サンジが浚われたっ!   今日3回目の襲撃にうんざりしながらも、メリー号の乗組員は笑いながら闘っていた。 アラバスタから離れてからというもの、数時間おきに発生する戦闘タイム。 それは、アラバスタから得られる利益に群がっていた者達が何も得れず海軍に追いやられた為。そのとらぬたぬき達が道々略奪行為をしていた為。 たった一週間で、メリー号は無傷、船員も無傷だったが、船員の疲労はマックスに達していた。 そして、コックが船から姿を消した。   一番の地位   「さっきの船ね」 「どっちに逃げたか分かるっ?」   人が浚われようとも、表情も雰囲気も一切変わらないロビンが落ち着きなさいとナミの頭を撫でる。   「ロビンっ!」 「コックさんなら大丈夫よ」 「何で、そんな事が分かるのっ!」 「あの船には見覚えがあるわ。  あれは人を浚う船…コックさんの命は絶対安全よ」   ロビンの言葉にナミが真っ青になる。 あの優しいサンジの事、疲弊していた現状、間違いなく自分達を庇って身を差し出したに違いないとナミは泣きそうになった。   「唇が切れてしまうわ」   その冷静な言葉を咎めるように、ナミはロビンを睨む。   「コックさんが悲しむわよ。  こんな時だから、冷静に、ちゃんと綺麗にしていないとね」   ロビンを見上げたナミは、弱々しく笑い、そうねと言って周りを見渡す。   「ナミー、船は南西!」   チョッパーが涙声で叫ぶ。   「分かったわ。なんとしてでも追いつくのよっ!」   キッと南西の方向を見つめナミは叫んだ。                 ◇◆◇                 横を走る男を見上げる。 浚われた男の情人。 その男があれから、苦々しい表情を貼り付けたままでいるのが不可解だった。   「あんた…サンジくんが、心配じゃないの?」   敵陣の中で、雑魚を切り伏せている最中に、のんびり質問をする。 本当だったら、焦って焦れて、もっと目が険しく、噂だったイーストブルーの魔獣そのものになっていて良いはずだった。 なのに、浮かんでいるのは苦々しいだけの表情。 焦ってはいるように見えるが、それはサンジを心配しての表情とは思えなかった。   「心配…心配なのはオレの地位だ…」 「はぁ〜?何それ?」   また一人ゾロの剣によって敵が倒れる。   「なぁ…オレは、こいつらより……いや…お前に聞いてもしょうがねーか…」 「なぁにあんた?何でそんな情けない顔してんのよ」 「……これから分かる」   そう言ってゾロは、もう振り向きもせずに、最奥にある部屋へ、浚ってきた人間を閉じ込めてある部屋へ走った。           高らかに音を立てて扉が崩れる。 刀を構えたまま部屋の中を見て、剣士はやっぱりと肩をがっくり落とした。   「あー?クソマリモ、早ぇじゃねぇ?」   部屋に一つある巨大ベッドの中で、艶然と笑い、惜しげも無く裸体を晒している金髪碧眼の情人が煙草をくゆらせていた。 その姿はとても拉致された者のもつ、怯えや悲しみ屈辱は一切見られない。   「……オレはまだてめぇの情人でいいのか?」 「あー、構わねーよ。ってか、こいつら役に立たねー。  人身売買やってんなら、テクの一つや二つ楽しめるかと思っていたのによぉ。  こいつらクズっ!」   そう言ってサンジは、床でへたっている一人の男を踏みつける。 そして、その姿と言葉にゾロは、へなへなと床に座り込む。 とりあえず情人のポジションは確保できたかと安堵の息を吐いた。   「…サ…サンジくん?……ってかゾロ…何?…これ?」   安堵してへたり込んでいるゾロと、いつもとはまったく違う姿と雰囲気の薄いシーツ一枚纏ったサンジを代わる代わる見る。 状況がつかめない。   「ナミさん」   いつものだらしなく緩んだ声ではない、艶っぽく紡がれる自分の名前。 ナミは目の前のサンジを凝視した。   「…ナミ…お前までライバルになるなよ…」   情けない声で語られるそれは、ナミにとって理解不能。   「あぁ、船に帰る支度をしないと。  レディの前でこんな格好で失礼します。  服を着る前にシャワー浴びてきますから、ちょっと待って下さいね」   そう言って、ナミの頬に軽くキスをする。 いつもなら、キスをされる前になぐっている体が動かない。 