「よぉ。」 扉を開けて、教室に入る。 いつも通りの教室と仲間が、いつも通りいるはずだった…。 【14番隊】 「なっ?!!!きょきょきょきょ京楽さんっ?!!」 目の前に尸魂界で出会った死神の面影を色濃く残す、大学生のように大人びた若者が自分と同じ制服を着てすわっていた。 「よぉ〜一護くん。 遅いんじゃないの?」 「おおお遅いじゃねぇっ!やっぱおまっ京楽っ!」 すっかり呼び捨て状態。一護は、京楽の胸倉を掴んでガクガクゆすっていた。 「久しぶりだねぇ。」 「久しぶりじゃねぇっ!何しに来やがったっ!」 「んふふふ…チャドくんにも会いたかったし、ルキアちゃんから聞いたこっちの生活ってのが楽しそうでねぇ。喜助に頼んで義骸作ってもらっちゃったvv」 「ちゃったじゃねぇっ!」 ニヤニヤ笑う京楽に、こいつじゃ話になんねぇとルキアを探して教室を見回したら……他にも死神が居た…。 一護は朝一で疲れる精神になんとか鞭を打ちながら、見つけた死神の前に歩いていく。 「で、あんたは何で居る?」 「何でとは?」 無表情で答える朽木カッコ兄。 「まさか、ルキアに何かしようとしてんじゃねぇだろうなぁ…。」 無表情な顔に殺気を浴びせながら一護は聞く。 「何を言っているのだ? 人間界には、授業参観というものがあると聞いて来ただけだ。」 「何〜〜〜っ?!!」 授業参観ってのは、親が子供の授業を見に来るもんであって、義骸まで作って生徒のふりをする事じゃねぇっ!と声にならない声がシャウトをしていた。 「一護、小さい事を気にするな。」 「…………っっつ!!あんたっ!何であんたまで居るっ!普通止めるだろっ!!」 自分の肩を叩く浮竹(学生年齢義骸入り)に速攻怒鳴る。 「俺は甘いものに目がなくてなぁ。 ルキアから布袋屋の白玉あんみつが旨いと聞いてな。」 ガックリと肩を落としてルキアの方を恨めしげに見る。 「わわわ私は、止めましたわ。 でも…、兄上と隊長を私が止められる訳がありませんでしょう?」 嬉しそうに言う台詞には、まったく信憑性皆無。お嬢様風話し方がより一層の白々しさをかもし出す。 ルキアを諦めて、チャドと石田の方を見ようとしたら、一斉に顔を背けられた。 暗に、自分に振るなと背中が言っている。 井上は楽しそうに各隊長と話をしていて、無条件却下。 目の端に滲むものがあるのは気のせいではないらしい。 そこに先生が入ってくる。 「おーい、授業始める前に転校生を紹介するからな。 皆席に着けー。」 脱力状態のまま、自分の席についた一護は、転校生を見て頭痛に襲われる。 目の前には、不良としか思えない外見の義骸入り更木と、小学生が何で高校に来てんだと言いたい日番谷の三人がふてぶてしく立っていた。 「何かねー、どうしてうちのクラスばかり転校生が多いかなー。 ま、いっか適当に自己紹介をしたら、適当な席に座りな。」 クラスメイト全員のそれでいいのかよという心の声と共に、転校生は嬉々としながら自己紹介し、それぞれの席に座った。 ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・ 「ゲタ帽子〜〜っ!!」 「おや一護さん、久しぶり。」 「あーいっち〜だ〜v」 怪しい笑みをいつも通り浮かべた喜助とニッコリ笑顔のやちるがお出迎え。 ここもかよと、一護がっくりと膝をつく。 「やっぱりてめぇかっ!むやみやたらに義骸作って儲けてんじゃねぇよっ!」 「むやみやたらなんて〜お客様のご注文に応じるのが店主の務めじゃないですかぁ。」 「だからって、年齢誤魔化して、人間界で遊ぶような輩に売っていいもんじゃねぇだろっ! しかも記憶操作バリバリしてやがりやがってっ!」 