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前の卦=63水火既済 最初の卦=01乾為天

64火水未済 かすいびせい

 

未済 坎下離上(かんか りじょう)

八卦の(かん)の上に、(り)を重ねた形。

未済(ひぜい)は、未だ済(な)らず、ということ。
この火水未済は水火既済の対卦にして、事が未だ成らざることを示す。
としても、この卦も六爻すべてに応爻も比爻も交わりもある。
したがって他の六十二卦と比較すれば、大いに成る様子ではある。
しかし水火既済と比較すれば、未だ交わらず、六爻すべても、未だ正を得ていない。
これは、もう少しで既済の形になろうとする様子である。
だから未済と名付けられた。
また、水火の二つは相交わって煮炊きの用を成すものだが、この卦にては、水火は相遇い相対はしていても、未だ相交わらない。
だから未済と名付けられた。
水火の交わる交わらないは、その位置の上下によるのである。
言うなれば、水の上から火を近づけても水は温まらないが、火の上に鍋を置いてその中に水を入れれば、水は温まる、ということである。

 

卦辞

未済、亨、小狐汔済、濡其尾、无攸利、

未済(びせい)は、亨(とお)る、小狐(こぎつね)(ほとん)ど済(わた)らんとして、其(そ)の尾(お)を濡(ぬら)らす、利(よ)ろしき攸(ところ)(な)し、

既にというのは、すでに行き去ること、未だというのは、待つところがあって、まさに来たらんとすることである。
したがってこの卦は、将来まさに来たらんとするのだから、そのときを待って亨るのである。
だから、未済は亨る、という。
しかし、他の卦と比較するときには、事はすでに大半は成っている、とするのがこの卦である。
大半が成っているのだから、この後に亨るべきこところの者は、その残りであって、それほど大きいことはない。
だから単に、亨る、とだけ言って、元(おお)いに、とはしないのである。

狐とは、下卦の坎の形が、痩せた四足動物のようにも見えるから、例に出したのである。
真ん中の陽が胴体、上と下の陰が四本の足である。
渉るとは、坎の水を渡ることを言う。
およそ狐が水を渡るときは、老成した狐なら、その性質は疑い深く思慮も深いので、妄りに進んで渡らない。
しかし幼い小狐は、思慮が浅く軽率であり、水の勢い、深さ、広さなどを顧みずに渡り出すものである。
そもそも狐の体型は、前小後豊と言われ、中でもその尾はとても豊大である。
したがって、水を渡るときは、必ず先ずその尾を高く巻き上げてから、渡り始める。
それが、その尾を濡らすというのは、精根尽き果てたときであって、水の勢いに押し流されて、渡り切れない様子である。
今、この卦は、事すでに過半に及び、まもなく成就し、まさに既済に向おうとするときである。
しかし、ここまで来たとしても、この後、少しでもその道を誤るときには、小狐のように渡りきれずに困窮することになる。
だから、小狐汔ど済らんとして、其の尾を濡らす、利ろしき攸无し、と狐に喩えて、亨るための心構えを諭し戒めているのである。
苦労してここまでやってきて、成功が見えてきたところなのに、ほんのちょっとした軽率さで、すべてを喪うに至るのである。

彖伝=原文と書き下しのみ

未済亨、柔得中也、

未済(びせい)は亨(とお)るとは、柔(じゅう)(ちゅう)を得(え)れば也(なり)

小狐汔済、未出中也、

小狐(こぎつね)(ほとん)ど済(わた)らんとすとは、未(いま)だ中(ちゅう)を出(い)でざれば也(なり)

濡其尾、无攸利、不続終也、

(そ)の尾(お)を濡(ぬ)らせば、利(よ)ろしき攸(ところ)(な)しとは、続(つづ)いて終(お)えざれば也(なり)

雖不当位、剛柔応也、

(くらい)に当(あた)らずと雖(いえど)も、剛(ごう)(じゅう)(おう)ず也(なり)

 

象伝=原文と書き下しのみ

火在水上、未済、君子以慎弁物居方、

(ひ)が水(みず)の上に在(あ)るは、未済(びせい)なり、君子(くんし)(も)って慎(つつし)んで物(もの)を弁(わきま)へ方(ほう)に居(お)くべし、

爻辞

上九━━━
六五━ ━
九四━━━
六三━ ━
九ニ━━━
初六━ ━○

初六、濡其尾、吝、

初六(しょりく)、其(そ)の尾(お)を濡(ぬら)す、吝(はずか)し、

初六は未済中の未済の初まりに居るので、未だ事を成し、功を得るべき時ではなく、宜しく慎み守るべき時である。
しかし、元来初六は、陰暗不才にして不中不正なので、その慎み守るべき時であることを察せず、妄りに犯し進んで、強引に成功を求めようとする。
例えば、小狐が水の浅さ深さをも顧みずに、軽率に渉りかかり、遂にその尾を濡らすようなものである。
このようなことでは、賤(いや)しめ吝(はずか)しめ笑われるというものである。
だから、其の尾を濡らす、吝し、という。

上九━━━
六五━ ━
九四━━━
六三━ ━
九ニ━━━○
初六━ ━

九ニ、曳其輪、貞吉、

九ニ(きゅうじ)、其(そ)の輪(わ)を曳(ひ)く、貞(ただ)しくして吉(きち)なり、

九二の爻は、剛中の才が有るとはしても、未済中の未済のただ中の時に当たっている。
しかも、その身は内卦坎の難みの主なので、険みがその身に必至な状況である。
とすると、未だ容易に進み行くべきではない。
例えば、車が進み行くのなら、後ろより車輪を曳き止めて、進めなくするように、自己を貞正にして、時の至るのを待つべきである。
そうすれば、失うところもないのである。
だから、其の輪を曳く、貞しくして吉なり、という。

