若松衛生だより 平成24年 2012年

 

11月号 成人期を健康に過ごし、老年期を豊かに迎えるために
老年期を豊かに迎えるためにはどうしたら良いのでしょうか?
歯を失う主な原因は、むし歯と歯周病です。幼少期は歯周病になることはありません。
しかし、思春期から成人期に入る頃から歯周病に対するケアがより必要になってきます。
歯周病は、口の中の細菌が原因で起こる病気で、噛み合わせや歯並びもその進行に関係しています。また、あまり自覚症状を感じることなく進んでいくため、咬めない、痛い、歯茎が腫れた等の症状が出た時には、歯周病が進行していることが多いのです。進行してしまった歯周病は、その進行を止めることは可能ですが、元通りの状態に戻すことは困難です。そのため、何か症状が出てから歯科医院に行くのではなく、健康な時期から歯科医院との関わりを持ち続けることが重要になってきます。
老年期に美味しく食事ができるということは、人生を豊かに過ごすために大変重要なことです。健康寿命という言葉をご存知でしょうか?それは、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間のことを言います。人生を豊かに過ごすことができる寿命と言えるかもしれません。
老年期を豊かに過ごし、健康寿命を今後もさらに伸ばしていくためには、成人期からのケアが必要になります。成人期は仕事や子育てなどで、多忙な時期です。しかし、痛みなどの症状が出てからではなく、成人期の元気な時期から健康を維持していくことが、豊かな老年期を迎えることにつながります。健康で快適な生活を送るためのご相談は、かかりつけ歯科医または若松歯科医師会にお気軽にどうぞ。

                  若松歯科医師会 広報委員会  
8月号 歯の健康はお母さんのおなかの中から」
赤ちゃんの歯はいつ頃から作られているかご存知ですか?
妊娠7週頃から乳歯の芽(歯胚)が出来始め、10週までにほとんどの乳歯が発生し、14週には永久歯の芽も作られ始めます。
 また、おなかの中の赤ちゃんは、羊水を通して味覚を形成することも知られています。このため、赤ちゃんの歯の健康は妊娠中の母体の健康や栄養状態に大きく影響を受けると言われています。
 また、出生後初めて口にする母乳には、赤ちゃんを病気から守るための免疫成分や、多くの栄養素がバランスよく含まれ、成長に欠かせません。

 乳歯が生え始める生後6ヶ月頃からの離乳期は、自分で食べる力を養うための準備期間となります。この時期に色々な固さや味を覚えることで、しっかり噛む力や飲み込む力が身につきます。     
 そして2歳頃には乳歯が全て生え揃い、ほとんどの食事が出来るようになります。この時期の食生活が大切で、乳歯の健康が将来の食生活を左右するとも言われています。小さい頃にいろいろな食感のものを食べて、さまざまな刺激を味わうことで、舌の感覚が敏感となり、脳に刺激が加わり活性化され、感性も豊かになる事が分かっています。また、味の好みが出来上がるこの時期に、甘味や濃い味付けに慣れ過ぎると、糖質や脂質、塩分の摂り過ぎに繋がり、肥満の原因や将来の成人病の要因となる上に、正常な味覚や脳の発達を損ねる可能性があると言われています。
 歯の健康は、胎内から始まり、離乳期や幼児期の適切な食生活やホームケアが、将来の歯の健康に繋がります。食育に関するご相談は、かかりつけ歯科医または若松歯科医師会にお気軽にどうぞ。
6月号 「しっかり噛んで美味しく食べて、健康長寿を目指しましょう!
平成23年8月に歯科医療界の永年の悲願であり、10年来の懸案であった「歯科口腔保健法」が、ついに成立しました。この法案は、国民の質の高い生活には口腔の健康保持が重要であるとして、歯科疾患の予防など口腔の健康保持に関する施策を総合的に推進するためのものです。

 実は、よく噛んで食べることが健康長寿につながるということは、歯科界ではずいぶん以前から常識でした。ようやく最近、小学生の教科書に載ったり、「NHKためしてガッテン」などの健康情報番組で取り挙げられる機会が増えたりしているおかげで、徐々に国民全体にも浸透してきたようです。

