☆彡 星の民俗をたずねて ☆彡

2023年9月25日

これまでに、当館が実施した調査の概要を整理して紹介しています。

調査のあゆみ 伝承記録全国マップ 年度別調査地一覧(2014〜)

地域別調査年代図


調査のあゆみ

【 第T期 】
   天文民俗に関する聞き取り調査の出発点は、1974年の飛島(山形県酒田市)から始まりました。 地元の漁師から、イカ釣りの際に利用していた星の伝承について初めて話を聞く機会を得たのです。 その後1975年から1976年にかけては、北海道の積丹半島や青森県の下北半島において主に 「イカ釣りと星」に関する伝承を集中的に記録することができました。
 一方、地元では1975年に埼玉県名栗村(現飯能市)の山間に残された民家で偶然に再発掘され た『カワハリボシ』との出会いをきっかけに、1976年から1985年頃までの約10年間、東京 都および埼玉県を主体とする関東地方西部山間域を対象に「炭焼きと星」の伝承を求めて、かつての 炭焼き経験者を訪ね歩きました。この調査は、その後も断続的に1993年頃まで継続され、さらに 1992年から1997年にかけては地元埼玉県内の集中調査に取り組み、約76lの自治体につい て現地を踏査しました。その記録は星名伝承にとどまらず、信仰や行事、有形民俗資料など多岐にわ たっています。

【 第U期 】
 1998年から2003年の6年間については、埼玉県を除く利根川中・下流域の千葉県、茨城県、 栃木県、群馬県における本流筋の幅約10`に含まれる自治体を対象に天文民俗全般の集中調査を実 施しました。流域全体を星の民俗文化圏として捉えたこの調査では、星名伝承のなかでも特にオリオ ン座三つ星の分布圏と月待信仰の分布圏が特定の地域で重なるという新たな発見があり、記録の積み 重ねがいかに重要であるかを改めて感じさせられました。
 利根川流域には、二十三夜塔や十九夜塔、二十二夜塔を主体とする夥しい数の月待塔(広義の解釈 による)が分布しています。現地調査の結果や各自治体の既存資料などを概観すると、月待塔の構成 や分布密度には地域的な特性がみられますが、十九夜講や二十二夜講などは本来の月待行事である二 十三夜講とは異なり、安産祈願を目的とした女人信仰としての性格が強く表れているようです。

【 第V期 】
 2004年からの数年間は事情により休止状態となりましたが、2008年夏から本格的な調査を 再開しました。調査の開始から既に30年を経過し、伝承者の減少等による聞き取り調査の環境悪化 が予想されるなか、調査地域や聞き取り方法を一新し、その対象を漁労従事者に絞り込んで臨みまし た。その結果、従来の調査では得られなかった伝承を記録することができるようになったのです。そ の一つが風に関する伝承であり、こちらは星名伝承よりも伝統的な利用体系がまだ多くの地域で維持 されていることが確認されました。現在では調査の重要な項目となっている日和山と方位石、さらに ワタリガニ類やウツボの食文化についての伝承などは、第V期調査を進める過程において必然的に生 じた産物といえるでしょう。こうして、当初の東京湾沿岸域での集中調査から次第に範囲を拡大し、 数年後には福島県南部沿岸域より房総半島、三浦半島、伊豆半島、そして駿河湾沿岸に至る漁港をひ たすら訪ね歩きました。
 さて、2011年3月といえば、あの未曾有の大災害となった東日本大震災が記憶に新しいところ です。そのとき、特に東日本での調査はしばらく休止せざるを得ないのではないかと危惧されました が、同年の4月に山梨県内を歩いたところ、むしろ従来にも増して前向きな調査姿勢が必要であるこ とを痛感させられました。
 これを契機として、調査は一気に全国規模へと拡大することになったのです。まずは、2011年 11月に調査の原点である山形県から出発し、続いて富山県、秋田県、石川県など東北から北陸にか けての日本海側を歩き、2年後の2013年には広島県で調査を行い、西日本地域で初めての足跡を 残すことができました。この流れは、東海、近畿、中国、四国、九州へと拡大しています。こうした 沿岸部での調査と並行して、関東甲信の内陸部においても従来の調査を継続し、十五夜行事や月待ち、 三日月信仰、妙見信仰など星をめぐる文化や文化財に関するより多くの情報が得られるようになりま した。
 そのような状況を踏まえ、2014年8月に東北地方で唯一の空白県であった宮城県をようやく訪 れることにしました。大津波のつめ跡が色濃く残るなかで、復興に向けて努力しておられる多くの漁 師と出会わせていただき、貴重な体験を記録する機会に恵まれたのです。短い調査でしたが、今後の 活動に向けて大きな力となったことは間違いありません。2015年には、岩手県北部の沿岸域も歩 くことができました。
 こうして迎えた2016年11月、全国展開への取り組みから丸5年をかけ、一先ず全国47都道 府県の調査を完了することができました。この間、全国各地で多くの方々より星の伝承について話を 伺い、特に印象深い伝承者との出会いも何度かありました。それは全く予期せぬ出会いでありながら、 それでも出かける前からどこかで行き会わねばならない運命にあったような、ほんとうに不思議な出 来事だったのです。まるで、私が訪ねて行くのを待っていたかのように忽然と現れては去って行った 伝承者に、今また改めて感謝するものです。

