俺はいったいどうしたんだ?   あのとんでもない出来事から、身動きが取れなくなった。 今まで自分の心に忠実に動いてきた。それで身動きが取れなくなった事は無かったではないか…。   なのに…   自分の心が分からない。   分からないから動けない。   別に、男から言い寄られた事などあいつに限った事ではない。自分を女性扱いする輩には、それ相当の報いを受けてもらっていた。 ならば、どうして動けない? 今までと、どう違う?   ……だいたい考える前に行動してきたではないか…自分の心に従って…自分の心はどうしたんだ?     【浮竹】     「どうしたよ。押し倒しにいかねぇの?」 「あんたも飲むかい?」   杯を日番谷に放る。   「俺が下戸だって知ってて嫌味じゃねぇ?」   一回試しに飲ませたら、真っ赤になってぶっ倒れた。 その様子を思い出したとばかりに、くすくす笑う京楽に日番谷が睨む。   「そんな可愛いなりで、随分な嫌味を言うからだよ。」 「可愛い言うなっ!」 「時間が経てば、そんなものは意味が無いって事が分かっていながら、反応するあんたが悪いんだろ。」   ドスッと音をたてて、日番谷が座り込む。   「ったく、お前は可愛くねぇよ。  少しは浮竹を見習ったらどうなんだ?」 「無理だねぇ。僕と彼は違いすぎる。」 「あーーーーー、浮竹可哀想〜。  こんなやつの掌でもて遊ばれててさー。」 「人聞きが悪いなぁ…僕はもて遊ぶつもりなんかカケラもないよ。」 「なら、何で眺めてるだけなんだよ。  浮竹の気持ちはあからさまじゃねぇか。」   浮竹の心の変化は、端から見て呆れるほど本人の気持ちを表していた。 京楽と顔が合う度外される視線。 真っ赤になる顔。 ぎこちない態度。 いつもの浮竹ならば、ありえないほどうろたえ、落ち着きが無かった。   「………八つ当たりをしているって所かねぇ…。」 「はぁ〜?何だそりゃぁ?」 「僕が想っていた時間はそれは長かったんだよ。  彼の想いが中途半端な上に、あっさり叶ったりしたら悔しいじゃないの。」 「なるほどな…より一層性格の悪さを見せてやがるって所か。  ったく大人ってやつは底意地が悪ぃよなぁ。」 「何言ってんだい?  君みたいな目端の利く子供が、こういう大人になるんだよ。」 「うぇぇぇ〜勘弁しろよなぁ。  俺は賢いからそーいう大人にはならねぇよう気をつけるっ。」 「底意地悪くならないと藍染くんに取られちゃうなーVv」 「だぁぁぁぁぁぁぁっ!!ったく、あんたってやつに好かれた浮竹に同情するぜっ!」   くすくす笑いながら、京楽が杯を傾ける。   「ったく…そんで性格最悪の8番隊隊長様は、これからどうすんだよ?」 「変わらない…今まで通り見ているさ…。」   口の端を上げて、目を伏せる。   「なるほどね、本当に最悪だ…まじで浮竹可哀想。  浮竹が来るのを待ってるって?それって、悪趣味中の悪趣味だろ?」 「ボクの方が可哀想なはずなんだけどねぇ。  だいたいそういう趣味が少しでもあるならあると言ってくれてもいいじゃないか。  今まで悩んでいたボクが、まるっきり馬鹿だ。」 「…それはお前の都合だろうが……ったく、いい大人が拗ねるんじゃねぇよ。  で、俺がここに居て勘違いされるのも計算のうちかよ…。」   日番谷が今まで以上に呆れた顔で京楽を見上げる。   「君が来たのはたまたまだろ?」 「はー…俺は勘違いされたくねぇ相手がいるんだから、誤解はちゃんと解いておけよ。」   眼下にいた浮竹が、視界に入った京楽と日番谷を見て一瞬顔を強張らせていた。   「ボクが言った言葉は、どこまで信用してもらえるんだろうねぇ…。」 「だぁぁぁっぁぁぁっ!!ったく、お前ってそーゆキャラじゃねぇだろっ!」 「何言ってんの?これがボクだよ。」         あの後、散々日番谷に怒られた京楽は、同じ場所で一人真っ暗な空を見上げている。 