特別上忍に新入りが入った。 真面目で落ち着いた雰囲気の若者。丁寧な話し方をする。 仲間達と一見なごやかに打ち解けた様子を見せているが、オレが見る限りいつも一線を引いて、懐に誰も受付けさせない。 ま、そういう性格なんだろうと、眺めていた。     いつも楽しそうに多くの人と話している。 何年も特別上忍として戦って来た先輩。 しかし、その態度が私にまで降り懸かってくる。とてもうざい。 群れるのは昔から嫌いだった。仲間だの、友人だの・・・・そんなものは御免だ。 しかし、相手は先輩、いつも通りに如才なく受け答えをする。   【a youth meets a youth】     「任務終りました。」   何時も通りにハヤテが任務書を提出した後、仲間が集まっている部屋へ顔を出す。 これも任務のうちと、割り切ってにこやかに声をかける。 早かったな、怪我しなかったか?・・・・そこにたむろしていた仲間が、声をかけてくる。   「なぁハヤテ、ゲンマ達に会わなかったか?」   アオバが振り向きざまに問う。   「いいえ、お会いしませんでしたが・・・まだ帰ってきてないのですか?」 「あぁ、あいつららしくない。何手間取ってるんだか。」   心配そうに言うアオバだったが、それでも無事に帰ってくる事を疑っていない顔だった。 ハヤテにとっては、そんなどうでもいい話をいつも通りにさらりと終えて、部屋から辞去した。   いつも話しかけてくる賑やかな声がなかった事に少し安心をして。それでも心のどこかで物足りなさを感じていた。 物足りない?そんな事を考えた自分を馬鹿馬鹿しく思い、こんな日はさっさと寝ようと帰路を急いだ。 しかし、急ごうとした時前方に慣れた気配を感じる。その当人が歩いていた。 心の中で舌打ちを一つし、やはり、一日一回はあの声を聞かなくちゃいけないのかとため息をつく。   しかし、こんなに近くにいる自分の気配を察した様子もなく、ゲンマは俯いて目の前を去っていこうとする。いつも華やかに飾っていた陽気さも影をひそめている。しかも、見慣れた口元の千本も見当たらない。 ハヤテは相手のそんな状態を訝しげに思い、珍しく自分から声をかけていた。   「ゲンマさん、お仕事は無事終りましたか?」   そんな大きな声ではなかったのに、ゲンマはビクッと体を震わせ、顔をあげる。 ハヤテは、ゲンマに近づいて何があったのか聞こうとした時、血の匂いに気づく。ふと地面を見ると、点々とゲンマが歩いてきた方向から血の跡が続いていた。   「ゲンマさんっ!怪我っ!どこですかっ?!」   慌てて相手に近寄り、体を確かめる。 今までゲンマが何一つ話さない事を疑問にも思わず、ハヤテは急いで体を点検する。 そして、血はゲンマが握り締めた拳から流れているのを見て、驚いてゲンマの顔を見上げた。   「ゲンマさん・・・手・・・・。」 「あ?・・・・あぁ。」 「何があったんですか?ご一緒だった方は?」   何げなく聞いたハヤテだったが、その言葉の効果に愕然とする。ゲンマが辛そうに顔を歪め、再び拳を強く握り締めた。   「だめですゲンマさん。血が出ています。」 「・・・・あいつ・・・・・・オレの目の前で・・・・・死んだよ。  オレは目の前に居たのに、助ける事も出来なかった・・・・・・すまねぇ。お前に言っても仕方がねー事だな。」   手で顔を被い、ハヤテから顔を背ける。   「ゲンマさん、家に来ませんか?  報告書は明日でも構いませんでしょう?」   ハヤテは思ってもみなかった事が口からこぼれた事に驚いたが、こんなゲンマを一人にさせておくわけにもいかず、一応同じ特別上忍だからと、自分に言い聞かせた。   「ありがとうよ・・・・・・・でも、気にするな。  どうせ、オレが居ても邪魔で、鬱陶しいだけだろ?」 「そんな事ないです。」 「無理をしてるぞハヤテ。お前はいつも如才なくこなしてるけど、オレにはバレバレだ。  だから、気にすんな。」   そう言ってゲンマは、ハヤテの手を振りほどき、歩きはじめた。 