【幸せ追求させろ隊 7】     「ナルトー?お前ここで何してんの?」 「あ、カカシ先生こんにちわだって・・・・じゃなくてー、こんにちわー。」   ここは、上忍待機所。 ナルトが所在無さげにぼーとしていた所に、担当上忍三人組がやってきた。   「お前馬鹿だろ?ナルトは、上忍になっただろうが。」   アスマが、久しぶりだなーと、ナルトの頭をがしがし撫でる。   「あー、そっか。ナルト久しぶりだねー。」 「あら、任務からは随分前に帰っていたわよね?  今日はどうして?」   紅が小首をかしげる。   「じーちゃんが、上忍になったんだから、そろそろ上忍の仕事をしろって言われたって・・・・じゃなくて、言われたー。」   なるほどと紅が頷くが、ちょっと前まで下忍だったナルトに上忍の任務が務まるのかしら?と心の中で疑問を持つ。   「ナルトー、なんか話し方が変じゃない?」 「うーー・・・上忍になったんだから、ついでに話し方もちゃんとしろって。」   ナルトが困ったように、顎の周りをぺたぺた触って、落ち着かないーとぼやく。 そんな様子に、紅とアスマが小さく笑う。   「あら?上忍って言えば、アスマん所の子も上忍になったよね?」 「シカマルは、戦略部に拉致されたってば・・・あわわ、拉致されたー。」   再び小さな笑いが起こる。 アスマが大変だなーと、ナルトの頭をポンポン叩く。   「戦略部?何でシカマルくんが?」 「あー、紅は知らなかったか?  あいつは、IQ200を超える天才だよ。」   200を超える?と紅が目を見開いて唖然とする。 なるほど、それなら戦略部に拉致されるのも頷ける。 ただ、不思議だったのは、ナルトにせよ、シカマルにせよ、上忍になるのは今だ夢のまた夢だったはず。 にも関わらず二人は中忍試験で見たこともない実力を見せ、シカマルに於いては、戦略部に拉致される頭を持っているという。 紅はそんな二人を不審に思う。あまりに不自然すぎる。 ナルトを見る目が、自然冷ややかなモノに変わった。   そこに声が突然割って入る。   「あぁ、全員揃っていますね。」 「見事に気配を消してきますね。」   カカシが苦笑を浮かべて、現れたイルカを、見上げる。   「ははは・・最近やっと万年中忍を抜けられそうになってきました。」   その割には、今だ丁寧な話し方をするイルカに、紅がくすくす笑う。   「イルカ先生何だって・・・・ううっ何ー?」 「どうした?ナルト?」 「ははは、こいつ言葉使い修正中だとよ。」   くすっと笑いながら、イルカがナルトの頭をポンと叩く。   「あ、アスマ先生これを。」   イルカが指令書をアスマに渡す。   「今、ここにいらっしゃる4人で、任務に行って下さいとの事です。」 「受付係り止めたんじゃなかったの?」   紅が呆れたように言う。   「通りすがりに、戦略部の方に押し付けられました。」   人の良い笑顔を上忍達に振りまきながら、イルカはナルトに心話を送る。   『ナルト、シカマルからの伝言。  レベルはアスマ程度にしとけって言っていたよ。』 『分かったってば・・・とと・・・あ・・・っ何か言葉使いがぐちゃぐちゃになってきた〜。』 『ははは、頑張れ。』 『班行動で分からない事があったら、素直にアスマ先生に聞くといいよ。』   暗部では単独か、シカマルとしか組んだ事が無いナルトに心配そうな声で伝える。   『うん、ありがとうイルカ先生!』   ナルトは心話なので、声だけでも元気そうに心配いらないってと笑い声を加える。   ナルトとイルカが心話で会話している間に、アスマが指令書を読み進めていく。 紅と、カカシは、同じ事を考えていた。 指令書がアスマ宛という事は、アスマがこの4人のリーダという事。 この面子なら、普通カカシのはず。 どういう指令内容なんだろう?と、二人は訝しげにアスマの次の言葉を待つ。   そして同じような事を思ったアスマは、指令書の筆跡を見て苦笑を浮かべる。 間違いなくシカマルの筆跡。 これは一つの暗示。 三代目に紹介されたと、シカマルは言っていた。 中忍試験の技量からして、随分前に紹介されたはず。 