蘇(酥)





牛乳を飲むという習慣は、日本では既に飛鳥時代には王族を始めとする支配者
階級に広まっていました。牛乳が庶民的なものとなったのは近代になってから
ですが、実は歴史は長く、古代から牛乳から各種の珍味が作られていたのです。
中でも有名なのが『蘇(そ):または酥』と呼ばれる、牛乳を長時間煮詰めて
作った食品です。飛鳥時代や平安時代の文献などにも度々その名が記されて
いる、とても有名なもの。

「涅槃経」には「蘇」の作り方が次のように記載されています。
譬えば牛従り乳を出し、乳従り酪を出し、酪従り生蘇を出し、熟蘇従り
醍醐を出す、醍醐は最上なり。若し服すること有る者は、衆病皆除こる。
所有の諸の薬は、悉く其の中に入るが如し。




他にもいろいろ資料を調べた上での「蘇」を作るためのわたくしの解釈。
とりあえず、煮詰めろ。



2Lの牛乳を厚手の平鍋に入れ、牛乳が泡立たない程度の極弱火で温めます。
表面に生じる被膜(熱しすぎたホットミルクの表面に張る、あの膜です)を
焦がさないように、丹念に攪拌を続けること4時間。
被膜が厚くなり、かき混ぜる手に重みを感じるようになってきます。
更に3時間ほど続けて行くと、真っ白だった牛乳が褐色の粘りのある物体に
変化します。気を抜くと焦げ付いてしまうため、手を休めずに練り上げます。
十分に水分が飛んだところで型に入れ、しばらく冷やして出来上がりです。
牛乳2Lから一辺10cm、高さ2.5cmほどの正方形の「蘇」が完成。
所要時間、7時間強。

冷えて固まった「蘇」は、不思議な乳臭さ!(牛乳の最終進化形態ですしね:笑)
「ママの味のミルキー」や、ナチュラルチーズに近い匂いがします。
しっとりとしていて、力を加えると、ほろりと崩れる柔らかさ。

気になるお味の方ですが…これは、驚き! 美味なんです(*^_^*)
お砂糖は一切加えていないのですが、仄かな甘味があります。
温めただけでお砂糖を入れていないホットミルクを飲んで、甘味を感じる
ことがありますよね? あの甘味です。
歯触りはサクサクとして、まるでクッキーを食べているみたい。
後味にほんの僅かな苦味が感じられて、今まで食べた事のない新食感です。
家族も驚いていました。少し前に味も素っ気もない胡麻油風味の「唐菓子」を
食べさせた後なので感激が更に深まったみたいです(^‐^)b

7時間くらいお鍋と親密な関係を築くのを厭わない方は、ぜひご自分でも
作ってみてください。あなたの家が素敵な乳臭さに包まれます。
ちなみに私は読書のページをめくるたびに鍋をかき混ぜ、DQ4の戦闘に
突入してコマンドを入力するたびにかき混ぜ…と云った具合に、非常に
有意義な室内軟禁状態の1日を楽しみつつ過ごすことができました。
(自室に持ち込んだ灯油ストーブの火で作りました。)
余談ですが、中世ヨーロッパの料理書では、材料を煮こむ時間の表示を
「(聖書の)詩篇何章を読む長さだけ煮る」と云う具合に書いていたそうです。
日本で例えるならば「般若心経○回唱えるだけ煮る」…? 個人差はいかに。。

さて、先述の「涅槃経」でこれを食せば病気が快癒する…と褒め称えられて
いた「蘇」を始めとする乳製品ですが、確かに栄養価は高そうですね。
私の作った「蘇」は牛乳の栄養価から単純に計算して、大きめの消しゴム大に
切った一切れが82KCalほど。
火を止めてからもう少し練れば、もっと食感は滑らかになったはず。



さぁここをご覧になったみなさん、健康のために「蘇」を作りましょう!


「蘇」作りは、楽しくてよ!













…私はもう二度と作らないけどね。一度作ればもう結構(笑)





「蘇」は食べてみたいけど7時間も牛乳鍋と仲良くしたくない…と仰る方には
実は通販でお取り寄せができることをお知らせします。自作して欲しいけど。

「蘇」などのワードで検索していくと、通販が見つかると思います。探してみてv



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