若松衛生だより 平成26年 2014年

11月号 「今日からやってみませんか?
   
世界無形文化遺産に登録された和食が健康食である理由の一つに良く噛む食事であることが考えられますが、なぜ噛むことが健康に良いのかご存知でしょうか?

まずよく噛むと唾液が沢山出るので、虫歯や歯周病、口臭を防ぎ、味覚が発達します。唾液中の成分には殺菌や抗癌作用があり、良く噛むほど危険性も低下します。次に、口の周りの筋肉が良く働くことで脳への血流が増加し、呆けを防ぎ記憶力がアップ、言葉の発音がはっきりし、顎回りがすっきりして小顔効果も。また、よく噛むと時間がかかるので脳にある満腹中枢が働きだし、食べ過ぎを防止します。そして胃腸への負担も軽減します。

 このように良く噛むことのメリットは計り知れないのですが、現代人は噛む回数が卑弥呼の時代と比べると1/6、戦前と比べても半分以下になっていると言われています。もちろん食べ物自体の変化もあるし、生活様式の違いも大きいので一概には比較できませんが、この違いは見過ごせません。だからと言って、あまり噛まなくても食べられる食べ物が大きな割合を占めている現代で、急に昔の和食の様に良く噛まなければ呑み込めないような食材で食事を作るのは困難です。ですから、今のままでも噛む回数を増やす工夫をするのはいかがでしょう。

まずは軟食と並んで噛む回数を減らす要因となっている、お茶等での「流し込み食べ」をしないために食事と同時に飲み物を出さない。野菜や肉などの食材は大きく切り、加熱も控えめにして、歯ごたえを残す。味付けを薄味にして良く噛んだ方が美味しく味わえるようにする。ひと口30回噛みを心がけるなど、今日からでも実践できますよ。

                       若松歯科医師会広報委員会

   
8月号  「よく噛んでいますか?」

6月号でも触れたように和食が健康食として世界的に注目されるのは何故でしょう。
ごはんを主食として一汁三菜のおかずを添えるのが和食の基本形ですが、ごはんは淡泊な味なのでどんなおかずとも相性が良く、炭水化物を主成分としてタンパク質やビタミン・ミネラルも多く含むバランスの良い食べ物です。ごはんは太ると思っている人も多いと思いますが、ごはんは粒状ですからよく噛まないと食べられませんし、ゆっくりと吸収されるのでパンや麺類などに比べて太りにくいのです。おかずには煮たり焼いたりした魚、根菜や葉野菜のおひたしや煮物、大豆等の豆類、海藻の酢の物など、それぞれの季節の旬のものを使う。汁物も大豆から作った味噌で味付けした味噌汁などで具は魚や肉や野菜、
キノコ類まで幅広く何でも合う。栄養のバランスから言ってもとても理にかなって
います。そして調理法は食材そのものの味を生かすことを主眼としており、栄養も壊れにくく、油脂もあまり使わない。
つまり米を主食とし、タンパク質は主に大豆や魚から摂り、野菜など植物性のものが多く、低脂肪、低カロリーというのが和食の特徴です。このように栄養の面から見ても優れた和食ですが、もう一つ大事なことが。それは主食の米も、おかずの野菜類も、魚にしても小魚を丸ごと食べるなら、どれもがよく噛んで食べないとならないということです。脳の活性化やお口の病気予防、ダイエット効果、胃腸の働きを助けるなど噛むことの効用は言うまでもありません。和食はよく噛む食事であることが健康食である大きな理由の一つではないでしょうか。みなさんはよく噛んで食べていますか?
                    若松歯科医師会広報委員会
6月号

