【幸せ追求させろ隊 補8.2】     「何か…今日のヒアシ変だったよねー?」   ナルトの言葉に、イルカがニッコリ笑い、シカクが頬を掻く。   「お父さん、どうしたの?」 「や……ほら……かぁちゃんがよぉ〜……挨拶に行ったらしいんだが………オレが見た事もねぇぐれぇ怒っていてなぁ……ヒアシに2時間ほど説教してきたらしい…」   ははは…と力無く笑うシカクに、ナルトが今まで見た事が無いっ?!と絶句。   「幻術使ったのか?」   シカマルも冷や汗を浮かべ、シカクに尋ねる。   「おう、どうもヒナタちゃんに暴言吐いてたらしくてよ…幻術付きでバリバリ説教したらしいなぁ…」   あまりに萎縮して縮こまる子供、礼儀正しすぎる小さい子供、一番年上なのに二人の少女に遠慮する子供。 家というモノを知ってはいたが、親として納得が行かなかったヨシノは、挨拶という建前を装って日向家に乗り込んでいた。 奈良家の三人は、その話に冷や汗浮かべながら温い笑みを交し合う。 しかし、ヨシノを知らない面々が不思議そうに、そんな様子の三人を見た。   「お主らは、聞いた事がないか?  奈良ヨシノは、幻術のプロフェッショナルじゃよ」   三代目の言葉に、綱手が楽しそうに頷き、自来也は虚空に視線を泳がしている。   「あ…もしかして、幻術の女王って…」   ゲンマの言葉に三代目が頷く。   「あの…噂は聞いているんですが、あのような事が可能なんですか?」   ハヤテが、訝しげな表情を浮かべ三代目に尋ねる。   「ワシも幻術は並レベルじゃから分からんが…あやつが現役だった頃の諜報結果は、それが出来ると言わざるえんのぉ」   噂は事実だったのかと、ハヤテは珍しく口を開け、唖然とした表情を浮かべた。   ハイレベルの幻術は、一瞬のうちに幻術世界に敵を落とし、しかも幻術と認識させずに神経系を混乱させ、同士討ちや、自殺に追い込む事さえ可能とする。 それが最高レベルになると、幻術と認識せずに深い催眠状態を作り本人から過去を語らせ、あまつさえそれを相手に投影する事が出来ると聞いていた。   ヒアシが自分の過去を無理やり見せられただろうとは、簡単に推測出来る。 何を見せられたかは知らないが、幻術の女王様が腕を駆使して披露した世界は洒落にならぬものだったのだろう。   噂を知らないネジとイルカ以外は、全員何とも言えない表情を浮かべる。 ここは話題を変えるべきだと、張り付いた笑顔でナルトがイルカに話かけた。   「イ…イルカ先生!さっき笑っていたのって、ヒアシと関係がある?」 「や〜、奈良上忍の奥様がそこまでした後に、ちょっと悪かったかな」   楽しそうに笑うイルカに、周り全員が冷や汗を加算する。   「イルカは何をしたんだ?」   ゲンマが一応とばかりに聞いてみる。   「奈良上忍の奥様に比べたら、俺なんか大した事ないですよ。  ちょっとばかり説教して、ついでに時間外特訓をしただけです」   爽やかな笑顔でさらっと言ってのける。 そんなイルカを全員が胡乱げな視線で見、実際ヒアシが受けた時間外特訓という名の暴行を正確に頭の中で描いていた。 イルカの説教は的をついているだけに、非がある者にとっては耳の痛い話だろう。付け加えて、ヨシノの説教の後ってのが痛すぎっ!と心の中全員が声を合わせる。   「なるほどの〜」   そこに、ほのぼのとした声があがる。煙管から煙をくゆらし、楽しげに笑っている三代目だった。   「シカク、引退したのに悪いんだが、たまにヨシノを貸してはくれまいか?」   幻術の女王様に何の用事なんだーーっと、今日何度心の中でシャウトしたか分からない一般市民が怯える。 慣れている奈良一家と、心にやましい事なぞカケラも無いらしい、暗部道を邁進しているイルカの四人だけが不思議そうに三代目を見る。   「イルカと組んでもらって、自称木の葉の重鎮と言うておる面子の教育をしてもらおうかと思ってのぉ」 「素直に教育を受けますか?」   