日番谷は、さっさと抱いてしまえと怒鳴って帰ってしまった。 今日は新月、空には星だけが輝いている。   「何だい?」   明るさの無い空を見上げながら、振り向きもせずに聞く。 霊圧が誰だかを示していた。   「………杯。」   ドカっと座り込んだ音の後に、一言。 苦笑を浮かべながらも、未だ振り返りもせずに杯を投げる。   「どうしたよ?」 「…いや…………そういえば日番谷は帰ったのか?」   くすくすと京楽が笑う。 思った事を直ぐに聞いてくる相手が、羨ましく妬ましかった。   「彼はボクを散々怒鳴って帰っていったよ。  今頃藍染くんの所にでもいるんじゃないのかねぇ。」 「藍染?」 「やっぱりあんたは知らないか…、彼の想い人がそこにいるのさ。」   今まで外を向いていた視線を部屋の中に向ける。 欄干に肘を付いて浮竹の顔を見ながら、京楽はくすくす笑った。   「本当にあんたは、鈍いなぁ。」 「にににに鈍いとは何だっ!」 「彼の想いは、あんたと彼の想い人以外、周りの人間全員が知っているよ。」   浮竹が頭を抱えながら、腕の間から本当かと、京楽に視線を送る。   「興味のない事に一切心をはらわない、あんたらしくていいんじゃないの。」 「そそうなのか?」 「余分な事ばかり目に入ってしまうのは面倒なものだよ。」 「春水……俺には、お前は馬鹿だと言っているように聞こえるのだが…。」   恨めしげに京楽を見上げる。   「あはは…全然そんな事は思ってないよ。」   その笑い方が怪しいと、ふて腐れながら杯を傾ける。   「で、何の用事だい?」 「あ…お前が変な事を言うから忘れていた。礼を言おうと思ってな。」   用事があると思ってもみなかった京楽が、訝しげに浮竹を見る。   「礼…?」 「あぁ、最近考える事があってな…おかげで随分周りを見過ごしてきた事に気づいた。」   考えている事は主に京楽の事なのだが、そんな事は恥ずかしくて言えなかった。 ただ、何で恥ずかしいかは、未だ浮竹は分からない。   「そりゃぁ………珍しいねぇ。」 「言うな。俺だって、情けないと思っている。」   少し赤くなった頬をムッとした表情で誤魔化して、言葉を続ける。   「俺は、いつも戦う事だけを見て走って来た。  しかし、今俺があるのは、お前が周りを見て状況を正確に把握してくれていたおかげだ。  今無事に俺があるのは、お前が居てこそだという事が分かった。」   浮竹の真剣な眼差しに対し、京楽はあっけにとられ、目を見開いて浮竹を見ている。   「本当に俺は感情だけ、目先の事だけしか見てない…こんな短慮な俺だが、これからもよろしく頼む。」   浮竹は静かに頭を下げる。 京楽はうろたえている事を隠すことも出来ず、あぁと一言言葉にするのがやっとだった。           あの後、浮竹は杯を空け、帰っていった。 それからずっと、空を見上げている。 月の無い星だけの暗い夜空。   「参ったねぇ……勝てないなぁ…。」           【End】  




 


    なんか、浮ちゃんが出てくる所を読み返す度に、あんた幾つだよ?というつっこみが…f(^-^;) 横に春水が居なかったらやばいだろ?……と思考が来た所で、ふと思い出す。 同じようなキャラの小説を書いた覚えが…………アーロン…若アーロンっ!(゚▽゚;)^^^^。 声優さんも同じだし……これは私の為の天の采配か?(゚▽゚;)(゚▽゚;) なるほど…あたしがはまる訳だ。   ところで、京楽さんの話し方を変えました。 つか、本誌で話している所が少ないんで、未だ自信ないです。 とりあえず、これだろ?という所で、他の話も全部修正いれまひたf(^-^;)ぜ〜ぜ〜。 ドラマCDを聞きながら、雄たけびを上げながら、京楽さんの言葉使いを修正する未読猫でしたぁ〜(゚゚*)幸せvv   さて…この二人はいつ前に進むんだい?(((((((((^-^;)