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反戦自衛官
―権力をゆるがす青年空曹の造反』(復刻増補版)









 

小西 誠/編著
出版元: 社会批評社 
四六判224頁 並製
本体1800円+税
ISBN978-4-907127-24-4 C0036



 
目   次
読者に     角南俊輔 4
T 反戦自衛官の誕生 7
  1 小西三曹、きみを逮捕する 8 
  2 良識ある自衛隊員諸君!――「アンチ安保」全文 22
  3 取調べは極秘にはじめられた 31 
 
U 貧困と差別からの脱出 47 
  1 私の少年時代 48 
  2 「ストライキ事件」 55 
  3 少年自衛隊での生活 63
 
V 最優秀隊員から造反隊員へ 83 
  1 虚無感・反抗・共産主義 84
  2 学生運動との出あい 94
 
W 「小西裁判」の本質と叛軍闘争 107  
  1 裁判における権力のねらい 108
  2 隊内造反の波紋 120
  3 自衛隊員の意識――前自衛官との鼎談 133
  4 さまざまな反自衛隊闘争の出発 158
 
X 叛軍宣言―全自衛隊員へのアピール 169 
  ☆ これが自衛隊だ 170
  ☆ すべての自衛隊員はわれわれの隊列に 179
  ☆ 自衛官組合を結成せよ 183
  ☆ 不当・不法な命令を拒否せよ 184
  ☆ 農村出身の下級兵士は蜂起する 191
  ☆ 部落出身の下級兵士は蜂起する 193
  ☆ 米軍兵士との連帯行動を 194
  ☆ 自衛隊解体――人民総武装 196
 
解説 二度の無罪判決と小西以後の闘い 204
 
読 者 に
                             角南 俊輔(弁護士)
 
 私が小西三曹の闘いを知ったのは、一九六九年の暮、六〇年代を象徴すると思われる東大闘争裁判において、裁判長の発言禁止・退廷・拘束命令等という厳しい訴訟指揮下に法廷に立っていた真最中であった。それだけに私には小西誠の闘いは一九七〇年代の闘いの開始を告げる象徴的事件のように思われた。
 
 私の考えでは、六〇年代は学生を中心とする急進的インテリゲンツィアの思想闘争の時代だった。しかし七〇年代は、その学生にかわって、反戦青年委員会に結集する労働者を中心として、部落解放同盟の青年、沖縄の青年、在日朝鮮・中国の青年、自衛隊の青年といった六〇年代に自分の発言を準備していた青年たちの時代になるだろうとの予感だけは私にもあった。だから、小西誠の闘いを、確実に動いている歴史の歯車の一こまの音のように聞いた。
 
 彼の第一回公判は、七〇年の七月二三日より新潟地方裁判所で開かれるが、この小西反軍裁判の第一審判決は、たぶん七二年の前後になるだろう。 七二年は、沖縄返還・四次防が現実化され、「自主防衛」問題がイデオロギーとしてではなく、物質化される時である。その意味でも、小西反軍裁判は、わが国の七〇年代の運命とわかちがたく結びついて展開されてゆくことであろう。そのような闘いとして小西事件はある。
 
 一方ではいかなる問題も闇に葬りたいという要求、一方では白昼公然と海外派兵・核武装が語られるようにしたいという要求――この二つの矛盾のはざまに昨年までの自衛隊があった。しかし、小西誠の起訴に踏み切ったとき、権力は一つの大きな選択をした。それは最高裁判所による「自衛隊の認知」への選択である。この選択は、たとえわれわれが気にいろうが、気にいるまいが、そんなことに無関係に、今後のわれわれの運命を変えてゆくことであろう。
 
 ある意味では、従来自衛隊違憲訴訟といわれてきた砂川・恵庭・長沼訴訟の延長線上に小西事件はある。しかし、ただ従来の違憲訴訟と小西事件が異なるのは、小西誠の言葉をもってすれば、こちら側から公然と自衛隊の「加害者」として登場したということである。そして、彼が「加害者になろう」と決意したことは、この国の状況に住むすべての人間に無関係ではない。なぜなら、すべてこの国に住む人間が、ヴェトナム戦争の、自衛隊の被害者にして加害者の悪しきメカニズムの奴隷であるからである。われわれは、何時の日にか被害者=加害者のメカニズムを断ち切る闘いをはじめねばならないと語り続けてきた。そして、小西誠はみごとにその一例を示してくれた。全国の青年は、「第二、第三の小西を!」のスローガンを呼びかけあいながら、権力の選択に闘いをいどみはじめている。
 今度は、われわれが選択するときである。
                         (小西誠反軍裁判主任弁護人)
 
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