若松環境衛生だより 平成28年 2016年

11月号 「子供と食生活
   
 厳しかった夏の猛暑も通り過ぎ、だんだん肌寒くなってきた今日この頃、鍋料理の美味しい季節がやってきました。鍋には季節の野菜や、魚や肉といった、豊富な食材を一度に食べることができるという魅力があります。また、みんなで仲良く鍋を囲んで食べる楽しみもあります。子供のいる家庭では、家族で食卓を囲むことで、子供が食事の楽しさを感じる事ができるでしょう。子供の食生活を考える上で、鍋料理は好適な食事のひとつかもしれません。

一昔前と比べて、忙しい現代では子供たちの食習慣にしわ寄せが来ているようです。習い事や塾通いなどライフスタイルの多様化で家族そろっての食事ができず、子供だけで食事を済ませたり、ファストフードばかり食べることによって栄養の偏りが生じたり、極端な偏食による肥満や、糖尿病、味覚障害などの生活習慣病まで見られるようになったと言われています。これでは、成長期の子供たちの心と体の発育に良い状態とは言えず、健康に育つ食生活とは考えられません。

食生活により生活習慣が身につくことが多いと思われます。まずは、規則正しい生活リズムで、3食きちんと食事をとってみてはいかがでしょうか。

 子供に良い食習慣を身につけさせ、お口全体の健全な発育を促すことで、子供が心身両面で健全に成長するように導く。それは大人の責任と言えるのではないでしょうか。

 今年も11月に若松歯科医師会と他団体による「あんしん!お口フェア」が開催されます。健口相談、無料フッ化物塗布、よい歯の高齢者・学校表彰式、食育コーナー、講演会など様々な催しが用意されています。今年でフェアも10年目を迎えます。ご家族おそろいで是非ご来場下さい。

                      若松歯科医師会広報委員会


8月号 「オーラルフレイル」ってご存知ですか?
   
 日本歯科医師会が
8020運動に加え昨年から提唱している言葉です。
「オーラルフレイル」とは、そのまま訳すと「歯・口の機能の虚弱」という意味で、とりわけ高齢期において、物を噛みにくくなったり、飲み込みにくくなったり、滑舌が悪くなったりする状態のことです。こうした状態になると、食環境の悪化から始まり筋肉の減少を経て、サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)や低栄養による生活状態の低下を招き、要介護状態となってしまう可能性があるといわれています。

 些細なことから、健康を維持するための必要な栄養素を摂取できなくなることが大きな原因と考えられています。その些細なこととは、さきイカやタクアンなどの硬めの食品を無意識に避けるようになってきたというようなことです。日常ではなかなか気が付きにくく、ご自身で現状を確認する必要があります。

では、このオーラルフレイルを予防するには、どうしたらいいのでしょうか?それには「食事」「運動」「社会性」この三つを維持することが大事といわれています。しっかり噛んで、バランスの取れた食事をすることで、健康な体を維持できます。また、食欲を維持するには適度な運動で体を動かす必要があるでしょう。そして家族や友人など、人との交流を通し、コミュニケーションを図ることで精神・心理的な面も安定が図れるのではないでしょうか。

歯科の観点からは、歯周病や虫歯、歯が抜けたときには速やかに治療をおこない、オーラルフレイルに陥ることなく、また治療が終わっても定期的な健診で歯・口の健康状態を保つかかりつけの歯科医院を見つけられてはいかがでしょうか。
「オーラルフレイル」を予防することで健康寿命の延伸につなげていきましょう。
         
                    若松歯科医師会広報委員会
 

6月号 「健康寿命を延ばそう!」
 
 日本は世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。
昨年の調査では、日本人の平均寿命は女性が86歳、男性が80歳となっています。
しかし、平均寿命と健康寿命の差が10年程度あるのです。
健康寿命とは自力で生活できる期間のことですから、実際には多くの方が70歳を過ぎた頃から日常生活に支障 を来す可能性が高く、場合によっては介護等が必要になっているということです。
この10年という期間を少し でも短くしたいとは誰もが願うことでしょう。そのためには病気になったり高齢者になってから慌てて対応し ようとしても無理があります。子供の頃から生涯を通じて健康であることが大切なのです。口は「命の入り口」とも言われ、生きていくのに必要な食べ物と水を取り込む重要な器官です。命の入り口が 不健康では、それに繋がる胃や腸に悪影響があるのは容易に想像がつくでしょう。

