「しー・・・ここまでのトラップはいらないと思う。  もしかして、うちも同じ?」   シカマルが黙って頷く。 ナルト、呆れぎみ。   現在、ハヤテ・ゲンマ宅の屋根裏。 全部解除したわけではないが、信じられない量と種類のトラップ。 仕掛けた本人も、屋根裏に到達した時点でかなり後悔している模様。   今日は、新婚家庭内緒の見学の会。新婚参観である。 お重に詰められた豪華なお弁当を広げ、透過鏡の術によって広がった新婚夫婦の様子を見る。   「お、これ旨い。何?」 「へへっ、銀ダラのタルタルソースがけ。  お母さんが、旅行行った先のレストランで食べたんだって。  レシピ聞いてくれたんだ。」   シカマルは考える。 "あの"・・・母親である。 教えて貰った?・・・脅したんじゃないだろうかと少し冷や汗。 でも、美味しい食事は嬉しいので、とりあえず怖い想像は消去する。   「お、帰ってきたぜ。」     【不安な気持ち】     眼下に広がる、からっぽだった居間に人影が現れる。 ゲンマとハヤテがぐったりと座り込んだ。 実は、二人自主訓練後。 某所というか、某お隣さんというか、子供参観する為の特訓中。 テーブルの上に投げ出された、ぽかぽか弁当と惣菜が、これって新婚?って感じを余計かもし出している。   「ハヤテー・・・・お前とひさびさに訓練したけどよぉ。  どんな訓練した?  オレだって結構強くなったと思ってたのによぉ。  お前、互角以上じゃねぇか。」 「何を言ってるのですか、ゲンマさんこそどんな訓練をされたのですか?  私の本気の太刀を全て除けたのですよ。」   お互いを見て、お互いが苦笑する。 なるほど、あの二人の訓練というのは、どちらもそういうものかと、納得した。   しばらくの間、二人とも静かに体を癒していたが、突然ゲンマの目が一瞬見開かれ、口の端が上がる。 大きな体が音も無くハヤテに近寄り耳に口付け、何かを囁く。 ハヤテが同じように一瞬目を見張って、楽しそうに口元を綻ばす。   「なー・・・・疲れてんのは分かってるけどよぉ。  お前としてぇなぁ。」 「ここでいいですか?」   ハヤテがクスクス笑いながら、ゲンマを引き寄せる。   「あぁ、構わねーよ。」   重なる唇。 最初から絡み合う舌。 部屋の中に湿った音が響く。   暫くして、ようやく二人が静かに離れる。   「ゲンマさん、お願いがあるのですが。」 「何だ?」 「目隠しさせてもらって構いませんか?」   話をしながらもハヤテの手は、ゲンマの服を器用に脱がしていく。   「構わないぜ。  でも何でだ?」 「目隠しする前に私を見ていて下さいね。  そうすれば、貴方の瞳は私以外映しませんでしょう?」   ハヤテの唇はゲンマの首筋を這っている。   「オレは、お前以外見た覚えがねぇけどなぁ。」   少し上気した顔が苦笑を浮かべる。   「床も天井もテーブルも、何も見て欲しくないんですね。」   艶やかにハヤテが笑みを送る。   「好きにしな。  他に希望はねぇの?」 「そうですね。好きだという言葉をずっと聞いていたいんですね。」 「それは、オレもだ。  ずっと言っててくれねぇ?」   ハヤテが大きめのハンカチを取り出し、ゲンマの瞳を覆う。   「では、ずっと・・・ゲンマさん・・・貴方が好きです。」 「あぁ、ハヤテ・・・オレもお前が好きだ。」      ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・   ここは屋根裏、眼下ではハヤテとゲンマがキスを始めた時点に戻る。 かたや、真っ赤になって絶句し。 かたや、興味津々で眼下を見つめる。   真っ赤になっているのは当然シカマル。 当初、二人のいちゃいちゃっぷりを見て、次の日からかってやろうと思っていた。 しかし、いちゃいちゃ所ではない。 初っ端から濃厚なキスに、新婚という事実を甘く見ていた事を知る。 真横には真剣に夢中になっている、自分の奥様。 今日これからの事を考えて背中に冷や汗が流れていたりする。   そんな事を思っている間も眼下では、どんどん話が展開していく。 そして嫌でも会話が聞こえてくる。 艶やかに語られるそれは、とても自分には言えない言葉の数々。 どうやったら、そんな事を素面で言えるんだか、シカマルの目は、異質な者を見る風情。 心の中では絶叫一つ。 少しは恥ずかしいと思えぇぇぇぇっっっ!!   