鏡の前で百面相をしている白衣の大人。 言わずもがなの斬月先生。 今日も、結果の出ない訓練に、全力投球中。 ◇小児科病棟◇ 「先生、何やってんですか?」 「馬鹿だな。見れば分かるだろ。宴会用の芸だ!」 「違うよぉ〜きっとコウショーな何かがあるんだよぉ〜」 斬月先生の周りに、入院中の子供達が集まる。 「……ぁ……や……」 「先生、もう泣かないから、慌てなくても大丈夫だよぉ〜」 にっこり笑顔の織姫ちゃん。 「うん…こほっ…大丈夫」 引っ込み思案なみちるちゃんがおずおずと、斬月先生の袖をひっぱる。 「宴会があるんですか?」 小首を傾げた雨竜くんが、不思議そうに斬月先生を見上げる。 「もっとやらんのか?」 目をキラキラさせたルキアちゃんが、しゃがんだ斬月先生の背中に飛び乗る。 「……ぁ……のだな………怖くないか?」 全員が一瞬きょとんと目を丸くした後、爆笑。 「……何で笑う?」 誰も収まらない笑いに返答が出来ない。 子供達の真ん中で、少し憮然とした斬月先生が居た。 「もしかして、笑顔の練習?」 やっと収まった笑いに、雨竜くんが聞く。 「…そうだ……」 「そのままで、十分だぞ」 ルキアちゃんが、がっくりしゃがんで項垂れている斬月先生の頭をポンポン叩く。 「……お前達だって、泣いたじゃないか…………」 恨みがましい視線を、子供達に向ける。少々八つ当たり。 小児科病棟に入院する前の診察で、誰もが一回は斬月先生に怯え泣いた経験を持っていた。 「先生優しいって……直ぐに分かった……から」 咳が出ないよう、ゆっくりと話すみちるちゃん。 「でもな外来で、これはだめなんだ」 みちるちゃんの頭を撫でながら、苦笑を浮かべる。 いつでも斬月先生は、子供達にどんな些細な事でも、丁寧に教えてくれる。 それが、睨んだ怖い表情で語られたとしても、子供達の信頼を得ていた。 「分かった!あたし達で先生をなんとかしてあげるっ!」 織姫ちゃんの一声で、子供達が我が意を得たりとばかりに頷く。 小児科病棟の子供達は、斬月先生が大好きだった。 ◇◆◇ 「松本婦長さぁ〜ん」 「松本さん」 「松本…婦長…さん」 「松本婦長さん!」 まだ外来の患者さんが来てない朝一、小児科外来の受付に子供達が、元気良く入ってきた。 「まぁ、どうしたの?」 「斬月先生の髭そらないで良くなったよ」 「斬月先生の髪の毛もそのままで大丈夫っ!」 「すっごく素敵になったのぉ〜!」 「怖く…ないの…」 キラキラの目をした子供達に囲まれた婦長は、その勢いに、語られる言葉に、一瞬目を丸くした後、くすくす笑いはじめる。 「残念ね〜、折角髭剃り買ってきたのに〜」 「だめだめ〜っ!斬月先生のお髭カッコいいのぉ〜」 織姫ちゃんが、婦長のスカートの裾をぎゅっと握って訴える。 「で、先生は?」 「斬月先生〜!」 ルキアちゃんと、雨竜くんが、ついたての向こうに未だ隠れている斬月先生の裾をひっぱる。 「先生、子供達に呼ばれていますよぉ〜」 「……ぅ……」 ついたての向こうから、うめき声らしきものが聞こえた後、シブシブと斬月先生が出てきた。 「ね!松本婦長さん、すっごく素敵でしょ?!」 「これなら怖くないよ」 同意をしろとばかりの子供達に、婦長は肩を震わせていた。 噴出す5秒前。 目の前の斬月先生は、 雨竜くん作、クレヨンで描かれた斬月先生の笑顔(想像図)なお面を頭にかぶり、 みちるちゃん作、ピンクのゴムで結われた三つ編みを二つ作り、 ルキアちゃん作、「やさしいざんげつせんせい」と書かれた襷を掛け、 織姫ちゃん作、ちょっと怪しい風味のうさぎさんぬいぐるみを片手に持っていた。 「…う……うん……こ…怖くないわ〜〜……だだだ大丈夫、お髭も髪の毛も……そのままに……してお………っつ〜〜」 一生懸命な子供達に、全体力を使って笑わないよう答えた婦長だったが、限界はあった。おかしい。ファンシー?ファンキー?な装飾の中にある憮然としながらも困った表情の斬月先生が、はてしなくおかしかった。 そして、優しい斬月先生は、子供達の好意を無にすることも出来ずに、一日中ファンシーな姿で外来に居る事になる……診察に来た子供に、泣かれなかったかは、松本婦長だけが知っているらしい。 うふふ…みんなに写メールしなくちゃ〜Vv 【End】
斬月先生第2弾! どんどん酷い扱いに……(;。。)メソラシ でも、優しい優しい斬月先生の雰囲気が出てればOK!酷い扱いでもOK! 優しいから仕方がないんだ(゚-゚*)(。。*)ウンウン とりあえず写メが欲しいです。 どうやったら、松本婦長に連絡が取れますかねぇ? 未読猫【06.02.17】