書籍検索:紹介  
治安維持法 断想
―徳田球一上申書に寄せて








 
来栖宗孝/著
出版元: 社会批評社 
四六判208頁 並製
本体1500円+税
ISBN4-907127-10-7 C0036

 注文はこちらで

 
目  次
 
はじめに  3
 
 第一章 自由と人権の感覚  5 
 
 第二章 天皇制  15
 
 第三章 既成行為の追認・弾圧の開始(拡大のT)  32
 
 第四章 既成行為の追認・目的遂行行為(拡大のU)  51
 
 第五章 治安維持法の改正・拡張(荒廃・堕落のT)  71
 
 第六章 転 向  93
 
 第七章 治安維持法の完成――狂気の時代(荒廃・堕落のU)  116
 
 第八章 治安維持法の廃止  146
 
 結 章 コ田上申書  167
 
 ●資料 特定秘密保護法案について思う  193
 
 あとがき  209
 
前書き
治安維持法が、二〇世紀前半における世界にも例をみない悪法であったことは今さらいう
までもない。それは、正しくは、国民の権利・義務関係を画定する意味での法律の名に価しないところの、取締り官憲の恣意的行為を容認する支配体制側の宣言書であり、国民の一切の自由と人権を無視し蹂躙したものである。この「法」は、対内的には民主主義の成長、市民社会の成熟、したがって学問、藝術、技術の発展を妨げ、対外的には中国をはじめ各国に対する帝国主義侵略戦争を容易にする道具の一つとして有効に働き、第二次世界戦争における日本国の破綻と完敗とによって自らの実態を曝露したのである。
 治安維持法については、すでに専門研究家によってかなりの程度解明がなされている。もちろんそれは緒に就いたばかりといってよく、関連する多数の治安立法とともにますます体糸的に追究されなければならない。この法は過去にこのような暴虐な人民弾圧法があったという歴史上の一事象で終っているものではなく、国家独(寡)占資本主義、すなわち柔軟で弾力性があり巧妙に国民を操作する管理社会――現代型ファッシズム――の現在においても形を変え姿をいっそう美しく装って復活しつつあるからである。
 本稿では、これまでに貴重な研究が積み重ねつつある治安維持法の沿革についてはそれぞれの労作に讓り、主として社会的思想的視点から、つまり(広義の)文化論として捉えてみようとするものである。ただ、本稿は体糸的叙述を後日に俟ち断想とすることをお許しいただきたい。
 
         社会批評社のホームページ