【 第W期 】
 2017年からは、全国展開調査の第2ステップが始まりました。引き続き西日本を中心とした調 査に取り組む一方で、北海道や沖縄県(本島・宮古・八重山地方)を約40年ぶりに訪れる機会を得 ました。この間、人びとの暮らしは大きく変わりましたが、星の伝承は一部を除いて未だ健在であっ たことにただ感謝するばかりです。
 最終期の調査は、2020年で一区切りつける予定でしたが、新たな感染症の流行によって予期せ ぬ事態に陥ってしまいました。これまでのような調査は、もう出来ないかもしれません。歩いてみた い土地はたくさんありますが、より多くの人から話を聞く機会を得るのは難しい状況になったとみて よいでしょう。
 とはいえ、これまで解決できていない研究課題は山積しています。今後の社会情勢を見極めながら、 できる限り現地を訪ねて情報の収集に努めたいと考えています。
 なお、2020年までの調査概要は以下に示すPDFファイルにて紹介していますので参照してく ださい。

星の民俗調査履歴を開く  《 2021.01.25 》


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星名伝承記録全国マップ  2020.03.25


《 星の伝承記録分布図 【全国版】 》

※これまでに日本の星名伝承が記録された地域を5万分の1メッシュで図示し、
 さらにメッシュ内の記録地点数を5段階で色分けしています. 
 なお、地図に表記できない一部のメッシュおよび島嶼における記録を除きます

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年度別調査地一覧(2014〜2020)

*2021年以降、調査は中断しています。

*2020年は、新型コロナウイルスの影響により、2月以降の調査を中止しました

 1月 神奈川県川崎市

2019年は、以下の18府県の調査を実施しました
 1月 埼玉県八潮市(弓神事)

 3月 茨城県那珂市・笠間市
    静岡県浜松市
    滋賀県米原市
    大阪府豊能郡豊能町・能勢郡能勢町(妙見山)
    兵庫県姫路市
    岡山県倉敷市・笠岡市 

 4月 山梨県南巨摩郡身延町
    奈良県奈良市・吉野郡大淀町・同川上村
    和歌山県和歌山市
    大阪府阪南市・岸和田市・泉南郡岬町・交野市 

 5月 福岡県福津市・宗像市・北九州市
    山口県下関市・周南市・下松市
    広島県呉市・東広島市・竹原市

 6月 埼玉県川越市

 7月 愛知県名古屋市・知多郡南知多町

 8月 長野県伊那市・上伊那郡宮田村
    埼玉県秩父郡皆野町
    福島県いわき市

 9月 栃木県那須烏山市・塩谷郡高根沢町

11月 沖縄県国頭郡国頭村・大宜味村・本部町・伊江村
    沖縄県うるま市・糸満市・島尻郡八重瀬町・与那原町
    沖縄県那覇市・南城市

2018年は、以下の25府県の調査を実施しました
 1月 埼玉県所沢市・東松山市・鴻巣市

 3月 神奈川県中郡大磯町
    千葉県船橋市(天道念仏)
    香川県三豊市・丸亀市・さぬき市
    徳島県鳴門市・三好市
    高知県高知市・香南市・香美市

 4月 三重県伊賀市
    奈良県桜井市
    和歌山県田辺市・有田郡広川町
    京都府加茂郡和束町
    栃木県那須烏山市

 5月 長崎県大村市・長崎市・諫早市・島原市
    佐賀県藤津郡太良町
    熊本県熊本市・宇土市

 7月 福井県坂井市
    石川県金沢市・白山市

 8月 福井県丹生郡越前町
    岐阜県揖斐郡揖斐川町
    千葉県印西市
    長野県東筑摩郡山形村

 9月 茨城県常陸大宮市
    栃木県那須烏山市
    福島県二本松市・安達郡大玉村
    宮城県気仙沼市・本吉郡南三陸町・宮城郡七ヶ浜町
    山形県東村山郡中山町

10月 大分県津久見市
    宮崎県延岡市・東臼杵郡門川町・児湯郡都農町・川南町・都城市
    鹿児島県指宿市・枕崎市・南さつま市

2017年は、以下の21都道府県の調査を実施しました
 2月 東京都港区・文京区(近世江戸の月待名所)

 3月 岐阜県岐阜市
    滋賀県甲賀市
    京都府相楽郡南山城村・同郡笠置町
    奈良県奈良市
    岡山県備前市・瀬戸内市
    香川県観音寺市
    愛媛県今治市・大洲市・伊予市
    広島県福山市
    兵庫県姫路市

