若松衛生だより 平成22年 2010年


 ●11月号 「口は命の入り口」
  
   人は生きていくのに必要な水と食べ物を全て口から取り込みます。 
 ですから口は命の入り口。入り口の健康はもちろん大切ですから虫歯や歯周病のケアを
 心がけておられる方も多いでしょう。しかし、そこから取り込む食べ物の健康については
  どのくらい関心を持ち、注意を払っているでしょうか。味や安さ、便利さに目を奪われ、
 栄養、安全性、量などもっと本質的なことを忘れているのではないでしょうか。
 グルメ、食育、食糧危機など、食に関する様々な話題が氾濫する現代社会を生き抜く
 ためには、情報の波に飲み込まれず、何が最も必要なことかを見抜く力を持たねば
 なりません。ちょうど原始時代、人々が獲物を狩る力を持たねば生きていけなかった
 ように。
  若松歯科医師会では市民の皆さんに正しい歯科保健の知識を持って頂くために
 毎年秋に「いいないい歯週間」の催しを行ってきましたが、今年は福岡県歯科医師会など
 多くの他団体とともに、10月31日、北九州学術研究都市で「生涯を通じた歯科保健大会」
 を開催します。司会はアナウンサーの岡裕子さん、西日本新聞編集委員の佐藤弘さんの
 食育に関する講演と「命の入り口、心の出口」のブックレットプレゼント、福岡響ウインド
 オーケストラのコンサートに加え、恒例の健口相談やフッ化物塗布、口臭検査コーナー、
 来場者プレゼントなどなど、盛り沢山な内容で皆さんのご参加をお待ちしています。
 詳しくは若松歯科医師会のホームページを是非ご覧ください。

             http://www.alpha-net.ne.jp/users2/wakashi/

                 若松歯科医師会 広報委員会


 ●8月号 「虫歯・歯周病と食育」
  
  美味しさに夢中になって大好物を頬張りながら、こんな脂っこい、塩から い、甘すぎる 
 ものを沢山食べていては病気になってしまうかもと、ちょっ と不安になってしまうことは 
 誰にでもあると思います。飽食の時代に生き る私たちは、大人も子どもも不自然な食生活
 に慣れ、要不要、適不適を訴 える自分自身の体の声にも耳を貸さなくなってしまったかの
 ようです。高 血圧や糖尿病、心臓病や癌などと食物との関係は容易にイメージができる
 でしょう。生活習慣病と言われる身近で恐い病気にならないために、正し い食習慣を持つ
 ことは大変重要であると誰でも知っています。お口も体の 一部ですから、虫歯も歯周病も
 食習慣とは切っても切れない深い縁がある のは容易に想像がつくでしょう。甘いものを
 摂りすぎると虫歯になりやす いのは良く知られていることですが、歯周病は歯を支えている
 歯肉や骨の 病気ですから、全身の抵抗力が落ち、お口が汚れやすいような不自然な食生活を 
 していると影響は大きいのです。現在好まれる食べ物の多くは甘く、柔らかく、こってりして
 いるものです。それは当然、お口の衛生状態を悪化させ、抵抗力を落とすものに 他なりません。
  もちろん、歯をきちんと磨く習慣と歯垢を落としきれる技術を持つのは 前提ですが、同時に
 正しい食生活は忘れてはならない必須の条件なのです。
 命の入り口と言われるお口にとって食習慣改善の観点は絶対に欠かせま せん。
 
                若松歯科医師会 広報委員会


 ●6月号
 「子供から大人までみんなで食育を」

    

