07.09.23 未読猫体に篭る熱が抜けない。 バルフレアは小さく舌打ちをし、風呂上りの体をベッドに横たえる。 原因なんか分かっている。 いつも先頭で剣を振り、前を突き進んでいく姿。その姿がどんな女性よりも自分に欲を感じさせる。 勤めだけ、アーシェの為にだけ振られるその剣。 いつしか、その戦う姿、意思そのものを成す体を欲しいと思うようになった。 その根底に心が欲しいというものがあるのを知っているが、それは一切見ない、無視をする。 絶対盗めないものに手を伸ばす気は無い。そんな面倒な事はしない。 好都合な事に、今日は同室にヴァンは居ない。 バルフレアは、盗めるもの、欲しいモノを盗る準備を始めた。 やたらと綿の入ったクッションみたいな枕を背にする。 膝を立てる。 今、シャワーの音を立てている男を頭に浮かべる。 簡単に自分の欲望に熱が集まってきた。 彼が、もう出てくるのは分かっている。分かっていて、その熱の塊に手を添える。 背筋がゾクゾクする。 小さく「バッシュ…」と呟いた。 手の中のものが、ビクンと動く。 熱に浮かされたような顔をしながら、シャワーが止まる音を聞く。 それさえも、欲望に換算され、熱をこすらなくても、熱の塊のような雫が漏れてくる。 扉が開く音。 そちらは見ない。 息を飲む音に笑みが浮かぶ。 こすりあげる速度を増す。 呆然としてるんだろうなと思い、笑みが深くなる。 右手でこすりあげる。 親指で熱が溢れている口を撫でる。 声が漏れる。 少し霞む視界に、立ったまま動かないバッシュを入れる。 舌を出す。 あんたが欲しいと視線だけで言う。 親指を止まらない熱を溢れさせている口の中に無理やり入れ引掻く。 「くっ……」 洗ったばかりの体に、白濁の液が飛び散った。 ◆欲しいモノ 「どうだった?」 返答は無い。 「見てたんだろ?」 そう、彼はシャワー室には戻らなかった。 「空賊の主義は知ってるよな? 無料見はだめだぜ」 「……っ」 「あんたのも、見せろよ」 手早く体を拭き、立ち上がる。 「いいだろ?」 バッシュの耳元で欲望そのままの声をため息と共に吹き入れる。 バッシュの体がぶれた。 それに気をよくして、舌を耳朶に伸ばす。 「きっ、君はっ?!!」 耳を押さえたバッシュが、真っ赤になって一歩あとづさる。 「っ……」 「俺のを見て、興奮した?」 逃げ道は無いと、バルフレアはバッシュの肩を抱き、少し兆しかけたバッシュの雄を握る。 シャワーあがりで、バスタオルしか身に纏ってないバッシュの防御力は激しく低かった。 「バ、バルフレア…」 困った声なんか聞かない。 バルフレアは、バッシュを無理やり担ぎ、暴れる体をベッドに放り出す。 「お兄さん、体をこっちに向けて、足は広げてな」 「バルフレアっ!」 真っ赤になって怒鳴る姿もそそるなと、バルフレアは淫猥な笑みを口に貼り付け思う。 「しゃぁねぇな。途中まで手伝ってやるか」 バルフレアは、バッシュの体を押し倒し、胸元に口付ける。 相手の返答なんか聞かない。 欲しいのは、目の前のこの体。 心なんていらない。 どうせ、手に入らない。 少し硬くなった小さな粒を舐めあげる。 バッシュは抵抗しない。 ただ、困ったような顔をしているだけ。 仲間意識が、害を与えられても抵抗させないのだろうと、バルフレアは思っている。 それに付けこめと、歯を立てた。 「くぅっ……」 「あんた…感じやすいんだな」 既に赤くに色づいた粒を、それでは足りないとばかりに、吸い上げる。もう一つの粒は、親指と人差し指が弄っている。 「ぁ……」 バッシュは慌てて口をおさえる。 「何だ聞かせてくれないのかよ」 バルフレアはバッシュの両手首を持つ。 「手はここだ」 彼自身を無理やり握らせ、そのまま半ば立ち上がったものをこすりあげる。 「うわっ…」 「ほら、俺に見せるんだろ?ちゃんと自分でやれよ」 「なっ……んで……」 「無料見はだめだって言っただろ」 溢れてきた蜜を撫で付ける。 「っあ、あっ…」 「ほら、動かせよ。俺は他を弄ってやるからさ」 淫猥な唇から出た舌が、袋を舐め、中身を転がす。伸びた手が真っ赤に育った粒を擦り、捻る。 バッシュは自身を握りしめるだけで、唇を噛みしめるだけで、手は動かない。 「バル……フ…レア……」 「ん?」 「これは…君の…望み……か?」 バルフレアの動きが止まり、バッシュを見上げる。 「だったら?」 「それならば…構わない……が、からかってるのなら…やめてくれ…」 バルフレアの目が細まる。 