上九━━━
六五━ ━
九四━━━
六三━ ━○
九ニ━━━
初六━ ━

六三、未済征凶、不利渉大川、

六三(りくさん)、未済(びせい)のときに征(ゆ)けば凶(きょう)なり、大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よ)ろしからず、

六三は下卦坎の険みの極に居る。
これは未済中の未済の極に当たる時である。
したがって、まだ、未済の時である。
また、六三は陰柔不才不中不正でもあるので、未だ事を遂げ、功を成すべきの時ではない。
それでも強引に何かをやろうとする時には、時を犯すので凶の道となる。
だから、未済のときに征けば凶なり、という。

この卦には、水火既済と同様に、済(わた)るという義があると共に、六三は、初二三の内卦と三四五の中卦との二つの坎の水の間に、ニ三四の中卦の離の舟を浮かべている象があり、六三はその離の舟の主に当たっている。
また、この卦は水火既済より顛倒して来ている。
この爻は要するに既済の六四である。
既済の四に舟のことが出てくるのは、この爻と象義が同じだということからである。
最も、この爻は水を渉るの象は有るが、まだ未済の時でもあるので、強いて渉れば時を犯すの咎が有る。
だから、大川を渉るに利ろしからず、という。

上九━━━
六五━ ━
九四━━━○
六三━ ━
九ニ━━━
初六━ ━

九四、貞吉、悔亡、震用伐鬼方、三年有賞于大国、

九四(きゅうし)、貞(ただ)しくして吉(きち)なり、悔(く)い亡(ほろ)ぶ、震(うご)いて用(もち)いて鬼方(きほう)を伐(う)つ、三年(さんねん)にして大国(たいこく)に賞(しょう)(あ)り、

九四は未済中の未済の時はすでに去って、未済中の既済に革(あらた)まった時である。
今までは未済中の未済だったので、悔いが有ったが、今すでに未済中の既済に移ったので、その悔いも亡ぶのである。
だから、貞しくして吉なり、悔い亡ぶ、という。
もとより九四は、近君の大臣の位に居て、上卦離明の一体に居る。
陽剛の才が有り、今この時運の改まり革まるの位に当たっている。
これは未済を済うべきの時を得た者である。
したがって、治を成すの功に害が有る者は討伐して、天下の未済を済うべき任がある。
だから、震いて用いて鬼方を伐つ、という。
しかし、未済の弊乱を撥って、既済の平治に致すことは、一朝一夕にできることではない。
持てる力を尽くしても、ある程度の時間が必要である。
だから、三年にして大国に賞有り、という。
三年とは多年の義、大国とは六五の君の位を指している。

なお、この爻もまた既済の三の顛倒生卦である。
したがって、共に鬼方を伐つという辞があるのである。
ただし、既済の三は、治平の時より衰運乱逆に向かう時なので、これを挽回するのは大いに艱難である。
そこで高宗の例を引いて、その象義を示したのである。
一方、この九四の爻は、乱より治に向かう時運なので、その時運に乗じて動くことになる。
したがって、その功を成すのも順にして便である。
そこで、ことさら高宗の例を出すこともないのであって、こうするとこで、その時を得たのと、その時の去るのとの、軽重分別を明らかにしたのである。

上九━━━
六五━ ━○
九四━━━
六三━ ━
九ニ━━━
初六━ ━

六五、貞吉、无悔、君子之光、有孚吉、

六五(りくご)、貞(ただ)しくして吉(きち)なり、悔(く)い无(な)し、君子(くんし)(の)(ひかり)、吉(きち)たるに有孚(ちがいな)し、

六五は未済中の既済を得ている者である。
その時運もまた九四の時よりも一段進んでいる。
したがって、九四には悔い亡ぶとあるが、六五では悔い无しとしている。
しかし、なお貞吉の辞があるのは、警戒しているのである。
六五は君位に在って、柔中の仁徳が在る上に、離の文明の主として、九四の執政大臣とは陰陽正しく応じている。
これは、よく賢良に委ね任せて、天下の未済の衰運を改革するところの聖君であり、その徳の輝きを称したいものである。
だから、貞しくして吉なり、悔い无し、君子之光、吉たるに有孚し、という。

上九━━━○
六五━ ━
九四━━━
六三━ ━
九ニ━━━
初六━ ━

上九、有孚于飲酒、无咎、濡其首、有孚失是、

上九(じょうきゅう)、孚(まこと)(あ)って于(ここ)に飲酒(いんしゅ)す、咎(とが)(な)し、其(そ)の首(くび)を濡(ぬ)らせば、是(よき)を失(うしな)うに有孚(ちがいな)し、

上九は未済が終わり、全く既済に成ろうとする時にして、その未だ成らないところのものは、僅かに一分足らずである。
しかしなお、慌しく未済を傾け尽くしてはいけない。
しばらく宴楽して、身と心を養い、道を守って時が熟するのを待つことである。
そうすれば、労せずして既済の治が、自然に致すというものである。
だから、孚有って于に飲酒す、咎无し、という。
酒とは宴楽の義にして、飲酒とは心身保養の喩えである。

これが、時の熟すのを待たず、正しき道を守らず、功を貪り、利に急ぐといった短慮により、躁(さわ)ぎ進んで、小狐が川を渉るようであるのならば、必ず忽ち成功を転じて失敗を生じるのである。
例え、従来幾多の成功を積んで来たとしても、併せて共に敗れ滅びる。
これは恐れ慎むべき時である。
だから、其の首を濡らせば、是を失うに有孚し、という。

前の卦=63水火既済 最初の卦=01乾為天

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ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては易学入門をご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は無料易占いのページをご覧ください。
占いながら各卦の意味がわかるようになっています。

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最終更新日:平成30年02月02日 学易有丘会
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