決定稿

第二部 土曜日


14 字幕「土曜日」

15 部室棟裏口階段

 扉開き、福岡入ってくる。

階段を上る。

踊り場が見えてくる。一人の男が立ち塞がっている。

階段を上る福岡。

福岡にあわせて男動く。

男「久しぶりですね、福岡さん」

福岡「久しぶりだな、倉田」

構える。

構える倉田。

福岡「お前に意識があるうちに聞いておく。我龍塾はいつからああなった」

倉田「あなたがいなくなった、今年の四月から」

福岡「望んでたことなのか?」

倉田「さあ、素養はありましたけどね」

福岡「お前はそれで満足なのか?」

倉田「俺がなぜ、今ここにたってると思います?」

 にらみ合う二人。

倉田動く。一瞬の攻防。

倒れる倉田。 崩れる音。

 服の乱れを整え、福岡再び階段を上る。

16 部室棟前

 蜂谷を王仁、壁に身を隠し、あたりを伺いながら印刷室へと向かう。蜂谷は書類を持ち、王仁はインクと印刷用紙の束を持っている。

蜂谷「すいませんね、一緒に来ていただいて」

王仁「そんなもん(書類)見ちゃったら仕方ないよ」

蜂谷「印刷できますかね」

王仁「なんでよりによって中室の印刷室なんか使うの」

蜂谷「活動家は貧困なんです。学内なら紙とインク代で済みますから」

王仁「印刷できるかね」

17 部室棟

 踊り場。福岡一人で立っている。

 階段の上から女が一人降りてくる。

女「先輩」

福岡「悦子か」

悦子「もう、やめてくれませんか。私は先輩が女に手を上げないことを知っています」

福岡「我龍塾の現状を見過ごせというのか」

悦子「…陽子なら、もういませんよ」

福岡「そんなことじゃない。俺は現状を見て」

悦子「集団のために個人をないがしろにするんですか。私の知っている先輩はもっと個人を尊重する人だった。社会に出ると人は変わるんですね。陽子にその姿を見せなくて済んだことが、不幸中の幸いかもしれませんね」

