【幸せ追求させろ隊〜生贄ネジ編〜 5】     「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・イルカって、あのイルカかい?」   三代目の指令書を読んでいる途中、綱手が顔をあげる。   「あのって?」   "あの"の強調の仕方が普通ではなかった。 子供三名不思議そうに綱手を見る。   「あのだよ・・・・・なぁ自来也、お前も救出に行った事がなかったか?」 「「「救出〜?」」」   子供三人綺麗にはもる。   「あぁ、ワシも1回行った事があったのぉ。」 「なぁなぁ自来也のおっさん、何の救出か教えろってっ!」   頬を膨らまして、ナルトが自来也の袖をひっぱる。 そんな姿にくすくす笑いながら、シズネが答える。   「有名ですよね。  海野家誘拐事件。  イルカさん・・・・・誰にでもついていくって。  馬鹿か、あまりに純粋すぎて疑う事知らないのか・・・・どっちだろうって・・・・ぷっ・・・・。」   はぁ〜?何ですかそれ?と、子供達三人のそれぞれの顔に書いてある。   やっぱり壷買ってるっ!家に大量の壷があるの確定っ!!とナルト。 ネジはしっかりしているなっ!と頭をぽんぽんと叩いてくれた・・・・人を叩く暇があったら自分がしっかりしなくちゃいけなかった人だったのかっ!と唖然とするネジ。 ・・・・・・イルカ・・・・・・・・・強くなった理由って、まさかこれじゃねーだろーなー?・・・・・・・・疲れる予感なシカマル。   「疑うのが嫌だったらしいのぉ。  四代目が困ったようにワシに相談してきたな。」   くっくっと笑い、杯を口に運びながら自来也が答える。   「四代目ですか?」   シズネが不思議そうに聞いてくる。 子供達二人は興味深そうに、後の一人は、想像通りの答えが返ってきそうな予感に眉間の皺が増える。   「あまりに誘拐される事が多いから、四代目が直接イルカに色々聞いたそうだ。」     『イルカくん、知らない人について行ってはいけないと言われていないのかな?』   『うん。でもお母さんもお父さんも、悪い人にはって言っていたよ。    それに人を疑うのは良くない事なんだよね?』   「とまぁ、そんなような話が延々とあったらしくてのぉ。  結局、四代目は疑う事はいけないというご両親の考えを考慮し、イルカを鍛える事にした。  それから暫くして、イルカ誘拐事件はなくなった。  実はなくなったのではなく、自力で全部帰ってこれるようになったということだのー。」   親の教育って凄いんだなぁ〜と、ちょっと違った視点で感動したナルト。 自力で小さな子供が帰ってこれるほどの訓練ってどのようなものだったのだろうかと、少し興味を持ったネジ。 こっちも視点が間違っている。 そして、やっぱりと、深々とため息をつくシカマル。 ある意味純粋培養だったのかと、納得した。   「へぇ〜四代目が関わっていたのか。  それで、私はイルカを六代目にすればいいんだね?」 「・・・・・・オレすっげぇ〜不安。  本当にイルカでいいのか?  ハヤテの事だからこの事知ってるとは思うけどよ・・・・・なんか木の葉がすっげぇ〜健全になりそうで、ものすぐごぉ〜く怖ぇんだけど?」   苦虫潰したような顔でシカマルが綱手を見る。   「私はいいと思うけどねぇ。  今のイルカに会った事がないからなんとも言えないけど、あの頃のイルカは素直でいい子供だったよ。  怖い思いをしただろうに、信じて傷ついただろうに、泣きもせず助けた私達に一生懸命礼を言っていた。」   綱手がくすくす笑う。   「たぶん、今も変わらないんじゃねーかー。  うわっ!忍びの里として、それってどうよ?」 「でも、あのイルカ先生なら、オレみたいなのが増えないですみそうだろ?  その方が大事。」   笑いながら、それでもナルトの心からの言葉。   