何これ?何これ?とナミの頭の中では言葉がぐるぐる回っていた。   「…ゾ…ロ……?」 「あー?」 「…何あれ?」 「あぁ……サンジだぜ」 「だって…」 「裏サンジってオレは呼んでる」 「何それ?」 「あいつのもう一つの姿だ。  淫乱一直線の快楽主義者。相手は女でも男でも可。  ただ、女には表の態度とほぼ変わらない。浮気もしねーだろ」   ゾロが深々とため息をつく。 二人とも閉じられた浴室の扉を凝視したまま。   「相手が男だったら?」 「見たとおりだ。  自分を満足させられる野郎以外足蹴」 「で、あんたが一応情人の地位を確保しているのね?」 「たぶんな…自信ねーけど、とりあえずはまだ情人してて良いみてーだな」   ため息が漏れる。   「も…もしかして…サンジくん…」 「あぁお前の想像通りだろうよ。  確かに疲れてたのも、お前達を庇ったのも間違いねーが、本心はのんびり楽しみましょうって所だろ」   ナミは、ゾロを可哀想な子という視線で見つめる。 船の中では、楽しそうに喧嘩しているか、穏やかに酒を酌み交わしている姿しか見た事が無かった。 当然、夜の生活の事なんか知りたくも無いと思っていたから、知らない。 ただ、二人はそういう関係なんだろうと、自然と思っていた。 なのに…なのに、あの穏やかでほんのり甘い空気は何だったんだ?と問いたい。 当然サンジに。 目の前のゾロに聞いても、可哀想すぎ。   「……あんた…大変だったのね〜…」 「そう思うのなら、てめぇはライバルになるなよ。  オレに勝ち目がなくなる」   しゃがみこんで、恨めしげに目だけあげてナミを見上げる姿は、哀れを通り越して笑えて来る。 ナミは、くすくす笑いながら、どうかしらね?と意地悪げに言った。   「ナミさん、試してみる?」   浴室の扉が開きざま、サンジが艶然と微笑んで爆弾宣言。   「オレ、レディには優しいぜ」   鮮やかな笑顔と共に、少し情事を彷彿させる掠れた声に、ナミが真っ赤になる。   「サンジっ!」 「オレは来るものこばまずって言っただろ?  ナミさんなら、喜んで両手を広げるぜ」   怒鳴るゾロに、ニンマリ笑って返す。 その笑顔も艶めいて、普段の軽い陽気なコックはどこに行ったんだ?とナミは心の中で叫ぶ。 けれども、視線はサンジに奪われる。離す事が出来ない。   「オレは別にお前じゃなくても良いし?それは最初に言っただろ?」 「あぁ、聞いたぜ。  で、一応今現在オレは、一番なんだよな?」 「まぁな」 「だったら一番に居る者として、お前を独占させろと言いたくなるじゃねぇか」   下唇を出して見上げるゾロに、もうダメっとサンジが爆笑する。 魔獣が拗ねてる〜とゲラゲラ笑う。   「お…お…お前ねぇ……しょうがねぇなぁ…ま、お前の下半身次第だぜ。  頑張れよ、イーストブルーの魔獣。  ほれ、行くぞ」   サンジは、自然な動きでナミを抱き上げさっさと扉を出る。 その体勢は何だと、ゾロはぼやきながら立ち上がる。 レディに血まみれの廊下を歩かせる訳にいかねーだろ?と笑いながらあっさり返えされる言葉。 そして、ナミは呆然とサンジを見上げていた。           「サンジ…」 「んだよ、ま〜だ拗ねてんのかぁ?魔獣ちゃんわぁ〜」   深夜の倉庫の中、いつも通りの濃厚なセックスの後。目の前には、いつもと約3mmほど多いへの字の顔が居た。 こんな細けぇ事も分かってるぐれぇなのになと、サンジが小さく笑う。   「今は、お前が一番だって言ってるだろ?」   わざと「今は」を強調して、笑いながら額にキスをする。 本当の事は、一生言ってやらねぇと、少しは態度で分かれと、鈍い情人の腕の中で静かに瞳を閉じた。    




 

  サンゾロ派なんですけどね。 ゾロサンも読みます! 大好きなサイト様が多いんで、ゾロサンサイトに通う率が高いかも。 でもねー…サンジくんが乙女って…まぁ受けだから仕方が無いんだけど…多いんだf('';) 人身売買でサンジくんが浚われるってのは、よくあるネタなんだけど……未読猫が求める結果はこれだったり。 やっぱ、サンジくんらびゅ〜なんで、強いサンジくんが大好きです! ということで、増えそうも無い、ゾロサン小説でしたーm(__)m