○月×日 晴れのちシャンクス   シャンクスが空から降ってきた。 さすがグランドライン、不思議空ってやつだな。     晴れのちシャンクス     「どあぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっ?!!」   景気のいい悲鳴の後に、豪快な破壊音。ゴーイングメリー号の乗組員がその原因をさぐるべく甲板に集まった。   「何だぁこの穴?」   サンジは、煙草に火をつけながら穴の縁を蹴る。   「誰か重たい荷物を、カモメ便に頼んだんじゃないでしょうねっ!」   ナミは、集まった船員に対し、修理代請求の準備中。 その背後で、ウソップが滝涙を流しながら修理道具をかき集め。 ビビは何が始まるのかとワクワクしながら、一番見晴らしのよいキッチン前からご観戦。 甲板のすみっこでは、どでかい音にもめげずにゾロが夢の中を迷子中。   「不思議穴かぁ?」   ナミを見上げるルフィが楽しそうに笑う。   「不思議穴じゃないわよっ!ちゃんと原因が落ちてるわっ!」   穴から下を覗くと、男部屋の床に埋まった男が一人、船長に向かって手を振っていた。   「あれぇ?シャンクス?」 「おー久しぶりだなぁ」 「何してんだ?」 「さぁ?」 「不思議シャンクスか?」 「あーそれ!それじゃねぇ?」 「だぁぁぁぁっぁっ!そこのっ血ぃダラダラ流してるおっさんっ!のほほんと喋ってるんじゃないわよっ!チョッパー怪我人っ!」   止めなければ果てしなく続くと思われる、ほのぼの会話を分断する。 大きな音に怯え、ゾロの影で可愛いお尻を出していたチョッパーが、慌てて救急道具一式を取りに走った。     「……降りれないぞ」   シャンクスが落ちてきた所は、丁度男部屋の入り口で、入り口を破壊した後ついでに梯子まで折って床に埋まった模様。   「シャンクスー捕まれー」   ニシシと笑いながらルフィが、穴に両手を伸ばす。 それをガッシと掴むと、何を思ったかシャンクスがルフィの両手をより一層引き伸ばす。   「行くぞぉ〜」 「お〜!」   満面の笑みの二人に、嫌な予感の乗組員。 次の瞬間、彼らの想像通りにシャンクスは星になった…………   「何やってんのよあんたはっ!」   我に返ったナミが、ルフィをどつきたおす。   「サンジくん、ゾロを海に放り込んで、助けに行くよう言って。  チョッパー準備は出来てるわね?    で、治療が終わったら……宴会?」   ため息をつきながら、ナミがルフィを振り返る。 ルフィは、さすがナミだと、にっかり笑った。       「おーすまねぇな」   蹴られたゾロが、海中で目を覚ましついでに、怒鳴りながら引き上げた。 ずぶ濡れのシャンクの周りで、チョッパーがタオル片手に消毒薬片手にパタパタ動いている。   「…泳げねぇのか?」 「あーお前って、ミホークが言ってた魔獣ちゃん?」   ゾロの額に青筋大量発生。 お前って短気だなぁ〜とばんばんゾロの背中をたたきながら、片手だと泳ぐの面倒じゃねぇかと、無精者一直線な言葉にゾロの青筋増殖。   「シャンクスってミホークの知り合いかぁ?」 「おう、これでも剣友達だぜ」   袖だけの腕を揺らしながら笑う。   「強ぇのか?」 「ん〜普通?でもこれになっちまってから、遊んでくれねぇのあいつ」   ナミの目の前に拗ねたおっさんが居た。 頭が痛い…これってもしかして、うちの船長の将来?と思った瞬間、痛みが増してきた。   「俺も魔獣ちゃんと遊びたいけど、とりあえず何か食べさせてチビナスちゃんVv」 「俺はチビナスじゃねぇっ!って何度言えば分かりやがる!」   気合の入った踵落としを笑いながら避けて、だってゼフが言ってたじゃねぇかぁと、ケラケラ笑う。 その動きにゾロが口の端を上げ、再び粉砕された床にウソップが泣き崩れていた。   「サンジさんも、お知り合いですか?」 「ビビちゃぁ〜んVvこのおっさんの側に寄っちゃだめだよぉ〜セクハラおやじだからね」 「何だ?まだ根に持ってンのかよ」 「シャンクス、バラティエに行った事あったのか?」   ルフィが話せとばかりに、キラキラ瞳をシャンクスに投げつける。   「お前は変わらねぇなぁ」   そう言いながら、ルフィの髪の毛をガシガシ楽しそうにかきまわした。   「赫足のゼフって言ったら大海賊じゃねぇか、当然遊びに行ったぜ。  そこによ〜金髪碧眼のすっげ〜お人形みたいな可愛らしいお穣ちゃんがいてなー。  メシはうめぇわ、目が楽しいわで、マメに日参しちゃったーなっチビナスちゃんVv」   当然の事ながら、サンジは黙って聞いていた訳ではない。 