大事です。そして重度の認知症となると、お口の汚れが原因で誤嚥性肺炎を起こす可能性まで出てきます。次回(8月)は認知症と歯科とのかかわりや取り組みについてご紹介いたします。

                       若松歯科医師会広報委員会 

          
2月号 現状維持で大丈夫ですか?
   
昨年6月から3回にわたり、健康寿命・オーラルフレイル・食育等に関して掲載してまいりました。
世の中には様々な方がいらっしゃいます。普段から何気なくしている事が、結果的に健康寿命を延ばすことにつながっていたり、普段の食事が効率よく食育につながっていたり。そういう方は何の問題もなくこのまま継続されれば良いと思われます。それとは逆に、そうでない方もいらっしゃいます。例えば、たくさん虫歯があり、そのまま放置されている方。気が付かないうちに歯周病が進行して、気が付いたら歯がグラグラの方。抜けた歯を放置していたら、歯と歯の間にどんどん隙間が開いてきたと感じる方。他にも様々な不具合に見舞われていることにお心当たりのある方はございませんか?

そういったことが気にならない方もいらっしゃいますが、どうにかしたいと思っていても、様々な事情により行動に移せていない方もあるのではないでしょうか。ただ思っているだけでは解決しません。少し勇気を出してチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 若松歯科医師会では「生きる力を支える生活の医療」をテーマに掲げ、様々な活動をしています。昨年11月には若松市民会館にて「あんしんお口フェア」も開催しました。昨年で10回目に当たります。ホームページも日々更新しており、若松環境衛生だよりのバックナンバーも掲載しております。是非ご活用下さい。
                         
 若松歯科医師会広報委員会