福岡「今の塾の姿が、個人を尊重したものなのか?」

悦子「さあ、私はもう塾をやめましたから」

福岡「なら、何故ここにいる」

悦子「先輩と同じ、愛塾心からでしょうね」

福岡「何故、塾をやめた」

悦子「四年ですから」

 悦子構える。

 福岡、見ているだけで構えない。

福岡「悦子、お前は愛塾心からと言ったが、俺は俺のためにやっているだけだ。愛塾心がないと言えば嘘になるが、それでも、これは俺自信のためにやっていることだ」

 悦子、戦意喪失。

福岡「行かせてもらうぞ」

 福岡、階段を上りだす。

振り替える悦子。

悦子「待って、これを。陽子の連絡先です」

 福岡、連絡先の紙を受け取って階段を上る。

18 印刷室

 黙々と作業をする蜂谷。

 外の様子を伺う王仁。

王仁「あんたもよく一人でこんなもの盗んだね。友達いないの?」

蜂谷「ノンポリばかりで」

王仁「大学転覆でも謀るつもり?」

蜂谷「それじゃこの人達と変わりません。なんとなく嫌じゃないですか」

王仁「偉いもんだ」

蜂谷「馬鹿にしてるんですか?」

王仁「いやそんなんじゃなくてね」

印刷室を覗く人影(愛川)。

電話をかける。 足音。電話音。

19 部室棟踊り場

 立ち塞がる男。この場面、会話すべて中国語。

福岡「お前もか、小龍」

小龍「春に九竜島で会って以来ですね」

福岡「何故俺に挑む」

小龍「金ですよ。準備はいいですか」

福岡、階段駆け上がる。

対峙する二人。

両者構える。

にらみ合い、動かない。

20 シーン12の部屋

電話している男2

男2「はいはい、ええ、こちらでもちょっと一悶着ありまして、落ち着いたらすぐ、はい、愛川さんも気をつけて」

電話きる。

部屋の奥で男1が手足を縛られている。

ノックの音。男2、玄関へ。

男2「どちらさまですか」

外の声「俺だ、開けろ」

男2、扉を開ける。廣岡が立っている。

男2「おはようございます。実は愛川さんから連絡があって」

廣岡「その前に、書類盗難の責任者がわかったって?」

男2「はい」

廣岡「一人でよくやったな」

男2「ありがとうございます」

広岡「入るぞ」

廣岡室内へ。

男1の口に貼られたガムテープを剥がす。

男1「おはようございます、廣岡さん」

廣岡「おはよう梅宮」

殴る。

廣岡「松方」

松方(男2)「(声)はい」

廣岡「愛川がなんだって」

21 部室棟踊り場

戦う福岡と小龍。

激しい攻防の末倒れる小龍。

福岡「…あと二人」

 福岡振り替える。

「寺田」の文字。文字をなぐる福岡。

福岡「寺田」

ぼーっとしている部員A。

立っている山城(部員B)。

見ている福岡。

立ち上がる部員A。

福岡「二人同時かこの卑怯者」

山城「手前が準備完了前にくるからこうなるんだ馬鹿野郎」

構える二人。上ってくる福岡。

22 印刷室

 印刷された書類を整える蜂谷と王仁。

王仁「裏がとれたからってわけじゃないけど、中執の廣岡、なんで皆うさん臭いと思わないのかね」

蜂谷「どうでもいいんじゃないんですか。人のせいにできるし」

王仁「あんたは会長になりたいの?」

蜂谷「そこまで考えてません」

23 部執棟踊り場

やる気十分な山城。

乗り気ではない部員A。

まいったねこりゃといった福岡。

山城「どっからでもかかってこいこのやろうあその前に眼鏡」

ヌンチャク一発。

山城「うーん」倒れる。

福岡「わけを聞こうか」

連れていかれる部員A 。

24 大学前の坂

廣岡と松方が歩いてくる。

25 我龍塾部室

 福岡、部員Aすわっている。

部員A「今更ですが自己紹介しますと、ぼくは川谷といいまして、二年で、お話ししたように去年から在籍はしているんですが、ちゃんと来るようになったのは先月からなんです。理由はまあ、気楽になったから。福岡さんのことは聞いていました。すごい人だってことも。でも皆、もうあんな厳しいのは嫌だって、だから今年からはもっと気楽に、いろんなことをやるんだって」

