【幸せ追求させろ隊 補8.1】 「皆さんが…ちゃんとした理由を言えないのであれば…私はその言葉を鵜呑みに出来ません。」 「私も同じです、理由も無しに何に怯えろと言うのですか?」 いつも通り言葉は途切れがちであるものの、それでも彼女の決意は伺えるきっぱりとした言葉。 そして、小さいながらにも、きっちりとした理由を求める厳しい視線の少女。 落ち着いて大人達を見やる二人に対し、大人達はイライラとした態度を隠せず、ともすれば怒号を上げていた。 その二人の少女の前に影が現れる。 「オレが居ない所でオレの話してもしょーがないんじゃないのかなぁ? 理由なら、オレが教えてあげるってばよ。」 突然現れたナルトがヒナタとハナビに向かって、ニッコリと微笑んだ。 「きき貴様っ!どうやってここまで入ったっ!」 ヒナタの前で一番声を荒げていた年寄りが怒鳴る。 「結界はっ!」 家を覆っていた結界に何も感じられなかった男声を荒げる。 「結界?あ、オレ結界抜ける術なんかいくらでも知ってるってばよ。」 相手の雰囲気を一切無視して、ニッコリとここでもナルトが笑う。そして、ナルトの手が動く。 誰一人それを認識出来た者は居ず、一瞬の間の後目の前に居る大人達の影全てに、クナイが突き刺さっていた。 「オレ、ヒナタとハナビに話があるから。ちょっと待っててね。」 ニッコリと笑うナルトに、呆然とする者、恐れる者、そして憎悪を向ける者が声も出せずに立ち尽くしていた。 「えっとね、オレ九尾の器。」 「九尾?」 分からないとハナビが首をかしげる。 「あの…九尾って九尾の狐?…昔木の葉を襲ったって…聞いた…。」 「そうそうそれー。でね、それがオレの腹ん中に居るんだってば。 四代目が生まれたてのオレに断りもなく勝手に突っ込んだんだよなーー失礼だと思わねぇ?」 周りの空気が不穏なモノに変わる。敬愛していた四代目に対する暴言は許せないと、目の前の子供を睨みつける。 しかし、ナルトは気にもせずに話を続ける。 「んでなー、三代目がこの話をするのを禁止したんだよ。 だから、目の前の大人達は、二人に理由を言えないって訳。」 「ナルトくんは…九尾の狐とお話できるの?」 「全然、出来たら面白い話が聞けそうだから、話ってしてみたいってばよ。」 それって楽しそうとばかりに、ナルトが笑う。 「九尾の力って、暴走する可能性はあるんですか?」 ハナビが大人達が暗に言っていたと思われる事を聞いてみる。 「さー?封印式を見たやつ曰く、オレ次第だって。 で、日向のおっさん達は、オレがまだ子供だからって心配してくれてんだよな。」 ナルトがニンマリと笑って大人達を見る。 「その封印式は、改良する事は出来るのでしょうか?」 「大丈夫みてー。いくらでも強固なもんに変更できるって言ってたってば。」 色々変更可能だとシカマルが言っていた。 未だ放ったままだけど、必要であればシカマルが何とかすると思っているナルトは、大丈夫と二人に笑いかける。 そしてナルトの言葉を驚きながらも不審げに聞く大人達。 ヒナタとハナビは、大人達が今ナルトが言った言葉を知らなかった事を察し呆れる。 相手の事を知らずに、そして知った今でさえ不審げな視線をナルトに浴びせる大人達に自然視線が冷たくなった。 「あの…何で九尾が暴れたのか…知ってる?」 「知ってる知ってる。何でも九尾が納められていた祠を壊した馬鹿が居たんだってさー。」 再び知らない事実に大人達がざわめく。 「では、里の人間にとっては自業自得なのですね?」 「まぁ、ちゃんと祠を祀ってなかったみてーだから、仕方がねぇ?」 ナルトがうんうんと頷く。 「でも…何でナルトくんが器にならなくちゃいけなかったのかな?四代目でも…良かったんだよね?」 「そこら辺は三代目の推測でしかないんだけどさ、封印する前に四代目が里を守るために九尾と戦ったんだって。 で、残った体力で封印したらしいんだけど、自分に封印出来る体力が無かったらしいよ。 だからオレ。生まれたばかりのオレなら何とかなるんじゃないかって…まー、その場しのぎ?」 自分の事を言うナルトは、何の感慨もないような面持ちであっさりと答える。 「でさ、一応真実ってやつを知ったヒナタとハナビはどうするってば? 日向のおっさん達の話に納得するか?それとも他の意見ってやつが出てくる?」 ナルトが小首を傾げて二人に聞いてくる。 「話を聞いたからこそ…叔父様達のご意見には賛同できません。」 ヒナタが固まったままの大人達を見据える。 「私もです。 皆さんがどうして、先ほど言っていたような意見が出てくるのかが理解できません。」 