同じ名前の違う貴方 (後)   「じじぃっ!」   ドアを荒々しく開き、入ってくる見知らぬ青年。 三代目は咥えた煙管をそのままに、青年を見上げる。   「新月か?」 「おう!で、何だあの戦略部はっ!  書類は整理されてねぇ、個々が勝手にやってる、長はいまいち使えねー!  少しは、人員確保しやがれっ!」 「そう言ってものぉ、木の葉の人手不足はお主の世界でも変わらぬじゃろ?」 「ふざけるなっ!  戦略部は人の命を預かる所だろっ!  あれじゃぁ、下っ端どころか、上忍でさえ安心できねーっ!」 「誰ぞ推薦出来るか?」   面白そうに三代目が聞く。 自分の世界でも無いのに、あの面倒臭がりのシカマルが、ここまで感情を出して怒鳴る事事態珍しい。 三代目の顔に笑みが自然とあがっていた。   「オレの世界で信用出来る書類を書けるやつは、イルカ、ハヤテ、そしてオレだ。  あとナルトと言いたい所だが、あの性格だと分からねーな」 「ほぉ、イルカ…」 「あぁ、几帳面で真面目な性格だからな、整理もちゃんとするし、書類の裏をきっちり調べてこなす」   あの、交換日記から始める交際術を伝授するあたり、生真面目さが伺える。 どうせ、子供の頃に聞いた、受け売りだろうとは思っているのだが。   「ハヤテも同じく真面目だからな。  きちんとした書類を作るぜ」 「分かった。闇が帰ってきたら、対処しよう」 「当たり前だ!  じじぃ!少しは、木の葉の将来について考えろ。  いい加減じゃ、この先ねーぞ!」   三代目が未だ笑みを浮かべ新月を見る。   「それは、この世界のナルトの為かね?」   うっ……と、シカマルが口ごもる。既に頬がうっすら赤い。 確かに自分の知っているナルトとは、まったく違う個性なのだが、それでもナルトである。 自分がずっと守ると、ずっと側に居ると誓った相手。 そのナルトに危害が及ぶのが嫌だった。   「ほ〜、お主は随分と素直なのじゃのぉ」 「あー?」   聞き返してはいるものの、三代目が何を指して言っているのか分かっている新月は、視線を逸らす。   「ったく、そんな事言ってる暇があるんなら、ちゃんと木の葉を運営しろっ!  ついでに、そこで気配消してるヤツ、もう少し気配はきっちり消しやがれっ!」   情けない捨て台詞を残して、新月が消える。 そして、憮然とした表情の碧が三代目の背後から現れた。   「……オレ…気配の消し方……甘いか?」 「いいや、儂には分からなかったがのぉ」   新月の技量に二人は、関心する。   「なんか、本当に闇じゃねぇんだ…」 「確かに違うのぉ。あんな可愛い反応は、ついぞ見たことがない」   新月が、消えた場所を見つめて、碧がうんと無意識に頷いた。                 ◇◆◇                 「ったく…人使い荒くねーか?」 「あはは、一番忙しい時に来たからね。  でもハヤテが、やっぱりシカだったって。凄いね闇は…ハヤテが誉めるなんてめったにないよ」 「そりゃぁ、誉め言葉か?」   日食が笑いながら頷く。 二人は、家でお着替え中。 これから夜の任務に出る所。   「ってかさ、ここのシカマルってどんなヤツだ?たった半日だけど、世間の目が非常〜に気になるんだけど?」 「優しくて、強くて、頭が良くて、カッコ良い」   真剣な日食の言葉に、聞いた相手が間違っていたと、がっくり肩を落とす闇。   「どうやったら、こんなにナルトの信頼を得られるんだか…」   遠い目の闇。   「なんかさ、闇の話を聞いた時に思ったんだけど、碧って新月に似てる」 「はー?」 「すぐに真っ赤になって、怒鳴ったりするんでしょ?  まるで、しーが照れてる時の反応を聞いているみたい」 「…碧が照れてるってか?」   日食がうんうんと頷く。   「少しは惚れられてるって、自惚れても大丈夫か?」   再びうんうんと頷く。   