若松衛生だより 平成27年 2015年

11月号 「噛んで脳トレ」
   寿命が伸びるのに伴って日本では世界的にも前例の無い超高齢社会が訪れています。いまや65歳以上の約4人に1人が認知症とその予備軍といわれるまでになりました。認知症は治療が難しいので予防が大変重要になります。

 よく噛むことの効用のひとつに脳の活性化がありますが、これは噛むことの刺激によって脳の記憶や学習能力、意志や運動に関係する部分が活性化されることによるものです。

 残った歯が少ない人ほど、脳の容積が小さくなってしまっていることや、認知症の疑いがある人の割合が高くなっていることが分かっています。また歯が無かったり、入れ歯も入れてない人の認知症のリスクは20本以上の歯を残している人の2倍近いとも言われています。

 このようにちゃんと噛める自分の歯を多く残すことが大切なのですが、たとえ歯が少なくなってもきちんと歯の治療をしたり、良く合った入れ歯を入れたりすることによっても、脳を活性化できると言われています。要するに「自分の口でよく噛んで食べることができる」ということがとても大切なのです。

 若松歯科医師会では毎年恒例の「あんしん!お口フェア」を118()10時から若松中央市民センターで開催します。ブラッシング指導や無料フッ化物塗布、65歳以上の方を対象とした歯の健康相談、脳の健康に良いメニューの試食、よい歯の学校や高齢者の表彰式など恒例のコーナーに加え、今年は九州歯科大学准教授の吉野賢一先生による「食べて脳トレ~あんしんお口は認知症を予防する」という講演も行います。是非この機会に老若男女を問わずご家族おそろいでご来場ください。来場者プレゼントもあります。

                    若松歯科医師会広報委員会

8月号 30回の効用とは」
   
6月号でお話した、一口
30回噛むことを推奨する「噛ミング30」運動ですが、
30回噛むと何が良いのでしょうか。

まず食べ物が良くこなれて、消化吸収されやすくなります。また、良く噛むことで食べ物の味が分り、薄味でもおいしいと感じられるようになりますし、味付けに使う塩分や糖分も控えめにできます。また、時間がかかるので、満腹中枢が働き、少ない量で満腹感が得られますから、成人病や肥満の予防、ダイエットにも有効です。そして、食べ物が小さくなり、唾液とよく混ざることで、高齢者に多い誤嚥や窒息のリスクも減らせます。そして唾液の持つ殺菌作用や発がん性物質の抑制作用も唾液とよく混ざることでより発揮されます。

 こんなにもメリットの多い、一口30回噛みを実践しない手はないですね。しかし、多忙でストレスの多い現代人は、そんなに時間なんてかけられない、実践はとても無理、という声も聞こえてきます。

 そこで、いくつかの実践に役立つ方法をお話ししましょう。
まず、一度にお口に入れる食べ物の量を少なめにします。お茶や飲み物による流し込み食べを防ぐため、おかずとしての汁物や適量のお酒以外は食卓に出さないこと。テレビなどをつけっぱなしにして気を取られ、何を、どれだけ食べたかも分らないような状態は避け、食べ物に集中し、良く噛み、味わい、感謝して食べる。そして、何より大切にしたいのは、食事を楽しむということです。

「あなたはあなたの食べたもので出来ている」という言葉があります。
できるだけ安全で質の良い食べ物を、正しく調理して、笑顔で食卓を囲み、一口一口しっかり良く噛んで食べたいものですね。

                        若松歯科医師会広報委員会


6月号 「8020から噛ミング30へ
   
 8020
運動をご存知ですか?厚生省(現厚労省)と日本歯科医師会が提唱した80歳になっても20本の歯を残そうという運動です。人には親しらずを除くと28本の永久歯があるのですが、20本の歯があれば食事に不自由はないということから提唱されました。事実、統計によると20本以上の歯を持つ80歳以上の高齢者では寝たきりや有病率も低く、医療費も少ないという結果が出ています。日本では平均寿命は世界一になりましたが、健康寿命との差は約10年(男性9年、女性12年)あります。せっかく世界有数の長寿を誇っても、終の10年間が寝たきりや不健康であり、自分が不自由なだけでなく周囲の人々の手を借りなければならないとしたらこんな悲しいことはありませんし、誰ひとりとして望まない晩年でしょう。