 例えば、母乳で育て、正しい時期に正しい方法で断乳を行い、虫歯を作らずにしっかり噛む癖をつけて育った子供は、そうでない子に比べて心身の発育が良好であることが統計からわかっています。また、私たち日本人が太古の昔から食べてきた伝統的な日本食(固く、薄味で、時間をかけてしっかり噛まなければ味わえず呑み込めないような食事)を日常的に摂って育った子供たちは心身の発達もよく、思春期になった時にきれいな歯並び、口元、笑顔を手に入れ、豊かな情感と豊かな味覚を獲得しています。私たちは、私たちの先祖が脈々と食べ続け、受け継いできた伝統的な食文化を次世代に引き継ぐことも歯科医師の重要な役目であると考えています。

 そのようにして、しっかり噛んで成人した大人は、虫歯や歯周病にかかることが少なく歯を失うことも無く、したがって歯並びもよく、良い噛み合わせで心身ともに充実して社会で活躍することができます。ただし、この時期は公私ともに多忙なため、ともすれば口腔ケアが疎かになりがちですので、日々のセルフケアに加えて歯科医院での定期的なプロケアが必要です。せっかく築き上げ守ってきた健康な口腔環境を、ここで台無しにしては勿体ないし、そうなると健康長寿の達成も難しくなります。

 現代が、「超高齢化社会」と言われるようになって久しくなります。高齢者でも自分の歯がたくさん残って噛めている方や、自分の歯は少なくても合った入れ歯を入れてしっかり噛めている方たちは、そうでない人たちに比べて健康長寿を達成する率が高いことが科学的に証明されています。また、万一介護が必要な状態になったとしても、できる限り背中を起こした姿勢で自分の口から水分や食べ物を採る努力を続けることで、全身状態が飛躍的に改善される例がたくさん報告されています。これは有名な例ですが、口腔内の状態が良い人は悪い人に比較して、年間にかかる医療費が(歯科医療費はもちろんですが医科の医療費のほうがはるかに大幅に)数万円から数十万円も安くなると言う報告も全国各地の歯科医師会の調査でわかってきました。そのようなことを踏まえ、若松歯科医師会では今後とも地域の皆様に様々な情報を発信し、共に健康長寿を目指していきたいと考えています。

2月号 むし歯ゼロを目指しましょう!

 もうすぐ子供の健やかな成長を願うひな祭りですね。歯磨きをがんばって
いるけど、どうして虫歯ができるのか不思議に思われる方もおられるでしょう。

 むし歯は、歯磨きだけではなく、いくつかの原因があっておこる病気です。
むし歯を予防するためには、むし歯が何故できるのかを知る必要があります。むし歯は、ミュータンス菌(以下
SM菌)が砂糖や炭水化物を餌にして酸を出し、その酸が歯を溶かすことにより始まります。これを脱灰と言います。食事をすると歯は一度溶けますが(脱灰)、唾液の力によって再び固まります(再石灰化)。このバランスが崩れ、溶ける方(脱灰)に傾いた時、むし歯になります。

 具体的には、
  1、むし歯のきっかけになる
SM菌の量。
  2、むし歯を進める菌であるラクトバシラス菌の量。
  3、食事の内容、回数。
  4、唾液の量。
  5、唾液の再石灰化する力。
  6、歯磨き。
  7、フッ素の使用状況
 の7項目により決定されます。

 今回は、むし歯の原因となるSM菌に注目してお話をします。SM菌は、産まれたての新生児には全く存在しません。乳歯は生後6ヶ月ぐらいから生え始めます。SM
は、周りの人とスプーンや箸を共有することなどで感染します。乳歯が生えそろう
3歳ぐらいまでが感染の期間とされ、それ以降はSM菌の量は増減しにくいとされて
います。

 むし歯は早い時期から、ちょっとしたことに気をつけるとなりにくくすることができる病気です。むし歯の無い大人の歯に生え変わるために、小さい頃から気軽に歯科医院でチェックを受けてみてはいかがでしょうか。1歳半、3歳児健診が北九州市の委託事業として行われていますので、十分ご活用ください。
      
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若松歯科医師会広報委員会