パーティの準備を放棄して、シャンクスを足蹴にしようと何度も足を繰り出していたが、笑いながら全部外され、ついでにどうやってそうなったか、いつの間にかヘッドロックされていた。   「なぁ〜髭剃らねぇ?折角綺麗なお穣ちゃんが台無しだぜ」 「うっせっ!俺ぁ男だと、ずっと言ってんだろうがっ!」 「うぅ〜シャンクスのおじちゃんって、小首傾げながら可愛く微笑んでいたチビナスちゃんはどこに行っちゃったのぉ?」 「だぁぁぁぁっ!うるせぇっ!うるせぇっ!」   ジタバタ暴れるサンジをものともせずに、腕はロックしたまま。   「もしかして、ものすっごく可愛かったんですか?」   目をキラキラさせたビビが乙女ポーズで質問。   「もしかしなくても、すっげぇ〜可愛かったぜ」   くぅ〜見たかったですわ〜っ!!とビビが王女あるまじきにやけた表情で握りこぶしをぎゅぎゅっと固める。 それを見たサンジがビビちゃぁ〜んと情けない声を出した。   「しっかし、でかくなっちまったよなぁ…つまんねぇの」   そう言いながらもシャンクスは、ルフィにしたように、サンジの髪の毛もぐしゃぐしゃにする。   「ったく、あんたは変わらねぇなぁ。  ほら離せ。旨いメシ作ってやるからよ」 「おー楽しみにしてるぞ」                 ◇◆◇                 目の前には大量の宴会料理と酒。 今日の主賓は、船長と肉を取り合いながら、酒を飲んでいた。   「んで、紹介してくれねぇの?」   何を?と顔中に文字貼り付けたルフィが小首を傾げる。 乗組員全員が、ため息を一つ。   「自分が知ってる事は、皆知ってると思ってんだろ?」 「違うわ、何も考えて無いだけよ」 「おっさんが誰だか紹介したのも俺って、間違ってねぇか?」 「メンドクセーから、適当に自己紹介しちまえ」   ゾロの言葉に、ルフィに何を言っても無駄と頷きながらウソップが挙手をする。   「オレは、ウソップ。百万の部下を持つ船長たぁ〜オレのことだっ!」 「ウソップすげぇ〜」   一人感激するチョッパーを除いた全員が、掌を横に振る。   「あはは…ウソップは狙撃手じゃねぇかぁ」   シャンクスは、胸を張って超一流の狙撃手で船長だと威張るウソップを楽しそうに見上げる。 ヤソップから聞いていた彼の息子が、目の前に居た。 なんとも妙な縁だなと、心の中で笑う。   「オレは、チョッパー。医者だ」 「鹿の着ぐるみは趣味か?」 「しし鹿じゃねーっ!オレはトナカイだっ!」 「チョッパーは、七段変形不思議トナカイなんだっ!」 「いいや、ヒトヒトの実を食べた非常食だぜ」 「ルフィーっ!サンジーっ!」   少し涙目のチョッパーの頭をポンポンと叩きながら、有能なお医者さんだよなぁ〜とサンジが言いなおす。 怒ろうとしていたチョッパーが、サンジをポカポカ叩きながら騙されないぞーと、笑いそうになる顔をひきしめようとしてぐちゃぐちゃな顔をする。   「七段変形?」 「おう!すんげぇ〜変形をするんだ」   えへへ〜そそそんなでもないぞぉ〜と言いながら、どこから出したか箸を鼻と口につっこみ踊り始めるチョッパー。その横でルフィもキラキラ目のまま踊る。   「なるほどな〜」   感心するシャンクスに、他船員が違うってと再び手を横に振る。 何でこんなに疲れるのかしら?と頭を抱えながら次は私ねとナミが掌をあげた。   「航海士、ナミです」 「ナミはすっげぇ〜んだぞぉ〜」 「んナミさぁんは、素敵です〜Vv」 「…………魔女」 「…………守銭奴」   どこから取り出したか不明の天候棒が、無条件でゾロとウソップの頭を直撃する。   「ってぇなぁっ!」   気合の入った一撃をその一言で済ますゾロ、その横でしくしく泣きながらこれだけは嘘じゃねぇと床と語らうウソップ。   「さすがんナミさぁん、素敵な一撃です〜Vv」 「ナミは容赦ねぇよなぁ」   サンジはくねくねと踊りながらハートを飛ばし、ルフィはからから笑っている。 シャンクスの笑みが深くなる。 いい仲間を持ってるじゃねぇかとルフィの背中をばしばし叩いた。   「んで、そっちの王女さんは何でいるんだい?」   ルフィを除く全員が、何で知ってるんだとシャンクスを顧みる。   「や、王室から手配書が回ってきてるって」 「へぇ、ビビって何か悪さしたのか?」   麦わらボケ一人。   「バロックワークスにいたろ。悪人の団体じゃねぇか」   緑ボケ一人。   「ん〜ビビちゃんの美しさが、罪なんだよ〜v」   素敵眉毛色ボケ一人。   「えぇっ?!ビビは悪い人なのかっ?!」   世間知らずなトナカイが一匹。   「家出以外に色々?」   王女にあるまじき過去を作っちゃった天然が一人。   