【幸せ追求させろ隊〜生贄ネジ編〜 4】     「何で・・・・ここにお前がいる?」   態度のでかい大男が子供を従えて綱手の目の前に居た。   「やっと見つけたぞ。」   綱手の情報を伝えたり、訓練に付き合ったりと道中のんびり出来なかった自来也、少々お疲れぎみ。   「てか、まじかよ。  何でおけらになったやつが、こんな所で酒のんでっかなー。」   真っ先に行った賭場では大金をせしめた連中が楽しそうに綱手の事を教えてくれた。 その後いくつもある賭場をうろうろしてからやっと見つけた相手。 メンドくせーとうんざりした表情のシカマル。   「へぇ〜。紅ぐらいにしか見えないや。  すっげぇ〜。」   純粋に目の前の女の人に興味津々のナルト。   「初めまして綱手様。  お探ししていました。」   唯一常識を持ったネジが深々と頭を下げる。   「・・・・で、こんなガキを従えて何の用?」 「率直に言う。  綱手・・・・里からお前に、五代目火影就任の要請が出た。」   横に座っていた、しずねが目を見開く。 綱手が胡散臭そうに自来也を見返す。 そこにシカマルが口を挟む。   「あー、別に断ってもいいぜ。  自分の不幸にどっぷり浸かって、一人の世界に入ってる方が楽だろ?  別にあんたに期待なんかしてねーから。」   楽しそうに暴言を吐きまくるシカマル。 そこにナルトが頷いて付け加える。   「そうだよな。  なんで、木の葉の連中って不幸酔いしたがる連中が多いんだか。  馬鹿だよなぁ。  停滞してるのがどれだけつまらねーか、分かってねーんだもん。」   ナルト少し目を泳がせて、それでもきっぱり、言い放つ。   「そうだな。木の葉のトップがそんな事では、里にとっても良くないだろう。」   ネジがナルト以上に目を泳がせる。 さりげに棒読みだったりもする。 事前にシカマルから指導を受けていたが、自分がやっと停滞から出てきたばかり。 自分の言葉が自分に思いっきり返ってくる。 ナルトが、お前はもう前に進んでるんだから、気にしちゃだめだと言われたが、それでも自分がまだ言ってはいい言葉ではないと思っていた。   そして、目の前の綱手の目つきが悪くなる。   「自来也、この偉そうなガキ達は、何なの?」 「奈良シカクの息子のシカマル。  うずまきナルト。  日向ヒザシの息子ネジ。」 「お前の弟子か?  まず躾がなってないようだね。」   自来也がニヤリと笑う。   「弟子じゃないのぉ。  シカマルとナルトは上忍。  ネジは二人の弟子であって、ワシの弟子ではないの。」 「なぁ、どうせ断るんだろ?  メンドくせーからさっさと断ってくれねー?  オレ達は、あんたの不幸に付き合う時間はねーんだよ。」   しずねが椅子を蹴倒し、立ち上がりシカマルに掴みかかろうとする。   「落ち着きな、シズネ。  シカマルって言ったっけ?  そこまで言って覚悟は出来てるだろうね?」   綱手は、口元は微笑んでいるが、目はまったく笑っていない。   「喧嘩でもすんのか?  でも、あんたオレに勝てねーよ。  弟を失くした?恋人を失くした?悲しいのは分かるが、それを乗り切る強さがねー。  あんたは、ナルトがどういう者か知ってるはずだ。  そして、分家に生きる者がどういうものかもな。  二人は、不幸酔いしねーで、ちゃんと歩いてるぜ。  それともあんた、想像力ねーの?  二人がどういう人生歩んだか分からねー?」   テーブルに肘をついて、シカマルはちらりと綱手を見上げる。   「〜〜〜っっ!!お前はどうなんだっ!」 「オレ?  オレはこいつらに比べれば遥かに幸せもんで、文句のねー人生歩んでんなー。  ま、3歳の時自分的にすっげぇ〜不幸に出会ったけど、不幸を幸せに変える努力をする程度に前向き?」   事前打ち合わせにより、綱手を怒らせる事になっていたが、たかだか13歳程度の子供が言う台詞と態度ではない。 まったくもって、大したヤツだと綱手に見えないよう自来也が苦笑を浮かべる。   「・・・・ほぉ〜まるで私が甘えてるとでもいいたいようだね。」 「へー、それが理解できる程度には頭があるんだ。  ところで、あんた賭け事が好きなんだろ?  オレと賭けしねー?」   シカマル完璧に長モード。 ふてぶてしさを前面におもいっきり出して、綱手に挑発をする。   「内容をいいな。」   一応50年も生きていれば、こんなヤツの相手をいくらでもしてきている。 相手の掌の上なんかで踊ってやるかと、綱手は不敵に笑う。   「喧嘩。  あんたが勝ったら、火影になるも止めるも好きにしな。  ついでに、オレの手持ちを全部やる。  オレは結構金持ちだぜ。」   