A point to stare at 1  

  空賊見習いの二人、空賊の二人、そして、解放軍を名乗るダルマスカの王女と死んだはずのダルマスカの将軍の六人は、時々刻々と立場が変わり、運命の名の下に振り回されていた。 今彼らは、レイスウォール王墓に向かっている。 しかし、あまりの強行軍、当然疲労はたまり、大砂海オルグ・エンサを前に、テントを設置し、その中で崩れるように眠りについていた。 既にテントの中は、寝息しか聞こえない。 そこにギリリと歯軋りの音。 その後、気配を消した人影が一つ、音も無くテントから出て行った。 再びテントの中に静寂が満ちた時、小さな囁き声が産まれる。   「頼んだ」 「分かっているわ」   頼んだと囁いた人影は、最初の影を追う為に、テントから出て行った。   ◆A point to stare at 1   バルフレアは、西ダルマスカ砂漠風紋の地の細い峡谷に立っていた。近くにモンスターの気配無い。 ザクリと音を立てながら、先を進む。その目線の先には、倒れている人影が一つ。 そこから、風の音に紛れ、ギリリと絶え間なく歯軋りの音が流れてくる。 常であるなら、真っ先に人の気配に気づく人影は、変わらず体を震わし、歯軋りをしている。 その尋常で無い姿に、眉根を寄せ、早足で近づいた。   「……っ?!」   目の前に流れる銀光を紙一重で避ける。 まるで手負いの獣のように目を光らせて、しかしその体は、限界かのように崩れ落ちた。   「バル…フレア?」 「あぁ」 「だ…いじょうぶ……か…?」 「それは、あんただろ」 「わた…しは……だいじょうぶ……だ…」   酷く荒い息、真っ赤に染まっている頬、とても大丈夫には見えない。   「持病か?」   近寄り、心配げに伸ばされた手を払われ、顔を背けられる。   「ち……が……」   その時、バルフレアは、耐える為に爪が食い込み血を流している左手と、熱を持った体、そして窮屈そうに膨らんでいるズボンを目に入れた。   「あんた……」   無理やり腕を掴み、立ち上がらせる。   「あんたなら、もう少し歩けるな?ここじゃ、場所が悪い」   バッシュの返事も聞かずに、引きずるように歩き始める。   「バル…フレア……」 「分かってる」   それ以上、バルフレアは何も言わない。黙って、風紋の地入り口から影になり、岩に囲まれた場所に歩いていく。 立ち止まると、バッシュは崩れるように倒れた。   「やけに甘ったるい匂いのする、赤い液体だな?」   問われた瞬間、何を意味するか十分に分かった。 しかし口を開いたら、とんでもない声が出そうで、バッシュは歯を食いしばり頷くだけにする。   「あんたは、その薬を抜く為に、我慢すべきじゃなかった」   そう言われても、自分はそうするしか思いつかなかった。 今自分の中で荒れ狂っているものを解放したら、それにのまれそうで、歯を食いしばるしかなかった。 バルフレアは、快楽と理性の混じるバッシュの瞳を見て、ため息をつく。   「俺は、ここに居ない。誰もあんたの声を聞く事も、姿を見る事も無い」   そう言ったバルフレアは、バッシュの服を緩め、ズボンを脱がす。   「バル…フレ…ア…」 「俺は、ここに居ない」   まるで呪文のように、バルフレアは繰り返す。   「あんた、一人だ」   突然、胸に甘い刺激が来て、慌てて一層歯を食いしばる。 そこに、またも「誰も居ない」という言葉。   「い…ない…?」 「あぁ、あんた一人きりだ」   バルフレアの言う意味をようやく理解したバッシュは、泣きそうになりながらも力を抜いた。 今自分に起こっている状態も、その元凶の薬の事も知っていて、その薬から解放する為に協力してくれる。それだけなら、まだ歯を食いしばっていたかもしれない。しかし、バルフレアが与えてくるものは、酷く優しく、彼の欲望を一切感じさせない。 それが、バッシュの理性を手放させた。     風の音にバッシュの甘い声が混じる。 既に、胸の飾りは、真っ赤に尖り、下半身は先走りの透明な雫に濡れそぼっている。 バルフレアは、その普段とは真逆の淫蕩な姿に目が奪われ、自分自身の下半身までもがやばい事になっているのに焦っていた。 単なる治療。 吐き出させる為の愛撫だけ。 男に欲情を感じる自分なんか想像範疇外。 しかし、それを裏切る止まらない欲望。 それを必死になって抑える。 ここには誰も居ないのだから。 手だけで吐き出させるつもりだったものを、咥える。 甘く感じるのは、自分も薬にやられているのかと、一瞬勘違いしたほど。 嫌悪感が無い。 深く咥え込み、ねっとりと舌を這わす。 我慢し続けたそれは、あっという間に、精を吐き出す。 それを潤滑剤代わりに吐き出す事を残念だなと思い、愕然とする。 そんな心とは裏腹に、指は自然と、先走りで濡れそぼった蕾をつつく。 つぷりと簡単に指が入った事に苛立ちを覚える。 その事も、やばいと思いながら、聞きかじった場所を探した。   「あ、あ、ああぁっ………」   バッシュの体が跳ね、腹の上に精を撒き散らす。   「早…く………も……いれ…っ……」   言われなくても、バルフレアも限界だった。 せめてもの自戒とばかりに、ズボンは脱がずに、雄だけを出す。 腹の上に溜まっていたものを、自分に塗りつける。 誘われるように、足が絡まってきて、立ちくらみのように眩暈を覚える。 これは治療だと、己に言い続けながら、バルフレアは静かに腰を沈めた。                 ◇◆◇                 バルフレアは、気を失っているバッシュの傍らで、苦い笑みを浮かべていた。 