結論


 テレビで予想外の展開をするギャグの形式を作り上げ、その方法論を持って映画に進出し、自らのバックボーンを捨て、哲学的命題に対する回答を出すという、それこそ予想外の展開をしていったモンティ・パイソン。その活動は1989年10月4日、『空飛ぶモンティ・パイソン』放送開始20周年前夜、グラハム・チャップマンの死で終わりを遂げることになった。だが、常に新作の度に発展し続ける彼等の活動が既に「人生の意味」にまで到達していたことを考えると、恐らくチャップマンの死がなくともモンティ・パイソンの表現はその目的を果たし、これ以上の発展はなかっただろうと考えられる。

 モンティ・パイソンの世界観は、人生はどうあがいてもそうなっているのは仕方ないのだから、自分の持っているこの運命はもうあきらめて、その中でいかに楽しむか、というものであったといえる。この気楽な結論は、モンティ・パイソンがギャググループであったからこそ導かれたものといえるのかも知れない。だが、だとしてもそれは彼等一人一人のその後の活躍にも表われるだけの力をもつものとなっている。

 グラハム・チャップマンは脚本家・俳優として活躍しながら、自分がゲイであることを公表し、“Gay News”誌を創刊。テリー・ジョーンズは映画監督として『エリック・ザ・バイキング バルハラへの航海 Erik The Viking』(1989)、脚本家として『ラビリンス魔王の迷宮 Labyrinth』(1986)等に参加、他にも童話作家やチョーサー研究家としての顔も持つ。マイケル・ペリンは俳優、脚本家としてギリアム監督の『バンデットQ Time Bandits』(1981)や『未来世紀ブラジル Brazil』(1985)、クリース脚本主演の『ワンダとダイヤと優しい奴ら A Fish Call Wanda』(1988)等に参加、ドキュメンタリー“Around The World In 80 days”(1989)等にも出演、小説家としても活躍している。エリック・アイドルも俳優としてギリアム監督の『バロン The Adventures Of Baron Munchauzen』(1989)、『ナンズ・オン・ザ・ラン 走れ!尼さん Nuns On The Run』(1990)等に出演、ザ・ビートルズ The Beatlesのパロディバンド、ザ・ラトルズ The Rutlesのリーダーでもある。ジョン・クリースはやはり脚本家及び俳優として活躍、『ワンダとダイヤと優しい奴ら』ではアカデミーオリジナル脚本賞にノミネート、他に『バンデットQ』や『エリック・ザ・バイキング』、それ以外にも多くの映画、テレビに出演している。これらを総じていえるのは、彼等自身の活動が幅広く、なおかつ自由であるということである。

 メンバーの中で最も有名になったのは恐らくテリー・ギリアムである。彼は映画監督となり、世界中の映画好きを満足させる映像を多く作り出した。その現時点(1996年12月現在)での最新作『12モンキーズ 12Monkeys』(1996)は、モンティ・パイソンがたどり着いた理想的世界観を象徴するかのようなエンディングを持つ。ある時世界は未知の細菌に覆われ、人類の大半は死に絶えてしまう。原因をつきとめ、未然に防ぐために未来から過去へ一人の男(ブルース・ウィリス)が送り込まれるが、彼が過去で行ったあらゆる行為が有機的に作用し、なおもその上で過去は一切変わらず、世界は細菌で充たされる。男はしかし、後悔はしない。運命は変わらないが、自分はやるだけのことはやったのだ。そんな変わらない世界を賛えるかのように、ラストに流れる曲は、ルイ・アームストロング Louis Armstrong『この素晴しき世界 What A Wonderful World』であった。


『エリック・ザ・バイキング』 余談だがジョーンズはこの作品の宣伝のため来日、フジテレビの昼の長寿番組『笑っていいとも!』に出演した。↑戻る

『ラビリンス』 監督:ジム・ヘンソン、ピーター・マクドナルド、ジミー・デイヴィス。↑戻る

『ワンダとダイヤと優しい奴ら』 監督:チャールズ・クライトン ↑戻る

『ナンズ・オン・ザ・ラン』 監督:ジョナサン・リン ↑戻る

エリック・ザ・バイキング バルハラへの航海 ラビリンス 魔王の迷宮 コレクターズ・エディション バンデットQ-Magical ed.- 未来世紀ブラジル ワンダとダイヤと優しい奴ら バロン ラトルズ4人もアイドル! The perfect collection 12 モンキーズ


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