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前の卦=16雷地予 次の卦=18山風蠱

17沢雷随 たくらいずい

 

 震下兌上(しんか だじょう)

八卦の(しん)の上に、(だ)を重ねた形。

(ずい)は、したがう、という意。
易位生卦法によれば、元は雷沢帰妹である。
雷沢帰妹のときは、震の長男が兌の少女の上に位置していたが、今、この沢雷随の卦は、震の長男が兌の少女の下に下り随っている様子となる。
だから、随と名付けられた。
そもそも天地の定理では、男は尊く女は卑しい、長は尊く少は卑しい、である。
しかしこの卦は、男が女の下に下り、長が少の下に下っている。
これは、本来随わせるべき者に随っていることであって、随い難き道である。
だから、その随い難きを随うことの重要性を鑑みて、随と名付けられた。
これは、天沢履の履み行い難きをもって卦名としたのと同じスタンスである。
また、内卦を自分とし、外卦を相手とし、震を動くとし、兌を悦ぶとすれば、自分が動いて相手を悦ばせ、自分が積極的に相手に随う様子である。
だから、随と名付けられた。
また交代生卦法によれば、元は天地否から来たものとする。
天地否の上九の爻が来たり下って初九となったのが、この沢雷随である。
これは、高く卦の極に居た一陽剛が、初九の最下の地に下って、他の五爻の下に随っている様子である。
だから、随と名付けられた。
また、上卦の兌は二陽の尊きをもって一陰の卑しきに下り随い、下卦の震は一陽の尊きをもって二陰の卑しきに下り随っている。
このように上下とも、陽をもって陰に下り随っているのがこの卦である。
だから、随と名付けられた。

 

卦辞

随、元亨、利貞、无咎、

(ずい)は、元(おお)いに亨(とお)る、貞(ただ)しきに利(よ)ろし、咎(とが)(な)し、

およそ天下万般のことは、人に随い従って行うときには、その事業は容易であり、容易であればこそ、成し遂げることができるものである。
だから、随うということを念頭に行えば、物事は元いに亨るのである。
そもそも人に随うときには、一にも二にも、正しくすることが大事であり、そのようであれば、咎められることはない。
これが、悪に随い、邪に随うようであれば、言わずもがな、大いに咎められるものである。
だから、貞しきに利ろし、咎无し、という。

彖伝=原文と書き下しのみ

随、剛来、而下柔、動而説、随、

(ずい)は、剛(ごう)(き)たりて、而(しこう)して柔(じゅう)に下(くだ)る、動(うご)きて而(しこう)して説(よろこ)ぶは、随(ずい)なり、

大亨以正、故无咎、而天下随之、随之時義大矣哉、

(おお)いに亨(とお)るに正(ただ)しきを以(も)ってす、故(ゆえ)に咎(とが)(な)し、天下(てんか)(これ)に随(したが)う、随之時義(ずいのときのぎ)(だい)なる哉(かな)

 

象伝=原文と書き下しのみ

沢中有雷、随、君子以嚮晦入宴息、

(さわ)の中(なか)に雷(かみなり)が有(あ)るは、随(ずい)なり、君子(くんし)(も)って晦(くら)きに嚮(むか)って入(い)りて宴息(えんそく)すべし、

爻辞

上六━ ━
九五━━━
九四━━━
六三━ ━
六二━ ━
初九━━━○

初九、官有渝、貞吉、出門交有功、

初九(しょきゅう)、官(かん)を渝(かわ)ること有(あ)り、貞(ただ)しくして吉(きち)なり、門(もん)を出(いで)て交(まじ)われば巧(こう)(あ)り、

初爻は本来無位卑賤の位だが、この爻は剛明にして正の位を得ていて、なおかつ下卦震の主爻であるとともに、成卦の主爻でもある。
したがって、これを卑賤ではなく、在官の人とする。
また、震は進み動くという象なので、この官は、必ず動き進み、地位や役目が変わる気配がある。
だから、官を渝ること有り、という。
今は随のときなので、その官の転遷昇降は、人に随うを以って吉とする。
しかし、人に従うことも、正しきを以って要とするべきである。
だから、貞しくして吉なり、という。
また、随うの道にも、公と私との二途がある。
自分だけの自分本位の判断で選択して従うのではなく、門を出て広く公正の道を選び、賢者を求めて随うことが大事である。
何事も私情を離れて選んでこそ、功があるものである。
だから、門を出て交われば功有り、という。