意地の悪い笑みを浮かべたハヤテが、チラリとシカマルを見る。   「そりゃぁ〜かーちゃんに悪さ出来ねぇよー、おやじがなんとかすっだろ?」   ゲラゲラ笑いながら、シカマルがシカクを見上げる。   「オレ一人でかよ?  あんな腹黒い連中の話なんか聞きたくねーぞ」   笑うのを堪えながらしかめっ面をしようとしているシカクが、ナルトを見る。   「オレが行ったら、殺されちゃうよ」   白々しい台詞と共にニンマリ笑ったナルトが、ゲンマを見上げる。   「えーーー?!オレはしがない特別上忍だぜぇ?  そんなお偉い人達見たら、大技かけちまうじゃねぇか」   口の端をあげて千本を揺らしながら、なぁとネジを見る。   「ぇ…ぁ…そ…その…がが頑張って下さい!」   今までずっと話を聞くだけで、ある意味逃げていたネジが、イルカに頭を下げる。   「別に生きている必要はないですよね?」   イルカがさわやかオーラと暗黒オーラを混在させて、三代目に笑いかける。   「とりあえず、人材が育つまでは生きていてもらいたいのぉ。  ま〜、ヨシノの教育は徹底しておるから、イルカはヨシノの護衛だと思って大人しくな」 「オレだって、言いたい事はいっぱいあるんですけど」 「ヨシノの教育が先じゃ」   ヨシノを嫌って程良く知っている奈良一家と三代目が、イルカを面白そうに見ていた。                  ◇◆◇   「三代目っ!」 「どうした?」   息せき切って執務室に入ってきたイルカに、三代目は何が起こったのかと次の言葉を待つ。   「よよ……ヨシノさんの術……すす凄いですっ!  あれ、アカデミーに役立ちますっ!  当分ヨシノさんに弟子入りしたいんですが、構いませんよねっ!!」   三代目の目の前に、熱血アカデミー教師イルカが居た。   「イルカセンセの幻術スキルは、並みだろ?」   今まで三代目と話していたシカマルが、無駄な事はやめろとばかりに言う。 実は、イルカまでヨシノ化されては叶わないというのが本音だったりする。   「そこは、努力でカバーするっ!」   熱血一直線になっているイルカは、人の話をいまいち冷静に聞いていない。   「イルカ…」 「はい!」   自分の先生に対して、とっても良い子な返事。   「お主には、今やらなければならない事が、大量にあるはずじゃな?」   ぐっと口ごもる。 上忍達の訓練に、アカデミーの改革、暗部の仕事でいっぱいいっぱいの状態。   「全てが落ち着くまで、待っても遅くはなかろう?」   穏やかに言う言葉に、イルカが渋々わかりましたと答える。 さりげにシカマルが三代目に親指を立てているのは、気がつかない。   これからイルカは五代目の元、もっと忙しくなるだろう。 そして、最終的には六代目にさせる予定…予定どころか既に決定事項。 今後、自分の訓練に時間を費やす暇なんか、かけらもやるものかと、シカマルは決意する。 ヨシノは一人で十分だ!           「最近イルカ先生が、うちで夕飯しているみたい…」 「……まじかよ?」   六代目の元に居るだろう、自分達の未来に不安を覚える。 こちらの予定は、楽隠居。当然これも決定事項である。   「さっさと、悪い芽は潰そうな」 「どどどどうやって?」 「かーちゃんを取り込めっ!女に変化したお前の言う事なら、かーちゃん何でも聞く!」   速攻戦略は実施されたらしい……     【End】    




 

    あはは…最近のアニナルがね…ほら、ムカつくでしょ!日向のおやじっ! これ、途中まで打ち込んでボツにしようと思っていたんだけどね。 復帰(・o・)b   でも、結局は熱血イルカ先生な話になっちゃったけどねf(^-^;) なんか怖いよねーイルカとヨシノペア……最強だす((>_<))   【05.09.06】