金星と漁業
漁業における金星の利用は、イカ釣り漁において顕著です。伝承もその例外ではなく、特に北日本に集
中しています。
《事例》
○ヨアケノミョウジョウ(夜明けの明星)が出るときはイカがよく釣れる
〔北海道積丹郡〕
○夜中やってイカが釣れなくとも、ヨアケボシ(夜明け星)が出てから釣れることがある
〔北海道古平郡〕
○夜中になんぼ釣れなくとも、メシタキボシ(飯炊き星)が出ると朝イカがつく
〔北海道古宇郡〕
○アケノミョウジン(明けの明神)の出から日の出までは不思議とイカがつく
〔北海道古宇郡〕
○アケノミョウジンの出から日の出にかけてはイカがよく釣れる
〔北海道古宇郡〕
○晩方の七時からつくのがナドキイカで、メシタキボシの出るころになると朝イカがつく
〔北海道古宇郡〕
○日暮れにはナドキイカがつき、朝イカはヨアケノミョウジョウにつく
〔青森県下北郡〕
○ヨアケボシには朝イカがつく
〔青森県八戸市〕
○夜明け前に大きな星が出るときはイカがよく釣れた
〔青森県三戸郡〕
○ヨアケノミョウジョウが出ると、イカだけでなくほかの魚もよく釣れた。また、ヨイノミョウジョウ
が沈むときも魚がよくついた
〔山形県鶴岡市〕
○朝早く、鯛釣り漁に使うアカエビをとりに行くときは、東の空に出るアサノヒトツ(朝の一つ)を目
あてに船を走らせた
〔千葉県銚子市〕
○昔は「アケノミョウジョウが出てきたから漁をやめよう」などと言った
〔千葉県銚子市〕
○朝早く網あげのために出漁するとき、東の空にヨアケノミョウジンを見て夜明けが近いことを知った
〔千葉県勝浦市〕
○ヨアケノミョウジョウが上り始めると夜が明けるので、漁を始めたり終了する目安になった
〔神奈川県横須賀市〕
○夜明け前、ヨアケノミョウジョウが出てから海面がうす明るくなることをハマジラメといって、この
ときが朝イカのナツキ
〔新潟県両津市〕
○オオボシの出にはイカがつく
〔新潟県柏崎市〕
○オオボシの出にはイカがいちばんよく釣れる
〔新潟県三島郡〕
○アケボシ(明け星)が出たら、漁を終えて帰る
〔石川県羽咋郡〕
○イワシのまき網漁では「トンキョボシ(頓狂星)が出たから早く網をあげなければ」という
〔静岡県沼津市〕
○トンビアガリは夜明けを知らせる大きな星で、昔のアジ網漁ではこの星の出をみて、あといくつ網を
入れられるのか見当をつけた
〔静岡県伊豆市〕
○夜明け前にヒトツボシが出るとエビ網をあげに出かけた
〔三重県尾鷲市〕
○オオボシが出ると夜明けが近いといって、漁をやめて帰る
〔兵庫県明石市〕
○ヨアサノミョウジョウ(夜朝の明星)が出る瞬間にハマチがよくさばる
〔島根県松江市〕
○ヒトツボシ(一つ星)が小島の上に出たら、フクロ網をあげて漁を終えた
〔広島県福山市〕
○漁のときはヨアケボシ(夜明け星)の出で時間をみていた
〔長崎県大村市〕
○東の空にヨアケボシが出たら、ゲンシキ網を流す深さを変えた
〔長崎県島原市〕