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前の卦=06天水訟 次の卦=08水地比

07地水師 ちすいし

 

 坎下坤上(かんか こんじょう)

八卦の(かん)の上に(こん)を重ねた形。

(し)は、民衆の悩みを解決する戦争の指導者、という意であるとともに、衆兵が集まった軍事組織のことである。
また、二千五百人の部隊を師団というように、師には大勢=衆という意味もある。
この卦は、内卦の坎を悩みとし、外卦の坤を民衆とし従うとすれば、民衆の内に秘めた悩みの事に従う様子となる。
悩みの事に従うとは、武力行使も辞さないことすなわち戦争である。
戦争は為政者の欲望ではなく、このように民衆の悩みを解決する目的で行われるべきものである。
指導者=師はそのことを肝に銘じなければならない。
だから、師と名付けられた。
また、六五の君と九二の臣は陰陽よく応じているが、これは君が能ある臣に委ね任して、指導者=師とする様子である。
だから師と名付けられた。
また、上爻を先頭、初爻を最後尾とすれば、九二の一陽の指導者を他の五陰の衆兵が守りながら、正しく隊列を組んでいる様子である。
だから師と名付けられた。
また、坤を地として坎を水とすれば、水が地中に群がり集まること衆多な様子だが、師団という言葉があるように、師は衆多な集まりのことでもある。
だから師と名付けられた。
また、坎を謀略とし隠すとし、坤を平静とすれば、平静に装いつつ、内には謀略を隠している様子。
仲間同志で謀略を計るのはよくないが、戦時下で敵に対して謀略を計ることは、重要である。
だから師と名付けられた。

 

卦辞

師、貞、大人吉、无咎、

師は、貞(ただ)しかるべし、大人(たいじん)を用いれば吉(きち)、咎(とが)(な)し、

武力衝突は、例え勝ったとしても、こちらにも損害が出る。
多くの者が死ぬ。
だからこそ、安易に戦争を仕掛けてはいけない。
しかし、相手が話してわからないのであれば、止むを得ず戦わなければいけない場合もある。
状況を貞しく見極めて決断することが必要である。
だから、師は貞しかるべし、という。

そのためには、指揮官は有能であり人間的にも優れた者=大人でなければいけないし、
そういう人物を指揮官にすれば、衆兵も命を預けて必死に戦い、必ずや勝利を導く。
多くの戦死者を出したとしても、その遺族たちにもなんとか我慢してもらえる。
だから、大人を用いれば吉、咎无し、という。
ただし、あくまでも戦争に勝ってこそ、どうにか、咎められることはない、ということである。
勝ち目のない戦いは、大人を用いても凶であり、負けて大いに咎められるものである。

彖伝=原文と書き下しのみ

師、衆也、貞正也、

(し)は、衆(もろもろ)なると也(なり)、貞(ただ)しくしてとは正(ただ)しかるべしと也(なり)

能以衆正、可王矣、

(よ)く衆(もろもろ)を以(ひき)いて正(ただ)しくは、王(おう)たるを以(も)って可(すべ)し、

剛中而応、行険而順、

剛中(ごうちゅう)にして而(しこう)して応(おう)あり、険(なや)みを行(おこな)えども而(しか)も順(じゅん)なり、

以此*毒天下、而民従之、吉、又何咎矣、

*毒は、正しくは生の下に母がある字で、意味は毒とは大きく異なる「篤く育てる」ということ。
この字(図形として作成)→
しかし、JIS企画にもユニコードにもないので、意味は大きく異なるが、*毒で代用しておく。

(こ)れを以(も)って天下(てんか)を*毒(あつくそだ)つ、而(しこう)して民(たみ)(これ)に従(したが)えり、吉(きち)なり、又(また)(なに)の咎(とが)かあらん、

 

象伝=原文と書き下しのみ

地中有水、師、君子以容民畜、

地中(ちちゅう)に水(みず)が有(あ)るは、師(し)なり、君子(くんし)(も)って民(たみ)を容(い)れ畜(あつめやしな)う、

爻辞

上六━ ━
六五━ ━
六四━ ━
六三━ ━
九二━━━
初六━ ━○

初六、師出以律、否臧凶、

初六(しょりく)、師(し)を出(いだ)すに律(りつ)を以(も)ってす、臧(よか)ら否(ざ)れば凶(きょう)なり、

初六は師の卦の初めなので、師を出そうとするとき、すなわち出陣のときの心構えを説く。
戦争のとき、その軍の勝敗生死は、すべて将帥の判断にかかっている。
その将帥が勝つためにまずやるべきことは、その軍の規律をきちんとすることである。
規律がいい加減なときは、将帥の命令がきちんと伝わらず、兵士は味方に不安を持ち、敵を怖れ、その勇気は折れ萎む。
これでは、まず負ける。
一方、規律が厳正なときには、兵士は味方に自信を持ち、敵を怖れず、勇敢に戦う。
したがって、勝機が見えてくる。
要するに、勝敗の岐路は、規律がきちんとしているか否かなのである。
だから、師を出だすに律を以ってす、という。
もし、規律がきちんとしていない軍隊ならば、たとえ仁義の師にして将帥が智勇であったとしても、命令指揮が上手く行かず、兵隊は将帥の思い通りには動かず、敗喪を免れない。
だから、これを深く戒めて、臧ら否れば凶なり、という。