『ななななななーっ!!帰るぞっ!』 『えー。』   不服そうな声が返ってくる。 目線は眼下からまったく外れない。   『いいから帰るっ!!』   速攻でお重を包みなおし、ナルトの腕を掴んで元来た道を引き返す。 ナルトは膨れてはいたが、素直に術を解除しシカマルに引きずられた。             「しー・・・・だめ?」   自分の家に戻ったナルトの第一声。 上目遣いで躊躇いがちに語られる。 シカマルはそんな様子のナルトに、やっぱりと心の中でがっくりうなだれる。   「何がだよ。」   ぶっきら棒なシカマルの言葉がやけに響く。   「あのね・・・・しーが、そゆのダメだって分かってるんだけど・・・・・・オレも言葉欲しいな。」   シカマルは仏頂面に眉間の皺を増やしている。   「・・・・・・・ごめん。」   どうにか言葉を捜そうとしていたシカマルに、突然ナルトの言葉が割り込む。 ひどく項垂れて、沈んだ様子のナルトが居た。   「あの・・・・あのさ・・・・・しーは・・・・・ずっと約束を守ってくれたよね?  オレ・・・・オレさ・・・・・ずごく嬉しかったんだ。  だから、別に夫婦じゃなくても・・・・いいよ。  昔のように兄弟でも・・・・・オレ・・・・・ずっと、しーの傍らで戦っていられ・・・・っ?!!」   ナルトはシカマルに抱きしめられていた。 暖かい腕の中でびっくりしたように目を見開く。   「何言ってる?  何言ってんだよっ!」 「だってっ!・・・・・しーがオレに優しいのは知ってる・・・・でも・・・・・でも・・・・分からないっ!  しーは、メンドくせーって言っても絶対約束守るから・・・・・もし嫌だったとしても・・・・・絶対守る・・・・から。  兄弟として好かれているのか、夫婦として好かれているのか・・・・分からないっ!!」   シカマルの腕の中でぼろぼろ涙零しながら、ナルトが叫ぶ。 真っ直ぐにシカマルを見て叫ぶ。 握った拳が真っ白になっていた。   「あのなぁ・・・・・オレはいくら約束だったとしても、それだけでキスをしたり抱いたりするようなヤツに見えるのか?」   シカマルが大きなため息をつく。   「いいか、二度と言わねーからなっ!  お前にそんな顔させたのが悪ぃと思ってるから、言うんだからなっ!  二度とねぇぞっ!」   悪いと思っている割に偉そうな物言いのシカマルが、ナルトの顔を見ずに一気にまくし立てる。 既に顔が赤い。 ナルトはシカマルの勢いに、ぎこちなく一つ頷く。   「確かに最初は、ガキの考えだったかもしれねー。  お前とずっと一緒に居る為の方策だったんだと思う。  てか、今だってガキと何も変わらない年なんだけどよ。  それでも、今オレがお前に持ってる想いってのは、友達だとか、兄弟だとかとはほど遠くて。  ずっと手元に置いておきてーし。  7班の連中全員抹殺してーし。  ・・・だいたいオレがお前に対して思う事全て実行してたら、お前任務にいけねーって。」   今だ、シカマルの顔はナルトから背けられたまま。 ナルトからは、真っ赤になった耳と頬しか見えない。   「任務にいけない?」   理解できない言葉をおうむ返しに聞いてみる。   「あ・・・・・のなぁ・・・・・・。」   シカマルが目を泳がせる。 ナルトが拘束?されていながらも、一生懸命シカマルを覗き込むと、諦めたようなため息一つ。   「お前・・・・・やった後動くの辛ぇだろ?」   ナルトがこれでもかってぐらい目を見開く。 既に、シカマルとは何度も体をあわせている。 ただ、そんなに頻繁にするわけでもなく、そう・・・・大抵次の日が丸一日休みの時だけ・・・・・。 ナルトの顔が幸せな笑みをつくる。 腕はギュッとシカマルにまわされる。   不安に思う事なんか一つも無かった。 ずっと言葉にして欲しいと思っていたけど、シカマルの行動を注意深く理解していれば、言葉以上に明確に気持ちを表していた。 ごめんと一言呟く。 額に軽く頭突きをされた。 触れてる額がひどく熱い。 ナルトが小さく笑う。 ちっとシカマルが舌打ちする。 明日後悔するなよと熱い唇を重ねてきた。      ・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・     「おっさん、ありがとうっ!」   ナルトががゲンマに飛びつく。   「おう、良かったな。で、いっぱい貰えたか?」   