【幸せ追求させろ隊 5】     「ちぇ〜〜お前らオレに親切じゃねぇなぁ。」   周りから、笑い声があがる。   「奈良上忍の3倍づけなんか怖くて、受けられないですよ〜。」   荒い息をつきながらも、全員が笑っていた。 全員が5分以内に木の葉の門の前に集まった。   あらん限りの力で走ってきた。 三代目の言葉に感動していた事もある。 もっと自分を磨きたいと思っていた事もある。 そして、目の前に居る見慣れた上忍が何を言い出すのか、それがものすごく楽しみだった。   目の前のすねた物言いの上忍は、誰も一度は話をした事のある上忍だった。 酒場では、上下関係なく楽しく飲み。 任務では、的確に指示し、何があろうとも味方を守り、任務を仕上げた。   そして面倒見の良さも有名だった。 後輩の悩みを聞き、的確にアドバイスをし、最後まで面倒を見る。 そんな姿を誰もが見かけていた。 待機所でだらけた様子を見かけるのと同じくらい、厳しい眼差しで戦っている姿を見る。   ゲンマやイルカと違って、中忍担当になったシカクは、担当したメンバーのほとんど全員がシカクに好意を持っていた。   「お前ら覚えていろよぉ〜、今夜飲み屋で会ったら、たかってやるっ!」   げらげらと笑い声があがる。   「ちぇぇ〜オレが昨日徹夜でお前らにプレゼントを用意してやったのによぉ〜。    プレゼントはあの山ん中。  ま、頑張って生きて帰ってこいよ。  あそこに行って帰ってくるだけだ。」   シカクの指の先には、山が一つ。   「制限時間は、1時間。  山頂にある、札を拾って帰ってこい。    途中には大量のプレゼントを仕掛けておいてやった。  ま、死ぬことはねぇが、大怪我必須だ。  一応医療班も用意しておいたが、世話になんかなるなよ。    それから、条件を一つ付ける。  見かけた人影は全員敵と思え。  全て攻撃しろ。  但し、トラップにかかっているヤツ以外な。」   中忍達は、ここに来て初めて真剣な面持ちで聞いていた。 なのに、ニンマリとたちの悪い笑みをシカクが浮かべる。   「でだぁ〜。  1時間以内に帰ってこれなかったやつは、オレに酒代おごりな。    くふふふふふ。当分飲み会の費用が浮くぅ〜。  ものすごぉ〜く楽しみにしてっからなvv」   目の前に満面の笑み。 そして、背後には冷や汗。 なにせ、奈良上忍の飲み方と言ったら、洒落にならない。 一回でも費用を肩代わりしたら1週間は味噌汁かけご飯決定。   「オレはここでのんびり待っていてやる。  行って来な。」   言葉が終わった瞬間に、シカクの前から一斉に人影がなくなる。 シカクが印を切る。 分身が10体。   「見てきな。」   シカクが手を振ると、分身達が一斉に掻き消える。 待ってるのも、しんどいねぇと、木に寄りかかり目を閉じた。       目の前に傷を負った者がほとんどだった。そして、全員が荒い息を吐いている。 しかし、時刻はまだ一時間経っていない。 目の前に散る前と同数の中忍が居た。   「お前らなぁ・・・・。」   シカクから苦笑が漏れる。 目の前から小さな笑いが起こる。   「忍びなら裏の裏を読めって・・・・・オレ達の基本ですよね?」 「くそぉ〜っ!!もっとトラップ増やしておくべきだったぁぁぁっ!!」   疲れていた荒い息の中だったが、げらげらと笑い声があがる。           普通だったら、全員がこんなに早く戻れる訳も無い。 全員が必死に頂上を目指していたが、洒落にならない量のトラップに気を配りつつ、攻撃から身をよけつつ、攻撃しなくてはいけない状況、思うように進まなかった。   「おーいコテツ、楽しそうだなぁ。」 「すっげぇ〜楽しくねぇよっ!」   周りの木立の枝が大量に折れていた。全て切り込み入り。トラップの一つだった。 そして、計算尽くされたように、こことしか思えない地点に、しっかり落とし穴があった。 現在コテツ落とし穴の中。 そして、上からイズモが覗き込んでいた。   「助けろっ。」   助けてもらう割に横柄なコテツ。ついでにふくれっ面。 そんなコテツをじ〜と眺めながら、イズモは動かない。   「イズモぉ〜。」   ニヤリとイズモが笑う。 