【色はにほへと…】     暇だったから、三代目の机から任務書を一枚かっぱらってきた。 当然目の前に三代目が居たから、かっぱらったというよりは、もらったという言葉の方が正しい…というわけで、正式に三代目から任務をもらったという事のはず…たぶん。     そして任務書には諜報活動って書かれていた……色の任務。     担当は闇…何?あいつ人に好きだとかいいやがってるくせに、色の任務なんかしてたのかとちょっとムカついたが、あの面倒臭がりの事、どうせ幻術使い放題、薬使い放題だろうと納得する。 俺の場合、幻術のスキルがいまいちなんだよなぁ…上忍達よりは使える程度。 それでも諜報活動に使えるレベルかってーと、ちょっと自信がない…諜報活動する連中の幻術って言ったら化け物レベルな幻術。最高レベルの闇ともなると、嗅覚から味覚、触覚までも再現してくれちゃうってほどの腕前。 切り刻むのが主体の俺には必要のないスキルだっただけに、練習もしてなかったしなー…ま、そーゆヤツ用に薬ってのがあるんだけど…そんなもんも持ってない。 薬はとんでもない効果のもんばかりだから、管理も当然厳しい。 そしてさっきも言ったが、俺の仕事は切り刻んでなんぼってやつで、薬でちまちま殺したり、トリップさせるのが仕事じゃない。結論、俺は薬がどこに管理されているかも知らないってやつで……まぁ俺レベルの幻術で頑張れって事だよなと、前向きにお仕事先に向かった。   指定された宿屋に入る。 用意されていた着物に着替えようとした時、扉の外に素人なら昏睡しかねない殺気。 体が自然と反応し、クナイを握ろうとしたら体が動かない……。   「…っっつ?!!」 「碧……てめぇいい根性してるじゃねぇか。」   今まで見た事もない、間違いなく怒っていると思われる闇が目の前に立っていた。 そして、しっかり自分の影は拘束されている。   「何がだよっ。」 「あー?俺の仕事を横取りしておいて、何がもねぇんじゃねぇの?」   怒ったまま、ニッコリと微笑まれた……マジ怖い……闇の微笑み絶対0度。   「三代目がくれた任務に何か問題があるのかよ。」 「へぇ〜その三代目が書類を奪われたと俺に言ってたけど?  他に言い訳はあんのか?」   ちっ、三代目役に立たないっ…こゆ時年寄りは、若いもんを労わらなくちゃいけないだろっ!   「俺の幻術だって、かなりもんだけど?」   闇の視線がとーっても怖かったけど、一応木の葉一の暗部っていう肩書きが謝るという選択肢を出せなかった。   「ほーーー、そういう事を言うか……なるほどな…じゃぁ腕前を見せてもらおうじゃねぇか。  木の葉一の暗部碧の諜報活動の腕前ってやつをな。  失敗したり、お前が実際に押し倒されたら、お前の負けな。  俺は、待つのをやめる…覚悟しろよ。」   そう、一方的に言って闇は消えやがった……謝っとけばよかったと現在後悔中。 怖かったーーーー、俺が言うんだから間違いないって。 ほんの小さい頃から暗部していて、あれほど怖い思いしたのは初めてだぞ。 ……うーーーーーーー、失敗は出来ない……死ぬ気で幻術るっ!     ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・     20ぐらいの女性に変化する。 髪を腰まで長くし、唇に赤い紅をひく、緋色一色の着物に着替え、待ち合わせの部屋でぼんやり窓の外を眺めて策を練る。 まじで諜報活動なんかしたことのない自分…実は、どうしていいかさえも、さっぱり分からない。 とりあえず任務書に書いてあったシナリオ(誰がシナリオを書くんだか知らないけど、三文小説みたいな会話例題文がいくつか書かれていた。)に沿って、芝居をするつもり。 俺の子供の頃から培われてきた演技力をなめるなよっ!   扉が開く音がした。 宿には、木の葉が指定した男がこの部屋に来るように手配してある。   俺は、静かに振り向いた。   「今日のお客様は、貴方様ですか?」   にっこりと微笑んだら、相手が真っ赤になって硬直した。 見知らぬ背の高い男。 黒い短髪に黒い瞳、不精髭を乗せている割りにこざっぱりとした格好、そして結構男らしい顔つき…ただ、こんな場所に来るような人には見えず、違和感を感じる。 小首を傾げて見上げたら、大きな掌を顔に当て、ため息をつかれた。   「あの…どこかで、お会いした事がありましたでしょうか?」   今変化している姿は数年後の自分を女性化したもの。 こんな姿したやつなんて他にいる訳ねーよなぁ?   「いいや…それよりも酒が飲みたいから用意をしてもらえねぇか?」   書類には常に微笑み、気を配れと書いてあったから、分かりましたと言いながら、微笑む。 小さな鈴を鳴らし、食事と酒の用意を頼んだ。   「おっしゃって下さったら、煙管の用意も致しましたのに。」   食事の指示をしている間に男は煙管に火をつけていたのを見て、声をかけてみる。 気を配るって、こんなんでいいんだよなぁ?   「げふっげほっ……。」   むせてる……気ぃ配り方を間違えた?   「大丈夫ですか?お水を用意させましょう。」 「い…いや…いい。」   男は、疲れたように座椅子に体を預ける。 なんか落ち着きのねーやつだなぁと思いながらも、自分の仕事と闇の言った罰則が目の前にぶらさがっていて、とりあえず演技に集中する。 俺は女…そして情報を得なくちゃいけない。 煙管盆を男の前に静かに置く。   「初めましてお客様…蒼(あおい)と申します。  一晩よろしくお願いします。」   