福岡「一人も反対する者はいなかったのか」

川谷「いましたが、彼らを含む実力者全てが退部するような裏工作があったと聞いています」

福岡「金か」

川谷「ご存じですか」

福岡「小龍から聞いた」

川谷「それはほんの一例でして」

福岡「誰の仕業だ」

川谷「中央執行委員会です。学内の覇権をにぎりたかったんですが、福岡さんや我龍塾の実力者が目の上のこぶだったんですよ」

福岡「金以外の裏工作ってのは」

川谷「会長の廣岡さんに、塾生の多くが惚れたんですよ。あなたの去った後に支持する人が欲しかったんでしょうね」

福岡「お前もか」

川谷「ぼくは別に」

福岡「ならお前が支持されるくらいになれ。誰も支持なんかしなくていい」

川谷「はい」

26 部室棟外

 蜂谷と王仁、印刷した書類の束を持って歩いてくる。

 学生が一人通りかかる。

 蜂谷、書類をわたすが受け取ってくれない。

 学生そのまま歩いていく。

 愛川が通りかかる。

 蜂谷、強引に書類をわたす。

 愛川、受け取って、少し歩いて振り返り叫ぶ。

愛川「あ、あああああ」

蜂谷と王仁振り返る。

蜂谷「あんまりいませんね」

王仁「土曜の午後だしね。月曜にしたら?」

蜂谷「それまで私が無事でいられると思います?」

王仁「いや」

 王仁、なにやら気配に気付く。

王仁「確実に学生に渡すんであれば各部室においてくるのがいいんじゃないかな」

蜂谷「あそうか。それじゃあ行きましょうか」

王仁「はい(書類を渡す)。俺は疲れたから一人で行ってくれ」

 蜂谷、文句ありげな顔で部室棟へ向かう。

王仁、準備運動。

学内に廣岡・松方入ってくる。王仁構えるが一行気付かない。

王仁「待て、貴様等」

 一行立ち止まる。

松方「誰だ手前」

王仁「知らないのか? 貴様等が血眼になって探している男が目の前に現われてもわからないとはな。教えてやる。俺はBB福岡なき後、善良な学生を悪の魔の手から守る新たなる男、大東亜帝国大学第弐格闘部虎の穴元主将王仁十三郎ことドラゴン番長様だ」

一行ひるむ。

王仁、シーン2と同じ奇声をあげる。

27 部室棟

 階段を上る蜂谷。奇声が聞こえる。

窓から外を見ると王仁と廣岡・松方が対峙しているのが見える。

蜂谷十字を切り、先を急ぐ。

28 我龍塾部室

 奇声に気付く福岡・川谷。

福岡「今何か聞こえなかったか」

川谷「ドラゴン番長?」

福岡「何?」

福岡部室の外へ走り出す。

29 部室棟

 廊下。各部室扉に書類を挟んでいく蜂谷。

 背後でおおきな足音。

 蜂谷振り向く。

30 部室棟 

欠番。

31 バス停

松方と戦う王仁。見ている廣岡 。

松方を倒す王仁。

向かい合い近寄る王仁と廣岡。

32 部室棟外

部室棟を出て走る福岡。

王仁、走ってくる福岡のところへ倒れ込んでくる。

福岡「王仁、しっかりしろ」

王仁「福岡か。後のこと、頼んでもいいか」

福岡「ああ、ゆっくり気を失ってろ」

王仁「福岡、気を付けろ。終わったら起こしてくれ」

 王仁、気を失う。

 福岡、王仁をそっと地面に降ろす。

 にらみ会う福岡と廣岡。

廣岡「やっと出てきたな、BB福岡」

福岡「これ以上の非道は許さんぞ廣岡公威」

廣岡「俺の名を知ってるとは光栄だ。その様子だといろんなことを聞いたようだな。後は俺に殺されれば全ておしまいってとこか」

福岡「殺されるのは手前だ」

廣岡「ドラゴン番長を倒した俺を殺すだなんて、随分自信に満ちた発言をするな、ブリジッド」

福岡「BBだ、ブリジッドじゃない」

廣岡「そう怒るなよ、ベベちゃんよ」

福岡逆上。殴りかかるが、廣岡、福岡をかわし攻撃。しばし福岡弄ばれる。

 廣岡が声を荒げ、アルミホイルの塊が福岡の手元まで転がる。

頭をおさえて振り返る廣岡。

振り替えるとシーン3の女がいる。

女「昨日はどうもありがとうございました。今日はちゃんと余計目に作ったんです。どうぞ召し上がってください」

急いで握り飯を食べる福岡。

立ち上がる福岡。

復活。

反撃開始。廣岡に攻撃の隙を与えない。倒れる廣岡。

戦い終り振り返る。

福岡「ありがとう。君のおかげで助かった。君の名は」

女「陽子といいます」

福岡「知り合いに、同じ名を持つ女がいたな。さて、少しはこの大学も静かになるだろう、じゃあな」

陽子「あの、お名前は」

福岡「自分から聞いておいて失礼かもしれないが、生憎と名乗るのは好きじゃないんでな。今回は勘弁してくれ」

 福岡、王仁を連れて去る。

33 部室棟

 窓から様子を見ている蜂谷。一人で拍手を送る。


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