 
運動会で元気に駆け回る子供たちの姿は見ているこちらにまで明るい希望を持たせてくれます。
 子供たちの健全な成長・発育があってこそ家族や親族だけでなく地域、国の未来があると感じます。
 その大切な子供たちも生れた時は親の両手に収まるくらいの小さな体でした。それ以後に作られた
 今の立派な体格は彼らが取り込んできた食物が形を変えたものに他なりません。材料が良くなければ
 良い製品も美味しい料理もできないように、健全な食物でなければ健康な体は作 れないのではない
 でしょうか。そして健全な食物を噛み砕き消化できるようにするのは健康な歯と口があってこそ
 可能なのです。
  現在、子供たちを取り巻く環境の変化により様々な健康上の問題が出てきています。以前は大人の
 病気であった生活習慣病までもが子供たちの健康を脅かしているのです。そこには生物としての人間が
 生きる上で必要な「食」とはかけ離れた現代の「食」の問題が影を落としています。子供は大人が
 与えた食物を食べて成長しますから、大人も子供も自分たちの命の源である「食」について学習し、
 より良い食物を選ぶ力を養い、健康な生活を獲得できるよう、食育に取り組んで行く事が大切です。
  さて、歯科医の立場でお話しすると、虫歯や歯周病が第一に考えられます。どちらも生活習慣に
 大きく影響されますので、大人が良く考えた上で食物を与えるだけでなく、子供たち自身が自分たちで
 考え、食べ方や歯磨きの仕方などを自覚して決めていかなければ病気は防げません。例えば、砂糖の
 取りすぎは虫歯だけでなく、糖尿病や肥満のもとと解ってはいても、人は甘いも のが本能的に大好き
 ですから、ついつい手を出してしまうのです。一日の食事以外でのおやつとして 取る砂糖の量は
 スティックシュガー3本分(約24g)が限度と言われています。具体的にはメロンパンは4本、
 炭酸飲料は7本、スポーツドリンクは4本、カステラ1切れ3本、大福餅は3本、アイスクリーム1カップで
 3本に当たります。そこで、身近なおやつが砂糖何本分に当たるか、大人と子供が一緒に考えること
 により、子供が驚きや発見と共に自分で食べる量を制限したり、進んで歯を磨こうと思ったりするよう
 になっていきます。その気付きや積極的な姿勢が将来にわたって健全な食生活と健康な体を築いていく
 スタートになります。 
  さあ、今日から大人も子供もみんなで食育を! 
 また、役立つ情報がホームページでもご覧いただけます。


                若松歯科医師会 広報委員会 田中正一郎 

              若松歯科医師会http://www.alpha-net.ne.jp/users2/wakashi/



  

 ●2月号 「手足の皮膚疾患と歯科との関係 

    今回、歯科治療用金属及び歯科疾患と皮膚疾患の関係についてお話いたします。
 掌蹠膿疱症
の歯科領域での原因については、病巣感染あるいは金属アレルギーが指摘されています。
 病巣感染とは局所的な慢性炎症が原因で、遠隔皮膚に二次病変を形成することです。歯科領域に於ける
 原因は、歯周病、慢性歯髄炎、根尖病巣
(歯の根の尖端病巣)、などが挙げられます。他に、副鼻腔炎
 (
蓄膿症)や扁桃炎などが原因となります。歯科疾患が原因の場合は、歯科治療により比較的速やかに
 二次病変の治癒がなされることが多々あります。歯科では主に、
12%以上の金を含む、銀やパラジウムを
 主成分とした金合金を使用しております。種々の金属からなる合金のためアレルギーの原因となり、
 遠隔皮膚に掌蹠膿疱症や口腔粘膜に扁平帯癬という病変を
き起こすことがあります。この場合、
 パッチテストという検査を行い原因金属の同定を行います。そして先ず原因と考えられる金属をすべて
 口腔内より除去します。その後、それらを含まない材料で治療を行います。しかし、歯科治療に使用する
 接着剤やレジン
(歯科治療に使用するプラスティック)などにも金属が含まれていることがあります。
 それらを精査し除外することが必要です。場合によっては保険の範囲内での治療ができない場合も
 あります。治療期間も長く治癒困難な場合も見受けられます。
 
 終りに、遠隔皮膚に生じた病変の原因が口腔内の疾患にあるということはまだまだ一般に認知
 されておりませんが、我々にお手伝いできれば幸いと思います。 

     
      若松歯科医師会広報委員会 重田義光