「そうだな、がんじがらめで抜けられない子供を、あの先生が見過ごす訳がない。」   ネジが、穏やかに微笑んで言う。   「私ではダメだって事かい?」   綱手がからかうように子供達に言う。   「オレはあんたを知らねーからなぁ。  まだ預けられねーなー。」   言っている言葉とは裏腹に、親しげに笑っているシカマル。   「綱手のばーちゃんは、管理職やりたそうには見えないけどなー。」   くすくすナルトが笑う。   「綱手様の造る里を楽しみにしています。」   一礼するネジ。   「ま、私は傀儡だ。楽しく傀儡をさせてもらうよ。」   火影という肩書きが、ただの部長レベルのような物言い。 楽しそうに綱手が笑った。       「相手は体力勝負の二人だ。  オレはサポートに徹する。  お前は隙が出来た所を、片っ端から狙え。」 「分かった。」   目の前には綱手とナルトが、楽しそうに指を鳴らしている。 対するは、ネジとシカマル。 ネジは、生真面目に頷き。 シカマルは、いつもと変わらない様子で、のんびりとネジの背後に付く。   「綱手様〜〜頑張って下さい〜!」 「ブヒ〜vv」   シズネとトントンが4人から、かなり間を空け、自来也の横で手を振る。 めったにない見世物。 自来也は、片手に杯を持って、のんびりと観戦体制。 先日自分が見世物になった意趣返し含んでたりする。   「開始っ!」   シズネの声が高らかに響く。   見た目には二対一。 しかも相手は五代目予定者と、木の葉のトップ、ネジには圧倒的に不利のはずだった。 一応、綱手とナルトは体術のみという制限が付けられているが、それでも未だ下忍が敵うわはずもない。 しかし、背後に控えたシカマルのサポートが普通じゃなかった。 そして、意外にもネジがかなり奮闘していた。   ナルトがネジに技を仕掛けようとすると、どこからかクナイが飛んできて、ナルトの動きを阻む。 その隙を突いてネジが攻撃する。 綱手が、ナルトに向かったネジに攻撃しようと腕をあげた瞬間、目の前に火遁の術が現れ、綱手も動けなくなる。 サポートは何をしてもいいというお墨付き通り、シカマルは息をつくまもなくクナイや術を展開する。 そんな的確なサポートの元、ネジは深追いせず、隙が生まれた場所へ次から次へと体を動かし攻撃していた。 ナルトとの死に物狂いの訓練の効果が現れている。 相手の動きに対する反射神経の伸びを見せ付けた。   「シカマル君凄いですね。」 「あー確かにのー。  だが、ネジも随分成長したようだのぉ。  いくらシカマルが頑張ろうとも、唯の下忍にあそこまで長引かせる事は出来ぬだろう。」   自来也が呆れたようにナルトを見る。 最初見たネジとは、まったく違うのが分かる。 問題のある特訓ではあったが、ここまで成長したのは、ナルトのお陰だろう。 そして自来也は、ネジに関心もする。 あの特訓を素直に受け入れる性質、そして、二人に追いつこうとする向上心。 どちらかが足りなければ、ここまでの仕上がりを見せる事もなかった。 今ネジは中忍と上忍の間くらいかと自来也が目星をつける。   戦いが始まって10分経った頃、ネジが綱手の蹴りを受けて、吹っ飛ぶ。 着地地点でシカマルがネジを受け止めた。   「す・・・すまないっ。」 「お前なー、あの馬鹿力の蹴りくらって、謝ってる場合じゃねーだろ?  大丈夫か?」   その途端思い出したのだろう。 腹を押さえて、くぐもった声がネジから出る。   「あんたなぁ・・・・・もう少し手加減出来ねーの?」   ネジの腹に掌を当て治療している綱手に、呆れ顔を向ける。   「それだけ、ネジが成長したって事だよ。」   苦笑しながら綱手が答える。 相手は唯の下忍。 当然、手加減する予定だった。 いくらシカマルが効果的に術を発動しようとも、1分も必要無いと思っていた。 それが、この有様。 どんな訓練をしたか知らないが、唯の下忍の動きとはとても思えない。 