「ウソップ…私はこれ以上こいつらと一緒に旅をする勇気がないわ」 「耐えろナミ、こいつらに常識を期待するのが間違っているんだ」   二人がお互いを慰めあっている時、ゲラゲラ笑っていたシャンクスが突然立ち上がる。そして、ルフィ、ゾロ、サンジが続いて立ち上がった。   「この船の待遇はすげぇいいな」   シャンクスが近づく髑髏マークの船を、楽しそうに見上げる。   「そりゃぁオレの船だからな」   ルフィが笑う。   「腹ごなしになるといいけどな」   ちらりと近づいてきた船に目線を飛ばすが、期待薄とばかりに欠伸一つのゾロ。   「ウソップ、チョッパー!ナミさんとビビちゃんを頼んだぜ。」 「おう、ウソップ様にまかせとけっ!」 「分かった!」   サンジは煙草に火をつけながら、のんびりと船主に向かって歩いていった。     横にピタリと付けてきた海賊船は、メリー号に比べるととても大きな船だった。 ただ、惜しむらくは船と船員のレベルが一致しなかった事。人数が多ければ良いというものでは無いという事を己達自身によって証明してしまう。 敵船はたった二人の乱入者に、立っている船員をどんどん減らしていった。   シャンクスとルフィが笑いながら敵船の中で闘っている。 シャンクスが背中がくすぐったいとばかりに、笑いながら剣を振るう。 嬉しくてしょうがないと、破顔したままのルフィが腕を縦横無尽に繰り出す。   「なんかつまんねぇよなぁ」 「腹ごなし以下に加えて、あいつらが全部叩いてちゃぁなぁ…」   刀を肩に担いで、シャンクスの姿を見つめるゾロ。   「ここはお前に任せた」 「あ?」 「どうせ船長が腹すかせて帰ってきやがるだろ?  俺ぁ料理を作ってくる」   サンジがキッチンに入っていくのも、ゾロが睨みを効かせているのも、シャンクスは全て見ていた。 チョッパーが人形になって立って、女性達を守っている。 ウソップがパチンコを使って、何かを投げつけてくる度に、火の手があがっているのも確認した。   背中で闘っているルフィが楽しい。 ルフィの仲間の行動が楽しい。   笑いが止まらなかった。     「なぁルフィ」 「なんだぁ〜?」   もう周りには立ってる人影は一つも無い。   「仲間は好きか?」 「おう!」 「いろんなもん貰ってるだろ?」   敵船の縁に座ったルフィが、笑いながら頷く。   「お前は、これからどうする?」 「海賊王になって、みんなの夢も叶えるっ!」   シャンクスが嬉しそうにルフィの麦藁帽子ごと、ばんばん叩く。   「早く俺ん所までこいよ」 「でも、シャンクスここにいるじゃん」 「お、そうだった。じゃぁ、ベン達が居る所まで早く行け!」 「おう!」   ルフィの腕が伸びてシャンクスをガッシと捕まえる。   「シャンクス帰ろう!」 「おう!」   そして、再びシャンクスは空を飛んで………甲板をぶち破った。   「ルフィーーーーーーーーーーーーーっ!」   瞬時に滝涙で叫んだのはウソップ。 そして、船員全員が穴の中を覗いた。   「どうしたぁ〜?」   ルフィも空を飛んで戻ってくる。   「いないの…」 「いねぇなぁ」 「いいいないぞ」 「いねぇ。」 「いないわね」   船員全員の視線を浴びたルフィが一言。   「帰ったんだな」   何の根拠もない自信たっぷりのルフィの言葉に、全員なんとなく納得してしまった。                 ◇◆◇                 「「どあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁっ!!」」   再び甲板からあがる、景気の良い悲鳴と破壊音。 メリー号の乗組員達は、綺麗に開いた穴から下を覗いた。   「よぉ〜!」 「不思議シャンクスーーーーっ!」   人影は二人だった。   「この馬鹿お頭っ!俺まで巻き込んでどうするっ!!!」 「不思議ベンもだぁ!」   楽しそうに笑うルフィを置いて、乗組員は全員所定の位置に戻る。 ウソップは大工道具を取りに、サンジは宴会の準備、ナミとビビはお茶の続きを、チョッパーは昼寝の続きを始めたゾロの影に隠れた。   今日は、はれのちシャンクスとベン。    




 

  副隊長へ15万お祝いでっす。 すんません、中身が無いよぉ〜状態ッス。 ただ、ひたすらほのぼの?と…楽しいシャンクスおじさまを書かせて頂きました。 隊長は、出現人数が多くて討ち死に状態でございます。 こんなへたれでへっぽこな話ではございますが、どか受け取ってやってくんなましm(__)m そして、シャンクスの話し方がいまいち不安でございます。 何かご訂正がありましたら、即座に直し直ししますんで叩き返してやって下さいまっせm(__)m 副隊長15万おめでたう〜(^-^)/))遅くなった…orz 未読猫【05.07.11】