シカマルが戦略部に拉致されたというのはおかしい。 既に戦略部に在籍し、戦略部でもかなり上の方に居るはずだと推測する。 ならば、この4人で行くというのは・・・シカマルからの試験だと直感した。   「盗まれた禁書の奪回。  ナルトと紅は、多人数で来たお客さんの一掃。  カカシは、標的に。  オレは、背後からのサポートだ。」   ナルトは素直に頷き、紅とカカシはより一層訝しげにアスマを見つつも頷く。   「イルカ、悪ぃけどよ、戦略部のやつに伝言してくれねぇか?」 「なんでしょうか?」 「分かったってよ。」   イルカがニッコリ笑って承りましたと、頭を下げる。   「じゃ、行くぞ。」   アスマの言葉を合図に、4人がイルカの前から消える。 イルカは未だ笑みを浮かべながらも、解と唇が小さく綴る。 事前に心話が聞ける術を展開していた。 シカマルの意図を見抜いたはずのアスマは、他の二人にそれを言う気はなかったようだ。 あの三人にナルトをどうこう出来るわけもないが、ナルトの心が傷つかないで帰ってこれるといいなと、4人が消えた方向を心配そうにイルカは見た。     眼下には、禁書を盗み出した一群の忍び達が走っている。 しかし、担当上忍達は冷ややかに眼下を見ながらも、意識はナルトに向かっていた。   紅は、自分達に息も乱さず遅れずについてくる事に驚き。 カカシは、お手並み拝見出来るかなと、冷ややかな笑みを浮かべ。 アスマは二人のいつもと違う雰囲気に苦笑し、シカマルの意図に自分が正しく乗っているかを考える。 あの時、自分の対応が間違っていたのは、シカマルの受け答えで気付いた。 今度はあの子供の期待を裏切らなければいいなと、未だ担当上忍として思う。   アスマが紅とナルトに目配せをする。 二人が黙って肯き、標的外の一群に音も無く走って行った。 カカシとアスマは木の上で一旦動きを止める。       ナルトにとっては、眠っていても出来る任務。 相手はAランクレベルの忍達。 クナイだけで片っ端から一掃していく。 そして、自分以外の気配が無いのを確認した後、死体をそのままにアスマのところに戻った。   アスマが眼下の標的に迫るカカシを見つめる。 その横についたナルトが、小声で終わったと一言。   「ナルト、別に驚きゃしねぇからよ。  ついでに死体の処理もしてきてくれねぇか?」 「アスマせ・・・じゃなくてアスマ上忍がしないって・・・あわわ。」 「めんどくせーからよ。  頼んだ。」   アスマが親しげに言った言葉がまるでシカマルのようだったから、ナルトは笑って行ってくるーと、再び死体の方に駆けて行った。   「アスマ、貴方は驚かないのね。」 「そりゃー今度こそ、子供に軽蔑されたかねーからなぁ。」   何の事を言っているのか分からないと、紅は目線だけで話を促すが、アスマは眼下に視線を戻す。 紅には、話す気は無い。 ただ、眼下の男はどうするのかなと、少し不安げに見下ろす。 ナルトが敵と戦っているのを、かなり冷ややかな目で見ていたカカシ。 あの目線の意味をどう読み取っていいか、アスマは分からなかった。   「アスマ上忍、終わったー。」   ニッコリ笑ってナルトが現れる。   「アスマ、こっちも。」   カカシが巻物をアスマに渡す。   「じゃぁ、帰るか。」   アスマが立ち上がろうとすると、カカシに腕を取られる。   「何だ?」 「んー帰る前に、ナルトとお話?」 「そうね、私もお話したいわ。」   一人は冷ややかに、一人は不審げにナルトを見る。 ナルトは、そんな視線を貰うのも久しぶりだなーと、苦笑を浮かべた。   「オレは話てぇ事なんかねぇな。  どっちかっつーと、さっさと帰って寝かせろ。」   アスマがナルトを促そうとすると、ナルトがニッコリ笑って引き止める。   「別に良いって。  カカシ先生は、結論が出た?  紅先生は、聞いてどうする?」 「結論?」   訝しげにカカシがナルトを見る。   「オレと戦ってみる?  それとも今まで道りに先生として冷ややかに接する?  それ以外ってあるのかなぁ?」 「何だ気づいてたんだ。  