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労働運動再生の地鳴りがきこえる
―21世紀は生産協同組合の時代
 











 
武 建一・脇田憲一/編著
出版元: 社会批評社 
四六判 265頁 並製
本体1800円+税
ISBN4-916117-68-9 C0036

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 目   次
 まえがき 9
 プロローグ 日本プロ野球選手会のストライキ 13
      「やむにやまれず立ち上がった」 14
      「ナベツネに負けてたまるか」 17
      「みんな野球が好きなんや」 20
      21世紀型の労働運動 23
 
 第1講 関生労働運動の40年 27
     闘いの中から関生支部誕生 28
     「タコ部屋」暴力的労務管理支配からの脱出 31
     産業政策闘争の飛躍的前進 32
     セメント・生コンの産業政策とは何か 33
     1970年代に達成した協同労働権の確立 36
     日本共産党の分裂攻撃と警察権力の弾圧に耐えて 39
     日本共産党と関生支部との対立・分岐の本質 42
     関生コミュニスト同志会発足と第2次権力弾圧 46
 
 第2講 「総評」の解体と「連合」の衰退 49
     なぜ「総評」は解体したのか 50
     公労協の解体 52
     全民労協の結成 55
     左派系労働組合の敗北 58
     21世紀に向けた国家・総資本の労働戦略 59
     総評運動に可能性はなかったのか 62
     「連合」の構造的衰退 66
     労働運動再生に向けて 72
 
 第3講 労働者生産協同組合の歴史過程 79
     冷戦体制の崩壊と9・11事件以後の情勢 80
     労働者生産協同組合の形成過程 83
     労働者生産協同組合の諸形態 87
 
 第4講 対抗主体としての多元・多様な協同組合運動 91
     地域合同労組(コミュニティユニオン) 92
     職域・職能組合(管理職ユニオン) 96
     地域複合型協同組合 98
     大衆組織と政治組織の組織原則 103
 
 第5講 「ジェンダー平等」と労働社会 107
     地域運動に転進 108
     性別役割分業意識の実態 110
     国連の国際婦人年と女性差別撤廃条約 116
     女性解放運動と労働運動の結合 118
 
 第6講 関生労働運動と日韓民主労働者連帯 121
     東アジアが世界的激動の舞台に 122
     激動する韓国の労働運動 124
     日韓労働者共闘と民主労働者連帯 130
     本講の結語 136
 
 ■獄中からの報告 関生労働者運動の理念と「関生魂」 139
            権力の弾圧に抗議し、6名の早期釈放を求める
     「逮捕劇」の真相とは 140
     6人の異常な長期拘留 142
     正当な組合活動への弾圧 143
     関生支部運動の特徴と成果 145
     不当弾圧で得をするもの 148
     「生コン支部魂」と運動理念 150
     支配側の深刻な危機 155
     いま起ち上がるとき 157
 
 ■提言 物流組織化戦略ノート 159
     第3次流通革命に対抗してトラック労働者はどう生きるか 
 解 題 160
 第1章 第3次流通革命と物流業界の動向 163
   1 アウトソーシングって、なに? 163
   2 大手物流業者が2、3社になるって? 165
   3 中小・零細運送業者が3分の2倒産するって? 171
   4 押し寄せるグローバリズム 175
 
 第2章 トラック労働者の実態はどうか 182
   1 命を削るトラック労働者 182
   2 「成果配分制」賃金を考える 186
   3 稼働明細表にみる賃金収奪 191
 
 第3章 トラック労働者はどう生きるか 195
   1 忍耐はもう限界にきている 195
   2 対抗戦略は協働労働権の確立 198
   3 トラック労働者の要求と組織化戦術 201
 
 第4章 韓国「貨物連帯」のストライキに学ぶ 204
   1 「貨物連帯」のストライキとは 204
   2 「貨物連帯」ストの要求事項 205
   3 「貨物連帯」ストの勝利的妥結 206
   4 「貨物連帯」組織化は要求と闘いの結晶 208
 
