どうしてだろう? 何もかもが分からない。 自分の体の中に何かがある…自分が今まで知っていたとは思えない何か…。 これは何なんだろう? オレは…どうすればいいんだろう? 【指し示す子 2】 「どうしたの?ナルト。」 「…え?…。」 ナルトが不思議そうにチョージを見つめる。 「んー僕の勘違いだったらごめんね。 ナルト…今、何かに悩んでる?」 ナルトはチョージを見つめたまま目を瞬いた。 「…オレ…いつも通りじゃない?」 「うーん、皆にはいつも通りに見えてると思うけど……僕ナルトを知ってから、ずっと見ているから。」 チョージがニッコリ笑って、ナルトを見つめる。 「あのねナルト…シカマルには相談した?」 ナルト顔が強張り、頭がぶんぶん横に振られる。 「どうして?ナルトとシカマルはずっと友達してるんでしょ? それに、シカマルなら大抵の事は答えてくれるよ。」 ナルトがチョージから顔を伏せて、首を横に振る。 「ねーナルト、僕御菓子いっぱい持ってるし、天気も良いし、日向ぼっこしよう。」 チョージがナルトの上着を持って引っ張る。道端の草むらを指差し、あそこなんて気持ちよさそーだよと言いながら、ナルトを引っ張っていく。 そこは初夏の暖かさのおかげで、草がボーボーに茂っていて、座り込んだら道端から誰が居るかなんて分からない。風が未だ伸びようとしている草をそよそよ揺らしていた。 ナルトを座らせたチョージは、目の前に大量の御菓子を並べ始める。 「これねー、最近の僕のお気に入りなんだー。」 そう言って、ナルトの手に御菓子とジュースを握らせる。 ナルトは呆然としながらも、御菓子の封を開け、一口口の中に入れる。 「おいしい?」 ナルトがコクンと頷く。 「ねー、何でシカマルに相談しないの?」 「……なんとなく…怖いのかも……」 いつものナルトとは違った、不安そうな言葉にチョージが目を見開く。 ナルトの生い立ちは、既に三代目に詳しく聞いている。なるほど、人との付き合いが良く分からないのだろうと思い立った。 「ねー友達ってさ、怖がるもんじゃないよ。 だって、言いたい事を言い合って喧嘩になったとしても、友達って言うのは変わらないもんだから。 ううん、もっと仲良くなれるよ。」 チョージが御菓子を頬張りながら、ニッコリと笑って言う。 「どうして?…喧嘩したら…仲が悪くなるんじゃないの?」 「喧嘩ってさ、相手を知るいい機会なんだ。 自分の思っている事は分かるでしょ?喧嘩することで、相手の思っている事が分かるんだ。 自分の思っている事と相手の思っている事を比べれば、自分の知らない相手の事を見つけるかもしれない…だからもっと仲良くなれるんだよ。」 ナルトが、チョージの言葉を瞬きも忘れて聞く。 「…そう…なの…?」 「うん、それに相談してくれなかったら寂しいと…ううん、悔しいって思うよ。」 「悔しい?…」 どうして?とナルトが不思議そうな顔をする。 「あのね、ちょっと前までシカマルもナルトみたいな顔をしていたんだ。 僕は一応幼馴染で付き合いが長いから、いつかは相談してくれるかな?って待ってたんだけど…気が付いたら元のシカマルに戻ってた。 あー、悩み事はなくなったんだなーってホッとしたんだけど……相談してくれなかったなーって…悔しいって思ったんだ。」 チョージがパリッと音を立てて、ポテチを一口食べる。 「僕って…頼りがいないかな…友達のつもりだったんだけどな…って…。」 シュンと肩を落とし項垂れているチョージをナルトは呆然と見る。 シカマル以外の人間…仲間と呼ばれる者達が出来て以来、彼らが見せる鮮やかな感情に、毎回驚かされていた。 そして、今回見せられた感情は分かりやすい説明まで付いていて、そんな風に思うのかと吃驚していた。 