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>>また明日

 

 
 孟徳が読んでいたを書物を閉じると、隣に座っていた花はいつの間にか
もう夢の世界の住人になっていた。


「花ちゃん?」

肩をさすっても、起きる気配は無い。
花は一度寝ると、ちょっとやそっとのことじゃ起きない。
もしかしたら、屋敷が崩壊しても起きないかもしれない。


 すこし身じろぎをして、まったく起きる様子がない花を
孟徳がそのまま抱き起こして、寝台へと運ぶ。
 こうやって、無防備に体を預けている姿が愛しくて
甘やかすことに歯止めが利かない。
 
 このまま依存してくれないかとも思うが、
花は意外と頑固な所があるので中々難しいかもしれない。


それは長期戦だと覚悟しているので、その手間も時間も楽しいのだが。






花の体温は、やわらかくて暖かい。


その体温に惹かれるように指を首筋に滑らせる。


「・・・花ちゃん。」



「・・・もうとくさん」


「?」


「ごめんなさい・・・もうとくさん。」


ふと見ると花の寝言らしい。
眉をしかめて必死に謝っている。


「・・・花ちゃん?」


「・・・鍵を・・・カワウソに取られまし・・・た」


「・・・。」


どんな夢かと起こして問いただしたい気持ちをぐっと抑えて
孟徳は緩んだ口元をそのままで口付けた。


瞳を閉じれば明日が来る。
繰り返しの日々が、楽しみに感じるのは花のおかげだ。
毎日が飽くことが無い。


(カワウソに取られた・・・ってどんな夢見たんだ・・・?)

その謎は明日聞こう。



「花ちゃん、また・・・明日。」









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