そして、縄をコテツに投げた。   「コテツ、罠に掛かってるヤツには攻撃するなって言っていたよな。」 「おう。」 「お前、あの木の枝でも背負って行け。罠に掛かってる最中だって自己主張しろ。」   イズモがニンマリ笑う。コテツがニヤニヤ笑う。   「お前にも木の枝贈呈してやる。」   中忍達に罠掛かってます自己主張があっという間に伝染する。 元々仲が良い事もあって、各自がトラップにはまっていた仲間をそれぞれ助けている間にイズモとコテツが駆け抜けていったのが原因。         「お前ら、それじゃぁ訓練になんねーだろーが。」   大半の中忍がそんなことはないと、無言で手を横に振る。 トラップの数から考えて、このやり方でも1時間以内に全員が戻ってこれたのは奇跡に近い。 お互いの協力を最大限に活かしてなければ、実現出来なかった。 どの中忍も、三人一組(スリーマンセル)、四人一組(フォーマンセル)と、日々仲間との連携を最優先として体に叩き込んでいる。 自然とブレインを主体として全員が動いていた。   「まぁ、悪かぁねーけどよ。」   シカクが苦笑しながら、頭をぽりぽりと掻く。   「でも、そのままじゃぁ上がれねーな。  結局自分の未熟な点は他人任せだ。」   シカクが無言で書類束を配れと指示する。 シカクは、全員が書類に目を通しているのをじっと待っている。 全員とは行かないが、ほとんどの面子と一緒に任務の経験がある。 別に、今のような事態を想定していた訳ではないが、自分の息子達に何かあった時に、人脈は必要だろうと前から考えていた。 上忍や特別上忍達は、中々一緒とはいかなかった分、中忍達とは時間をかけている。 当然戦略部を利用して、ほぼ全員にいきわたるようにもしてきた。 おかげで、イルカやゲンマとは違って、だいたいの状況も把握しているつもりだった。 中忍同士仲がいいのも知っている。 仲間が大切なのは当然の事、しかし訓練時にまで自然と出てしまっては訓練にならない。 今の訓練は個人の力量を上げる事であって、班のレベルアップではないのだから。   そして、目の前の楽しそうな面々に危機感を感じられなかった。 自然ため息が零れる。   「読んだな?  んでだ、午前中は訓練。午後は任務。任務後はオレが添付した訓練メニューをこなせ。  後、今日だけ訓練後に試験だとよ。月光特別上忍が担当だ。」   シカクが、口の中に溜まった息を吐く。   「じゃぁ、やるかね。  訓練メニューに書いてある、相手と組んで、時間終わりまで相手の持っているモノを全て吸収しな。戦いだ。  始めろ。」   中忍達は、自然と各自が間を開け、戦い始める。 それぞれ、自分が苦手とするものを持った相手を指定してある。 いくら人数が居るからと言って、都合のいい相手が居るわけでもないが、シカクなりに考えて振り分けた。   『どうしたもんかね?  覇気が足りねー。  ・・・・・綱手様が見つかるまで・・・・・1ヶ月って所か。  帰ってきたネジを突っ込むか・・・・ったく、子供に頼るってどうよ?』   再び、ため息をついた。         「戦略部の月光ハヤテです。」   目の前に居る人はにこやかに微笑んでいる。 微笑んでいるのは、間違いない。 しかし、えもいえぬ迫力が笑顔に滲んでいる。 顔色が悪く、静かに話している、微笑みも優しげ・・・・しかし、目が裏切っている。 何一つ笑っていない。 下忍一同、少しびびっていたりする。 中忍一同も、ハヤテと一緒に任務した経験があるものが、少ない。 やはり、その目つきに少なからずびびっていたりする。   「事前に、何人か戦略部で使えそうな人の名前は伺っていますが、実際が知りたいので全員テストを受けて頂きます。  目の前の用紙には、複数名の細かいデータと、任務内容が書いてあります。  2時間以内に指示書を作って下さい。  また、必要と思われるデータで、足りないと思われるものは、私に聞いて結構です。」   そこで、再びハヤテがにっこり笑う。   「指示書は確かに指示書でしかありませんが、これだけは肝に銘じて欲しいんですね。  内容のミスは、現場では死に繋がります。  一つでもミスをしたら、指示書を書いた者のせいで、誰かが死ぬという事です。    