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出稼ぎ派遣工場
―自動車部品工場の光と陰
 












 
池森憲一/著
出版元: 社会批評社 
四六判 240頁 並製
本体1700円+税
ISBN978-4-916117-84-7C0036

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まえがき
 
 二〇〇七年、トヨタは生産台数世界一になり、愛知県の有効求人倍率は、何十カ月も全国一位を続けていた。同年度のトヨタの営業利益は二兆二〇〇〇億円を超え、六年連続で過去最高益を記録した。また、トヨタと並行して主要部品メーカーも増収増益を続けていた。
 企業の利益をもたらすコスト減は、トヨタのいわゆるジャストインタイム生産方式(必要な物を、必要な時に、必要な量だけ生産する)によっていたことは言うまでもない。では、物を作るための人材確保を可能にしていたのは何だったか。それもまた、ジャストインタイム人材確保方式(必要な人手を、必要な時に、必要な数だけ供給する)と言えるものだった。
 つまり、二〇〇四年の労働者派遣法改正により解禁になった製造業派遣である。「年齢不問」「経験不問」「学歴不問」「外国人可」……。こういう求人により、北海道や東北・沖縄から、また地球の反対側のブラジルから、一年中いつでもどこへでも、ピンポイントで「ゲンダイの出稼ぎ労働者」は工場へ送り込まれるようになった。
 これら二つのジャストインタイム方式によって、愛知県の製造業が好景気に沸いていた二〇〇七年二月、私は愛知県のある自動車部品工場で派遣労働者として働き始めた。これは、その工場で働いていた「ゲンダイの出稼ぎ労働者」=派遣労働者たちの物語である。「派遣切り」、「派遣村」という言葉も存在せず、景気対策など、まだ誰も語っていなかったころの話しである。
                         2009年10月
                                      著 者
 
 
目  次
第一章 人材派遣会社
   工場見学
   二分間の面接
   私にとっての製造業
   製造業と派遣労働者
   トヨタ系自動車部品メーカー
 
第二章 田戸岬工場製造部第六生産課
   仕事初日
   出荷検査
   「二六パレットやり終い」
   陽気なブラジル人たち
   北海道から出稼ぎに来た花巻さん
   一三八組の正社員たち
   「サービスでやっていけ!」
   細かいキズの検査
 
第三章 出稼ぎのブラジル人労働者たち
   銀行員だったミキオ・ウエムラ
   おしゃべりのロドルフォ
   祖父母が沖縄人のイラン・ウィリアン
   辞めさせられていくブラジル人
   「正社員にはならない」と言うケンジ
   働くコマのブラジル人
   ビーチでシュハスコ
   「ブラジル人社外工杯」争奪
 
第四章 自動車部品製造ライン
   昼夜二交替
   睡眠剤に頼る
   いよいよラインへ
   機械との競争
   〇四ラインのメンバー
   三七秒の「進度」
   三九〇ライン
   強面ダシルバの夢
   イケ面ブルーノ
   ラインは生きモノ
   イケ面ブルーノの出稼ぎ
   ミキオが帰国
 
第五章 製造現場の光と陰
   自己責任
   辞めていく日本人社外工たち
   汐谷君という社外工
   突発休み!
   地域経済崩壊の北海道
   モノ作りは楽しい!
   ブラジル人と日本人社外工
   雇用の創造
   取材日記から
 
第六章 日本人の出稼ぎ社外工たち
   沖縄から家族四人でやってきた島袋さん
   ハケンで全国を歩く比嘉君
   正社員を拒む長友さん
   ズサンな人間関係を嘆く平目さん
   希望を消さないための抵抗
   惜しまれて退社
 
あとがき
 
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