そりゃそうだとナルトが背後でうんうんと頷く。 お互い暗部生活も長い。 それにシカマルは長の給料まで貰っている。 13の子供とは思えない高給取りだ。 しかし、話の展開に納得がいかない、ナルトはシカマルの背中を不安そうに見つめる。   「フン・・・・いい条件だね。  で、私が負けたらどうなる?」 「傀儡にでもなってもらうか。  別に俺たちは誰だっていいんだ。  オレ達の意のままに動く火影サマになってもらう。」   シズネはギリッと奥歯の音をたて、腕に仕込んである武器を発動させる。 木の葉の者とは思えない言動。 生かしておくわけにいかないと思った。   しかし、放たれた毒針は全てテーブルか地面の上に落とされる。 ネジ、ナルト、シカマル、三人共クナイでそれぞれ弾き返していた。   「結構やるみたいだね。  分かった賭けにのってやるよ。  今から全財産を用意しておきな。」 「あー・・・綱手。  一応ワシはお前と三忍と呼ばれた仲って事でいい事を教えてやろう。  シカマルの別名を新月と言う。  なめてかかるとおまえが負けるのぉ。」   シカマルが口の端を少し上げる。 しかし、綱手も負けていない。 しかし、綱手が口を開こうとした時にナルトが口を挟んできた。   「シカっ!オレがヤるっ!  シカのは・・・・・・・きっと辛い。」 「あぁ、オレもそう思うけどな、話の流れがこうなっちまったんだから仕方がねーだろ。  つか、このおばさんはお前と戦う資格はねーから。」   目つきをより一層悪くしたシカマルが、綱手を見る。   「ほら、やんだろ?  さっさと行こうぜ。」   シカマルが綱手を促す。 シズネが何か言おうと口を開きかけた時に、自来也がしずねを抑えた。   「なっ?!!」 「お前だけが綱手を心配しているのではない。  だから安心して黙って見てる事だのぉ。」   シズネが自来也を睨む。 自来也の言っている意味が分からない。 今日初めて会った人間の事を信じられようもない。 しかも、さっきまでの暴言の数々、どうやって信じればいいんだと思った。 シズネが、自来也を振りほどいて走ろうとした時、再び腕を掴まれた。   「大丈夫。  シカは・・・・・オレらの過去を見せようとしてるんだ。  そして、綱手さんの過去を。  それをどう思うかは、綱手さん次第だから。  綱手さんは強い人なんだろ?  だったら、大丈夫。」   真剣な蒼い瞳が見上げてきていた。   「幻術?」 「うん。シカの幻術は強力だから、綱手さんでも破れない。」   ナルトが心配そうにシカマルの後姿を見つめる。 集まった4人がそれぞれ綱手を今を生きてもらう為に策を考えていた。 シカマルが挙げたのは、幻術世界による過去の再現。 逃げていた心を、悲しかった過去を直視する事。 未だ自分も完全には克服出来ていない、それだからこそ綱手が心配だった。 綱手は元々強い人間だと聞いていたが、過去を見たらきっと傷つく。 それが居たたまれなかった。   ネジが近寄ってナルトの肩を叩く。   「あの方は三忍とまで呼ばれた方だ。」 「・・・・うん。」       シカマルは苦戦していた。 ある程度の距離がほしかった。 無条件に戦うのであれば、もっと簡単に事を運べる相手。 しかし幻術を、しかも禁術レベルの幻術を扱うには、ある程度相手の近くに寄る必要があった。 綱手の馬鹿力のおかげで、それなりに距離をとらざる得なない。   攻めあぐねていた。   「どうした?  遊んでるのか?」 「いや、ちょっとした準備運動って所?」   綱手の目がキツクなる。 擦り傷が既に出来ていた。 目を閉じて、その血を少し震える親指に乗せる。 一瞬の出来事だった。 綱手の意図を察したシカマルが無条件にクナイを投げ、綱手の手を止める。 そして、シカマルの術が発動した。     虚空に綱手は立っていた。   「なっ?!幻術っ!」   綱手が唇の端を噛む。 しかし、目の前の状況は変わらない。   「無駄だよ。痛いだけだから止めな。  それより、少しオレに付き合ってもらう。  はっきり言って悪趣味なモノを見せる。  あの二人は、良いと言ってくれたぜ。  ・・・・・あんたは、あの二人に感謝しな。」     シカマルの声が消えた瞬間に目の前に唾棄すべき光景が広がる。 ナルトはシカマルの手を握っている。 今、この幻術世界を支配しているのはナルト。 自分の起こった事をそのまま伝える。 自分の感じた事をそのまま伝える。 振り返りたくない過去。 そして、今の自分になる為に自分はシカマルと出会う。 横に居るシカマルが居たからこその今の自分。 それをそのまま伝える。     シカマルの掌にネジの掌が重なる。 幻術世界を支配しているのはネジ。 