やけに高くなる熱、乱れる呼吸、赤く染まった肌、勝手に反応する下半身、バッシュの性格を考えれば、溜まっていたという言葉は出ず、真っ先に赤い薬を思い出した。 ドラクロア研究所開発品。製品番号は忘れたが、通称だけは思い出せる。通称RL。Red Lechery。服用する者は、体を赤く染め、聖職者であろうと、腰を振って強請り、それだけしか考えられなくなる、淫乱に貶められる薬。 バルフレアは、その被験者を見た事があった。そして、作成された書類も見ていた。 当然詳しく書かれたそれは、どの程度で廃人になるかも、どのような過程で回復するかも詳細に記述されていた。 バッシュの精神力に感服する。 あの薬を、精神力でねじ伏せる人間、実験で弾き出されたデータ外の人間、心地よい感動が沸く。 今まで、面白半分で参加した旅だったが、俄然興味が沸いた−たった一人の規格外の人間−薬が抜けるまでは、同行しようと思った。   (男に興味とはな……)   バルフレアにとって、男と交わりを持つのは、今日が初めてだった。 ただ、やり方は、知識として持っていたから、相手を傷つける事も無く終えた自身はある。 それに、あれをセックスとは言わない。 単なる治療の一環。 バッシュをいかせる事だけに意識を向け、動いていただけ。 自分は女性以外に興味が無いから。 必死に自分に言い聞かせる。 常であるなら、国の為、姫君の為だけに向けられる騎士の瞳が、熱に潤み、まるで自分だけに縋るように向けられる。 高潔とは真逆の艶やかで淫らな姿に、目を奪われた。   (この、前しか見ていないヤツに惚れたら、空しいだけだろ…)   その事が、バッシュに向かう気持にブレーキをかけていた。 なんとしてでも、興味が沸いただけに押し止める。 セックスは治療だと、再び言い聞かせる。 自分は、変わらず仲間の一人としてあり続けるだけ。 そう思い込もうとしている事自体が、切羽詰った事態だという事に気づいている。 だから苦笑が浮かぶ。   (ま、なんとかなるさ…)   ただ、彼が気を失う瞬間に洩らした名前が引っかかった。 「…ヴェ…イン」 密かに囚われた死人。それに薬を使ってまで手を出す立場に居る者といえば、ヴェイン・カルダス・ソリドール一人しか思い浮かばない。 バッシュを捕らえた理由が、オンドール候の口封じだけとは思えなくなった。その謎を探るのも面白いだろうと、興味があるのはそれだけだと、なんとか思う事にした。   「…ぁ……」 「よぉ、気が付いたか?」 「あ、すまない…」 「あ?何の事だ?あんたが、ここで倒れているのを見て、驚いたぜ」   バッシュは、バルフレアの言葉を聞いて、「誰も居ない」と言われた事を思い出す。 体を見ると、ちゃんと服を着ていて、情事の跡を見つける事も出来ない。   「…ありがとう」   バッシュの言葉に、バルフレアはいつもの皮肉な笑みで返す。 そこに違和感は一切無い。   「聞きたい事があるんだが…いいか?」 「あぁ」 「あんたは、どれくらいの期間飲んだ?間隔は?量は?」 「囚われてから……長いときは二週間程度か……多い時で二日に一回……量は…スプーンに二杯程度だと思う…」   バッシュは、思い出しながら、普段とは違う真剣な眼差しのバルフレアに伝える。 その彼の眉根が寄る。   「君は…」 「俺は、空賊になる前、アルケイディアで、ある程度、軍の機密に触れられる立場に居た。  あんたが飲まされた薬の、詳しい報告書も見ている」   未だ若い空賊が、どうしてそんな機密を見れる事が出来たのかが不思議で、バッシュは訝しげに彼を見る。   「あぁ、父親がドラクロア研究所の所長をしててな……一時、俺はその助手をしていたんだ」 「ドラクロア研究所…」 「兵器から、あやしげな薬まで、戦争に関するものを一手に引き受けている所だ。  まぁ、今の俺には一切関係ないけどな」   バルフレアの口の端があがる。   「そうだな、君は立派な空賊だ」 「立派って空賊につく肩書きかよ?」 「あぁ、ヴァンと出会った話を彼から聞いた。ともて、君らしい」   ありがとよと、少し照れくさげにバルフレアが笑った。 しかし、その笑みが直ぐになくなる。   「最後に飲んだのは?」 「籠を出る…たぶん、一週間前だ」   バルフレアの顔が難しい表情を浮かべる。   「あんた…我慢しすぎだ……そんなデータは無い……」   バルフレアは、初めて真っ直ぐバッシュを見据えた。   「とにかく我慢はするな。戦闘中はあんたの意思でなんとかするにしても、それ以外は、俺がなんとかする。  副作用の発作が四日間隔になったら終わりが見えてくる。それまで全て吐き出せ」 「…分かった」 「これから、先を急ぐ度に、偵察に行く癖をつける。  そうすれば、怪しまれずに、距離がおける。ついでに敵を殲滅しておけば、あいつらの負担も減るだろう」   バルフレアは立ち上がり、右手を出す。 バッシュは、自力で立ち上がる事が出来たのだが、素直にその手を取り、その横に立ち上がった。     -continue・・・-  

     

  えーすんませんねぇ…暗そう?…題材? 一応ね…目的は、天然バッシュ恋愛というものを知るって感じ? バルフレアはいつも通り、逃げようとする、へたれかなぁ…f('';) 題材暗いけど、内容は明るくエロだといいなぁ<おいおい 頭の中は一応終わりまで行ったんで、ちゃんと終われるはずです<不安げな…   ということで、連載始めちゃいましたー(^-^;)  

  07.04.03 未読猫