「…シカマルもそう思うのかな?」 「うん、たぶん。 本当言うとね、もう一つ僕が思っている事があるんだ…。」 ナルトが躊躇うようなチョージの物言いに、続きを促すように小首をかしげる。 「…あのね…僕がナルトを知ってから、まだそんなに経っていないでしょ? だから、僕がこんな事思うって、変なんだけど……ナルトの役に立てなくて悔しいな…って。 一番の理解者がシカマルだって知っているから、シカマルに聞くのが一番なんだって分かってるんだけど…それでも悔しいなって……僕ってすっごい我侭だって気が付いちゃった。」 ナルトの目の前に居るチョージは困ったようにナルトを見る。 「それって…我侭なの?」 「うーーん…そうじゃないのかなぁ?」 「オレ…チョージに聞いてもいいの?」 「え?」 「オレ…全然分からないんだ…チョージの説明って分かりやすかった…我侭ってのは良く分からないけど…他のは…なんとなく分かった。」 「あの…。」 「…でもどう言っていいか分からない…。」 困った顔のナルトがチョージの目の前に居た。 「思いついた事を全部言ってみて。 僕一生懸命聞いて、頑張ってまとめるよ。」 チョージが嬉しそうに笑って、ナルトはこっくりと一つ頷いた。 「最初…最初なのか分からないけど……、最初はたぶん木の上に居たんだ。」 ナルトが、目の前の草をじぃーと見ながら呟く。 「木の上でシカマルとヒナタを見ていた。楽しそうに話していた。」 風がナルトの髪をそよそよ揺らして、無意識に動いたナルトの手が、髪の毛を顔の前からどける。 「いのとシカマルが話していた…。 …最近、シカマルはヒナタに訓練しているんだと…思う…。 チョージは、この間シカマルと一緒に帰っていったよね? 赤丸がシカマルの頭の上に居て、キバもシカマルも笑っていた…。 どうしてだろう?いっつもシカマルが…なんだ…。 良く分からないんだけど…オレはそこには入れない……。」 ナルトの話を聞いていたチョージが、少し考えて口を開く。 「ねーナルト、この間ナルトとキバが遊んでいたよね?」 「うん?」 「キバって面白いでしょう?赤丸って可愛いよね?」 ナルトがこっくりと頷く。 「キバって、自分の気持ちを人に素直に伝えるから、楽しい時はすっごい楽しい顔をするんだ。 だから、そんなキバを見ていると、こっちもすっごく楽しくなるよね。 キバの気持ちって伝染するんだ。」 「伝染?」 「うん、ナルトもキバと同じくらい楽しそうで、同じ顔で笑っていたよ。」 「…オレが?」 チョージがニッコリ笑って頷く。 「僕といのとシカマルって、小さい頃からずっと一緒だったんだ。 親が仲が良いから、まだハイハイしか出来なかった頃から知っていた。 でもシカマル事……全然気づいてやれなかった…。 僕達あんなにずっと同じ時間を共有していたのに…ね…。 いのは、未だに自分の不甲斐なさを悔やんでいる。 だから、今まで以上にシカマルの事を知ろうと頑張っているんだ。 今度こそ、シカマルが困っている時に手を差し出せるように、必死なんだよ。 だから最近良く二人で居るのを見かけるんだと思う。」 「いのは…凄い…ね。」 ナルトは、自分の知らないいのに対して、素直に賞賛の言葉を漏らす。 「うん、いのってね、一番最後に産まれたのに、一番しっかりしちゃったのは僕達のせいなんだよ。 ほら…シカマルはやる気が無いってのを前面に出してたし、僕はのんびりしているし、何とかしなくちゃって思ったんだろうね。」 「そうか…。」 「ねーいのが手を差し出したい相手って、シカマルだけじゃないんだよ。」 チョージが微笑んだまま、ナルトを指差す。 「オ…レも?」 「うん、だから最近いのと良く話しているでしょ?」 ナルトは、普段から周りの人間に対して認識が薄い。