窓枠に寄りかかり、のんびりと杯を傾ける。 今日の酒は苦いねぇと苦笑を浮かべながらも、眼下をずっと眺める。 隊員に囲まれている男を見つめる。 慕わしいやり取り、動作、眼差し、その一つ一つをずっと眺める。   何でボクの視界に入ってくるかなとため息を小さく漏らす。 せっかくの酒が苦い。 理由も分かっている。 先ほどまでは楽しく飲んでいた。 眼下にある満開の桜。 天頂には暖かい光を放つ月。 月と一緒に杯を傾け、花びらと共に酒に酔いしれる。 いい酒だった。 ほんの少し前までは。   眼下をずっと見つめ続ける。 十三番隊の面子が隊長を囲み、笑い続ける。 花見の宴が始まった。     【宴の後】     「隊長、飲みすぎは良くないといいましたが?」 「ボクの七緒ちゃんっVv今日もまた一段と厳しいお・こ・と・ばv」   いつも通りの隊長にため息つきながらも、七緒は違和感をしっかり感じ取る。 額に掌、口元にため息、思いのほか不器用な隊長をチラリと見る。   「何?何ぃ〜?もしかして、恋のため息かなぁ〜?」 「はいはい、それで宴会後にこちらにお呼びすればいいのですか?」 「褥を共にぃVv七緒ちゃんったらだぁいたぁん。」   先ほどまでの浮かない様子を微塵も見せずおちゃらける隊長に、こめかみが痛くなってくる。 きびすを返す。 こんな大きなお子様の相手はやってられないとばかりに捨て台詞。   「浮竹隊長に伝えてきます。」 「…せっかくの宴、邪魔をするもんじゃないでしょ。」 「ですから、宴の後です。」   もう続きは聞かない。 七緒は、隊長らしくもないと、もう一回ため息を付いて、階下に足を向けた。   春水は、再び眼下を見つめる。 有言即実行の副隊長が、十三番隊の面々に強制参加させられた所。 陽気な十三番隊の面子に苦笑しているのが見える。 副隊長が、十三番隊長に話しかける。 表情の動き一つ一つを追っていく。 静かに笑っていた人は、驚いたような顔になり、こちらを見上げてくる。 杯を少し上げた。 相手の顔に笑顔が浮かぶ。 目を伏せる。 このまま酔いつぶれないかなと、あり得ない期待をした。         「十四郎…。」 「何だ?」   春水が驚いたように顔をあげる。 自分の気持ちに沈んでいたせいで、近づいてきた人に気づかなかった。 目の前には、先ほど笑顔を浮かべていた人。   「宴はどうした?  終わってからという話じゃなかったのかい?」 「あいつらにもみくちゃにされて付き合ったんじゃ、こっちが持たないんだよ。」   十四郎がどすんと音を立てて座り、頭をポリポリと掻く。   「それで逃げてきたのかぁ?」   くすくす笑いながら、春水が杯を放る。 ほどほどにしなさいよと言ってから、徳利も放る。   「ったく、あいつらは俺を肴にぎゃぁぎゃぁと、折角の花に申し訳ないだろうに。」 「十三番隊長殿は人気者だねぇ。」 「いいや、あいつらは俺で遊んでいる。」   春水はずっと眼下を眺めている。 桜の花びらがはらはらと散る様を静かに目で追う。 酒の苦味が増した。   「お、これ旨いな。」   旨い酒に十四郎が顔をほころばせる。 そんな様子を横目で見ていた春水が部屋の中にまで花があるなぁと、苦笑する。   「何だ?」 「色男と花を愛でてる。」   目を伏せたまま、春水が言う。   「何だそれは?」 「んー?言葉通り。  綺麗なものを眺めているのさ。」   伏せていた目を静かに上げる。 春水が静かに、静かに十四郎を見る。 十四郎が、居心地悪げに少し眉間に皺が寄る。   「そんな事は、お前の好きな女性らに言え。  俺に言ったってしょうがないぞ。」 「事実だよ。」   くすくすと春水が笑う。 もう十四郎を見てはいない。 眼下の花を眺めている。   「どうした?何か変じゃないか?」 「……。」 「おいっ、春水っ!」   弾かれるように春水が顔をあげる。初めて十四郎を見たように目を瞬く。   「何だい?」 「はー…お前変だ。間違いなく変だぞ。どうした?」 「変ねぇ…究極に鈍い人を思い続けてるのが……辛いんだろうねぇ。」   春水が口元に笑みを浮かべながらも、静かに静かに言う。   「お前が大人しく片思いをしているのか?」   春水がくすくす笑う。 目の前の男は、その対象が自分だとはカケラも思わないらしい。 しごく当然ではあるのだが、その手合いに言い寄られた事があるはずのこの相手の鈍さには感動さえする。   「大人しく…そうだねぇ、まだ何もしていなかったかな。」 「お前らしくない。相手の女性はどこぞの姫君なのか?」   心配そうに十四郎が春水を覗き込む。   「違うよ。ただ……あまりに綺麗で純粋で真面目で……ボクに似合わないんだよ。」 「なっ!何言ってるんだっ!お前は、立派に隊長を務めてるじゃないかっ!」   十四郎が春水の胸倉を掴んで怒鳴る。 そんな十四郎の様子に、困ったようにため息を吐く。 口の中に未だ残っている酒が苦い。 こんな、気持ちをいつまで持ち続ければいいんだろう。 眩暈がする。 いっその事切られてしまえと、その方がすっきりするだろうと思う心と、せめて友人のままでずっと傍らに居たいと思う心で、心が二つに割れる。   眩暈がする。   胸元にある拳を掴む。無理やり自分の元へ引き寄せた。   「しゅ…春水?」 「少しの間、こうしていてくれるかい?」   春水が腕の中に居る温もりを、優しく抱きしめる。 これ以上は何もしない。 これでは何も変わらない事も分かっている。 ただ、あまりに近くにある顔に、顔にかかる吐息に、二つに割れた心がずるい道を提示する。 何も言わず、その気持ちに甘えてしまえと。   「本当にお前らしくない…俺では、その女性の代わりにはなれないだろうに。」 「黙ってなさい。」   十四郎は困った表情を浮かべてはいるが、それでも春水がしたいように、黙って体を預ける。 春水はその表情の中に苦いものを浮かべていた。     ほんの少しの間抱きしめていた体から、まったく力が抜ける。規則正しい呼吸が聞こえてきた。 本当に危機感がないねぇと春水が苦笑を浮かべる。 静かに十四郎を横たえ、一瞬躊躇った後に静かに唇を寄せた。 ほんの一瞬の交わり。   「参ったね…どうも…あんたはあんたで変わりようがないよなぁ。  …なら、ボクはボクらしく行くよ。」   十四郎の首筋に顔を埋める。 静かに離れた後、肩にかけていた羽織を十四郎にかけた。       【End】  




 


    ぐはっ!!(吐血) あたしが知ってる二人は、15巻までと、まだ手元に残ってるWJ、双極の矛を壊すところから現在まで。 資料少なすぎます(;_;) 言葉使い、不安です。 二人がどう会話するかもほぼ不明(;_;)<そこを妄想で拡大しなくちゃいけねぇだろ?   ということで?春水×十四郎 かねぇ?('';) あははっは・・・・(力無い笑い)死神達好きです。大好きです。もっと早く話しが進んで(週に3回WJが出版されるとか<おい)、コミックもばすばす出してください。   そして、またもや難しい世界です。 あぁっ、ちょっと古風な世界。漢字難しげ、雰囲気難しげ、あぁっ大人ぁな世界。 浮気するには、難しすぎた(;__)_<完敗。