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検証 党組織論
―抑圧型から解放型への組織原理の転換











 
小西 誠・生田あい他/著
出版元: 社会批評社 
四六判 267頁 並製
本体2000円+税
ISBN4-916117-60-3 C0036

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 まえがき
 
 本書は、『検証 内ゲバ』(社会批評社刊)PART1・PART2の発刊を契機としながら、これとは独自に「検証 党組織論」として行った共同研究の成果である。
 私たちがこの共同研究を行うにいたった動機は、二〇世紀社会運動のさまざまな負の教訓を検証し、その中から現在、危機的状況下にある運動主体の「解体的再生」をはかるためである。
 なぜなら、この二〇世紀社会運動に多大な影響を与えた党組織論の検証は、これまでほとんどなされなかったと言ってよいからだ。一九八〇年代に、わずかに加藤哲郎氏や藤井一行氏などによるものが散見されるだけである。
 今日、日本の左翼諸政党・党派の凋落・崩壊には著しいものがある。いわゆる「党派離れ」である。しかし、この根本的原因は、まったくと言っていいほど解明されていない。この傾向は、日本ばかりか世界中の議会政党においても同じようなものが見られる。いわゆる「無党派層の増大」という現象だ。
 私たちは、このような「党派離れ」「無党派層の増大」の大きな要因のひとつは、既存党組織が「抑圧的な組織原理」を未だに護持しているためだと考えている。つまり、これらの党組織は、社会変革の志をもった今日の青年大衆を参加させ、その自己実現を図るべく二一世紀型の「解放的組織」になり得ていない、ということだ。
 この解放型の組織原理を創出するために、私たちは、先人たちの党組織論を厳密に、批判的に検証してきた。すなわち、マルクス、エンゲルス、レーニン、トロツキー、ローザ、スターリン、そしてコミンテルンなどの組織論である。また、これらの組織論が、実際に日本の左翼諸政党・党派にどのように「原理的」に継承されているのかも、批判的に検討してきた。
 もちろん、この共同研究は、まだ始められたばかりであるから、ここで叙述されている結論は、とりあえずのものであり、究極的なものではない。
 本書の共同研究を出発点にして、活発な党組織論の議論が巻き起こることを期待したい。
 本日、戦場下のイラクへ自衛隊派兵部隊の本隊第一陣が出動した。戦後憲法の「平和主義」は根底から覆されつつある。今この時点で、日本の戦後の反戦運動・社会運動は、大胆な「変革と再生」が求められている。
 このために、本書の「検証 党組織論」が何らかの形で役立つことになれば、幸いである。
                              二〇〇四年二月三日
 
 目   次
まえがき 2
第1章 日本における左翼諸政党・諸党派の組織論  小西 誠  7
 はじめに 7
 1 抑圧的組織原理としての民主的中央集権制 10
 2 党員・大衆の抑圧システムと化した党 27
 3 二一世紀型の新しい党の組織原理 37
 
第2章 レーニン、トロツキー党組織論の批判的検討  吉留昭弘 47
 はじめに 47
 1 レーニン党組織論の特徴 49
 2 ローザ・ルクセンブルクのレーニン批判 53
 3 トロツキーのレーニン批判 55
 4 第一〇回党大会決議と党建設の二つの方向 60
 5 レーニン最後の闘争と党組織問題 64
 6 レーニン後の党内闘争とスターリン主義組織路線の形成過程 70
 
第3章 ローザ・ルクセンブルクの中央集権制批判と二一世紀の党論  生田あい 80
 はじめに 80
 1 「中央政治局の壁」の前で 83
 2 現代に継承すべきローザ組織論 91
 3 コミュニズムの理念(原理)と党観 103
 
第4章 マルクス『共産主義宣言』の党組織論の原点  いいだ もも 115
 1 『共産主義宣言』による初発の党観 115
 2 共同体ゲマインシャフトから契約社会ゲゼルシャフトへ 124
 3 プロレタリア革命の画する人類文明史の再構想 132
 4 一八四八年革命の帰趨とそのマルクスの組織論的総括 143
 5 意識革命の「三つの源泉」とライプニッツスピノザ哲学 151
 6 意識と実践、主体と客体のマルクス的弁証法の根底から 161
 
第5章 コミンテルンの加入条件二一カ条とスターリン主義組織論  来栖宗孝 173
 1 コミンテルンの創設について 173
 2 コミンテルン加入条件二一カ条の解題 177
 3 コミンテルン組織論の誤謬とはなにか 204
 
第6章 言語の政治におけるNAM・世界社会フォーラム組織論評註  木畑壽信 210
 1 問題の政治空間《真理の政治》から《言語の政治》へ 210
 2 地層の移行《言語の政治》 219
 3 《新しい型の党》組織論の生成 252
 
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