【指し示す子・空っぽの子 2】     未だ小さく、言葉もたどたどしかった頃、赤ん坊を脱しかけた時から気づいていた。   周りは全て敵だ。   唯一側に居てくれた人。火影だけが自分が心を許せる相手。 それでも、心を動かすほどの相手ではなく。 自分に色々教えてくれる人間だという認識。   火影の側に居てさえ、隙さえあれば、自分に敵意をよせられた。 かすり傷や打撲程度の暴行は放っておく。九尾が勝手に直してくれるから。 強い殺気が自分に向けられた時だけ、同じ量の殺気を返した。そしてクナイを振るう。   クナイを自在に操れるようになったのは、2才の少し前。 自在に操れなければ死んでいた。   目の前に自分の代わりに横たわる死体。   でも心は何一つ動く事はない。   動くような心に育ててはもらえなかった。 誰も自分に教えてくれなかった。 自分もそれについて全く気にする事はない。   結界を張った場所で、毎日起きる。 火影のチェックが入った食事を食べる。 火影の時間が許すかぎり、ありとあらゆる知識を詰め込み、腕を磨く。 火影が忙しい時間も同じように、一人で知識を詰め込み、腕を磨く。 そして、火影と一緒に食事をし、夜遅くなってから寝る。   毎日変わらない生活。 それを4才まで続けた。   4才になる少し前に、火影から暗部の仕事をしないかと言われた。 断る理由も無かったから、一つ頷いた。 日々変わらない生活に、項目が一つ増えただけ。 変化をして、暗部の服に身を包み、人を殺す。 自分が請け負うのは単独任務のみ。 自分の体に頭に覚えさせた事を使う。   全ては、自分という物体の外側で起った事。 何一つ感慨はない。 目に写る全てが自分とは関係の無い事。     これからもずっと死ぬまでそんな生活のはずだった。       たまに、外の人間の事を忘れ、変化もせずに街に出てしまう事がある。 その度、いつも通り人間に囲まれ、煩い音と共に、暴力を受ける。 そして終ったら、自分の見つけた場所で体が癒えるのを待つ。   今日も同じように暴力を受けた。 そして、体を癒すために立ち上がり、移動しようとした時、真っ黒なものが視界に飛び込んで来た。 小さい人間だとは判断したが、無視して走った。 走り続けていくうちに、背後にわずかな気配を感じる。   誰かが自分を追っているらしい。 とりあえず、人間から受けた傷が痛まない程度で、それでもかなりの早さで走った。 森の一番深い場所。 一本の木の下で坐る。 坐った時には、背後にあった気配を忘れていた。 自分に追いつける相手がいるはずはないから。   傷が癒えるのを待った。   誰も居ない深い森の中。鮮やかに一つの気配が現れる。 その気配は、しばらくの間、自分を見ていた気がする。 静かな森の中に音が発生する。   「ナルト。お前もったいねー事してる。」   そして、その気配の主は、静かな森を台無しにして、暫くの間音を綴る。   目の前に再び真っ黒なものが飛び込んで来た。 黒い髪、黒い瞳・・・・・さっき一瞬見た人間だった。 再び目の前の人間が自分を見つめる。 そして、音を発する。   言葉という事は分かっていた。 けれども何一つ認識しなかった。音が通りすぎるのを待つ事にする。 なのに、音の発信源が隣に落ち着いてしまった。   体が癒えるのに、あと小一時間。 その間音はずっと続いていた。   完璧に傷が癒えたのを認識して、立ち上がる。 音はまだ続いている。   自分は、いつもの通り自分を守る結界の中へと走った。       あれからしばらくたって、再び自分を癒そうと森の奥にむかったら、この間と同じ気配があった。 木の根元には同じ人間が上を向いて寝転がっていた。   何を見ているかは分からない。 ただ、その人間が居る場所が見える所で気配を消し、ずっとその人間を見ていた。   その人間はほとんど動かず、ただずっと空を見ていた。   今日は、あの煩い音をたてない。 ただひたすら、ぼんやりとしている。   自分はこの間と同じように小一時間で復帰をし、再び振り返る事もせずにそこから立ち去った。   それから何度も同じ人間を見かけた。 その人間は最初の時と同じようにぼーとしていたり、本を読んでいたり、寝ていたりしていた。 体を癒しながら、なんとはなしに見ていた。 それでも、癒し終ると共に気配を消したまま、そこを立ち去るのは変わりない。           ある時はり紙を見つける。   『木々の葉の間から降ってくる光。』   上を見上げた。 もうすぐ秋になろうかという季節だった。 それでも光はまぶしかった。未だ緑色をした葉は光っている。 風に吹かれると、葉が動き、その度に色々な所から放たれる輝き。   素直に奇麗という言葉が心に浮かんだ。 奇麗などという言葉は生まれて初めて心に浮かんだ。 いつもは、自分じゃない人間を横たわらせている幹の元で、かなりの時間見ていた。   それから、毎日森の奥に通うようになった。 はり紙をする人間が居ない時間に。   『日が透けている葉の色。』   『風が作る形、音。』   『時間と共に変わる空の色。』   『雨上がりの水滴の色、音。』   『霧雨の中の景色。』   はり紙に従って、色々なものを見、聞くようになった。 今まで自分が何も見ず、何も聞いてなかった事を知る。 奇麗なものはいくらでもある。 そんな世界の中に居るのは飽きなかった。いつも時間を忘そうになる。 それでも、このはり紙を置いていく人間とは会おうとしなかった。         木に張られた紙はもう何十枚にもなっていた。       【continue】    




 


    シカマル先生っ!効果出ているようですよっ!   という事で、視力・聴力共に回復してきた模様(゚゚;)<違っ   ナルトの話ってこんなんばっかしやなぁ(ーー;) いつか、すっげぇ〜明るい子供の頃の話を考えよう。 じゃないと、だめじゃん。暗いじゃん。 明るくいきたいよ・・・・ねぇ?f(^-^;)