しかし、ハヤテは再びゲンマの腕を取り、今度は無理矢理自分の家の方にひきずり始めた。 ハヤテは、ゲンマが自分の事を見透かしていたのに驚きはしたが、それよりも今のゲンマの方が心配で、体が無意識に動いていた。 とった腕をどうしていいかわからず振り払われない程度の強さで握りしめ、混乱しながらただひたすら無言で自分の家を目指した。       「ここに坐っていて下さい。」   ゲンマを家に入れ、掌の手当てをした後、初めてゲンマに声をかけた。 ハヤテは、未だ混乱していたが、それでもしなくてはいけない事を一つ一つ片付ける事に意識を向ける。 台所から、適当なつまみと大量の酒をゲンマの前に並べた。   「私は料理は得意でないので、買ってあったものしかありませんが、とりあえず食べて下さい。」 「お前・・・・何やってるんだ?」 「何って・・・・何がですか?」   不思議そうにハヤテがゲンマの顔を見る。   「お前珍しい顔付きしてる。どうしたんだ?」   ハヤテがより不思議そうな顔をしてゲンマを見る。どうしたって・・・・それが何の事だか分からない。   「お前はいつだって、仕方がないという感じでオレを見てるじゃねーか。  ま、オレ以外に対しても、仲間というよりは、付き合いも任務のうちという感じだよな。」 「・・・・・・・・まだまだ私は未熟者ですね。そんなに私はわかりやすいですか?」 「いや・・・オレはお前を眺めていたからなぁ。分かってるのはオレぐらいじゃねー?」   ハヤテが、酒をゲンマに注いで手にもたせる。 自分も手酌でなみなみと注ぎ一息で飲んだ。   「何で私なんかを見てらしたのですか?」 「あ?お前腕はいいし、見てておもしれーから。」 「面白い・・・・ですか?」 「あぁ、おもしれーな。特に訓練でお前と戦ってる時が一番面白い。  お前、戦ってる時は素だよな。すげー嬉しそうに戦ってるもんな。」   今日初めてゲンマがニヤッといつものように笑って話す。 そんな姿を見てハヤテは少し安心をしたが、それでもゲンマの言葉に困惑する。   「でも、皆さんもそうなのではないですか?」 「まぁな。でもお前は特に変わるからおもしれーよ。」   ゲンマは、手にもたされたコップをハヤテと同じように一息に煽る。   「すまねーな、オレがだらしないばかりにお前にまで迷惑をかけちまった。」 「迷惑じゃありません。」   ハヤテは思わず言ってしまった言葉に驚いて。 ゲンマは即答でそんな台詞が帰ってくるとは思わなくて、驚いて。   お互いぎこちなく、飲みましょうと、しばらく無言でコップを空けていた。   「酔いませんか?」 「あぁ、どうしたもんかな?何でよわねーんだろうね?」   ゲンマが困ったような顔をしてハヤテを見上げる。 しかし、自分に迷惑かけないよう、ゲンマが酒の量を調節しているのが分かる。 何でこの人は、こんな状態で自分に気を使うんだ?とハヤテは少し腹をたてて立ち上がった。 無言でゲンマの正面に坐り、無理矢理引き寄せた。   「はー・・・・こういう時に気を使わなくてもいいんですよ。  全く、貴方は・・・・私ですみませんが、胸を貸してあげます。」   産まれて初めて使った言葉ばかりだった。それでも言わずにはいられなくて、無理矢理自分の胸にゲンマの顔を抱えて、ぎゅっと抱きしめた。   ゲンマは一瞬驚いて、離れようとしたものの、ハヤテの腕はしっかり自分に回っていて、簡単には離れられそうにもない。 それよりもハヤテの体温が自分に伝わってくる事で癒されていく自分に目を見開く。   そう、これが初めてではない。仲間は増えていくけど、同じくらい減っていくそんな仕事に自分はついていた。また、失うかもしれないが、それでも自分は忍びなのだからと、いつもと同じ諦めた言葉を心に浮かべる。 いつもなら、それが苦しくて辛くて、自分は忍びに向かない性格だと思い知らされるのに、今日はいつもと違った。 ハヤテの温もりがそんな辛さをやわらげてくれている。   