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精神科医が教える糖尿病の予防と改善法
― 糖尿病は心に由来する病

 













 
定塚 甫/著
出版元: 社会批評社 
四六判187頁 並製
本体1500円+税
ISBN4-907127-05-3 C0036

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はじめに
 
 我が国における糖尿病の増加は、その病気の行く末に必ず迎えるはずの様々な病態を考えると、ともすれば癌と同じか、それ以上に深刻な病気として見えてきます。目が見えなくなり、足で立つことができなくなり、そして、尿からは体内に貯まった有害物質の排泄ができなくなり、遂には、意識も朦朧(もうろう)として、現実が分からないまま死を迎える病気です。
 このことは、身近に糖尿病の方がみえれば多くを語る必要がないように思えます。
 糖尿病との診断を受けた人たちの多くは、最初は、さほど特別な病気ではないように感じておられるはずです。しかし、月日を追うに従って、糖尿病の方の周りからは、一人抜け、二人抜けと、付き合って貰える人たちが去って行かれるのです。
 それと共に、糖尿病の人たちは、ただでさえ孤独になりがちであったのに、もっと、もっと寂しい思いをしなければならなくなっていきます。
 この寂しさは、糖尿病に罹った人たちの宿命として受け止められるでしょうか。寂しさを紛らわせるために、さらに身体に悪い食べ物や飲み物を口にする人たちが増えていくでしょう。
 そうなると、もとはと言えばある種、日常的な食べ物や飲み物によって発病した糖尿病ですから、悪くなる事があっても良くなることはないでしょう。
 悪くならないために、毎日血糖値を測る習慣を身に付けようとする人もあるかもしれません。しかし、今までの習慣はなかなか変わらないという人が多いようです。
 そして、ドクターに勧められた薬と食事療法や運動を行おうとする人も居られるでしょう。しかし、それらが一ヶ月続いた人は、少なくとも私の外来にいらっしゃる200人ほどの中には、お一人しかお見えになりません。
 それだけ、糖尿病の進行を予防するのが難しいと言っても言い過ぎではないでしょう。
ここで糖尿病の治療や予防が「難しい」と言ってしまいますと、糖尿病と宣告された方はもとより、ご家族始め、周りの方々からも見放されかねません。
 この本を書き始めたのは、糖尿病にならないための方法(予防法)と、あまり言われたくない「あなたは糖尿病です、治療を受けて下さい」と宣告されたとしても、糖尿病に罹った方々に「明るい未来」を提供出来る「改善法」を提案するためです。
 もちろん、このようなことを書くに至ったのは、糖尿病の方々の様々な、悲惨と言ってもいいような人生と付き合わざるを得なかったという、辛い体験があることは言うまでもありません。
 今まで隣人として、毎日明るい様子で、「おはようございます!」と挨拶を交わして来た方が、少しずつ挨拶は無くなり、外ではお顔を見なくなり、そうこうしているうちに、時々理由の分からない不機嫌な顔をして、不可解なことを言いがかりのように話しかけられるようになります。
 そして、取るに足りないことを持ちだしては、突然怒り出したり、因縁をつけたりするようになるかもしれません。
 血液の中のブドウ糖の値、すなわち血糖値が不安定になったり、血糖値が高くなったりするため、脳がブドウ糖不足になり、疲れやすくなり、神経がピリピリするようになることが多いのです。
 ここで、チョッと糖尿病の病気理解の為に少し説明致しましょう。
 糖尿病というのは、甘いものを食べすぎる日々を長く続けたり、アルコールも糖の一種なのですが、飲酒を毎日続けたり、あるいは、全体の食料の摂取が過剰であったりし続けますと、常に血液の中には糖分が多く流れることになります。
 この糖分は、人間の身体の中では、常に少ない処から多い処へ移動することが分かっています。つまり、血管の中の糖分が多ければ多いほど、色々な臓器の中には糖分が少ないので、ますます血管の中に糖分が移動することになります。これを防ぐために膵臓からインスリンというホルモンが出て、血管の中の糖分を下げるように働きます。血管の中の糖分の値が、ちょうど臓器の血糖値より低い値になると、うまく糖分が臓器へと移動し、臓器が働く事が出来るようになります。もちろん、この臓器の中には、人間にとって最も大事な脳も含まれます。
 しかし、うまく全身の臓器に糖分が分配される程度に血糖値が下げられていますと、全ての臓器が活発に働き、健康な生活を送ることが出来るのですが、毎日、毎日、過剰に糖分を摂りすぎていますと、インスリンを分泌する膵臓がクタビレてしまい、インスリンの量が減り始め、血糖値が上昇の一途を辿るようになります。その結果、脳を含め全身の臓器は栄養失調となり、特に、ブドウ糖のみを栄養源として働いている1千億の神経細胞の塊である脳、全身の神経は働けなくなっていきます。その結果は、想像するに容易なことでしょう。
 このように、糖尿病というのは、簡単なようで、実のところかなり複雑な病気なのです。
 そこで、ここでは今までには考えられもしなかった糖尿病の原因に迫る内容を、実例を紹介する中で説明し、全く従来と異なった対策を紹介することにより、一人でも多くの方々の健康を守り、一人でも多くの糖尿病の方々の飛躍的改善を望むために、「まさか?」と思われる糖尿病への挑戦を進めていきたいと思います。
 その結果、「不幸な人」とみなされかねない糖尿病の人たちに、明るい、未来のある生活をして頂きたいと思っています。
 「糖尿病は必ず予防できる」、または「糖尿病には必ず打ち勝てる」ということを目標にして、明るい未来のためにこの本を読んで頂きたいと思います。                                        
                         研究室にて、定塚 甫
                                平成25年12月5日
目   次
はじめに 2
第1章 これまでの「糖尿病」という病気の考え方  11
  1 これまでの「糖尿病」という病の考え方  11
  2 糖尿病の概要  13
  3 糖尿病の疫学  15
  4 糖尿病の分類と診断基準  17
  5 糖尿病の診断基準  21
  6 空腹時血糖値の正常域に関する新区分(2008年)  22
 
第2章 糖尿病と脳の関係  25
  1 糖尿病は何処からやって来る?  25
  2 2型糖尿病と人間の欲  26
  3 人間社会における脳の働きと糖尿病  33
    ――症例
第3章 糖尿病と心の関係  43
  1 症例で診る糖尿病と心の関係  43
    ――症例A
  2 ストレスと糖尿病  51
  3 アルコールその他の飲食物への依存と糖尿病  53
  4 摂食障害と糖尿病  57 
 
第4章 糖尿病と精神活動  65
  1 糖尿病と精神活動について  65
 
第5章 糖尿病患者の精神構造  71
  1 糖尿病患者の思考形態  71
  2 アルコールと糖尿病  82
 
第6章 日本人と糖尿病  105
  1 糖尿病の比較文化学的検討(トランス・カルチュラル)  105
  2 日本民族は砂糖(ショ糖)摂取の歴史が短い  108
  3 日本人の糖尿病との親和性  115
  4 もう一つの糖尿病  124
  5 日本人的性格に由来するケース  127
 
第7章 心と精神と脳の病気である糖尿病の対策  139
  1 糖尿病の予防  139
  2 日本人としての糖尿病の予防法と早期発見  148
  3 第二の糖尿病対策法 159
 
■結 語  178  
●参考文献  184
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