ハナビが大人達を睨む。 「じゃ、ヒナタ訓練だvv」 ナルトが心から嬉しそうに二人に笑いかける。 しかし、ヒナタはその笑顔に喜び、言葉の内容に体が一瞬後ろに行こうとした。 「なななナルトくん?」 「ハナビも結構強そうだし、大丈夫だよな。」 ヒナタの言葉無視。 「これから皆を解放するから、全員気絶させるのが目標。 最低ラインは、ヒナタは10人、ハナビは5人…うんうん頑張ろうなっ!」 ナルトが二人の肩をばんばん叩く。 「ああの…ここここの家を壊す訳には…。」 「大丈夫、この部屋に特別強固な結界張ったVv」 部屋はざっと20畳近くある日向家全体が集まる時用の大広間。 そんな部屋いっぱいに、いつ張ったんだとヒナタが呆気にとられる。 「なナルトさん…術使っても大丈夫ですか?」 「強い結界だから、安心するってばよ。」 ヒナタもハナビも目の前の親族相手に訓練する事に異議はないらしい。 ナルトとの訓練に比べれば目の前の相手は比較にならないぐらい気楽だとばかりにヒナタが構える。 ナルトの笑顔に嬉しそうに頷いて、ハナビも構える。 「オレは、フォローするけど基本的には、全員を倒す気で頑張れ。 じゃぁ、開始だっVv」 ヒナタとハナビが小さく頷いて、大人達に向かった。 ずっと身動きとれず話を聞かされていた大人達は、それでも日向家という肩書きだけあって、動けると分かった瞬間身構える。 そして、ナルト曰く訓練という名の親族喧嘩が始まった。 『ん〜さすが日向家だよなー…あの時間身動きできない状態だったのに、気合入ってるよ…。 まぁ、気合入ってもらわないと訓練にならないから、よしっ!』 ナルトは全体の様子を観察しながら、親指を立てる。 別に大人しく観戦している訳ではない、二人+サポート対大勢。これがチャンスとばかりに自分に攻撃してくる者に対し、手足を自由に奮う。 しかし、言われたとおりにシカマルを思いながら嬉しそうに頬まで染めて戦う姿は、とても場違いな雰囲気を作っていた。 「えっと、ヒナタのお父さん?」 「そうだ。」 ナルトが、ニッコリ笑う。 「こことは違う生活があるって事を、知った方がいいと思うんだってばよ。 だから、ヒナタとハナビを連れて行く。」 「………力では勝てないか…。」 最後の一人、ヒアシがナルトと対峙していた。 ヒアシは、言葉とは異なり未だに構えている。 「うん、オレってば強いから。 それにヒナタも強いってば。」 ほとんどの者達がヒナタの腕によって倒れていた。 確かにハナビも戦っていたし、ナルトのサポートもあったが、それでもヒアシにとって想像外の結果だった。 「ここまで強くなったのは、お前のお陰という事か?」 「ううん、ヒナタが頑張ったから。ヒナタには元々才能があったってばよ。 親なんだから知ってるだろ?」 ヒアシが深々とため息をつき、頭を横に振る。 「なぁ、親子って家よりも大切なもんじゃないの? 何でおっさんは、ヒナタの事知らないんだよ? 家とか苗字とか、そんな実体の無いもんより、家族って言うもんを大切にすべきじゃねぇの?」 「お前に何が分かる…。」 「分からねーってばよっ! 親が…父親が子供を理解しないで…庇いもしないで……そんな父親あるかーーーーっ!!!」 心底腹を立てたナルトの拳が、床に穴を作っていた。 ヒアシは何も言わない。ただただナルトを見ている。 「おっさん訓練してる時のヒナタをもっと見ろっ!」 ナルトはヒアシから背を向ける。 「ヒナタ、ハナビ、自分の荷物用意。ネジの分も用意してくれると助かるんだけど。 さー家出するぞぉ〜Vv」 不安そうにヒアシをかえりみる二人の背中を押す。 「…ヒナタ。」 「はい。」 「訓練で会うのを楽しみにしている。」 「はいっ!」 「ハナビは、稽古だけは来るように。」 「はいっ!」 二人が嬉しそうに返事をする。 「ナルト…くん…今度は私が実力で二人を連れ帰る。」 「おう、待ってるってばよー。」 ヒナタとハナビは父親に頭を下げ、ナルトは元気良く手を振って、二人の部屋に向かった。 【End】
さてさて…もっと喧嘩別れでも良かったんだけどなー。 f('';)まー一応最後まで頑固ではあったな……。 ということで、あたし的にっくきヒアシの巻。 あんた、ネジに謝ってる場合じゃないだろ?ヒナタに謝れーーーーーっ!! とずっと叫んでいた相手……ちきしょー謝らねーよ…こいつ。 やっぱ、今からでも書き直してナルトに殴らせるか?………いいかも。 ということで、とりあえずナルトが日向家に行って訓練に行った話しでした('';)あれ? 【05.02.21】