尸魂界に行った面子以外、生徒が増えても、転校生がやたら来ても、何一つ疑問に持っていなかった。 ついでに、無くなったはずのルキアの記憶がしっかり元に戻っていた。 「いっちー、事前調査と試験だから仕方がないよー。」 「はぁ〜?何だそりゃぁ?」 「あのですね一護さん、今度うちの隣に、新しく十四番隊詰め所が出来るんですよ。」 にこやかな喜助から話された内容は、一護の頭痛をより深くする。 つまり、尸魂界から来るより詰め所が人間界にあれば、もっと手早く処理できるのではと上の方の何も考えていない連中が、ルキアの一件後言い始めたらしい。 そのテストとして、浦原商店の隣に詰め所を一つ置いてみようという事になり、学校に来ていた隊長達は、人間界の勉強と事前調査に来たという事だった。 一護は真っ先に思う。 来た面子を見てもあからさま。 絶対、ルキアから何か聞いて、もしくは俺達を見て興味を持った、野次馬根性の連中が名乗りを上げたに違いない。 「それは、いつオープンしやがるんだ?」 「まずは誰が隊長さんになるか決まらないと始まりませんからねぇ。 今の隊長さん達の要望と事前に挙がった名前とのすり合わせ次第でしょう。 実は、私とか一護さんとかも名前が挙がっているっていう噂ですよー。」 「はぁ〜?俺の知らねぇ所で勝手に決めてんじゃねぇよっ!」 これ以上、普通の高校生から逸脱したくない一護は、勘弁してくれと泣き言を漏らす。 「一護も浦原もやる気がねぇんだろ? だったら、俺でいいじゃねぇか。 なぁ一護、俺が来たら毎日遊べるぜ。」 いつの間にか来て、勝手に話を聞いてる更木が話に割り込む。 「いいや、俺の隊員がこの世界に居る以上、俺がここに居るべきだろう。」 片手に饅頭を持った浮竹が、ルキアは俺の部下だと偉そうに口を挟む。 「何を言っておるのだ…それを言うのなら、ルキアは私の妹だ。私がここに来るべきであろう。」 さりげにルキアを抱擁しながら口を挟む。世間に気を使う事無く、妹馬鹿を発揮できる場所を確保したいと、朽木の無表情が言っていた。 「何いってやがる。あんた達こっちの常識を知らねぇだろうがぁ。 死んでからまだ日が浅い俺の方が適任だぜ。」 比較の問題と言ってはそれまでだが、それでも日番谷死んでからどれだけ経っているんだとつっこみたい。 未だ制服を着てウキウキ状態の日番谷、学生ライフをエンジョイしたいらしい。 「どうもあんた達は、下心がありすぎるんようだねぇ。 ボクのように純粋に対虚の為に志願しないとだめでしょ。」 言葉は立派だが、鼻の下が伸びきった状態で言ってるあたりが、京楽の言葉信憑性ゼロ。通り過ぎる女の子を見る度にやに下がる表情が情けない。 「だぁぁぁっぁぁっ!!こんなのが来たらうっとうしくてしょうがねぇっ! ゲタ帽子がなればいいだろっ! だいたい、あんた達は既に隊長だろうがっ!そっちの仕事をちゃんとしやがれっ!」 「う〜ん、別に私でもいいんですがねぇ。 浦原商店と兼任するのはちょっと。」 「そんなの、テッサイのおやじ達で十分だろうがっ!」 テッサイと、雨、ジン太がうんうん頷き、それを見た喜助が、イジイジと地面に何か文字を書き始める。 結構これでも色々大変なのにぃ〜とブツブツ呟いていた。 「なんじゃお前らこんな所で。」 黒猫姿の夜一が、うっとおしいとばかりに喜助の頭の上にずかずかと乗っかる。 「あー?何でお前らまで、こんな所に来てやがるんだよっ!」 夜一の背後に並んだ三人に一護が、冷ややかな目線を向ける。 こんな所ってと夜一を頭に載せたまま、再び喜助がいじける。 その背後に立った三人、チャドはいつも通りに、石田は苦々しく、織姫は少し困った顔をして一護に手を振っていた。 