確かに日向家の血筋を色濃く受け継いだ才能のある子供だとは聞いていたが、それでも下忍、梃子摺る予定はなかった。   「もう大丈夫だ。  すまなかったな。」 「いいえ、ありがとうございました。  大変勉強になりました。」   ネジが慌てて綱手に頭を下げる。   「すっげぇ〜よネジ、まさかこんなに時間掛かるとは思わなかった。  やったな!訓練の成果あがってるっ!」   ナルトがネジの背中をバンバン叩く。 そんなナルトを、驚いたようにネジが見上げる。   「俺は・・・・・ほんの数分しか戦わせてもらえなかったが?」   ネジの周りに集合していた全員が脱力、そして手を横に振る。 言葉にする気力も奪われ、動作で違うと意思表示。 しかし、未だにネジは不思議そうな顔をまま。   「お前・・・・・冷静に考えろ。  こいつら相手にお前は10分も戦ったんだぞ。」 「それは、シカマルがサポートしてくれたから・・・・。」   ナルトと綱手は、ネジの頭を無条件で叩き、シカマルと自来也はため息を付き、シズネは力なく笑う。   「ネジ、いくらシカマルのサポートが良くても、唯の下忍が、この二人を相手に10分も戦ってはおれんのぉ。」 「お前なぁ、今の力量なら上忍かすってるって。  自覚しろ。」   自来也とシカマルに立て続けに、信じられない内容を言われて、ネジがあっけにとられる。   「ネジくん、ここに居る人達と比べてはだめですよ。  洒落にならないレベルと比べても、意味はありませんからね。」 「しゃぁねぇなぁ、さっさと里に帰って、上忍達の所にでも放り込むか?」   ため息をついてシカマルがぼやく。   「まだ、上忍の所はきついんじゃないかねぇ?」   綱手が少し考えてから言う。   「大丈夫っ!これから里に着くまで時間があるだろ?  ネジ!上忍達の所に入れるよう、特訓続けようなっ!」   これなら下忍達を苛め(訂正:訓練し)ているゲンマに勝ったねと、ニンマリ笑ってナルトがネジに拳を見せる。   「あぁ、帰るまでよろしく頼む。」   この一行の中で唯一の礼儀正しい子供が皆に頭を下げる。   「んじゃまぁ、帰るとするかのー。」   帰りもしんどそうじゃのぉと自来也が荷物を背負う。   「忘れ物はありませんか?」   シズネが綱手と子供達の荷物を確認する。   「ネジ、帰りは私と訓練をしような。」   綱手がネジの頭をポンポン叩く。   「えー!オレも訓練するっ!!」   ナルトがネジの手をひっぱる。   「お前らなぁ、もう少しのんびりした方がいいんじゃねぇの?」   メンドくせーと顔一面に表したシカマルがため息つきながら、荷物を背負った。               「うわっ!!ネジっ!!」 「体力付けるにはどうすればいいかね?」 「綱手様っ!」 「お前ら少しは手加減って学習するべきだのぉ。」 「・・・・・・だから休めって言っただろ?」   ネジは、自来也の腕の中で気を失っていた。 木の葉の里まで、あと20分。    




 


    最初に謝ります。 イルカ先生ごめんっ!! つか、変なの思いついちゃったの。 これが頭から離れないの。 ついでに、頭の中の妄想は既に発展しちまっているの。 四代目とイルカ先生の話が頭の中でスキップしちゃっているの。 とまらないの。 別の話にしても良かったんだけどね。 この話も書かなくちゃいけなくてね。この内容でしか、続きが思いつかないの。   や、わりぃっ!((((((((脱兎。   という事で、生贄ネジ編完結しました。 なんかねぇ〜生贄って感じから離れたねぇ。 ネジ真面目すぎだよf(^-^;) ついでにぶっ倒れてばっかりやし(--;) それが可愛いとは思うんだけどさぁ。生贄ってサブタイトルがすっげぇ〜可愛そう。   次は、下忍編と中忍編とハヤテ編だぁ〜!・・・・うっ先は長いなぁ(;__)_     【04.10.11】