【幸せ追求させろ隊 補6.3】     「ぐはっ!!!」   イワシが景気良くふっ飛び、少しよろけながらも起き上がる。 しばし考えるように目を伏せ、そして再び前に進む。 瞬間消えるように動くイワシに対し、神経を張り巡らせたネジが、自分に向かってくるクナイを迎え撃つ。 お互い次の手を模索しながら、攻撃を続けた。   そんな様子が広々とした訓練場のあちこちでみかけられる。 今日が約束の7日目。 当初は1日だけ下忍達と交わり、その後にそれぞれ分かれる予定だった。 それが1週間に伸びる。 シカクとゲンマの希望により現在下忍と中忍の合同訓練中である。   「今日上忍の方につっこむ面子を割り振りますよね?」 「あぁ、そのつもりだ。」 「下忍の方で残った連中を、中忍所に突っ込んで構いませんか?」 「構わねーぜ。ってかよ、こっちが頼みてぇ所だ。」   中忍達は、下忍達の伸びに驚き、子供に負けてなるものかと今まで穏やかな空気の中の訓練が必死なものに変わる。 下忍達は、中忍達と自分達との差を目の当たりにし、必死に吸収しようとする。 どちらも、いい影響を与えていた。 ただ、このままでは慣れが生じ停滞する可能性がある。しかし、それならば自分達が直接叩けばいいと思っていた。 そして、毎日不定期に現れる強力な二人もいる。   「まぁ、あれがあるしな。」 「そうですねぇ、オレも参加してぇぐらいなんですけど。」   二人がお互い苦笑する。 そこに強力な二人の片割れが、ゲンマにタックルをかけて来た。   「おっさんっ!」   ナルトが元気いっぱいの笑顔で、ゲンマの腰にぶら下がり、その背後では、いつも通りのシカマルがメンドくさげに歩いて来る。   「休憩っ!5分後にナルトとシカマルが入るっ!」   これから、この二人対下忍、中忍の対戦が始まる。 今回下忍、中忍のレベルを引き上げる効果大の訓練。   誰でも強い者と戦ううちに、自然と吸収するものがある。 この二人は強い上に、シカマルの頭で組み立てられた訓練メニューに従い毎回相手にわからない程度の工夫を加えていく。その結果、今まで以上の成長が見られるようになった。   『あのよー実力見せすぎてねーか?』   ゲンマが心話でシカマルに突っ込む。   『これでもかなり手ぇ抜いてる。』 『中忍試験以上の力見せておいて、手ぇ抜いてるって言われてもよー。  あいつら、勘ずいてるぜ。』 『ま、それもいんじゃねーの。まだ言う気はねーけどな。』 『対策ありか?』 『全然、ま、雰囲気?』 『なるほどね。』   シカマルとゲンマが休憩風景を眺める。 目の前には、ナルトを中心に楽しそうに笑っている集団。 確かにナルトは表用の言葉使いで、表用の行動を取っているが、それでも心から楽しそうに笑っているのが分かる。 そして、周りにいる集団も、ナルトを小突いたり、撫でたり、馬鹿な事を言って笑わしたりと、自然な行動を取っている。   最初は違った。 下忍達はともかく、中忍達は不思議そうに、訝しげに二人を見ていた。 それが、徐々に変わっていく。 二人の与える効果を実感し、綺麗に動く体を見、下忍達と楽しそうに関わっている二人を見、冷ややかな視線は賞賛と仲間意識に変化した。 今、目の前の光景には、一切負の感情は無い。 これなら、この全体の一人ぐらいは残ってくれるだろうと、期待をしてもいいんじゃないかと思ってしまう。 なにせ、中忍達は全て大人なのだから。 シカマルの顔に不安が一瞬だけ浮かぶ。   「お前は考えすぎ。  なぁ、オレもハヤテもいっだろ?  だいたい、そんな顔してたら速攻イルカに殴られっぞ。」 「こぇー事言うなよ・・・・・・・ま、ありがとさん。」   ゲンマに背を向け礼を言う。 面と向かってなんか言えない。 そんな事は分かってるとばかりに、シカマルの背中にゲンマとシカクの笑い声が当たった。   「ナルトっ!やるぞ。」   照れの誤魔化しに八つ当たりを決意。 ちょっと赤い顔のシカマルを見て、背後のゲンマとシカクを見たナルトが、なんとなく、なんとなく察して、下忍も中忍も訓練の後動けるかなぁ?と少しだけ心配する。       「あぁーあ、お前のせいだぞ。」   目の前の惨状を呆れながら見ているシカクがぼやく。   「オレのせいですかね?・・・・・しっかし、容赦ねぇなぁ。」 「それにしちゃぁ、あいつらも頑張ってる。」   いつも通りのナルトと少々八つ当たりぎみのシカマルが周りを吹き飛ばす。 しかし今までだったら、吹き飛ばされたままだった連中が、それなりに短時間で復帰し、再び二人に迫っていく。   「この分でいくと、かなりの面子が上忍の方に行きますかね?」 「まー叩きたいヤツは全員突っ込むつもりだけどよ。  上忍達と訓練するのと、あの二人と訓練するのと、どっちがいいか迷う所だよなぁ。」 「でも、あのイルカですよ。手抜きなんかしてくれねぇと思うんですがねぇ。」 「ま、教える側の面子も考え時って所か。」       「うちから4人だ。」 「オレん所からは、3人。」   イルカが渋い顔をする。   「今でさえ、自来也様と二人でいっぱいいっぱいなんですがね。」 「もう少し待ってくれ。  中忍と下忍達が落ち着き次第ナルトをそっちにやる。  それでなんとかなっだろ?」 「・・オ・・レ?」   ナルトが目を瞬かせる。   「この中で時間に一番余裕あんのが、お前なの。」   シカマルが書類を見たまま、不安そうなナルトの言葉をあっさり切り捨てる。 そこにゲンマとイルカがナルトの頭をがしがしかき回す。   「うわっ??!」 「中忍達の人気者だって?」   イルカが笑いながら言う。   「お前が上忍達の方に行くと分かったら、あいつら拗ねるぜぇ〜。」   ニヤニヤとゲンマが笑う。   「でも・・・オレ上忍になったばっかりだし・・・・先生は・・・・。」 「先生ではなく生徒としてですよ。  それだけで周りにとっていい刺激になるんですね。」   ハヤテが、ニッコリ笑う。   ナルトは、そんな仲間の言葉を嬉しそうな笑顔で答える。 一瞬でも、不安に思った事を反省する。 いつも自分の周りにいる仲間は、自分に過保護だと言うくらい甘い。 自分が傷ついたり、悲しんだり、不安に思ったりしたら、自分が持った感情以上に心配してしまう。 それぐらい、仲間が自分を思ってくれている。 だから、自分はそんな事を思えない、感じない、いつだってこんなに思われているのだから。   そして、一番過保護なシカマルが自分にマイナスになるような話を持ってくる訳がない。 不安に思う事自体、シカマルに対する裏切りだった。 ナルトは、満面の笑みを浮かべる。   「へへっ、イルカ先生よろしくー。」     【End】    




 


    ぜーぜー、やっとこ書き上げた。 これが上がらないと、幸せ〜の7がUP出来ないと思いながら、書きあがった7を何日放っていたんだかf(^-^;)   ということで、ナルトに甘々集団の話が終わりました。 なんとなく、ナルトアイドル状態? シカの背後に黒いオーラが見える昨今だ(((((((((^-^;)   【05.01.12】