 しかし口には消化器官の入り口としての重要な役割だけでなく、様々な働きがあり、口の健康は全身の健康に 大きく繋がっています。生涯健康でいるために、幼少期から口を健康に保つ意識を持ちましょう。

 では生涯の各ステージでどういう注意が必要となるでしょうか?
お母さんの胎内では無菌である赤ちゃんの口の中にも生後まもなく菌が定着し始め乳歯が生えると、むし歯になる可能性が出てきます。幼児期は食事のとり方や歯磨きの仕方など生涯にわたる基本的な生活習慣を身につ ける最初の段階です。学童期になると永久歯が生え始め、食事も大人と同じに、生活も複雑になってきます。 むし歯はもちろん初期の歯周病である歯肉炎にも注意が必要です。青年期は受験や部活、一人暮らしなどで親 の目も届きにくくなり、自己管理ができるようになっているかどうかがその後を左右します。成人期は不規則 な生活習慣や食生活の乱れ、喫煙やストレスなどにより、むし歯や歯周病などで大きなダメージを抱える人と 口のケアをきちんと続けてきた人の差が開く時期です。高齢期は残っている歯の数に個人差が大きくなります 。

 8020運動で提唱される「20本以上の歯」を残している人は60歳で8割、80歳で4割であり、多くの歯を残して いる人ほど健康である確率が高いと言われています。

 生涯にわたって病気を予防し健康でいるためには生活習慣がきちんとしていることが肝心です。口も身体の一部ですから全身が健康であるのが基本ですが、口に注目して考えた場合、大きな影響があるのは食習慣と歯磨きの習慣でしょう。バランスの取れた内容の良い食事を良く噛んで楽しく食べる、甘いものや間食はなるべ く避けるなど規則正しい食習慣を持ちましょう。歯磨きは食べるたびに行うのが理想ですが、回数よりきちんと歯垢が落とせたかどう かが問題です。自分ではできているつもりでも実際は難しいものです。

 病気を予防し生涯健康でいるために積極的に歯科医院を活用してみてはいかがでしょうか。
                   
                     若松歯科医師会広報委員会

2月号 「噛むと立つ」
 
 今年度は「よく噛むこと」の効用についてお話してきました。最近はテレビや新聞、雑誌などでも噛むことが健康に良いという話題が取り上げられるのを見かけます。一般の方々に知識として広まってきたのは喜ばしいことです。

 日本は世界有数の長寿国となりましたが、その反面、平均寿命と健康寿命の差が10年もあるのも事実です。今後は健康寿命を伸ばしていくのが大きな課題ですが、自力で生活ができるためにはまず自力で立ち、自力で食べることができなければなりません。

 寝たきりになっていた高齢者が良く合った入れ歯を入れたら立って歩けるようになったとか、ずっと黙り込んでいたのに会話ができるようになったとかいう話をしばしば聞きますが、しっかり噛めることが、身体の姿勢を正し、筋力を発揮させ、脳を活性化し、自力で立つことや意識をしっかり保つことに関連していることの証と言えるでしょう。

 高齢者が寝たきりになったり、死亡してしまう原因の一つは転倒ですが、これも自力でしっかり立ち、歩くことができれば予防できます。それにはしっかり噛めるお口であることは必要です。たとえ自分の歯が少なくなっても治療したり入れ歯を入れることで噛めるようになれば良いのです。そのためにも若い時、健康な時期から「噛む」こと、美味しく食べることを心がけておくことが大切です。

 若松歯科医師会では「生きる力を支える生活医療」である歯科医療の担い手としての責務を果たすため、さまざまな活動をしていますが、ホームページでも地域の皆様に役立つ情報を日々提供し、過去数年分の若松環境衛生だよりの歯科関係記事も掲載しています。是非ご活用ください。

                    若松歯科医師会広報委員会