自分が育った環境を伝える。 自分が見てきたものを伝える。 ずっと辛かった。 それが分からなかった。 強さを求める事で辛さを省みないようにしていただけだと分かったのは、ナルトが居たから。 ナルトとの戦いがあったからこその今の自分。 それをそのまま伝える。     最後に自来也に説得されたシズネがシカマルの掌を握る。 自分はずっと綱手様を見てきた。 とても辛かった記憶も知っている。 それをすべて再現する。 そして、最後に綱手に伝える。 私は貴方の支えにはならないだろうかと。 そのまま停滞続けていては、この子供達に追いつけなくなってしまうと。 私も一緒に居ますからと。 たまには留まってもいいですからと。 想いをそのまま伝える。     幻術は掻き消えた。     「・・・・・しずね・・・・・・・・・・・・・・・・・分かったよ、私の負けだ。」 「疲れたー。」   綱手の前に現れたシカマルは、荒い息を吐き、地面に座り込んでいた。   「んで、おっさん・・・来てんだろ?」 「気づいたか?」 「一応、結界の方も確認してたから、この状態。  ナルト!結界解除したら速攻っ!  綱手はナルトのフォロー。  シズネはネジとオレをカバー。  おっさん後は頼んだっ!」   言うだけ言って、シカマルは倒れた。   「自来也?」 「外にお客さんが来てるようだからのぉ。」   巨大な結界の中に居た。 シカマルの幻術が発動した瞬間、自来也が全員を覆う結界を張っていた。 それが、目に留まったのだろう。 この中の誰が標的かわからない。 しかし、大量の殺気が自分達の敵だという事を教えてくれていた。   ナルトが変化をし、日食になる。   「おっさん、結界を解いて!」   ナルトが綱手を振り返る。   「オレ一人で大丈夫だから。  辛かったら、シズネさんの所に居て!」   綱手は、ナルトの案じるような目線の意味が分からなかった。 自分は子供に守られる者ではない。 ナルトの言葉を気にせず、後を走る。   結界が掻き消える。 殺気に向かってナルトが銀線を振るう。 大量の血と共に、ぼたぼたと手や指、足が落ちていく。   走っていた綱手の足が止まる。 目の前は血の海だった。   「綱手っ!下がってろっ!」 「い・・・・いや・・・・・戦えるっ!」   自来也の言葉に、綱手は再び走り出す。 手の震えがとまらない。 それでも、目の前の子供を置いて、下がるわけにはいかなかった。 思い出したくなかったであろう過去を、自分の為に見せてくれた。 血を厭う自分に対して、こんないい大人に対して、気遣ってくれているのは、目の前の子供。   ナルトに集まってくる、忍びの数を減らす為に、地面を破壊する。 体を動かす。 血を厭っている暇はない。 自分が足手まといになるのはごめんだった。       「よ、ご苦労さん。」   綱手が振り返ると、口の端をあげたシカマルが立っていた。   「お・・・・お前っ!!」 「いい戦いっぷりだったじゃねーか。」   そう言って、さっさとナルトの方に歩いていく。 呼び止めようとしたら、シズネが綱手の横に来た。   「敵いませんね。  彼、ずっと綱手様の状態を走査していました。  無理がかかるようなら、すぐに止めに入るつもりだったみたいです。」   シズネがシカマルの方を見て苦笑する。   「この敵もあのガキの仕業か?」 「だとしても不思議はないですね。」   綱手が、シカマルの背中を見ながら楽しそうに笑う。   「仕方がない、負けと言ってしまったからな。  面白そうな面子だね。  傀儡でも何でも、やってやるよ。」     【続く】    




 


    18巻片手に頑張りました。 綱手の言葉は各所18巻から拾い捲りf(^-^;)<いいのかっ!   つかぶっちゃけ、自来也が出てきた時点で、ネジに螺旋丸覚えさせようかとも思った。 が、流れがそう行かなかった事にありがたいと思う。 本誌と同じにしてどうするよf(^-^;)   相変わらず幻術最高!状態です。 何でも出来ます幻術。 白眼を使えなくする事から、過去投影までっ! お買い得です。 心話以上にお買い得です。 こんなんでいいのかねぇf(^-^;)   ・・・あまりよろしくないわね。(大蛇丸の声で) 綱手を奮い立たせる方法がどうも、これしか思いつきませんでした。 悪趣味です。 う〜ん。ナルト火影になりたいとカケラも思っていないんでf(^-^;) 頭を絞った結果これだけでした(((((;__)_ ついでに、戦わせちゃいました(((((;__)_ 違う事も考えたんだけど〜〜〜こっちの方がまだマシかな?と思って。 すまんこってっす。     【04.09.21】