「こやつらが、14番隊の隊員じゃ。」 「ぼぼぼ僕は、了承してないぞっ!」 鬼道でとらえられているのか、ぎこちない動きの石田が声を張り上げる。 そんな石田の声に、楽しそうに夜一が最後通知。 「お主も見苦しいのぉ。もう既に決まった事じゃ。 一護、お主が14番隊の副隊長になる、精進せぇよ。」 一護が反論を言おうとした時、隊長達が大量のブーイングが発生する。 「俺と一護との遊びの時間はっ!」 更木が必要以上に必死な面持ちで夜一に怒鳴る。 「甘いもの食べ放題の日々はっ!」 団子の串を握り締め落ち着いた殺気?を飛ばすのは浮竹。 「俺の新たなる人生を邪魔するのかよっ!」 制服を着たままの日番谷がカバンを振り回して怒鳴る。 「妹との新しい門出を邪魔をしないでもらおうか。」 静かに据わった目で睨みつける朽木。 「可愛いお嬢さん達との触れ合いを邪魔するのは無粋じゃないかねぇ…。」 動けない織姫の両手を握り締めながら、振り向きざまに夜一に殺気を送る京楽。 「残念であったな。」 夜一がニンマリとチチャ猫笑みを浮かべる。 「既に儂が14番隊隊長と決定しておる。 まぁ、5人しかおらんので、一部尸魂界から人材を借りようとは思っておるがの。」 夜一の言葉が終わるか終わらないかのうちに、隊長全員の手が挙がった。 「お主らは、隊長であろう。 わしはピチピチの若い子達を既に頼んでおる。」 「だったら、俺は十分ピチピチだろうがぁっ!」 夜一がちらりと日番谷を見る。 「儂は、ショタの趣味はないからのぉ。もう少し成長してから来るがよい。」 夜一がシッシと日番谷に手を振る。 「夜一さん!その来るやつらって誰だよっ!」 一護が普段でも悪い目つきを、より一層悪くして夜一を睨む。 「4番隊山田、6番隊阿散井、9番隊檜佐木、十一番隊斑目、だったかのぉ。」 「それ……若いやつばかりじゃねぇかっ!つか、他の隊の副隊長が混じってるぞっ!そんなんでいいのかよっ!」 「あっちの都合で儂が隊長をやってやるのだから、当然この程度の我侭は通してもらうつもりじゃ…何か問題があるか?」 何か言う気力を、偉そうに威張る猫に根こそぎ奪われた一護が、恨めしそうに見上げる。 しかし隊長達は、偉そうに胸を張る夜一に、その地位は安定では無いぞとばかりに睨みつけた。 「我が愛する妹よ、待っておれ…必ず兄は迎えに行く。」 そう言って朽木が扉の向こうに姿を消す。 「織姫ちゃん〜またね〜Vv」 笑み崩れた顔で手を振りながら京楽が扉の向こうに姿を消した。 「一護、次は戦うぞ。」 「いっちーまたね〜v」 やちるを肩に乗せた更木がにらみを利かせながら扉の向こうへ歩いて行った。 「ルキア、今度は虎屋に行こうな〜。」 両手に大量の甘味を抱えた浮竹が手を振りながら歩いていく。 「一護…これを預かっていてくれねぇか?」 紙袋には綺麗にたたまれた制服一式。 「クラスメイトしようぜ。」 そういって、手をぶんぶん振った日番谷が消えていった。 浦原と夜一とルキアは、既に店の中に入っている。 一護の周りにはチャドと石田と織姫が、言葉もなくたっていた。 しゃがみこんだ一護が、消えた扉を見ながら口を開く。 「なぁ…俺は死神になってよかったって思ったのは勘違いか?」 そんな一護の言葉に誰も答えを与えられなかった。 【End】
風呂場でぼ〜っと妄想の海にたゆたゆしていたら、死神達がスクールライフ送ってましたf('';) カプ無しを書くようになったか……どうも死神達にぞっこんのやうですσ(^_^; 性格が崩れていようと、愛しい京楽さんが妙であろうとも、楽しいっVv よしっ!一護がなんと言って怒鳴ろうとも、石田が足掻こうとも、楽しむぞぉ〜(^O^)/