さて、この爻に凶と言い、吉と言わないのは、たとえ自軍がよく規律を整えたとしても、相手もまた規律を正しくして相対するときは、絶対勝つとは言い切れない。
まして規律を失えば、身を亡ぼし家を破り国を滅ぼすところの凶が有ることは必定である。
だから、安易に吉とは言わないのである。

上六━ ━
六五━ ━
六四━ ━
六三━ ━
九二━━━○
初六━ ━

九二、在師中吉、无咎、王三錫命、

九二(きゅうじ)、師(し)に在(あ)りて中(ちゅう)なれば吉(きち)なり、咎(とが)(な)し、王(おう)(み)たび命(めい)を錫(たま)う、

九二は剛中の才徳があり、成卦の主爻である。
これは、よく元帥総大将の任に堪える者である。
そもそもこの九二の爻は、陽剛であることから知徳も有り、威厳も強い。
かつ陰位に居るので、温柔の徳もある。
また、剛中であることから、よく六五の君と陰陽相応じている。
したがって、才知と徳量と忠信とすべて具足している上に、寛仁と威厳と相中することを得て、威と和と並び行うので、その任を辱めない英勇の爻である。
その上、衆陰の兵士が、九二の元帥に服し従っている様子でもある。
だから、師に在りて中なれば吉なり、咎无し、という。
師に在りてとは、軍隊にいること、中なればとは剛中の徳があること、吉とは敵に勝ち国土を治め得ることを言う。
咎无しとは、殺人をしてもそれは戦争だから止むを得ないことなので、道に違わない、ということである。
が、ともかく九二は、その剛中の徳を以って軍隊を整え、敵に勝ち国を得る勲功があるので、六五の君上より、数々の恩命を錫わり、その功労にいろいろな褒美を錫わる。
だから、王三たび命を錫う、という。
三は多数のことで、恩賞の厚く多いことをいう。

上六━ ━
六五━ ━
六四━ ━
六三━ ━○
九二━━━
初六━ ━

六三、師或輿屍、凶、

六三(りくさん)、師(し)(しかばね)を輿(の)すること或(あ)り、凶(きょう)なり、

六三の爻も内卦の極位に居る者にして、即ち一部隊の長とするのだが、ここは内卦の極であって、外卦の敵と今まさに一戦交えようとしているところである。
しかし六三は陰柔不中にして、知もなく勇もない。
にも関わらず、陽位に居るを以ってその志のみ強く、なおかつ内卦の極に在るを以って妄りに躁(さわ)ぎ進む爻である。
このような志行では、一部隊の長としては問題である。
大いに負喪するのは目に見えている。
だから、師、屍を輿すること或り、という。
凶とは、敗北して自軍の兵士を戦死させることを言う。

上六━ ━
六五━ ━
六四━ ━○
六三━ ━
九二━━━
初六━ ━

六四、師左次、无咎、

六四(りくし)、師(し)(やどり)を左(しりぞ)く、咎(とが)(な)し、

(やどり)を左(しりぞ)くとは、軍営を退くことである。
六四もまた一部隊の長たる者とするのだが、もとより陰柔にして才知無く志も柔弱である。
ただし、その柔正を得ているので、軽率に躁(さわ)ぎ、妄りに進む過失は少ない。
今、六四の部隊は、敵と戦うには不利な場所にいるのだが、それに気付いて引き退き、敵からの攻撃が難しい場所に陣を移し、警衛防御を怠るようなことはない。
だから、次(やどり)を左(しりぞ)く、という。
したがって、六三の部隊が大敗するときも、六四の部隊は堅く陣を守って敗れることはない。
これは、進んで敵に勝つような吉事はないが、敗喪の凶もない。
だから、咎无し、という。

上六━ ━
六五━ ━○
六四━ ━
六三━ ━
九二━━━
初六━ ━

六五、田有禽、利執言、无咎、長子帥師、弟子輿屍、貞凶、

六五(りくご)、田(かり)に禽(えもの)(あ)り、執言(しつげん)するに利(よ)ろし、咎(とが)(な)し、長子(ちょうし)ならば師(し)を帥(ひき)い、弟子(ていし)ならば屍(しかばね)を輿(の)す、貞(かた)くすれば凶(きょう)なり、