上六━ ━
九五━━━
九四━━━
六三━ ━
六二━ ━○
初九━━━

六二、係小子失丈夫、

六二(りくじ)、小子(しょうし)に係(かか)って丈夫(じょうぶ)を失(うしな)えり、

小子とは初九を指し、丈夫とは九四を指す。
もとより陰の求めるところの者は陽である。
したがって、陰の随うところの者もまた陽である。
今、六二は初九に近く、九四に遠いので、得てして近い初九の小子に比し係わって、遠い九四の丈夫を失うことになる。
だから、小子に係って丈夫を失えり、という。
この爻辞には、凶吝の言葉はないが、これは吉ではない。
そもそも随い従うの道は、自分よりも優れた者に随うことが大事である。
今、九四は六二より上に居る優れた者であり、初九は六二より下に居て、自分よりも優れているとは言えない者である。
しかし六二の爻は、初九と比し、九四とは応でも比でもないので、自分より上である九四を捨て、自分より劣った下の初九に比し親しみ随おうとしているのである。
こんなことでは、六二にとって、何の利益があろうか。

上六━ ━
九五━━━
九四━━━
六三━ ━○
六二━ ━
初九━━━

六三、係丈夫、失小子、随有求得、利居貞、

六三(りくさん)、丈夫(じょうぶ)に係(かか)って、小子(しょうし)を失(うしな)えり、随(したが)えば求(もと)め得(え)ること有(あ)らん、貞(つね)に居(お)るに利(よ)ろし、

丈夫とは九四の爻を指し、小子とは初九の爻を指す。
この六三の爻は、六二とは逆に、九四と密接し、初九には遠い。
だから、丈夫に係って、小子を失えり、という。
これは、自分よりも劣っている者を捨てて、優れている者に随う様子である。
したがって今、六三は随うべき良き友の九四を得ているのであり、その九四に随順して利益を請えば、自然に彼の意を得られるときである。
だから、随えば、求め得ること有らん、という。
六三が九四に随うことは、陰を以って陽に随い、下を以って上に随うことなので、そもそも理に叶っているのである。
しかし、随順の道も、度が過ぎれば阿諛(あゆ)佞媚(ねいび)=おもねりへつらい、に流れる失も有る。
まして九四は執政権門の大臣にして、その威勢が赫々たる者である。
妄りに動き回って随うのではなく、慎戒して節度をわきまえないといけない。
だからこれを戒めて、貞に居るに利ろし、という。
貞は常恒の義、居るとは止まるの義である。
常を守り、分に止まって妄りに動かないように、という垂戒である。

上六━ ━
九五━━━
九四━━━○
六三━ ━
六二━ ━
初九━━━

九四、随、有獲、貞凶、有孚在道以明、何咎、

九四(きゅうし)、随(ずい)のとき、獲(え)ること有(あ)るがごとし、貞(かた)くするは凶(きょう)なり、道(みち)に在(あ)って以(も)って明(あきら)かなるに有孚(ちがいな)くば、何(なん)の咎(とが)あらん、

九四は随の時の執政権門なので、天下の群臣や衆民が悉く集まり随うかのように見える。
しかしこれは、自身の徳が素晴らしくて、民心を得ているのではない。
随の「したがう」の時であることから、世間が随順巽従する気風に流されているだけである。
だから、随のとき、獲ること有るがごとし、という。
したがって、この衆民の随い従う様子を見て、それを自分の盛徳の致す所だと自負し、威権を振り、功徳に乗じる意念が有るときは大凶の道である。
だから、これを戒めて、貞くするは凶なり、という。
この貞の固くするというのは、戒めを守らず、勘違いしたまま威権を振り、功徳に乗じることを言う。
とは言っても、九四は執政の大臣、宰相の位である。
自分の徳を以ってしたことではなくとも、民心が帰服するのはよいことである。
とすれば、これを幸いに、自身も忠信を篤くして君に仕え、道義を正しくして国政を務め、文明にして幾を知る才が有るときには、何の咎があるだろうか。
だから、道に在って以って明らかなるに有孚くば、何の咎あらん、という。