 4月 京都府宮津市・京丹後市
    兵庫県豊岡市・美方郡香美町・同新温泉町 

 5月 栃木県佐野市
    埼玉県秩父市

 6月 北海道函館市・北斗市・上磯郡木古内町・松前郡福島町・同郡松前町・
    檜山郡上ノ国町・同郡江差町

 7月 鳥取県岩美郡岩美町・西伯郡大山町
    島根県浜田市・益田市
    山口県岩国市・大島郡周防大島町

 8月 茨城県久慈郡大子町
 
 9月 栃木県小山市・下都賀郡野木町
    宮城県仙台市・気仙沼市・本吉郡南三陸町
    岩手県大船渡市・釜石市
    山形県山形市 

11月 沖縄県宮古島市・石垣市 

2016年は、以下の18都県の調査を実施しました
 1月 東京都豊島区(妙見堂)

 2月 東京都北区(オビシャ、八咫烏)・墨田区(妙見宮)

 3月 兵庫県明石市・淡路市・洲本市
    和歌山県和歌山市
    徳島県鳴門市(妙見神社)・小松島市・海部郡美波町・同郡牟岐町・同郡海陽町

 4月 三重県松阪市・鳥羽市・名張市
    奈良県宇陀市・山辺郡山添村

 5月 茨城県つくばみらい市・取手市
    宮崎県宮崎市・日南市・串間市
    鹿児島県志布志市・肝属郡東串良町・同郡肝付町・同郡南大隅町

 8月 岡山県備前市・笠岡市
    広島県尾道市
    愛媛県今治市・松山市

 9月 群馬県安中市
    長野県松本市

10月 青森県弘前市・東津軽郡外ヶ浜町・西津軽郡鰺ヶ沢町・同郡深浦町
    秋田県能代市・山本郡八峰町岩舘

11月 大分県国東市・豊後高田市・宇佐市・中津市・杵築市
    福岡県行橋市・豊前市・築上郡吉富町

2015年は、以下の22都府県の調査を実施しました
 1月 千葉県銚子市(二十三夜堂、月待の石造物)

 2月 東京都江戸川区東葛西   
    千葉県浦安市

 3月 三重県伊賀市
    奈良県奈良市(十九夜待信仰)
    大阪府泉佐野市

  4月 京都府京丹後市・与謝郡伊根町

  5月 栃木県足利市
    東京都大田区
    千葉県木更津市・松戸市(三日月神社)
    熊本県宇城市・上天草市・天草市・天草郡苓北町・水俣市・八代市・葦北郡芦北町
    鹿児島県阿久根市・出水市

  6月 新潟県新潟市(日和山と方位石)・長岡市・柏崎市・三島郡出雲崎町

 7月 群馬県渋川市・利根郡みなかみ町

 8月 長野県塩尻市・上伊那郡辰野町・東筑摩郡朝日村
    滋賀県米原市・彦根市・長浜市・高島市
    香川県丸亀市・さぬき市・東かがわ市
    愛媛県四国中央市・今治市
    岡山県倉敷市
    福井県小浜市

 9月 福島県いわき市 

10月 青森県八戸市・階上町
    岩手県宮古市・九戸郡洋野町・九戸郡野田村・下閉伊郡普代村
    宮城県塩竈市(日和山と方位石)
    三重県志摩市・鳥羽市(日和山と方位石)

11月 愛媛県宇和島市・南宇和郡愛南町
    高知県宿毛市・土佐清水市・四万十市・幡多郡黒潮町

2014年は、以下の23都府県の調査を実施しました
 1月 栃木県佐野市(三日月神社、織姫神社)
    群馬県高崎市(達磨山少林寺《北辰鎮宅霊符尊》)
    千葉県船橋市・南房総市
    東京都新宿区(三日月不動尊)

 3月 兵庫県明石市・赤穂市
    岡山県倉敷市・備前市
    香川県多度郡多度津町

 4月 栃木県真岡市(三日月神社)・下都賀郡壬生町(三日月尊天)
    山口県下関市(阿川日和山)・長門市
    福岡県北九州市

 5月 神奈川県横浜市・横須賀市
    山梨県山梨市(妙見山と妙見尊)

 6月 島根県出雲市・松江市(美保関日和山、石垣の星印)
    鳥取県鳥取市・東伯郡湯梨浜町・東伯郡琴浦町

 7月 岐阜県下呂市・揖斐郡池田町

 8月 長野県諏訪郡富士見町
    福島県白河市
    栃木県大田原市(三日月不動堂)
    茨城県鹿嶋市
    静岡県駿東郡小山町
    宮城県石巻市(石巻港日和山)・東松島市・宮城郡松島町・牡鹿郡女川町

 9月 長野県塩尻市
    山梨県甲州市(二十三夜堂)

10月 栃木県小山市・下野市

11月 佐賀県唐津市・玄海町・伊万里市
    長崎県松浦市・平戸市
    福岡県福岡市・糸島市

12月 三重県鈴鹿市
    大阪府泉佐野市・泉南市・阪南市・交野市・泉南郡岬町

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