【幸せな時間】     「なーナルト、あれから何か進展あったか?」   放課後の教室で、いつも通り悪がき達が集まっている。 いつもなら、そこにもう一人居るはずなのだが、授業中ずっと寝ていた罰だとイルカ先生に言われ、現在倉庫の片付け中。 これはチャンスとばかりにキバがナルトに質問をした。   「進展?」 「おう!だって、お前らって一応恋人同士になったんだろ?」   キバの言葉にナルトが真っ赤になる。 側で御菓子を食べながら、チョージが素直な反応だなーと感心。   「で、どうなんだよー。」 「どうって?何がだってばよ?」   真っ赤になりながらも、今だ言葉の意味がつかめないナルト。 小首を傾げてキバを見る。   「キバ、ナルトまじで分かってないみたいだよ。  ちゃんと説明してあげないと。」   僕は説明するのは嫌だからねと、口いっぱいに御菓子を放り込んでチョージがにっこり笑う。   「説明って…ナルト…キスはしたんだよな?」   こくんと一つ頷くナルト。   「キバ見てたって…ば。」 「見てた?……って、あれか?もしかして頬っぺたやってたあれか?まじあれか?」   ナルトがもう一つ頷く。 キバとチョージの後押し?によって無事?恋人同士になったシカマルとナルト。 その時隠れて見ていた二人は、確かにシカマルがナルトの頬に軽くキスしていたのを見た……(キバ的)お子様キス……。   「だだだだだめだってば?なななな何っ?」   キバとチョージが目の前で深々とため息ついているのを見て、ナルトが不安になる。 何か間違っていた?自分からキスするのが作法だった?と、はっきりって方向大間違いの考えに突っ走る。   「いや、だめって事はねぇけどさ…あれから随分経ってるだろ?  この間だって、シカマルがお前ん家泊まりに行ったとか言ってたじゃねぇか…。」 「えっと、キバさー、ナルトにははっきり言わないと全然伝わらないと思うなー。  何か間違った方向で混乱しているみたいだし。」   えーー…オレって初めてだしー、何か順序とかあったってばーー…と、ナルトがベクトル修正もされずに、ぶつぶつ言いながら頭を抱えだしていた。   「ナルト…あの…全然順序なんてないからね。  大丈夫だよ。」   チョージがポケットにあった飴玉をナルトに握らせ、肩をポンポンと叩く。   「うーー、じゃぁ何でため息なんかつくってばよっ!」   少し涙目のナルトを見て、キバがもう一回ため息をついた。   「あのなーキスって言ったら、口と口だろ?」 「口?……って口ーーーーーーぃっ!!  そそそそそそれって……おおおおおおお大人のすすすすすする事なんじゃっ?!!!!」 「…お前なー…御色気の術使ってて、何でそんな事言うんだ?」 「ナルトー、大人じゃなくてもキスぐらいするからね。」   キバとチョージの呆れた口調にまったく気づかない。ナルトは、口という言葉を真っ赤になりながら繰り返していた。   「ナルト…どうせシカマルの事だから、ナルトが頑張らないとだめだと思うんだよね。  今度頑張ってみてごらんよ。」 「どーいうこった?」   キバが怪訝そうにチョージに聞く。   「あのシカマルだよ。  あのものすっごく恥ずかしがり屋で、お達者倶楽部のシカマルだよ。  よっぽど、頭の回線がショートしない限りキスなんか無理に決まってるよ。」   ナルトは未だに真っ赤になって混乱中。 キバはナルトにも、今ここに居ないシカマルにも呆れている最中。 チョージは大丈夫かなぁ?と一人心配していた。     ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・     「お前今日どうした?何か変じゃねぇ?」   日課になったアカデミー帰りに寄ったナルトの部屋。 大抵、二人して他愛もない話をしているだけ。 キバが最初に想像していた甘い雰囲気は一切、かけらも無い空間。 周りにあるのは、穏やかで静かな落ち着いたモノだった。   それでも二人にとっては幸せな時間だったのだが、それが今日はやけにぎこちない。 シカマルは、不思議そうにナルトを見る。 目が合う度に反らされる視線。真っ赤になる顔。会話らしい会話も出来ない状況だった。   「へへへ変っ?」 「キバ達に何か言われたのか?」   ナルトが真っ赤になった首をぶんぶん横に振る。 そんな様子を見て何か言われたなと、シカマルが心の中で頭を抱える。 