07.09.13 未読猫「試してやろうと言っておる! 石の力が欲しいのだろう?」 ◆おとうさんといっしょ(in The Draklor Laboratory) 俯くアーシェ、そして一層怒りを露にするレダス。 そのレダスが口を開こうとした瞬間、シドの声が再び部屋に響いた。 「まぁ、そんな事はどうでもいい…それよりも、お前。お前の名は?」 全員がその言葉の意味を取り底ね、分からないと眉間に皺をよせる。 一応アーシェは、認識したみたいだ。 レダスも。バルフレアも。 残るは、ヴァン、パンネロ、フラン、バッシュの四人。 いやぁ〜んな予感のしたバルフレアは、シドの視線の先を見る。 その予感ビンゴ。 「そこのクソ野郎、あれは俺のだっ!」 「ほぉ〜、相変わらず儂とファムは仲良しさんなのだな」 「はぁ〜?!!」 現在、シド(帝国)とアーシェ一行(自称解放軍)の対立だったはず。 戦闘一歩手前。 その空気が劇的に変わる。 空間が微妙に捻じ曲がったのを、約二名除いてはっきりと自覚した。 「昔から、儂の好きな者をお前も好きになるではないか」 「それのどこが仲良しだってんだっ!」 「好みが一緒という事だVv」 ニッカリ笑って威張っている様子が凄く嫌。 「お前の恋愛遍歴は、ちゃんと把握しておるぞ。 全部儂好みだった」 高いところからVサインを出すおやじがもっと嫌。 そのおやじが、尻のポケットから取り出す古びた手帳。その中身を見てニンマリ笑う。 「最初は儂の女房、お前の母親から始まって、同じクラスのカトリーヌちゃん、アイラちゃん「ちょっとまてぇっ!!!」 「何だ?」 「母さんはともかく、同じ趣味って事は……てめぇ、十も満たない子供趣味の変態野郎だったのかっ!」 「馬鹿をいうな。そんな訳がなかろう? 将来大きくなったら好みだろうなという事だ。 実際、今彼女らは、凄く儂の好みだ」 だから、仲良しだよ〜と、「なVv」と人差し指をたてて体を傾ける姿が、最悪に嫌。 バルフレアは、狂ったシドになる前の、ある意味もっと嫌ぁ〜んな父親を久しぶりに感じて、がっくり肩を落とす。 「それで、お前の名は?」 「あ…バッシュ・フォン・ローゼンバーグだが…」 「素直に名乗ってるんじゃねぇよっ!」 「バッシュか…可愛い子だな、ファム」 「お前が、可愛い言うなっ!」 シドは、バルフレアの言葉なんか聞いていない。 バッシュを上から下までじっくり眺めた後、「嫁さんだな。ヴェーネス、お前もそう思うだろ?」と、空気に向かって話す。 その姿に、バルフレアは一瞬ギリリと歯軋りをするが、さっきよりはマシかもしれないと心の底で思ってたりする。 「ファム、いい嫁さんだ」 バッシュ、場所もわきまえず真っ赤になる。 バルフレア、元に戻ったと、俺の歯軋りを返せと、心の中で叫ぶ。 「儂の息子がもう一人増えたなVv」 「おんたのじゃねーよっ!」 「ファムの嫁さんだったら、儂の息子」 「俺は、家出したんだっ!もう名前も捨てたっ!あんたとは他人だっ!」 「ふふ〜ん、それでも儂と同じ血が流れてるのは間違いないもんね〜」 「ぐ……ち、血ぐらい…入れなおすっ!」 「DNAに儂の遺伝子が入ってるもんね〜」 勝てない。前から勝った事なんか一度も無い。勝てると思った事もない。 その疲れてるバルフレアの耳に、今まで呆然と聞いていた仲間の声が追い討ちをかける。 「……ああなるのは…いくら力が欲しくても……」 ぶつぶつ呟くアーシェの声。 石でああなったんじゃない、生まれつきだと一応心の中でつっこむ。 「バルフレアさんは、お父さんと仲良しなんだねー」 「そうだよなー」 ほんわかした雰囲気で、間違った結論を出すんじゃねぇっと若い二人に言いたい。 「奴の話にみみを貸すな…と、言ってやった方がいいのか?」 助言ならでかい声で言えっ!ぼそぼそと呟くんじゃないと言いたい。 「やはり、親父殿に挨拶をするべきか……」 真剣に検討を始めてる天然な将軍の腕をつかみ、やめろと言外に含ませる。 そして、さっきからずっとくすくす笑い続けている相棒の声。 頭が痛い。 そこにシドのおいでおいでの仕草。 当然バルフレアにではなく、バッシュへ。 バルフレアの目は据わった。 完璧に座った。 背負った銃に手を伸ばす。 今まで敗北続きだったが、今回は敗北するわけにはいかない。 なにせ愛しい人を取られたら洒落にならない。 邪魔者は排除。 古今東西間違いのない鉄則。 「バッシュは、俺のもんだ〜〜〜っ!」 その声に、前に出かけていたバッシュの足が一応止まる。 「はっはっはっ、ファム、久しぶりの親子喧嘩だな」 父親、嬉しそうに人造破魔石を掲げる。 「お父さんは、負けないぞ〜」 「うっ、うるせぇっ!!」 戦いが、ようやく始まった。 「歴史を人間の手に取り戻す。 儂もギルヴェガンへ向かう。 追って来いファムランVv出来れば、待てぇ〜と花畑あたりがいいぞVv」 そう言って、高笑いを残したシドは空へ消えて行った。 「……絶対…行きたくねー……」 「諦めなさい」 くすくす笑いながらフランが、行くという文字を顔に貼り付けているアーシェを指差す。 がっくりと肩を落とす。 「家出して長いのだろう? たまには親孝行もしたほうがいい」 にこにこと陽だまりのような笑顔をのせた将軍が言う。 泣きたくなってきた。 しかし、これではいけないと、バルフレアは頭を一つ振る。 「フラン……俺は逃げるっ!逃げて、逃げて、逃げ切ってやるぞっ!」 バルフレアが怒鳴る。 しかし、誰もそんな決意表明は聞かない。聞いていない。 結局、バルフレアは心の中で泣きながら、仲間の最後尾で嫌々ギルヴェガンに向かっていた。 -End-
最近、色々なサイト様で素敵文章を読み、触発されています。 これも、その一つ。 たぶん、皆様が同じものを見ても、どうしてこんなブツが出来上がるのか、まったく分からないとは思いますが(私も分かりませんし…)、沸いてきてしまった発想は仕方がありませんf(^-^;) やーーーもう、書きやすいわ〜。 長編よりも、シリアスよりも、お馬鹿な話が一番気楽で、書いていて一番楽しいVv という事で、シドパパです。いつまでも元気に頑張って欲しいものです(゚-゚*)(。。*)ウンウン