ナルトを抱っこしながら、ゲンマが顔を覗き込む。   「うん。」   そんな光景を唖然としてみていたシカマルの背後から手が伸びてくる。   「長・・・・このレポートを差し上げましょう。」   シカマルが振り向くと、ハヤテが愛の言葉集レポートと書かれた冊子を手にもち、ニヤリと笑っている。   「なっ?!・・・・・・・誰が仕組みやがったっ!」   一瞬のうちに状況を理解したシカマルが、ハヤテを睨みつける。   「長・・・・・仕組んだなんて失礼ではありませんか?  夫たるもの、妻を不安にさせていてはいけませんでしょう?」 「そうだよなぁ。  相手がどう思ってるかぐれー旦那が汲まなくて、誰が汲むんだぁ?」   一理も二理もある言葉に、珍しくシカマルが口ごもる。   「ナルトくん・・・長が何て言ったか教えてもらえませんか?  今後の参考にさせて下さい。」   ものすごく似非臭い笑顔を浮かべてハヤテがナルトに尋ねる。   「へへっ・・・もったいなくて言えない。」   嬉しそうに頬を染めて笑う笑顔に、ゲンマもハヤテもご馳走様と一言。   「昨日の晩、オレらが行くの分かってたのかよ。」   いつも以上に目つきを悪くしたシカマルが三人の前に居た。   「ナルトくん、お弁当持参だったでしょう?」 「オレは、犬塚ほどじゃねーが、旨いもんの匂いぐれぇ分かるぜ。  事前に味見させてもらったしなぁ。」   事前に味見じゃなくて、匂いの確認。 計算道りってやつかよと、首謀者と思われるハヤテを睨みつける。   「長・・・私を睨むのはお門違いと申し上げたいのですね。  ナルトくんがどんな番組を見て、どんな感想を持っているかご存知ですか?」   シカマルは、一旦睨んでいたのを止めて考える。 ナルトが良く見ている番組? 自分が家に居る時には、たわいも無いものが流れていたと思う。 分からない。   「ハヤテ、シカマルは知らねーって。  オレは二人が一緒の時に、ナルトがそーゆー番組見てるの見たことねぇ。」   ハヤテがため息をつく。 ナルトくん、少しは自己主張しなさいと、ナルトの頭を撫でる。   「恋愛ドラマを見て、こんな感じが付き合うって言うの?と言ったそうですよ。」 「不安そうな表情付きだったな。」   シカマルが頭を抱える。 世間に流れる恋愛ドラマがどんなのだか、とりあえずは知っている。 あれを望まれても、自分が実行できる訳もない。 昨日の言葉でいっぱいいっぱいである。   「もう言わない。  分かったから。  心配かけてごめんなさい。」   ナルトが満面の笑みを浮かべる。 大人二人ががすがすと、優しく、ナルトの頭を撫でる。   そんな中、無理やりナルトをゲンマからもぎ取って、声も無く去ろうとするシカマル。 一応ナルトが二人に手を振る。                 ね・・・・シカマルの行動が言ってる。   自分の側に居ろと。   自分以外の側に居るなと。         幸せな笑みが浮かぶ。             【End】    




 


    えー、途中まで読んでこれはシカナルじゃなかったのかぁっ!!とツッコミを入れた方多数でしょうか? 途中からは一応シカナルのラブラブでしたよね? ついでにハヤゲンのラブラブも入れてみました(^-^;)だめだったかな? ギャグなんだか、シリアス?なんだか、らぶらぶなんだか、ようけ分からんなぁf(^-^;) あはは未読猫としては、途中一部は間違いなくらぶらぶのつもりなんです・・・・・どでしょ?   最初、ハヤゲンが調子にのって、突っ走ろうとしました。 これはFDLのブツだからね、18禁にするわけにゃーいかねぇッスと謝って違うシーンに移りました。   しっかし、自分所のナルトがどんどん可愛いというか、ラブリーな性格になっていくf(^-^;) 本誌や、アニメを見る限り、一途な頑張り屋さんで、強い子だなぁ〜と思っている。 ラブリーとは随分違う気がする・・・・(;。。) ま、夢見るあっしの脳内はこうなってるって事でm(__;)m あと・・・すんませんが微妙〜に辻褄がまた合わなくなってるんですが・・・気にしないって事で一つよろしくm(__;)m   1周年祝い記念FDLアンケート小説:Naruto不安な気持ちをお送りしました。 ご来店下さった皆様、アンケートにご協力下さった皆様、ありがとうございました。 これからもよろしくお願い致します。   未読猫【04.11.04】