「なぁ・・・・お前はオレより先に死ぬなよ。」   少しくぐもった声がハヤテに言う。   「大丈夫です。」   静かにハヤテの声が上から降ってくる。 何が大丈夫なんだ?と思っても、落ち着いた声が嬉しかった。   「くす・・・・・。」 「どうした?」   小さく笑ったハヤテの声にゲンマが反応する。   「いいえ、これで貴方が女の人だったら、キスでもしてもっと落ち着かせてあげられるのにと変な事を思いまして。」 「いんや、正しいんじゃねぇか?オレでもそうするな。」   一見二人ともおだやかに会話しているが心の中はそれぞれ混乱中だった。   ハヤテは、いつものようなゲンマになって欲しくて言った冗談だったのだが、自分の顔が熱い。きっと顔は真っ赤になのだろう。 何で自分がそんな状態になるのかさっぱり分からない。かといって、ゲンマにまわした腕を外す事はしない。 この腕の中の温もりを手放したくなかった。 いったい自分はどうしたいんだと答えの出ない質問を抱えて困惑していた。   ゲンマは普段通りに受け答えをしたが、もし普通だったらこの腕から離れて、馬ー鹿とか言いながら相手をこずいているだろう。まったく自分らしくない。 どうしても自分に回された腕から離れられない。自分がこの腕と温もりを欲しているのは分かる。 でも、好きとか愛してるという言葉は無条件で除外していた。なにせこの態勢、この状態が居心地がいいなんて、まるで女みてーだと自分に呆れる。 いったい自分はどうしたいんだと答えの出ない質問を抱えて困惑していた。   この態勢で選択された会話の内容は一番やばい内容で・・・・・しかし、ハヤテはどうしていいか分からず、そのまま話を続ける。   「ゲンマさんは手慣れていそうですね。」   自分の言った言葉に心が動揺する。ハヤテはまだその意味が分からない。   「何言ってんだ。お前こそ手慣れてるって。彼女はいんのか?」   自分の言った言葉に心が動揺する。ゲンマは自分の心をつかみそこねていた。   「いませんよ。やはり付き合っていると、上辺だけだという事がばれるようで・・・・いつも捨てられてばかりです。」 「へ〜。ハヤテの腕の中は居心地がいいのにな。」   何げなく言った言葉の危なさにゲンマが慌てる。 しかし、さすがに今度は自分をつかみそこねる事はなかった。 ゲンマはこの腕を欲してる自分にやっと気づいた。まさか自分にそっちのけがあるとはまったく想像だにしなかったが、それでも今抱いている想いは間違いない。それなら素直に生きましょうと、すっかり腹をくくった。 ただ、相手がいる事。まったくのノーマルであろう青年に自分の気持ちを無理矢理押しつけるわけにもいかず、どうしたもんかと考える。   見上げると滅多にお目にかからないであろう真っ赤になったハヤテの困惑顔があった。 どう答えていいか分からないと自分の顔を見下ろしていた。   その顔を見て、少し期待を持ち、ゲンマは賭けをしてみる。   「なぁ・・・・慰めついでにキスしてくれねー?」 「うわっ?!は・・・はいっ!」   内容をまったく把握せず、艶っぽく微笑むゲンマに頭が対処しきれず返答をするハヤテ。 言った後暫くして頭に入ってきた言葉は、ゲンマの表情以上にぶっとんだもので、再び脳内がフリーズしそうになる。   「や、嬉しいねー。」   思いっきりいい返事だなと、相手の驚愕を無視してにっこり笑うゲンマ。 その時ハヤテの頭の中で色々な言葉が浮かんでいたが、それでも奇麗に微笑まれたゲンマの顔に抗いきれず降参するしかなかった。   抱きしめていた腕を離し、ゲンマの頬に掌を重ね、静かに唇を合わせた。 今だにハヤテは混乱していたが、それでもこれが自分の気持ちだったのかと、やっと自分の気持ちをつかまえられた。   歯列をゆっくり辿ると、軽く口が開けられた。まるで壊れ物を扱うかのように、ゆっくり舌を絡めていく。 ハヤテは執拗にゲンマの口腔を辿りつづけた。