では開始。」             ハヤテが、提出された指示書を見ている。 ため息が零れる。 未だに人材不足。 アカデミーでは、忍びになる事を重点にされ。 下忍になっても、実際の現場を知る訳でもない。 子供達にぼやいても意味は無い。 もっと、早いうちに子供の素質を見抜き、忍びになる者、そして裏方に回る者・・・・的確に育て上げる必要を感じる。 そして、目の前の派手な部分だけでなく、裏方の力がどれだけ必要で大切なモノなのかを理解させたい。 今忍びを目指している子供が、戦略部と言われても首を縦に振る子供は少ないだろう。 デスクワークを好むとはとても思えない。 まったく同じ事が、中忍達にも言える。 人によっては、デスクワークに行っている者もいる。イルカがいい例だろう。 しかし、ここに来た面子は、全員が現場に居る。 という事は、デスクワークを良しとせず、今だ上に登ろうと努力している者達。 とても、戦略部を希望するとは思えない。   そして実際戦略部になったとしても、自分の戦略一つで人の生き死にが関わってくる事を理解した時点で、精神的に追い詰められる者も多い。   ため息が漏れる。   「どうしたよ?」 「まっとうなアカデミーが欲しいんですね。」   背後からかけられた言葉に、振り向きもせずに答える。 誰が立っているかなんて、来た時点から分かっていた。   「あぁ、それはオレも感じたな。  今あるあれに、意味があるのか?」 「なるほど、現場でさえそう感じるモノがあるという事ですか。」 「改革にアカデミーも入れるかい?」   含み笑いが返ってくる。   「たかが個人の意見でどうなるものでも無いんですね。  ただ、長と三代目を巻き込んだ今なら、どうにか出来るかもしれません。」   ハヤテが、クスクス笑う。   「五代目も喜んで巻き込まれるんだろうなぁ。  なぁ・・・・あの二人に勝てるヤツって居るのか?」 「見てみたいですね。」 「木の葉には、居ねぇようだなぁ。」   それも人材不足ってやつかー?と、ゲンマが笑う。   「でも、結構いいヤツらが居るぜ。  シカマルが面白いなんて言う訳だ。  あいつらが、あのまま伸びたら、どの部署に居ようとも、いい仕事をしてくれるだろうさ。」   嬉しそうに楽しそうにゲンマが笑う。   「そうですか・・・・では、私ももう少し書類を見直した方がいいかもしれませんね。  小さな事でも見過ごすには、勿体無い事になりそうなんですね。」   ハヤテの口元に笑みが浮かぶ。   「ま、楽しもうじゃねぇの?  半年、どれだけのもんを自分達の周りが見せてくれるかってのをよ。」   ハヤテがクスクス笑う。   「んだよ。」 「それ、長に同じ事思われてると思いますよ。」 「あーいーいー、オレは、一生涯しがない特別上忍希望だ。」   ゲンマが嫌そうに、遠くの方にシッシと手を振る。   「じゃ、また後でな。」   何しに来たか分からない。 とりあえず、面白い者を見たのだろう。 楽しそうなゲンマを思い出し、口元に笑みを浮かべる。 夕食の時にでもゆっくり聞こうと思う。   手元の書類を見る。 今付箋が貼られているのは、二枚。   もう一度見直そうとハヤテは、再び書類を手に持った。     【続く】    




 


    ジャンプ(47号)ありがとうっ! や、シカマルについて当然語りたい事はある。 つか、叫びたかったよ。   でもシカクさんっ!かっちょびぃ〜"o(>_<*) くぅ〜おかげで、名前があまり出てこない中忍編、ものごっつぅ〜指針になりやした。 ありがとう〜作者様〜m(__)m 今週のジャンプは永久保存だねo(゚゚*)   やっぱ元々シカク年齢にくらくらくる自分としては、うふふ嬉しい。 元祖猪鹿蝶もっと出して欲しいのぉ〜(゚゚*) <こんな所でWJの感想書いてどうするよ。   とまぁ、生贄中忍編+生贄下忍続き編でっす。 難しいねぇf(^-^;) 訓練ネタ好きな自分でも、実際運動系の訓練を知ってる訳ではないからねぇ。 かといって、その描写なくしちゃだめだめな内容が今回のシリーズ多すぎ。 毎度きついよほぉ(;_;)     【04.11.23】