「違うけど、闇はシカマルだって思ったから、きっと碧も違うけどオレなんだよ。  オレなら、どんな出会いでも絶対奈良シカマルって人間が一番好きになるから。  だから、大丈夫」   少し頬を赤らめた日食を、眩しそうに闇が見つめる。 なるほど、違うけど、同じかもしれないなと思う。 根本的に優しい所がナルトという人間を現していると思った。   「新月は幸せもんだ。  オレはお前に、キスがしたくなったぜ」   日食が目を瞬かせて、くすくす笑う。 碧じゃない自分に、闇が、シカマルが手を出すとは到底思えなかった。   「やなヤツだなー。ちっ…勝手知ったるシカマルかよ」 「あははは、シカマル行こう!」                 ◇◆◇                 「今日は楽だなー」 「楽じゃねぇよっ!どうして、一晩にSランクの仕事を5つも持ってくるんだっ!」   既に三つ仕事を終え、次の任務先に向かって走る二人。   「本当にお前は威勢が良いなー。  やっぱあれか?将来は火影希望かよ?」 「皆に認められるんだぁ〜ってかぁ?  お前じゃねぇけど、そんなメンドくせー事するか。  オレは、自分らしく生きていける場所があればそれでいーんだよ」 「三代目と闇の側に居れば良いって事か…」 「だーーーーーっ!何でそこに闇が入ってくんだっ!」 「だって、交換日記してんだろ?  んで、キスも既にしてらっしゃると。  イルカ先生なら言っってただろ?手ぇ出したなら、最後まで責任を持てってよ」 「手を出したのは闇だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」   任務地までかなりの速さで走っている中、おとぼけた会話は続く続く。 真っ赤になった碧を、珍しいナルトだと、新月は楽しげに鑑賞中。   「こっちの書類の流れも同じだったから、婚姻届を無理やり通すやり方教えてやるぜ」   ニヤニヤ笑いながら新月は話を続ける。   「いらねぇーーーーーっ!!」 「あのなー、それだけ真っ赤になってて、拒否してもなぁ〜信憑性ねーって。  だいたい、嫌だったら、とことん闇を排除すればいいじゃねーか」   碧が真っ赤になったまま、新月を睨む。   「しねーんだろ?」 「ににに新月っ!お前!闇より性格悪ぃっ!」   先行していた新月が突然木の上で立ち止まる。 碧も新月の後ろで立ち止まった。   「オレは、戦略部で今までのお前らの仕事を全部確認させてもらった。  ついでに、自分の部屋も物色させてもらった。  闇がお前について集めた情報と、お前と話して得たものから、オレはお前を凄いと思うよ。  それは闇も持った感情だと思うぜ」 「何が?」 「日食を見てても思うんだけどさ。  ナルトって強いよな。  日食は、守る人の為に強くなった。  お前は自分らしく生きていく為に強くなった。  あの境遇でだ。  オレはお前達を尊敬するよ」   少し赤くなった耳が見える後姿。 碧は何を言って良いかわからず、ただ月明かりでわずかに見える赤い色をじっと見ていた。   「だからさ、奈良シカマルは、うずまきナルトに手を差し伸べずにはいられねーんだろうな」   赤い色が自分に移ってきた気がする、顔が熱い。   「だからよ、身も心も立派な恋人になってやれや」 「何がだからだーーーーーっ!!」   面を外した顔が、ニンマリ笑って碧を見ていた。           そして、突然碧の前から人影が消える。 そして、突然日食の前から人影が消える。 どちらも移動中の森の中。   一瞬の違和感を感じたシカマルが、心話で自分の相手に呼びかけた。     『なー』 『しー?』 『おう、お前今どこだ?』 『北の城近くの森』 『任務はこれからか?』 『うん、後2つ』 『分かった、これから直ぐにそっちに向かう。待ってろ』     『碧!』 『闇?』 『おう!今戻った。どこだ?』 『短冊街手前』 『今行く』   それぞれが修正された。                 ◇◆◇                 「闇は、ここに居たのか?」 「うん、一緒に任務してた」   シカマルがニンマリ笑って、ナルトがにっこり笑って二人が同時に口を開く。   「「交換…」」   言葉が続かない、新月は次の木を取りそこね、落ちそうになり。 日食は木から片足を踏み外した。 それでも、二人はそれなりに小さい声で、げらげら笑う。   「…き…聞いたか?」 「う……うん……見た」 「見たぁ〜?!教えろっ!ちっコピーが欲しいっ!!」   笑っていたのが、悔しい顔に変換。取ってないのかとナルトに詰め寄る。   「闇が、させてくれなかった」 「ちっ……でも覚えているよな?」 「うん!シカ好きそうな内容だったから。結構覚えてる!」 「んじゃ、さっさと仕事を終わらせようぜ」   その夜、奈良夫婦の家では、かなり夜遅くまで笑い声がこだましてた。       「新月は、ここに居たのか?」 「おう!」 「オレは、新月の世界に居たんだけどよ…笑われた…月光特上に笑われて、ナルトに呆然とされた…」 「オレに?何でだ?」   恨みがましい視線と内容に、碧が訝しげな視線を返す。   「交換日記……」 「あ………見せたのかっ!」   瞬時に真っ赤になる顔。   「見たって問題ねーだろ?  どうせ自分達だし?術の内容だけじゃねーか。  少しは恥ずかしくなるような内容を書きやがれ」   闇が硬直している碧に軽く口付ける。   「今日キスをしたとかよ」 「…………闇〜〜〜〜っ!!」   二人の任務が再び始まるまで、少々時間がかかったらしい。         「ねー、シカマル。  昨日何してたのかな〜Vv」 「ばれたか?」 「ばれたかじゃないよねー。  あれだけ大きいチャクラ垂れ流して、バレない訳ないでしょう?」   執務室で、火影と火影補佐が一服中。   「実はよ、時間移動が出来るんなら、パラレルワールドにも手ぇ出せねーかと思ってよ」   ニンマリと火影補佐が笑う。   「面白そうっVvで、どうだったー?」 「失敗。  10時間程度違う世界の自分になれる予定だったのによー全然」 「…火影補佐殿」   にっこりと、冷ややかなオーラを纏う火影。火影補佐の額に少々どころじゃない汗が一気に流れる。   「何でオレを連れて行こうとしなかったのかなー?」 「や、火影様に何かあったらまずいだろ?」 「シーカ」 「イノに怒られるじゃねーか!」 「シカマルー」   ニッコリ笑った顔に渦巻く背後の暗黒オーラ。 火影様は怒っていた。   「オレの居ない所で、シカに何かあったら、どうしてくれるのかなー?」 「分ぁった!パラレルワールドまでは手ぇ出さねーよ」 「オレの為にそうしてねーVv」 「はいよ」   火影補佐の知らない所で、術は立派に作動していた。     二度と、パラレルワールドの混線はなくなった……らしい?     【終】    




 

  えー随分長くなったなー。まー世界二つですから(^-^)v ということで、約束と据え膳のシカマルが入れ替わりましたー。 原因は、大変申し訳ないんですがー、こんな事やりやがりそうなシカマルがこいつしか思いつきませんで………オフ本"最悪〜"のシカマルです。   異世界交流のリク見て、当分できねーだろと思ったんですが……、 全面的に交流しないで、入れ替わったら楽しいやねーと思った瞬間沸いた沸いた。 最近の打ち込み速度としては最速でございました。 結局約束の二人はラブラブで、据え膳の二人はというか、シカマルは可哀想?なお話になりましたねー…頑張れ闇!   ということでー?、260000番キリリクをゲットした朱雀さん、これでよろしくされてやって下さいねー(((脱兎。   ※ここで発生した出来事は、それぞれのシリーズには反映されません。 なにせお遊びだからね(^_-)-☆   未読猫【05.09.25】