「それは、どういう意味だ?」 まるで睨むようにバッシュを見る。 「君らしくない。言葉どおりだ」 「……それこそ、あんたに聞きたいな。 仲間意識で語るんなら、もう何も言うな。聞きたくない」 「私は、そんなお人好しに見えるのか?」 「あぁ、見えるね」 バッシュは、何かを探るようにバルフレアを見つめている。 「ちっ…もういい」 バッシュから視線を外し、立ち上がろうとしたバルフレアの腕が捕まれる。 「んだよ」 「私は、そんなお人よしに見えるのかと聞いたんだ」 「だから、見えるって答……あぁ?」 振り向きバッシュを見ると、複雑な表情。怒っているのか、困っているのか、さっぱり分からない。 「じゃぁ…何であんた……?」 「き、君は私に優しい…だろ…?」 複雑な表情に加えて真っ赤になった顔。 「だ、だから……そのだな……あ〜……」 「俺…あんたに優しいか?」 バッシュは勢いよく頷く。 そして、バッシュの怒涛のラブアタック(死語)が始まった。 「君は、私を籠から解放してくれたではないか。 その後だって、ヴァンから守ってくれた。それに、私の言葉を信じてくれたのも君だ。 盾にすると言ってながら、まだうまく動けない私をフォローし、ダルマスカ砂漠では、剣に持ち替えて、一緒に戦ってもくれた。 シュトラールに乗せてくれて、ピュエルバに連れて行ってくれたもの君だろう? あれから何度も君にとって不本意だったはずなのに、いつも一緒に行動して戦ってくれた。 それに、毎日脱いだ服を畳んでくれるし、バスタオルや、フェイスタオルを忘れても、ちゃんと用意してくれるし、忘れそうになった剣をいつも持ってきてくれるし、鎧をちゃんと装備出来ないでわたわたしていると、直ぐに直してくれるし、靴紐が解けてこけそうになったら、何度も支えてくれた。 寝癖が酷くて、はねているのも、毎朝撫で付けてくれるだろう? 爪も切ってくれるし、髭も綺麗に揃えてもくれている。 私の体に合わせて食事のメニューも考えて注文してくれる。最近レバーやほうれん草が減ったな。まだ肉は食べなければならないのだろうか? 荷物の整理から、次の日の仕度もしてくれているな。 髭にご飯がついているのを取ってくれるのも君だし…あ、この間は、髪の洗い方が不十分だと言って、頭の後ろを丹念に洗ってくれ………っ?!!」 バッシュの言葉は、バルフレアの唇によって強制終了された。 バルフレアの顔は真っ赤。 惚れた相手の前で抜くよりも、遥かにレベルの高い羞恥プレイ。その、言葉責めに耐えられなかった。 言われてみれば、確かに自分はそうしていた。 過去、酷く手のかかった父親のせいで、無意識に同じ事をしていたらしい。 それは、条件反射で、惚れたという次元とは、少々違うのだが、それが混じっていないとは言い切れない。 なにせ、同じようなお子様ヴァン相手には、そんな事をした覚えがないのだから。 くちゅりと、湿った音をたて、唇が離れる。 「バッシュ…」 「私は、君の事が好きだよ」 ほっこりとした、気の抜ける、だがいつも見ている好きな笑み。 「君もそうだろ?」 小首を傾げている36歳が可愛い。 バルフレアは両手をあげる。 勝てない。 「降参だ。俺も、あんたに惚れてるよ」 「良かった…。しかし、抜く手伝いまでしてくれるとは思わなかったぞ。すっかり、からかわれてると思ったではないか」 手伝いじゃないし、からかった訳でもない。 バルフレアは、さっきまで思いつめていた自分が、激しく可哀相に思えてきた。 しかし、そんな事を反芻している場合じゃない。 久しぶりのベッド。 二人しか居ない部屋。 そして、裸のままの姿。 これを堪能しなくてはどうする?と言いたい。 バルフレアは、バッシュに手を伸ばし、自分に引き寄せる。 「抱いても?」 「君がそうしたいのなら」 「あんたは?」 「嬉しいな」 そして、ようやくお互いを手に入れた恋人同士は、幸せな夜を始めるのだった。 「ようやく、くっついたようよ」 隣部屋のフランが耳をピクリと動かし、報告する。 「何であんなに鈍いのかしら?」 「今までだって、夫婦みたいでしたよねVv」 「あれで、くっついてないって思う方がどうかしてるわよ」 なぜか女性の部屋にヴァンもいる。いるが、フランによるスリプルでしっかり熟睡中。 そして、それを仕組んだ彼女らは、満足げにそれぞれのベッドにもぐりこんだ。 次の日から、もっと愛情だだ漏れの光景を見せられるとも知らずに……… -終われ!-