「食卓を見直してみませんか?」

昨年12月にユネスコ無形文化遺産に和食が登録されましたね。大変喜ばしいと思う一方で現在の食卓の風景を考えるとかなりの不安も感じざるを得ません。登録された和食がどのような特徴を持つものとして想定されているかというと、以下の4項目です。①多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重。②栄養バランスに優れた健康的な食生活。③自然の美しさや季節の移ろいの表現。④年中行事との密接な関わり。それぞれを説明すると、日本の国土が南北に長く、海、山、里と異なる自然環境に恵まれており、各地域に根差した多様な食材とそれを生かす調理法が発達していること。一汁三菜を基本とした和食は栄養バランスが理想的であり、うま味を生かすことで動物性油脂摂取の少ない食生活となり、日本人の長寿、肥満防止に役立っている。食事の場で飾る花や葉、調度や器にも季節に合ったものを使うことで季節感を楽しむ。正月などの年中行事と密接な関わりを持って育まれてきた。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで家族や地域の絆を深めてきた。

 確かに、言われていることはもっともだと頷けますが、果たしてここにイメージされている和食がどれほどの家庭で食されているでしょうか。過去十数年にわたって何百世帯もの食卓を調査してきたあるデータによるとパンや麺類、お好み焼きやピザなどの粉食が増加するにつれて米食が減り、洋食・中華・エスニックなどの海外食の普及によって、和洋混在した食事になっており、型式的にもカレーライスや丼物など夕食にも一皿型のものが増えているのです。煮魚やおひたしや酢の物、出汁を使った煮物などを味噌汁とごはんとともに食べるという定番的な献立を一汁三菜とするなら殆ど見られなくなっていると指摘されています。世界的な和食ブームの中、今や伝統的な「和食」が食べられているのは限られた料理店でのことなのでしょうか。

では、この和食離れはいつ頃から、どのように始まったのでしょう。実は1950年代から官民挙げて洋食を推進した経緯があります。また60年代からはインスタント食品が台頭し始めます。学校給食はパンにミルクでしたから、それに馴染んだ世代の家庭では和食を食べる機会も減ってきます。それだけではなく、家族の食事時間が一致しない個食傾向と食事作りの簡素化という流れがあります。いわゆる一汁三菜型の食事は自然と敬遠されるようになってきたのです。 もちろん、伝統的な和食だけが健康的なのだとは言えませんし、時代の流れによる趣向や生活環境の変化に伴い、食事の形も変わっていくのは当然です。しかし、成人病患者や医療費の増加などを考えても現在の食生活が理想的だとは思えません。「生きる力を支える生活の医療としての歯科医療」の担い手として若松歯科医師会は「和食」の無形文化遺産登録を契機に現代の「食」の問題にも取り組んでいきたいと考えています。

若松歯科医師会 広報委員会

2月号 全身の健康につながるお口の健康

 

お口の健康と全身の健康が密接に関係している事は、衛生だよりを通じてお伝えしてきました。今回は具体的な例をあげて説明したいと思います。

 口腔ケア(口腔清掃を中心とするお口まわりのお手入れ)と肺炎の関係について、老人ホームの入居者の肺炎の発症率を比較した研究によると、2年間の肺炎発症率は口腔ケアを行わなかった場合に34人が発症し19%であったのに対して、行った場合では21人しか発症せず11%にとどまりました。口腔ケアが誤嚥性肺炎の防止に効果があることを示しています。誤嚥性肺炎とは、細菌が唾液や胃液といっしょに肺に流れ込んで生じる肺炎です。嚥下(呑み込み)の機能が衰えてくる高齢者に多く発症し、再発を繰り返す特徴があります。再発を繰り返すと薬が効かない耐性菌が発生して抗生物質治療の効果が上がらなくなるため、優れた抗生物質が開発された現在でも、多くの高齢者が死亡する原因になっています。 

 
また、残っている歯の本数と寿命についても多くの調査がされていますが、歯が20本以上残っている高齢者の方が元気で長生きだった事が多くの報告で示されています。そしてその事実が8020運動にもつながっています。

 
では、どうしたらお口の健康を保てるのでしょうか?答えは虫歯や歯周病を放置せず、しっかり治療した上でメンテナンスを行うことです。病気の治療だけでなく、全身の健康を守るために歯科医院を上手に活用してください。若松歯科医師会では、健診や講演、あんしんお口フェアなど様々な活動を通して地域の皆さんのお口の健康を守れるよう努めています。ご不明な事がございましたら、お気軽にご相談ください。 


若松歯科医師会 広報委員会