80歳で20本の歯と言っても、20本あれば良いという単なる数字の問題ではありません。虫歯で痛んだり歯周病でふらふらしていたりというものではなく、しっかり噛める健康な歯でなければ意味がありません。しかし20本より少ない歯しか残っていない場合や歯がすっかり無くなってしまった人は希望が無いのかというとそうではありません。治療をして噛めるようにしたり、入れ歯を入れたりすれば、自分の歯と同等とまでは行かなくても十分間に合います。要は、自分の口で食べ物をしっかり良く噛んで飲み込むことができるということが大事なのです。これは人間だけではなく、全ての生き物共通の問題であり、自分の歯で食べ物を噛めなくなった生き物は間もなく寿命も尽きてしまうでしょう。もちろん人間は文明のおかげで調理をしたり、加工したり、医療のお世話になったりして歯を失っても、生きながらえることはできますが、そんな時には満足な状態とは言えないことになっていると思われます。

 では、なぜ噛むことが健康につながるのでしょうか。健康寿命を延ばすのに大事なポイントとして、ストレスの無い生活、快適な食生活、適度な運動が上げられますが、このどれにも歯が密接に関わっています。歳を経るほどに暮らしの大きな割合を占めるようになる食生活に、歯が関わるのは当然ですが、歯や入れ歯が痛いとか噛めない、よく喋れないということ自体が大きなストレスですし、力を入れて噛みしめられることは運動機能の向上に役立つことも知られています。

 そこで、自分の口でしっかり噛むことの実践の一つとして、一口30回噛むことを心がけてはいかがでしょう。目標数値を大幅に早く達成した8020運動に続いて厚労省が提唱するのが「噛ミング30(サンマル)」運動で、これは年々噛む回数が減っている現状を憂慮し、良く噛むことが健康につながるという事実を訴えるものです。昔から良く噛むことを提唱したフレッチャー氏や昇地三郎氏が実践して効果を上げている方法です。良くケアをしたお口で、一口30回良く噛んで食べる。今日から実践してみてはいかが?

 

                         若松歯科医師会広報委員会

2月号 「子供から高齢者まで
   
昨年6月号から3回にわたって噛むことの大切さを考えてきました。

和食が健康食である理由の一つは良く噛む食事であるということもお話しましたが
噛むことはあらゆる年代の人にとって大変重要なことなのです。

成長期の子供にとっては、味覚や発音、噛む筋肉や歯並びの正常な発達を促し、働き盛りの成人にとっては肥満や糖尿病、がんなど病気予防に働き、高齢者にとっては、認知症予防や健康寿命を延ばすことに役立ちます。もちろんこれらはすべて、胃腸や脳の働きを助け、全身の体力向上に役立つことを含めあらゆる年代に共通して言えることです。

良く噛んで唾液をたくさん出すことは虫歯や歯周病の予防になりますが、今、日本人の死因の大きな要因とされる糖尿病でも、歯周病はその合併症として注目されています。

日本人の場合、やや肥満体格で糖尿病があり重度の歯周病の方が歯周病治療をすると糖尿病の改善効果があると言われています。糖尿病予備軍、歯周病世代の働き盛りには特に注意が必要です。

 高齢者では、歯が20本以上ある方と歯の少ない方では、健康寿命に大きな差があることが分っており、それが8020運動の基礎となっています。また、寝たきりになっていた歯の無い高齢者の方が、入れ歯を入れて自分で噛めて口から栄養を取れるようになったら、また歩けるようになったという例も幾つも報告されていますし、そこまで行かなくても健康状態が改善することは今では当然のことと認識されています。 

 このように、あらゆる世代の人にとって、良く噛むこと、お口の健康を保つことが如何に全身の健康に役立つかが分ってきています。あなたのお口は健康ですか?

 

                       若松歯科医師会広報委員会