どうせろくでもねー事を吹き込んだに違いないと確信。   「別に驚きゃしねーからよ、言ってみな。  ってか、こっちに来いって。」   狭い部屋にこれでもかってばかりに、距離を開けているナルト。 シカマルの言葉に、のろのろと動き出す。   「うぅっ…おおお怒らないって…ば?」 「何だか知らねーけど、言ったのはキバかチョージだろ?  お前を怒るわけねーだろが。」   その瞬間、ドベとは思えない速さでナルトが、シカマルを押し倒す。 ガチッという音と共に、シカマルとナルトは焦点の合わないお互いの顔を見つめ、唇を合わせていた。   シカマル脳内フリーズ。 ナルトの体はどうしていいか分からず硬直。   フリーズしながらも、血の味を感じたシカマルは、ナルトを抱えながら慌てて起き上がる。現在、反射神経だけで動作中。 動作不能の脳以外を総動員して、目がナルトの唇を確認し、血が溢れている唇を指で拭う。   勢いが良すぎたのだろう、かなり深く切れている。拭っても拭っても血が溢れてきた。   シカマルの顔が再びナルトの近くに寄る。 指でだめなら舐めればいいとシカマルの脳以外の部分が結論を下す。   ぴちゃぴちゃという音が部屋の中に響いた。   その音にナルトの体が驚いたようにピクリと揺れる、ナルトの顔がより真っ赤に染まり、一瞬でシカマルの側から飛びのく。ナルトは唇を押さえ、部屋の隅に崩れるように座り込んだ。   シカマルとナルトの視線が合う。   「「あ…。」」 「ななななナルト…?」   現在漸く再起動にこぎ付けたシカマル。   「シ…カ……。」   もう何を言って良いやら、どうして良いやら、顔が熱くて、唇が熱くて、心臓がばくばく言っていて、涙が滲んできたと思ったらぼたぼた零れてきた。   「どどどどうした?まだ痛いのか?」   シカマルの言葉にナルトは首を横に振る。 そして、シカマルの頭はやっと再起動完了……自分のやった事を反芻してしまう。 真っ赤になる、膝から力が抜けてナルトと同じような格好で座り込んだ。   「………う……ぁ……分かった……ナルト……。」 「な…ん…か……分からないん…だけど……こう…なん…だって…ば。」 「……あ…あぁ…。」   部屋の両隅で、真っ赤になって座り込んだ二人は、お互いの感情を理解する。   「…キバ…か?」 「う…うん…。」 「…ったく…あの野郎……知っちまったら……無しには出来ねぇんだ…ぞ…。」   シカマルの掌が顔を覆う。 あれから一緒にいるだけで幸せだった…手に入れた幸せ、側にいる幸せ、時間を共有する幸せ……それだけで良かったはず……。   「ナルト…。」   シカマルが手招きする。   ナルトが躊躇いながらもシカマルの傍らに這っていく。   シカマルの手がナルトの腕を掴み引き寄せ……二人の熱が混ざる。   「なぁ…。」 「うん…。」   自然と二人の唇が重なる。   「……こういう時間も…いいもんだな…。」 「…うん。」     ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・   「チョージっ!」 「何ー?シカマル。」 「余計な後押しするんじゃねぇっ!」   くすくすチョージが笑う。   「本当に余計だった?」   チョージは面白そうにシカマルを見上げる。   「………没収っ!」   いつの間にかチョージの影はシカマルの影に捕まっていた。 影真似の術がシカマルと同じ動作をさせる。 チョージは空を掴み、シカマルはチョージのポテチを掴んでいた。   「あーーっ!」   袋を逆さに振って、ひとかけらも残さずシカマルの口の中にポテチが入る。   「もう変な入れ知恵すんなよっ!」   そう言って、シカマルがアカデミーに向かい走って行った。   「…ったく素直じゃないなー。」   再びくすくすと笑いながら、自分のカバンを開く。 いつの間にか、新しいポテチがカバンの中に入っていた。   【End】    




 


    相変わらず、非常に可愛いノマカプ達です。 桜さんから頂いた95000キリリク、シカナルでという事でしたので、ノマカプだよね?と勝手に判断して、書いてみました。 えーー、ご希望に沿っていますでしょうか?(どきどき)   えーーシ3に、二人の爪の垢を飲ませたいとちょっと思いました('';)   未読猫【05.01.28】