驚きながら、一生懸命最近の記憶を引きずり出す。 「あれは…そういう事だったんだ?」 「うん、そういう事なんだよ。」 チョージが頷きながらも、少し視線を逸らす。 「いのの気持ちはね…僕と一緒だよ。 だから、シカマルやナルトと話す機会が今まで以上に僕も増えている。」 少し照れたようなチョージの横顔に、ナルトが嬉しそうに微笑む。 「チョージ…手を差し出してもらってる…。」 「え?」 「だって、今聞いてもらったし、色々話してもらってる。」 「あ……あ……うん……… そ…それでね、ヒナタの件はシカマルに聞くといいよ。」 チョージは真っ赤になった顔と、どう答えていいか分からなくて、慌てて会話を進める。 ナルトがくすくす笑った。 「シカマルがヒナタの訓練に付き合ってるって言ってた。 ナルトが、どうして?って聞けば理由を教えてくれると思うよ。」 楽しそうに笑っていたナルトの表情は、再び困ったような顔になる。 「聞いていいのかな?」 「聞かれて嫌だったら答えないだろうし、嫌じゃなければ説明してくれるよ。」 「そっか…。」 未だ不安そうなナルトに、チョージが少し考え込む。 ナルトの言葉を聞いていくうちにチョージの頭の中には一つの言葉が浮かんでいた…『嫉妬』。 ただ、その言葉の原因はいくらでも考えられる。 ナルトの中にあるシカマルが、どういう形にあるのかが未だ分からない。 ただ、それを知るのは自分の役目じゃないって事は知っていた。 「ねーナルト。」 ナルトが顔をあげてチョージを見る。 「今までナルトが感じた事、嬉しい事とか、悲しい事とか、嫌な事とか…色々あるでしょう? 今回は、どう感じたの?」 ナルトの困った表情がさらに深くなる。 「…オレ、それ良く分からない…。 綺麗って言葉はシカマルに教わった。 楽しいって事も……でも今回のは…何だろう?」 「じゃぁ…前シカマルが巨大籠の中に居た時、ナルトは怒っていたでしょう? その気持ちと似ている?」 ナルトが一生懸命考える。そして首が横に振られた。 「……シカマルって怪我した事ある?」 ナルトが一つ頷く。 「その時ナルトが感じたモノは似ている?」 さっきより長い時間考え込んだナルトは、小首をかしげる。 「シカマルとナルトが、長期間会わなかった事はある?」 ナルトが一つ頷く。 「その時ナルトが感じたモノは似ている?」 「……分からない…。」 泣き出しそうな顔をチョージに向け、頼りなげな言葉を紡ぐ。 「ナルトにだって自分で気づかないだけで、色々な感情があるんだよ。 色々な事を思い出して、その時の感じたモノを、今持っている気持ちと照らし合わせてみて。 でね…何か一致するものが見つかったら、さっきの事と一緒にその気持ちをシカマルに話してごらん。 シカマルが今のナルトが悩んでいる事の答えをきっとくれる。」 チョージが安心してとばかりに、ナルトにニッコリ笑った。 ナルトとチョージが話していた。 ナルトが泣きそうな顔をしていた……。 不安定…自分が不安定に揺れているのを知っている…今のオレはまだナルトの前に行けない…いや行っちゃいけない… 【continue】
なんてストレートじゃないんだっ(ーー;) なんかもーチョージあんたは偉いよっ!ものごっつー偉いっ! 私って短気だし、まわり見てないから、そんな説明できねー('';)あう〜。 素直な言葉が理解できる相手だったらもっと楽なのになー(T-T)はうぅ〜。 その単純な言葉を説明するのに、どこまで説明を広げなくちゃいけないんだか…。 大変だったー…(;__)_ そして、どこのシリーズでもチョージはこのスタンスやねぇf(^-^;) うってつけなだけに、思いっきり使わせて頂きました。 えぇ、私は10班らば〜ヘ(゚ー゚)ノ 【05.04.12】