そうだなー、まだ結論は出ていないよ。  ただ、オレは自分も許せないし、お前の中のモノも許せない。オレにとって大切な人を奪った現実が許せないんだよ。  それこそ、別の場面でいくらでも大切な人間を失ったのにな。どうしてだろ?あの時、あの場面が未だに忘れられないんだよ。  ごめんなナルト。ただの八つ当たりだって事は分かってるんだ。」 「別にいいってば。  八つ当たりでも、カカシ先生は、オレ自身を嫌ってるから。  でも、今のカカシ先生じゃぁ、オレに勝てないよ。」   ナルトは、ニッコリ笑う。 里の人間のように、自分の存在自体を認めず、自分を九尾として排除するのであれば無条件で無視した。 同じ視線ならすぐに分かる。 そして、ナルトは紅に視線を移す。   「紅先生は、何?」   ナルトとカカシが話している間、値踏みをするように紅の視線はナルトに向けられていた。 言葉使いに変化が現れた時、視線がより冷ややかに不審が混じる。   「・・・・・そうね、貴方の事は可哀想だとは思うわ。  でも、そんな感情よりも恐怖の方が強いの。  それが私の正直な感想だわ。  貴方は誰?  そして、私に・・・・いいえ、この里に害を成すの?」   紅の率直な物言いに、ナルトはカカシの時のように変わらずニッコリ笑う。   「ねー紅先生、もしオレが里に害なんか及ぼさないって言ったら、それを信じられる?」   紅は一瞬考えた後、首を横に振る。   「紅先生、オレはうずまきナルト。  死にたくないから強くなった。  そして、こんなオレを好きだといってくれる人達を守る為にもっと強くなる。    でもね、こんな会話していると、オレよりオレのことを心配してくれる人達がきっと傷つくんだ。  だからオレは、こんな会話をしなくていいように原因を全部抹殺したいとは思う。  そういう意味では、害を成すモノかもしれない。」   今までの明るい雰囲気は一掃し、紅よりも冷ややかな視線でナルトは紅を見返す。 紅は無意識にクナイを握った。 そこに、大きなため息が一つ。   「ナルト、お前なー守る人間多すぎ。  そん中に、下忍と中忍全員入ってんだろ?」 「うん。多いかなー?  後イルカ先生とか数えるともっと出てくるんだけど。」 「多っ。」   呆れたように、アスマがナルトを見る。   「なぁ、中忍連中はいいやつらばっかりだっただろ?」 「うん!」 「上忍連中も同じ方法で手なずけろ。まー、中忍とは比較にならねーほどクセのある連中ばかりだから、時間は掛かるだろうけどな。  ったく、お前を知らない連中は、紅と同じ態度取って普通だろうが。」   なんでオレがこんな面倒臭い取り成しをしなくちゃいけねぇんだと、ぶつぶつアスマがぼやく。 ナルトがくすくす笑う。   「明日から上忍の訓練に来い。  守るコレクションでも増やしな。」   ぶつぶつ言いながらも、ナルトの頭をポンポン叩く仕草には、10班の子供達に向ける同等の情があった。 そんなアスマの様子に紅が、くすっと笑う。   「そうね、知らない人に不躾な事を言ったわ。  とりあえず保留にして、ナルトくんを眺めてる。」 「ナルト、オレの答えが出たら付き合ってもらうけど、それまでは元先生でよろしくねー。」   紅と、カカシも、先ほどとは違う、少し穏やかな表情でナルトに話す。 ナルトはニシシと笑って、帰ろうと走り出した。       「シカマルーっ!!」   アスマの拳がシカマルの両こめかみをぐりぐりっと締め上げる。 痛ぇっというシカマルの言葉は大無視。   「お前、わざと巻物盗ませただろーーーっ!!」 「痛ぇってのっ!!」   さすがに、痛みマックスでアスマの拳から逃げる。   「で、どうなんだ?」 「目の前で楽しそうな相談してたんで、望み通りの場所に移動したぐれー?」   アスマの視線が無条件で険しくなる。   「・・・・・・任務書外のフォローまで要求すんなっ!  ついでに、ナルトの演技が白々しすぎるっ!」 「えーー、紅先生もカカシ先生も気づいてなかったっ!」   シカマルの横でナルトが自分の演技は筋金入りっと威張る。   「あいつらは、シカマルを知らないからだっ!  