上六━ ━
九五━━━○
九四━━━
六三━ ━
六二━ ━
初九━━━

九五、孚于嘉、吉、

九五(きゅうご)、嘉(よ)きに孚(まこと)あり、吉(きち)なり、

随のときに当たって、九五の君は剛健中正の徳が有る。
これにより、天下の臣民はその徳に和悦嘉楽して随い従う。
九五の君もまた、よく臣民を信愛し撫育する。
こうであれば、上下親しみ睦び君臣和合して国家は安寧に嘉楽する。
だから、嘉きに孚あり、吉なり、という。

なお、この爻に随の字を用いないのは、臣の君に随い、下の上に随うことは尋常のことにして、取り立てて美称とするほどのことではないからである。
これに対して、嘉というのは、随い従うの至極にして、中心信実より悦楽感化し和順懐服して徳に随うことを言う。
孚の字は、君上の万民を仁愛すること、真実誠信なることを言う。
これらは、九五君徳の大いに盛んなことを称えるものである。

上六━ ━○
九五━━━
九四━━━
六三━ ━
六二━ ━
初九━━━

上六、拘係之、乃従維之、王用享于西山、

上六(じょうりく)、之(これ)を拘係(くけい)し、乃(すなわ)ち従(したが)って之(これ)を維(つな)ぐ、王(おう)(もち)いて西山(せいざん)に享(すすめまつ)る、

この爻は随の卦の終わりにして、天下の臣民随従化服するの至極なる者とする。
君上の天下を治め臣民を仁愛撫育することが真実篤厚なときには、その臣民の悦楽感服する情意は些かも別れ離れ背き逆らうものではない。
この情態を形容して喩えると、ここにひとつのものがあれば天下万民はこれを愛し好み悦んで楽しみ、これを拘え止めて、さらにその上を縛り維ぐが如くに至る、ということになる。
これは、君上の臣民を仁愛することが真実に篤いので、下民の君徳に感じ化し服し順がう心が、何重にも堅く結んで決して解け離れない様子である。
だから、之を拘係し、乃ち従って之を維ぐ、という。

続く、王用いて西山に享る、の王というのは、周の先王のことである。
ただし、個人は特定せず、周の昔の王様は〜〜、といった意である。
享るとは、祭り享(すす)めること、要するに、祭祀を行うということである。
西山とは、周の時代に重要な祭祀が行われた岐山のことである。
この爻は随の極にして、万民悦び服して相随うの至極、人々の誠の情の固く結んで解けない様子である。
その万民感じ服す誠実を祭りの供え物にして、周の昔の王様は岐山に享(まつ)った、ということである。
君上の孝の享(まつ)りは、万民の感じ化し服し随うより大なるはないからである。

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31.沢山咸 32.雷風恒 33.天山遯 34.雷天大壮 35.火地晋 36.地火明夷 37.風火家人 38.火沢睽 39.水山蹇 40.雷水解 41.山沢損 42.風雷益 43.沢天夬 44.天風姤 45.沢地萃 46.地風升 47.沢水困 48.水風井 49.沢火革 50.火風鼎 51.震為雷 52.艮為山 53.風山漸 54.雷沢帰妹 55.雷火豊 56.火山旅 57.巽為風 58.兌為沢 59.風水渙 60.水沢節 61.風沢中孚 62.雷山小過 63.水火既済 64.火水未済

ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。
漢字は原則として新字体で表記しています。
易の初歩的なことについては易学入門をご覧ください。
また、六十四卦それぞれの初心者向け解説は無料易占いのページをご覧ください。
占いながら各卦の意味がわかるようになっています。

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最終更新日:平成30年09月15日 学易有丘会
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