田とは猟をする場所を指す。
禽とは鳥獣のこと、執とは執獲(捕獲征伐)することである。
今、逆臣害民の乱賊あって、天下の人民を残害することがあれば、九五の君は将帥を選び命じて王者の仁義の軍隊を出し、これを征伐せよと教える。
貧暴残忍を事とし、善良な人々を傷害する者は、これすでに人に非ざるを以って、禽獣に喩えるのであって、逆に言えば、禽獣が稼穀を食い害することを、賊徒に喩えたのである。
だから、田に禽有り、という。
このような賊徒は、放っておくのではなく、執獲(捕獲征伐)することのほうが善である。
だから、執言するに利ろし、という。
言は中国語の慣習による助字であって、禽と言を協韻させたものである。
賊徒を征伐することは、たとえそれが殺人であっても、止むを得ないことであり、公道の大義には悖らない。
だから、咎无し、という。

さて、六五の君が仁義の軍隊を出すに当たっては、まず、その元帥たる総大将を選ばないといけない。
このとき、九二のような剛中の才徳ある者を選び、委ね任せれば、賊を討ち、よく国をの治めて、吉となる。
これが、六三のような陰柔にして智謀のない粗忽な者を用いれば、必ず屍を輿せ、全軍敗退の大凶となろう。
六四にしても、六三よりはマシではあるが、やはり総大将の任に堪える者ではない。
そして易は、五を君の位とし、父の位とするので、臣の位を子とする。
したがって、二の臣を陽剛の才徳あるとして長子、三と四の臣を陰柔で二には劣る者として弟子とする。
だから、長子ならば師を帥い、弟子ならば屍を輿することあり、という。
ただしここで二を長子とするのは、あくまでも陽剛の才徳あるからであって、年齢の序列ではない。
年齢の序列によって兄弟を弁別し、才徳がない長兄を総大将とするのではなく、あくまでも本人の才徳を以って総大将を選ばないといけないのである。
身分や序列に固執して、能力のない者を総大将にするようでは、戦争に勝てるわけがない。
非常時は平穏なときとは違うのである。
だから、貞くするは凶、という。
ここでの貞は、貞固=固執の意である。

上六━ ━○
六五━ ━
六四━ ━
六三━ ━
九二━━━
初六━ ━

上六、大君有命、開国承家、小人勿用、

上六(じょうりく)、大君(たいくん)の命(めい)(あ)り、国(くに)を開(ひら)き家(いえ)を承(う)けしむ、小人(しょうじん)は用(もち)うること勿(なか)れ、

この上六の爻は、戦いが終わり、天下の治安が回復し、その軍功に対して恩賞が行われるときの心得を示している。
大君とは天子のことを、すなわち六五の君位の爻を指す。
今は、天子より命が下り、軍功の大なる者には、国を与えて諸侯とし、軍功の小さい者には家を与え、卿大夫とするときである。
だから、大君の命有り、国を開き家を承けしむ、という。
ただし、小人不徳者には、軍功があっても封土を与えて人民の上に立たせてはいけない。
せいぜい金品を与える程度にしておくのがよい。
小人は国家万民のためではなく、自分の利益のために戦い、たまたま軍功を上げたに過ぎないのである。
もし、そのような者に封土を与えてしまったら、その封土の人民は小人の悪政に苦しむことになるだろうし、そこから新たな乱が萌芽することもあろう。
だから、小人は用うること勿れ、という。

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01.乾為天 02.坤為地 03.水雷屯 04.山水蒙 05.水天需 06.天水訟 07.地水師 08.水地比 09.風天小畜 10.天沢履 11.地天泰 12.天地否 13.天火同人 14.火天大有 15.地山謙 16.雷地予 17.沢雷随 18.山風蠱 19.地沢臨 20.風地観 21.火雷噬嗑 22.山火賁 23.山地剥 24.地雷復 25.天雷无妄 26.山天大畜 27.山雷頤 28.沢風大過 29.坎為水 30.離為火 

31.沢山咸 32.雷風恒 33.天山遯 34.雷天大壮 35.火地晋 36.地火明夷 37.風火家人 38.火沢睽 39.水山蹇 40.雷水解 41.山沢損 42.風雷益 43.沢天夬 44.天風姤 45.沢地萃 46.地風升 47.沢水困 48.水風井 49.沢火革 50.火風鼎 51.震為雷 52.艮為山 53.風山漸 54.雷沢帰妹 55.雷火豊 56.火山旅 57.巽為風 58.兌為沢 59.風水渙 60.水沢節 61.風沢中孚 62.雷山小過 63.水火既済 64.火水未済

ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては易学入門をご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は無料易占いのページをご覧ください。
占いながら各卦の意味がわかるようになっています。

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最終更新日:平成30年02月02日 学易有丘会
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