お前、わざと筆跡誤魔化さなかっただろ?」   目の前でシカマルがニンマリ笑う。   「この〜〜っ!!少しは素直なチョージを見習えっ!」 「アスマ、この台本全部オレが作ったと思ってんだろ?」   シカマルの筆跡を見て、試されていると思っていた。 どんな試験が来てもいいように、ナルトをフォローしようと決意した。 そして、始まるナルトの芝居。 本音だとは思うが、あの殺気は白々しすぎた。 これを、どうにかしろというのが、シカマルの試験かと思ったが、面倒臭いという言葉が一番最初に思いつく。 生徒と先生は、とっても似たもの同士だった。 ただ、アスマはシカマルと違って、関わった子供達への情がとても強い。 ナルトの芝居に乗っかり、ついでに紅とカカシの心を落ち着けるという神業的偉業を成し遂げた。 報告書を提出した足で速攻戦略部に向かい、シカマルを拉致って来て現在に至る。   「オレがそんな細かい所までアスマの行動を見通せる訳ねーだろ。」 「だったら誰が仕組んだっ!」 「アスマ先生、最近チョージが戦略部に居るって知ってる?」   にこやかなナルトの声に、アスマが固まる。 ぎぎっっと音をたて、シカマルを見返る。   「まじか・・・・。」 「知ってるだろ?チョージは結構曲者だってこと。」   ニヤニヤとシカマルが笑う。       上忍達をどうしようか悩んでいた。   ナルトと自分が上忍になることで、軋轢が生まれるのを恐れ、ナルトが傷つくのを避けたかった。   チョージが勉強している横で考え込んでいたら、チョージに顔を覗き込まれていた。     「シカマルが悩んでいるって事は、ナルトの事かなぁ?」   「うっ・・・・オレってそんなに分かりやすいか?」   「あのねー、最初に言ったでしょう?僕は、分身と付き合いが長いんだって。    僕はシカマルとずっと幼馴染してたんだよ。」     見ていれば分かるでしょう?と、言われたチョージの言葉に、シカマルは破顔する。   そして、上忍達への対処をどうしようかと相談してみた。   結果、チョージがどれだけ自分の周りを的確に見ているかという事を呆れ顔で受ける事になる。   アスマに関してのチョージの感想は、懐疑的であったが、それでも試してみる価値はあると、ナルトを加えて悪戯の作戦を練った。   「ってことは、オレはチョージのお陰で、とりあえずの信頼を得たって所かよ。」 「ま、そーいう事。」 「ったく、信用ねぇなぁ・・・・しゃぁねぇか。  シカマル、何か手が必要だったら声をかけろよ。  信用ねーなりに、手伝ってやるからよ。」   最初はこんなもんかねーとばかりに、アスマがナルトとシカマルに背を向けて扉に向かう。   「アスマ先生〜、明日からイルカ先生の訓練で遊ぼうねー。」   ナルトが楽しそうに指を鳴らす。   「アスマ、訓練真剣にやれよ。  あんたは、もう少し強ぇだろ?」   シカマルが笑いながら、冷たい声で言う。         閉まった扉からアスマの声だけが二人に聞こえてくる。   「あーーうるせぇっ!これから見てやがれっ!!」   扉を通して聞こえてくる爆笑に、アスマは壁を蹴り上げた。         【続く】    




 


    やっと、敵作成?敵ちゃうなぁ。ナルトが真剣にタラシをしなくちゃいけない相手を設定?という所でしょうか? ただ、たらし方はたぶん書かないと思われ。 なんつーか、果てしなく面倒な気がするf(^-^;) だいたい、7は綱手様就任にしようと思っていたのさー。なんねーこれ?(^-^;) ううっ、小話とはとても言えない長い話になっちまったのさー('';) ま、いっか<おい   なぜかアスマが仲間っぽくなってきまひた。 どうしても、シカマルとというか、10班面子と対立するような事をしそうにないんですな、この人。 アスシカも書いているせいか、外見がおっさんなせいか、ついつい贔屓しています(^-^;)   そうか、幸せ追求〜って、もしかしたら10班大好きっこ用の話か?(゚▽゚;) どうも、10班贔屓な内容が多い気がしてきた(;。。)     【05.01.12】