両手をついて深々と頭を下げる。 うわぁーだりぃこの台本。諜報活動してるやつって偉いっ!と真剣に思った。 顔をあげたら、再び男が硬直していた。 何だこいつ、折角俺が挨拶したのに、その態度ってどうよ?それとも俺って好みじゃねぇのかなぁ?   「私は気にいりませんでしたか?」 「い……いや、あまりにお前が綺麗で驚いただけだ。」   相手の少し赤い頬を見て、気に入られたから態度が変だったのかと納得する。   「…良かった。」   とりあえず失敗はしていないらしい、心の中でだけ一息ついた。 配膳の者が、てきぱきと男の前に食事と酒を用意する。 しまった、俺夕飯まだじゃん…くぅ〜お預け状態はきっついなー…。   「お前も食べると良い。」 「ありがとうございます。  けれども、私はお客様のお酌をしますゆえ、お気を使わないで下さい。」   食べたいけど、俺の演技は筋金入り、心にも無い事をずらずら口が言う。 俺って偉いっと自分で褒め称えた。 そんな俺に、男が可笑しそうに笑う。 そこー笑う所じゃねぇだろ?こいつ、さっきから反応が変だよなぁ?   「酌もしてもらうが、一人で食べるのは味気ないからな、気にするな。」   やった!偉いぞ目の前の男。食べさせてもらうともさっ!         とりあえず他愛も無い話をしながら、食事を終える。 かなり美味しい食事に俺は満足。 ただ、女の格好のせいで、がつがつ食べる訳にもいかず、微笑みながらしずしず食べるのは面倒だった。 しかも酌をしなくちゃいけない。 幻術がいまいちな俺は、一生懸命酒を勧める。 素面よりは、酒で酔っ払っているほうが幻術と現実の区別が付かないだろう。 問題は、男があんまり酔っ払っていないように見える事だけ。 そして、目の前に布団があるっていうこの状況。 一応この部屋には幻術をかけてある。 枕元にある小さな鈴の付いた簪、その音一つで幻術は効力を得る…。   「その簪を髪に挿してもらえますか?」   俺的、最高級の笑みを乗せて頼む。   「それがお前の流儀か?」 「えぇ…気に入ったお方にはいつもお願いしています。」   男はくすくす笑いながら、簪を拾う。 チリンと小さい音が鳴って俺の幻術が始動し……しないっ?!!   腕を捕まれ引き寄せられ、唇を重ねられた。 どういう事だ? 簪を引き金にした幻術は、そんじょそこらの忍びでも分からない精巧な術に仕上げたつもり。 自分の術がなぜ発動しないかが分からないが、こんな所で任務を失敗する訳にもいかず、次の手をだとばかりに、相手にばれないようチャクラを練り始めた。   「あー…だめだな…次の手ぐれぇは、ちゃんと用意しておくもんだ。」   唇が離れた途端に冷たい視線と言葉がきた…って…っ!!   「お…闇っ?!!」 「お前、失格。」 「って、何でお前が客やってんだよっ!ににに任務わっ!」 「任務は俺がやっておいた。ついでだから食事に来てやった所。」 「腕前を見るとか言ってたのは何なんだーーーっ!」 「だから、俺が見てやっただろ?」   しれっとした物言いに、はっと気づく。   「いつ任務をやりやがった?」 「あぁ、ここに来る前。つまりお前と会う前だな。」   にやにやと笑う闇が、再び俺を引き寄せる。   「で…蒼、これから褥を共にしてくれんだよなぁ?」 「なっ……ばっ……んんっ…っ?!!」   唇を無理やり塞がれ、気が付いたら闇の拳が自分の鳩尾に入る。 気を失う寸前、闇の声でおやすみという言葉を聴いた気がした。         『これに懲りて、勝手に俺の任務書を取るんじゃねぇぞ。  今夜は体洗って待ってろ、待つのをやめたからな。』   起きたら自分の部屋だった。 机の上には闇の書付……あの闇の事だから、俺が逃げる事前提で策を打っているはず…逃げ場が思いつかない…。 とりあえず、さっきの事を真剣に反芻する。 硬直していた男の姿を思い出す…使えるかもしれないと口の端をあげた。     ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・   「…っ!!ててめぇっその格好は何だっ!」   俺的最高級の笑みを浮かべ、闇の手を握る。   「お客様、今夜もよろしくお願いします。」   真っ赤な顔で固まる闇。 逆に押し倒されるかとも思ったが、攻略成功。闇は固まった。   昨日と同じ蒼の姿で、もう一回微笑む。   「…………お前って、すっげぇやなやつ…。」 「そんな…お客様の為に体を洗って待っていましたのに…。」   持った掌を頬に持っていき、頬擦りをする。   「あーやめろってそれっ!  へーへー分かったよ、分かりました。待っててやるから止めやがれっ!」   俺は、変化を解除して、ニシシと笑う。   「やたっ!だから、闇って好きさ。」   目の前の闇が深々とため息をついた。     【End】    




 


    白ネコモカさんから頂いた小説の御礼です。 リクエストは色ネタという事で、色の任務をしてみましたーf('';)あはは。   さて、誰…っつーか、どの暗部名のナルトを行かせようか?それとも新規ナルトを作るかを悩みまして、結局薄縹の強気なナルトを採用してみた…なんつーか…たいした事してねー。 まぁ、どのシカマルを採用しても、同じように止めると思うんで、まーこんなもんでしょうと自分的には納得はしているのですが…f('';) こここれでいいっすかねぇ?(滝汗)   ちなみに、シカマル曰く「あの姿であの言葉だと、どうしていいか分からない。」だそうです。   未読猫【05.01.31】