■資料編 関生支部権力弾圧関係 211
◆資料編解題 212
   ●緊急声明 全日本建設運輸連帯労働組合等(1・13) 221
   ●新たな権力弾圧に抗議する声明(3・10) 226
   ●武建一委員長の勾留理由開示公判での意見陳述(1・21) 229
   ●武建一委員長の勾留理由開示公判での意見陳述(3・24) 233
   ●武建一委員長の旭光事件第1回公判での意見陳述(5・23) 239
   ●武建一委員長から関生支部第41回定期大会へのメッセージ(10・16) 243
   ●「労働者宣言」公表にあたってのメッセージ 251
   ●関生コミュニスト同志会の「労働者宣言」・内規 254
 
あとがき 261
 
 
 
 
 
 
 
まえがき
 
 
 本書は、21世紀の労働者運動の再生を主題とする。
 21世紀に入って、日本の労働組合の組織率はついに20%を割った(2004年度厚労省労働組合基礎調査19・2%)。連合「春闘」の賃上げ自粛路線が続くなか、労働者運動の「冬の時代」は未だ出口は見えない。1989年、ベルリンの壁の崩壊から始まった1991年のソ連・東欧の国家社会主義の終えんは、戦争と革命の20世紀の終末が決してバラ色でなかったことを告げた。にわかに回帰した新自由主義  グローバリズムは、2001年9・11事件以後、「テロとの戦争」に突入して世界を暗雲で覆っている。
 1世紀におよぶ資本主義と社会主義のせめぎあいのなかで、一方は国家社会主義として失敗し、民衆の反乱で崩壊した。他方で「テロ戦争」に突入した新自由主義  グローバリズムは、貧困化する民衆の抵抗に直面し、体制危機の泥沼にはまっている。われわれは、20世紀後半の労働者運動、社会主義運動の後退局面の当事者であったが、1世紀の運動サイクルから歴史をみれば、闘う労働者や民衆は決して敗者ではないことを確信している。労働者運動は、たとえ敗北の繰り返しであったとしても、民衆の闘いの流れは地中深く伏流水となって続いているのであって、砂漠の長い道程であっても必ずオアシスにたどり着くことができるのである。
 本書は、そういう意味で観念的に夢を追うのではなく、運動の具体例を歴史的・現実的に検証・考察して、21世紀型の労働者運動再生モデルを設定した。そしてその再生モデルとして、連帯労組関西地区生コン支部(以下、「関生支部」または「関生運動」という)の、生コン中小企業とタイアップした生産協同組合運動を取り上げた(第1講)。
 もちろん一地方、一業種の運動モデルを一般化するには無理があるという意見や、果たして生産協同組合が労働者運動再生の中心テーマなのかという疑問も出てくるであろう。それらの疑問や意見に答えるために、労働組合と協同組合の歴史過程の検証(第2講、第3講)や、今日における多元・多様な生産協同組合形態の考察(プロローグ、第4講)も、本書の主要テーマとした。
 そして、新自由主義(市場原理主義)  グローバリズム、「テロとの戦争」との対抗関係として、「ジェンダー平等」と労働格差社会、派遣・パート労働者と非正規雇用問題(第5講)、東アジア進出の日米韓多国籍型資本による太平洋セメントに対抗する、関生支部と韓国建設運送労組の共同闘争、日韓民主労働者連帯(第6講)も主要テーマとした。
 なお、今後への提言として「物流組織化戦略ノート」を掲載した。また「資料編」は、関生支部権力弾圧関係資料及び労働者の政治的結集を呼びかけた「労働者宣言」を、公開記録として掲載した。詳しい説明は「解題」を参照されたい。
 いずれも本書は、21世紀初頭の反グローバリズム運動に結集し、労働者運動の再生と権力弾圧に屈せず日夜闘っている労働者・市民の仲間たちへの、連帯と激励の願いをこめて刊行するものである。
                2005年12月
                                     編著者
 
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