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新左翼運動その再生への道










 
小西 誠著
出版元: 社会批評社 
4-6 210ページ 並製
1700円+税
ISBN4-916117-40-9 C0036





 

紹介
元反戦自衛官の著者が、その20数年の実践を通じて語る新左翼運動の現状。武装闘争、大衆運動、党組織、内ゲバなどを経験を通してその危機の打開の道を提起する。
      まえがき
       本書で試みたのは、私自身が経験した七〇年安保闘争とそれ以
      後の内ゲバ、武装闘争の検証であり、その路線をもたらした運動
      と組織、理論である。
       ここで提起するのは、私自身の経験に基づく問題意識以上のも
      のではない。したがって、まだこの検証・総括は、十分とは言え
      ない。
       この一〇数年来、いや二〇数年来、新左翼運動の危機と崩壊が
      言われ、その運動的・理論的検証が叫ばれ続けてきた。
       六〇年安保、七〇年安保という二つの安保闘争を闘い、あの輝
      かしい時代を突き抜けてきた新左翼は、どうしてここまで後退し
      たのか、誰もが大きな疑問と関心とを抱かざるを得ないからだ。
       しかし、こうして検証が叫ばれながらも、ほんのわずかな例
      外を除いていっこうにそれがなされる動きはない。
       昨年は、塩川喜信氏らの共著『新左翼運動の光と影』(新泉社
      刊)と島成郎氏の『ブント私史』(批評社刊)などが出されてき
      た。ようやくこの検証が始まったという歓迎すべき出来事である。
       だが、ここでも一九七〇年以降の内ゲバや武装闘争、そして、
      それをもたらした党派の運動や組織、理論に対する検証作業は、
      ほとんどみられない。こういう「重たい課題」を検討するのは、
      当事者はもとよりその関係者たちにとって、とてもつらい作業
      だからだろうか。
       しかし、この作業を行うことは、いま、非常に大事なことだ。
      なぜなら、急速に進行する日本の内外の危機の中では、この検
      証なしには、新左翼運動、あるいは左翼運動自体の「解体的再
      生」は不可能だからだ。
       私は、このささやかな本を著すことが始まりとなって、大き
      な議論が巻き起こってくることを期待したい。この活発な議論
      こそ、新左翼運動の「変革的再生」のために、いま、もっとも
      必要なものだからだ。
                        二〇〇〇年四月二八日
                              小西 誠
まえがき 2
第1章 七〇年安保闘争 9
  三〇年目の現在 9
  自衛隊の中で自己否定 11
  戦後体制への批判 16
  何を実現したのか、実現できなかったのか 19
  七〇年安保闘争の社会的・文化的影響 23
  七〇年闘争の影 27
  全共闘運動の転向者たち 31
第2章 検証・内ゲバ 36
  強く望んだ統一戦線 36
  吉川勇一氏の歪曲 42
  内ゲバ一〇年「戦争」の検証 45
  学生運動で始まった内ゲバ 48
  革マル派の内ゲバ論 51
  対革マル自衛武装の選択 56
  「ファシスト・カクマル」論の誤り 57
  「先制的内戦戦略」論の誤り 61
  内ゲバの発生史 64
第3章 軍事主義路線 68
  中核派の対権力武装闘争への転換 68
  予測された軍事中心主義 71
  『マルクス主義軍事論入門』の発行 73
  「革命軍戦略」という軍事主義への純化 80
  大衆運動と軍事主義の対立 82
  対権力の赤色テロに 86
  武装闘争の停止を要求して対決 91
  野島三郎氏の失脚 98
第4章 大衆運動と理論・路線 106
  共産主義者的感性の喪失 106
  掃海艇派兵への単独決起 110
  「五月テーゼ」でのなし崩し的路線転換 114
  「革命軍」の解体 119
  反戦共同委員会の結成 124
  反戦共同委員会代表の辞任 130
  大衆運動へのゲバルトのもちこみ 133
  大衆団体の独自性・自立性の否定 139
  党と大衆組織との関係 144
  破防法裁判とオウム裁判をめぐる問題 149
  情勢認識と理論をめぐる対立 154
第5章 組織の官僚主義化 166
  官僚主義克服の闘い 166
  組織の官僚主義的形骸化 169
  党内での人間性の否定 172
  個性の軽視と無視 176
  党内民主主義の完全欠如 180
  上意下達の命令主義的組織に変質 182
  指導機関の選挙制の原則 187
  非公然体制の名の下での非公開制 193
  レーニン組織論のドグマ化 197
  スターリン主義への回帰 202
結語 左翼統一戦線の結成 206
  人間主義・自然主義としての共産主義(党)の復権 206
  改憲阻止の左翼統一戦線を 208
 
本書を、権力との闘いの中で斃れた戦士たち、内ゲバによって
斃れていった戦士たちに捧げる。願わくば、本書がこれらの戦
士たちの家族・友人たちの心に安らぎを与えんことを。
 
 
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