まるで与えられた、おもちゃに夢中になる子供のようにゲンマをゆっくり確実に貪っていった。   「ん・・・・・・んんっ・・・・。」   喘ぎと声と共に唇の端から誰のかもう分からなくなった唾液が漏れる。 時とともに深くなっていく口づけは、ゲンマの体から意思を奪い、体を支えていた右腕が抜けそう震え始めた。 それに気づいたハヤテが、腕を頭にまわし、静かにゲンマを横たえる。 軽く唇を啄ばんだ後、ハヤテの唇は、首筋を這い、右手がゲンマの下肢に触れた。   「ちょっちょっ・・・ハ・・・ハヤテっ!」 「え?・・・わっっ!す・・・すみませんっキスだけでしたっ!」   ハヤテは、思いっきりゲンマの上から飛びのく。 あまりの反応と答えにゲンマは頭をかかえ、ため息一つついてハヤテを見つめる。   「いや・・・・オレとしては構わねーんだけど、勢いでやっちまって後から後悔しちゃまずいだろ?」 「後悔ですか?」   不思議そうにハヤテが見返してくる。   「だって、お前ノーマルだよな?」 「・・・・・ゲンマさんもノーマルじゃないんですか?」 「ま、そうだったな・・・・・・。」   立派な過去形。ここにくるまでは確かに問題のないノーマルだった。 そんなゲンマの言葉にハヤテはにっこり笑って、言葉を続ける。   「お聞きしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」 「ん?」 「私は、貴方の事が好きになってしまったようなのですが、貴方は私の事が好きですか?」   とても生真面目なハヤテの台詞。本当にハヤテらしいとゲンマが破顔する。   「あぁ、オレも・・・お前に惚れちまったようだ。」 「では、続きは次回にでも。それまでにちゃんと勉強しておきます。」 「勉強?」   困惑ぎみにゲンマの眉間に皺がよる。   「えぇ、私は男の人とするのは、初めてですから。  やはり、ちゃんとしないといけませんでしょう?」   やっぱり、オレが下なんだよなーと、自分でもそちらが希望ではあるが、それでも全く抵抗がないわけではなく、ハヤテの続く生真面目な言葉に少し苦笑する。 でも、あの腕の中ならいいかと、抱きしめられたい側として納得した。   「ま、よろしく頼むわ。」 「はい、こちらこそ。」       「なんか、最近ハヤテが面白く・・・・・いや、恐くなったよな。」 「・・・・思いっきり殺気を放ちますからねー。」   特別上忍達に二人の仲がばれて以来、すっかりハヤテがからかいの対象になった。 今までと違って面白いぐらい表情が変わる。(但し、大抵殺気をふりまいているが・・・。) ゲンマにちょっかいを出すと、無条件で合い口が切られる。 特別上忍達は命をはったからかいを笑いながらしていた。   「ライドウさん・・・・覚悟はいいですね?」   切っ先をライドウに向けてハヤテが言う。 それを楽しそうに見守る特別上忍達。しょうがねーなと苦笑するゲンマ。   毎晩繰り広げられる血を予感させる冗談に、内心実は楽しんでいるハヤテと苦笑しながらも愛されてるよなーと嬉しそうにするゲンマが居た。     【End】    





    やっぱきっかけって良いよね(゚゚*) なんかドキドキしてて良いよね(゚゚*)   どうも自分の脳内でハヤテとゲンマの美化が進んでいる(;。。) 資料にと買った臨の書のハヤテの項を見ても・・・ピンとこなくなってきているやうな・・・ 大丈夫か?あたしっ(゚▽゚;) (それでも、ハヤテがニヤリと笑ったあの笑顔はちゃんとハヤテのまま<? だからねっ!o(>_<*))   (゚゚*)でもさぁ〜やっぱラブストーリーっていいよね。  問題はあっしが書くからいまいになるだけでねぇ(;__)_ ちなみに私は、英語がすげー苦手ですσ(^-^;) ので、タイトルに問題があったばやいは即メールお願い致しますm(__;)m<他力本願なやつ   ・・・ところでシカマルは?(゚-゚ )キョロ( 。_。)キョロ ( ゚-゚)キョロ