第1章 テレビ『空飛ぶモンティ・パイソン』

解説


 1969年10月5日、イギリスのテレビ局英国放送協会(BBC)第一チャンネルで、“Monty Python's Flying Circus”は始まった。番組タイトルの‘Monty Python’のメンバーは6人で、アルファベット順に以下のとおり。

 グラハム・チャップマン Graham Chapman (1941.1.8〜1989.10.4)

 ジョン・クリース John Cleese (1939.10.27〜)

 テリー・ギリアム Terry Gilliam (1940.11.22〜)

 エリック・アイドル Eric Idle (1943.3.29〜)

 テリー・ジョーンズ Terry Jones (1942.2.1〜)

 マイケル・ペリン Michael Palin (1943.5.5〜)

 彼らが自らシナリオを書き、主演したギャグ番組である。放送は四期に別れ、第一期が1969年10月から翌70年1月まで、第二期が70年9月から同年12月まで、第三期が二期からしばし間をおいて72年10月から73年1月まで、最後の第四期がこれもしばし間があって74年10月から12月まで、一期二期三期は13回ずつ、四期はわずか6回、合計45回、毎回30分の番組である。構成はいくつものショートコント(スケッチ sketchと呼ばれる)が次々とオムニバス形式で流されるというもの。スケッチとスケッチの間には、繋ぎとしてしばしばアニメーションが挿入される。

 スケッチがメンバー全員が脚本を書くものであったのに対して、アニメーションは技術的なものが要求されることもあり、漫画家出身のテリー・ギリアムが一人で担当した。しかし、切り絵や写真のコラージュを多用した独特の雰囲気は、そのまま一般的なMonty Pythonのイメージとなっている。

 日本では『空飛ぶモンティ・パイソン』のタイトルで、東京12チャンネル(現テレビ東京)で放送された。原版がオムニバスであるため、日本版では一回の放送分を一度バラバラにし、合間にタモリやチャンバラトリオのコントを挟んで再編集し、一時間番組として放送した。この日本版放送の際、メンバー6人にそれぞれ担当の声優がつき、日本語吹き替え版が作製された。声優は山田康雄(チャップマン)、納谷悟郎(クリース)、古川登志夫(ギリアム)、広川太一郎(アイドル)、飯塚昭三(ジョーンズ)、青野武(ペリン)。この6人の声優は完全に固定され、その後劇場版が公開される際も同メンバーが担当した(この日本語版が人気があるため、国内ビデオリリースの数本は日本語版のみのリリースとなっており、本論文では資料として一部にこの日本語吹き替え版を使用していることを断っておく)。

 本章では、テレビシリーズ『空飛ぶモンティ・パイソン』を、放送の4期に合わせて4節に分け、モンティ・パイソンのギャグが完成していくまでを論じていく。といっても特徴そのものが4期それぞれはっきりと異なるわけではなく、あくまで大きな分類として4節に分けて論ずるので、各期が完全に特徴の異なるものということではない。


メンバーは6人 George Perry,THE LIFE OF PYTHON,1st ed. ,London, PAVILION, 1994, pp.20, 36, 50, 66, 82, 94 ↑戻る

合計45回 Monty Python,MONTY PYTHON'S FLYING CIRCUS JUST THE WORDS Vol.1,Vol.2(合本),2nd ed.、 London, MANDARIN, 1990 (1st ed. 1989), pp.320(Vol.1), pp.343(Vol.2) ↑戻る

一時間番組として放送 森卓也「モンティ・パイソン・アンド・ナウ」嶋地孝麿編『世界映画作品・記録全集 '81』キネマ旬報社、1981年、pp.139. ↑戻る

日本語吹き替え版 「モンティ・パイソン・アンド・ナウ・フォー・サムシング・コンプリットリィ・ディファレント」パンフレット、テレキャスジャパン、発行年記述なし、pp.16. ↑戻る

日本語版のみ 1996年12月に日本版が発売されたパソコン用CD-ROMソフト『モンティ・パイソンのHOLY GRAIL』では、故人となった山田康雄と出番の少ないギリアム役の古川登志夫を除く全員が新たに日本語を吹き込んでいる。 ↑戻る

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